配信日時 2022/09/16 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】中国の台湾侵攻が難しい理由(1)──地理的困難さ     加藤喬(元米陸軍大尉)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp

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こんばんは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
WW2でドイツ国防軍が使用。WW2で最も知られた兵器
の1つであり、生産停止後も独自の存在感を発揮し
続けた伝説の名銃・MP38&MP40サブマシンガンです。

『MP38&MP40サブマシンガン』
アルハンドロ・デ・ケサダ (著), 床井 雅美 (監
修), 加藤喬 (翻訳)
2022/5/12 発行
https://amzn.to/3yvXWrj

武器オンチの日本人に
特におススメです。

みんなが腹の底から沸き立てる「何か」が、
「月探査」には確かにありましたね。

暗殺された安倍さんもそんな「何か」を持つ人でした。

皆の心が沸き立つ「何か」を世に打ち出せる
世界にしたいものです。そんなことを思いました。

本編も実に興味深い内容です。
対中共(支那)で「機雷」が持つ効果と価値は想像
以上にすさまじい、とむかしから聞いてますが、
改めて、そう感じさせられます。

さっそくどうぞ。


エンリケ


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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編 Takashi Kato  

中国の台湾侵攻が難しい理由(1)──地理的困難



加藤喬(元米陸軍大尉)

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□「月に還る」アルテミス計画

「宇宙に未来がある」。51年前の夏、月面を行く
アポロ11号のアームストロング、オルドリン両宇
宙飛行士の姿に、小学生の私はそう確信していまし
た。「いつか宇宙に行ってやる!」。身のほど知ら
ずの情熱が、しかし当時はすんなり信じられたもの
です。世の中も私も「宇宙時代」という熱に浮かさ
れていたのでしょう。
 
 1972年12月、アポロ計画は17号をもって前倒しで
終了。「月」をゴールとした宇宙開発競争が国威発
揚を狙った米ソ冷戦の裏の顔だったこと、そして、
民間投資の動機となる金銭的誘因を欠いていたこと
が相まって、このあと月探査は急速に勢いを失い・・・
ほどなく忘れ去られました。
 
 半世紀にわたる休眠状態を経て、「月に還る」野
心的な計画が始動しようとしています。米航空宇宙
局(NASA)、日本宇宙航空研究開発機構(JAXA)、
欧州宇宙機関(ESA)などの政府機関と、SPACE Xを
はじめとする民間宇宙企業が一致協力して推進する
アルテミス(月の女神)計画のことです。
 
 アルテミス1号は大型打ち上げロケット(SLS)と
6人乗り多目的宇宙船オリオンの実証飛行という位
置づけのため無人で打ち上げられます。月軌道を6
日間周回したあと地球に帰還する予定です。去る8
月31日の打ち上げは燃料漏れにより中止されました
が、10月の発射を目指し現在修理が続けられていま
す。ちなみに、アルテミス1号にはJAXAの超小型月
着陸機「オモテナシ」が搭載されています。
 
 2024年に打ち上げ予定のアルテミス2号は有人飛
行。4名の宇宙飛行士が月を周回し地球に帰還しま
す。有人月面着陸を目指すアルテミス3号は、
SPACE X社が開発中の大型宇宙船「スターシップ有
人着陸システム」(HLS)と「共演」することにな
っています。全長50メートル全幅9メートルという
大型のHLSがまず月周回軌道に投入され、その後、
4名のクルーを乗せたオリオン宇宙船がランデブ
ー・ドッキング。女性を含む2名の宇宙飛行士が
HLSで月の南極付近に着陸します。1週間弱の滞在
期間中に少なくとも2回船外活動が予定されていま
す。
 
 アポロ計画では訪れなかった南極が選ばれたのは、
太陽の光から遮断されたクレーターの底部に大量
の氷があるかもしれないからです。仮に存在が確認
されれば、飲料水や酸素と水素の供給源になり将来
の月探査に大きな弾みがつくことになります。月探
査任務終了後、HLSは月面を離れてオリオンと再
ドッキングし、クルーは地球に帰還します。HLS
はその後も月周回軌道に残り、将来の再利用に備え
ます。
 
 将来的にアルテミス計画では、月の氷、シリコン
やアルミを豊富に含む土壌を利用してロケット燃料、
太陽電池、および月面基地の建築材料などを生産
します。地球から運ぶ場合よりも高い費用対効果を
目指すと同時に、月資源の活用によって民間投資を
奨励するためです。ここが、人間の継続的月駐留を
前提とするアルテミス計画最大の特色です。
 
それだけではありません。本計画は2030年代後半の
有人火星探査も視野に入れ、火星宇宙船の発射基地
となる月軌道ステーション(プラットフォームゲー
トウェイ)と、日本のハヤブサ1号と2号で実証さ
れた電気推進ロケットを組み込んだ有人深宇宙輸送
機(DST)も含む壮大なプロジェクトなのです。
因みに日本人宇宙飛行士が月面に降り立つ姿も、そ
う遠くない未来、目にすることができるでしょう。
 
 古来、人類文明の原動力になってきたのは「もっ
と遠くを目指す」願望。大航海時代然り、黎明期の
飛行機時代然りです。ヒトの遺伝子に組み込まれた
この「好奇心」が地球の重力圏から解き放たれ、い
よいよ深宇宙を目指し始めたと言えましょう。
 
 アルテミス計画と並行して、ベンチャー企業によ
る「宇宙旅行」も昨今急激に現実味を増しつつあり
ます。技術の進歩は幾何級数的だと言いますから、
地球を外から「実感する」さまざまな機会が、格安
航空券とさほど変わらぬ手軽さで手に入る時代も遠
からずやってきます。むろん中露の領土野心が宇宙
に及ぶ恐れは否定できませんが、にもかかわらず、
世界中のより多くの人々が地球的視点を持つ社会こ
そ、日系理論物理学者、加來道雄(かくみちお)博
士が示唆する「技術的幼年期」終焉の先触れに違い
ありません。
 
 エピデミックと戦争が世相に暗い影を落とすなか、
アルテミス計画は「宇宙に未来がある」との希望
を蘇らせてくれました。10月のアルテミス1号打ち
上げに、年甲斐もなく心が躍ります。「月に還る」
アルテミス計画、読者諸氏はどう捉えていらっし
ゃいますか?
 
 
▼中国の台湾侵攻が難しい理由(1)

兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるため
には相手より優れた武器を持たねばなりません。兵
器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく続
いているのはこのためです。よく指摘される武器の
効用に「抑止力」(deterrence)があります。
刀を抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内
の勝ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒
的な破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器
を手放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマ
の裏面が「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

ウクライナ戦争を機に露中が接近し、世界は民主主
義圏と権威主義圏に二分された感があります。この
新たな力関係を背景に、台湾侵攻の可能性が取沙汰
されています。

最悪の事態を想定し備えるのが平和の基本ですから、
防衛努力は粛々と進める必要があります。同時に、
勢いを増す「好戦的世相」に飲み込まれない冷静な
状況判断も求められます。

今回から数回にわたり「中国にとって台湾侵攻が難
しい理由」を検証します。第1回は「地理的困難さ」
です。

人民解放軍が台湾に侵攻するには台湾海峡を渡る必
要があります。その距離160キロ。上陸用艦艇に
搭載されるものは、それが兵員であれ、戦車であれ、
野砲であれ、装甲車であれ上陸するまで火力を発
揮できず、したがって無防備な存在になります。逆
に言えば、台湾軍にとって海峡を渡る中国軍上陸部
隊は格好の標的なのです。

 侵攻してくる敵軍に対し、もっとも費用対効果が
高いのは機雷でしょう。「機雷を敷設した」と公表
するだけで相手の進軍速度は大幅に落ち、また、乗
員らにも重圧がかかります。つまり自軍を危険にさ
らすことなく、敵部隊の戦闘行動を物理的かつ心理
的に牽制することができるのです。

 この戦術に基づき、台湾海軍は今年に入り2隻目
の高速機雷敷設艇を就役させています。同艇は自動
化された機雷敷設システムと推進器を備えており、
多数の機雷を迅速かつ正確に敷設することが可能で
す。

 機雷源に入り速度を落とした上陸用艦艇は、航空
機から放たれる対艦ミサイルや無人機の攻撃に対し
ても脆弱です。回避行動も機雷との接触を恐れ鈍く
なるのは必至。また、沿岸部に近づくにつれ、今度
は陸地から発射される対艦ミサイルや砲撃にさらさ
れることになります。恐らく上陸部隊の大半は海岸
に達する前に撃破されるでしょう。

 上陸作戦を敢行するには、甚大な被害を覚悟する
必要があります。習主席のモットー「祖国統一」が
それに値するかどうかの判断は、その時の経済状況
や共産党内での力関係、そして、内政の安定度によ
って変わってくるでしょう。

教材ビデオ:
 6 reasons invasion of#Taiwan will be hard fo
r #China ! - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=CVSXTlbYN0U&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=247&t=363s

(本エピソードは1:53から始まります)
 
基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Rig(リッグ)仕掛ける 設置する
Risky(リスキィ)危険な

シナリオ(カウンターを2:53に合わせてくださ
い)

Rigging these waters with mines will make thin
gs exceptionally riskyfor the Chinese militar
y.

(これらの海域に機雷を敷設することで、中国海軍
の作戦行動は極めて危険なものになる)

(今回のエピソードは2:57まで続きます)

英語一言アドバイス:
rig には「〜を仕掛ける」「〜を取り付ける」
「〜を不正操作する」など異なる意味があります。
本ビデオの文脈ではRig with minesは「機雷を敷設する」
になります。

発音サイト:rigの発音
 (1) How To Say Rig - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=1aVGcbMpKcA


参考サイト:

機械水雷(機雷)機雷 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A9%9F%E9%9B%B7

アルテミス計画 アルテミス計画 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%86%E3%83%9F%E3%82%B9%E8%A8%88%E7%94%BB

スターシップ有人着陸システム
 Starship HLS - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Starship_HLS

月軌道プラットフォームゲイトウェイ
 月軌道プラットフォームゲートウェイ - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%88%E8%BB%8C%E9%81%93%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A4


深宇宙輸送機
 深宇宙輸送機 - Wikipedia
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B7%B1%E5%AE%87%E5%AE%99%E8%BC%B8%E9%80%81%E6%A9%9F

大型打ち上げロケットSLS
 スペース・ローンチ・システム - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0





(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン』(いずれも並木書房)がある。
 
 
追記

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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
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ブックレビューの投稿はこちらから
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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