配信日時 2022/09/13 19:48

【本の紹介】『危機迫る日本の防衛産業』  桜林美佐(著)

『危機迫る日本の防衛産業』
著者:桜林美佐
定価:902円(税込)
ページ数:272ページ
ISBN:978-4-7698-7051-7
発売年月日:2022年8月25日
https://amzn.to/3AuEJ8O


218ページに書かれている桜林さんの死生観に同
感しました。あなたはいかがでしょう?


こんばんは、エンリケです。

題名には防衛産業と書かれてますが、防衛産業
に代表される防衛基盤全般にわたるご見識と提言が
詰まった傑作です。

こういうテーマで実のある本を上梓できる人は、
いま、桜林さんしかいないように感じます。

ご自身は防衛産業をめぐる現実に、
非常につらい思いを重ねてこられたようですが、
本著を読み、やはり今のわが国で防衛産業と一般国
民をつなげられる人は桜林さんしかいない、と改め
て感じざるを得ません。

防衛基盤をめぐる現状背景歴史から解き明かし、現
状や過去に決定されたことのどこにどういう問題が
あって今いかなる事態に至っているのか?が手に取
るようにわかります。

これが本著最大の魅力。

正直、防衛基盤にまつわる話は重層的で複雑。
求められる知性の裾野が広く高度なインテリジェン
スを求められるだけでなく、
経営戦略とか海外との交渉事とか実地知識、経験が
ないと、机上の空論になって現実に生かせない、
という「高度な実践力」も不可欠なんですね。

文武両道をふたつでひとつ道といいますが、
防衛基盤をめぐるはなしも、実践経験と深く広い知
識の両者が求められます。

単なる技術話、単なる防衛話、単なる軍事話、単な
る安保話では取り付く島もないほど総合性が高い。
そういう分野の「防衛基盤」に今いかなる問題課題が
あるのか?を一般人でも掴みやすい形でわかりやす
く書いている点が非常に価値が高く、読み甲斐と持
つ甲斐のある本と断言して差し支えありません。

ですから弊メルマガをお読みのあなたには必ず読ん
でいただきたいです。

防衛基盤や防衛予算、防衛産業、兵器や装備品の調
達、継戦能力、募集と援護など自衛官の人をめぐる
話などなど、ひろく兵站をめぐる話を把握理解する
うえで、直接の当事者でない主権者国民に本著の知
識情報は絶対に欠かせません。

いまわが国で、この本以外に防衛基盤を正確に適切
にわかりやすく、俯瞰把握理解できる本はないと断
言できます。

防衛基盤は国防力の発揮の基礎です。
防衛基盤が確固たるものでなければ自衛隊も国分も
その軍事力を適時適切に発揮しきれません。
すなわち国防目的を達成できないわけです。

桜林さんがよくおっしゃる言葉に、防衛産業は第4
の自衛隊だと言う名言があります。
この本の中では「第5の自衛隊」になっています。
防衛産業は国防力の兵站を担う国防力の一部である
ということです。

工廠(国営の軍需工場)のない我が国で、前線で戦
う自衛隊を後方から支える兵站を担う
のは防衛産業なんです。

弾薬などを補給し、故障した装備品や兵器を修理し
てまた前線に送り、汚れて破れた軍服をきれいにし
て前線に送る、糧食を作って前線に送るなどなど、、、、
戦う部隊は兵站なしには生きられないわけですよ。

その部分を担っているのがわが国では防衛産業だ、
と言う現実を、国民も国家も戦後日本は知らなさす
ぎる。

これは実に幼稚にすぎる。知らないで済む話ではな
い。

じつは防衛産業は、他国では考えられないレベルま
で国防を支えています。
アカデミズムです。本来なら大学などの研究機関で
研究するべきことを、防衛産業の研究部門が担って
きました。

私自身、本著での指摘を通じてこの事実のあまりの
重さに気づかされています。

我が国の国防技術や兵器技術の研究はアカデミズム
が行っていません。
これはおそらく世界でわが国だけの異常な姿です。
日本学術会議の異常性はこの面に一番顕れています。

このことに何も言わなかった、目を背けてきた国家
国民の姿からは、国防を真剣に考えている意識を感
じません。


国が保護して然るべき防衛基盤の核心である防衛産
業をあろうことか疲弊させ、防衛廃業や防衛事業か
らの撤退をもたらす状況に追い込んでいる。
それが日本国家であり日本国民であるおかしな現実
に国民は気づいて声を上げなきゃいけない。

それほど異常な状況に今わが国の国防安保防衛分野
は追い込まれているのです。

へらへら笑って余裕のふりして済ませられる状況は
もう過ぎました。


「すべては●」という社会風潮が、ついに国防安保
分野の破壊にかかわってきた背筋が寒くなる現実が
わかる。

いつどの企業が防衛事業から撤退するとなっても全
く不思議ではない現実。

工廠のないわが国で、防衛産業は、軍が調達する装
備品や需品などを製造提供する「軍事産業」として
役割を果たす「国防体制の一環」をなしています。

にもかかわらず、現行の法体系では公と民間の厳密
な区分けをとおして民が一方的に負荷を強いられて
いる現実があります。

防衛産業のベンダーやプライム企業は、その苦悶か
ら逃れるために防衛事業からの撤退や廃業をしてい
るわけです。

このチョークポイントを解決しない限り今後も永遠
に、継戦能力のない危うい体制の国防軍事防衛体制
を続けなければいけないことになります。

ここから脱出する思考と発想と動きが必要ではない
でしょうか?


いまや命運が尽きかけたかに見えるわが防衛基盤で
すが、ようやく防衛省も手を打ち始めるようです。
遅きに失した感はありますが、今後の推移を見守り
たいです。

それではこの「防衛基盤理解把握の入門書」の内容
を見ていきましょう。

◆もくじ

▽日本に「防衛産業は存在するのか
 日本に「防衛産業」は存在するのか?
 相次ぐ防衛事業からの撤退
 コロナ禍に学ぶ輸入依存の危うさ
 企業救済策は自衛官の意識から
 防衛産業は第四の自衛隊
 
▽兵器の独立なくして国家の独立なし
 国産であるべき理由
 「兵器の独立なくして国家の独立なし」
 日本人と欧米人の体型の違い
 日本ならではの「国内事情」
 均一性が命の弾薬
 靴下と戦闘機どちらが重要か?
 
▽消える「国産化」とライセンス生産
 「基盤戦略」から「国産化方針」消える
 国内装備に向けられた厳しい視線
 残す努力せずに間引きするのか
 装備輸入の歴史的経緯
 国産潜水艦の復活
 「出藍の誉れ」が多い日本のラ国
 ラ国製品の輸出も
 
▽FMSは金食い虫???
 見失われた「国産化方針」真の意味
 当たり前になったFMS
 FMSの問題点
 FMSが金食い虫になる事情
 増加する「政治案件」
 
▽予算の構造に問題あり
 FMSの罠
 未清算がいっぱい!
 「FMS基金」のすすめ
 予算の構造に問題あり
 民主党政権で防衛費がアップした!?
 増えるローン払い
 
▽誤解ばかりの防衛予算と「こくふり」
 誤解ばかりの防衛予算
 「何こくですか?」の意味
 新たな概念「こくふり」
 補正予算が頼みの綱
 なぜか語られない中期防との関係
 「中期防」を読む際に必要な読解力
 
▽「カラダちぎり」と「過大請求」
 自分のカラダを裂いて人々のために
 装備の値段はどのように決まるのか
 「過大請求事案」の真相
 継続するための処置だった
 「不正」生む背景に目を向けるべき
 
▽自腹で解決します!
 抜き打ち調査始まる
 「ルール違反」の余波
 ダブルGCIP問題
 盛り上がるのは実情とかけ離れた話ばかり
 儲けた分はお返しします! のルール
 お金が足りなくなったら自腹で解決します!のル
ール
 原価計算が始まった経緯
 
▽防衛産業の復活と試練
 防衛産業に再び火が灯る
 国防のための決心と眠りから覚めた喜び
 蘇った防衛産業を襲った試練
 日本中から「航空」が消えた戦後
 隠されたジェットエンジン
 英国とドイツに続け!
 
▽「ネ20」と競争入札
 執念の結晶「ネ20」
 メザシの土光さん
 改革は食卓から!?
 競争入札の時代へ
 傷を深める企業と防衛省
 
▽広がるひずみ
 罪の償いが招いた罪
 危ない競争入札
 防衛装備の安値競争
 艦艇事業でも広がるひずみ
 「長官指示」廃止の余波
 それぞれの苦しい事情
 下請企業を圧迫することにも
 浪花節の装備品づくりを終わらせる
 
▽30FFM建造と問題点
 艦艇建造の危機
 新たな試みへ
 FFMの抱える問題
 最大の特徴はコスト抑制
 三菱&三井の合併
 インドネシアへの輸出を目指す
 トラブル続出の取引
 深刻な課題も
 ベンダ―企業への影響
 
▽全ての日本の装備品情報を開示?
 艦艇建造二社体制
 イージス・アショア問題にも関係か
 NATOカタログ制度
 ここまできているワールドネットワーク
 「とっても速いです」に冷笑
 Tier2昇格の覚悟
 選別作業はどのように?
 市場開拓や後方支援にメリット
 
▽自衛官の再就職問題と防衛産業支援策の強化
 防衛産業危機が話題になる危うさ
 成長戦略に位置付けられた経済安全保障
 言うのが憚られる問題がある
 自衛隊で昇任してもいいことがない
 FMS増加の影響も
 軍の意志決定はそんなに簡単ではない
 防衛産業支援策の強化を目指して
 防衛力における「選択と集中」の危うさ
 
▽泥縄式の防衛政策からの脱却
 危なすぎる防衛論
 高齢化で自衛隊を減らす?
 柔軟化した採用枠
 制度の問題が多いのではないか
 肝心なことを「差し置いて」の議論
 装備調達にも直結する
 「選択と集中」は防衛力を危機に晒す
 画期的な「防衛力加速化パッケージ」
 泥縄式では間に合わない
 
▽ロシア・ウクライナ戦争から見る日本の安全保障
 ロシアのウクライナ侵攻という衝撃(2022年
(令和4年)2月24日)
 失われた記憶
 背中を押した要因
 抵抗か投降か
 武器供与が支える戦闘
 自衛隊の防護衣・鉄棒がウクライナへ
 今から急いですべきこと
 
▽「GDP比1%」という謎縛り
 防衛費GDP比を巡る論争
 NATO基準そもそも一%超だった!
 上手かつ着実に増やす方法
 「戦争」「軍拡」は日本人にとって不快な響き
 変更を迫られている日本人の道徳観
 国民保護の痛みという課題
 シェルター整備の加速化を
 抑止に失敗したらどうするか
 
▽日本のウクライナ支援に関するあれこれ
 装備品提供の舞台裏
 運用指針の変更
 自衛隊の持ち分しか渡していない
 米国の支援体制
 ここにもサプライチェーンの問題が
 日本のポテンシャル
 火を噴く装備は渡せない
 古いヤツだと思われたモノたち
 
▽装備移転を巡る問題
 誤解だらけの装備移転
 防衛産業救済策なのか?
 「会いたい」と思う防衛産業に
 電気代などの負担減を
 リスクが多い輸出
 自衛隊のために続けてきた
 国として取り組まないと無理
 フィリピンへの移転を成功させた「人」の力
 積み上げた両国関係
 フィリピンに続くことはできるか
 
▽前時代的な学術会議
 日本学術会議の問題
 戦後の膿を取り除け
 求められる新たな日本の学術会議
 企業が学術界を肩代わりした戦後
 考えさせる兵器の概念
 日常の中にもある軍事技術
 外国からの資金援助はOK!
 国防総省が半分を持つ米国の研究開発費
 企業が担った戦後の研究開発
 中国との親密な関係
 自衛官に対する「いじめ」
 ノーベル賞とダイナマイト
 「死の商人」と言われて

あとがき


ご紹介したのは



『危機迫る日本の防衛産業』
著者:桜林美佐
定価:902円(税込)
ページ数:272ページ
ISBN:978-4-7698-7051-7
発売年月日:2022年8月25日
https://amzn.to/3AuEJ8O



でした。


エンリケ

追伸

軍事や国防防衛安保問題は、この本で取り上げられ
ているポイントをきちんと押さえておかないと、
単なるオタク趣味で終わり、政治や政策に影響を及
ぼせません。

その意味で主権者には必携書です。



『危機迫る日本の防衛産業』
著者:桜林美佐
定価:902円(税込)
ページ数:272ページ
ISBN:978-4-7698-7051-7
発売年月日:2022年8月25日
https://amzn.to/3AuEJ8O
※明日も本書の紹介をお届けします。