配信日時 2022/09/12 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(187)】少しも居なくなっていない  ー「悲劇の英雄」ヤマトタケルと安倍元首相    桜林美佐(防衛問題研究家)

187回の美佐日記。

実に面白い見方ですね。
刮目させられる人が多い名文と感じます。

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桜林美佐の「美佐日記」(187)

少しも居なくなっていない
 ー「悲劇の英雄」ヤマトタケルと安倍元首相


桜林美佐(防衛問題研究家)

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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、令和4年9月の今回
は187回目となります。

 不思議なことってあるものですよね。4年前の天
皇陛下即位礼正殿の儀では、天皇陛下が天照大御神
にご報告を終えるとすぐに大雨が止んで太陽の光が
差し、そして空に虹がかかったことは非常に印象的
でした。

 そして、この度、英国エリザベス女王が逝去され
たその発表があると、バッキンガム宮殿上に二重の
虹が現れました。「帰天(きてん)」という言葉が
これほど相応しい光景はないのではないか、と感じ
ました。

 やはり、人間と人間の間には目に見えない「何か」
が存在しているのだと思わざるを得ません。

 かつて、拙著『終わらないラブレター』を書いた
際にお会いした故川村文子さんは戦争でご主人を亡
くされましたが、その後もずっと「いつも一緒にい
る」と言っていました。

 おふたりが夫婦として一緒にすごしたのは、たっ
た1日しかありませんでした。いえ、数時間と言っ
てもいい瞬間です。

 それでも、文子さんは戦後も1日たりともご主人
のことを忘れたことはありませんし、いつもどんな
瞬間も「一緒にいる」と言っていたのです。

「今でも毎日守ってくれて、ありがとうって毎日話
しているの。風邪もひかないし、頭痛も肩こりもな
い、外に出ると、雨が降っていても上がってしまう
のよ。守ってくれているのよ」と。

 文子さんとお会いしてから「一緒にいる」の本当
の意味を考えさせられるようになりました。

 今、私の手元には、日本会議が発刊している『日
本の息吹』最新号があるのですが、今回は安倍元首
相の追悼号となっています。

 数々の先生方の追悼文の中で、目に飛び込んでき
たのが埼玉大学名誉教授の長谷川三千子さんの「暗
殺者が奪いさりえないもの」でした。

 18年前に長谷川さんのご主人が亡くなった時、
その時までは「人は死んだら居なくなるもの」と思
っていたものの、ご主人が「少しも居なくなってい
ない」という不思議な感じを体験したといいます。

 同じような感覚が安倍さんの暗殺後もあったとい
い「居なくなっていない」ことを確信したというの
です。

 これは私にとっても目の覚めるような言葉でした。
すでに川村文子さんとの出会い以降私の中で明確に
なっていたことながら、うっかり忘れていたことで
した。

 もう一つ、同じ追悼特集で見つけた名文は評論家
の宮崎正弘さんの「悲劇の英雄」です。

「橿原で亡くなったという旅程。政治的な軌跡を辿
りながら私はすぐにヤマトタケルを連想した」とあ
ります。

 武勇に優れるヤマトタケルは出雲で敵を退治して
戻るとすぐ、父である景行天皇に東国遠征を命じら
れます。

その遠征で、走水の海(浦賀水道)を通り上総(千
葉県)へ抜けようとした時のこと、暴風雨に襲われ
ます。

このままでは全員死ぬしかないというその時、妻の
オトタチバナヒメが立ち上がり、申し出ます。「私
が海に沈み、海の神の怒りを鎮めます」と。

もちろん、愛妻が人身御供になる、そんなことを受
け入れられるはずはありません。しかし、激しい風
雨の中で木っ端みじん寸前の船上に妻は立ち「他に
方法はありません」と言います。

身を切る思いでヤマトタケルはオトタチバナヒメの
申し出を聞き入れるのです。

 最後に振り返り、かつて相模の国で敵に騙され共
に絶体絶命の危機に陥った際、あなたは危機の中に
もかかわらず私を心配し私の名前を呼んでくれた、
そのことを忘れないという歌を詠み、海中に身を投
じたのです。

 ほどなく嵐は止み、船は無事に岸にたどり着きま
す。

 数日が経ち、悲しみに暮れていたヤマトタケルは
海岸に何か打ち上げられているのを見つけます。駆
け寄ると、それはオトタチバナヒメの着物の袖でし
た。ヤマトタケルは愛する妻の袖を握りしめて涙に
むせびます。

「君さらず 袖しが浦に 立つ波の その面影を 
みるぞ悲しき」

 この時の「君さらず」が「木更津」や「君津」と
いう地名として残り、また「袖ヶ浦」という地名も
この出来事が由来と言われます。

 そしてヤマトタケルはこの後、足柄山に登り、海
に向って「わが妻よ!」と絶唱したといいます。そ
の言い伝えから、足柄山より東の地域を「吾妻」と
呼ぶのだそうです。

 オトタチバナヒメの逸話が長くなってしまいまし
たが、ヤマトタケルはその後、伊吹の賊を退治に行
くも、ふいに襲撃され重傷を負い、伊勢でとうとう
絶命してしまうのです。その魂は白鳥となって大和
へ向かったと言われます。

 古事記、日本書紀で諸説が入り混じりますが、こ
のヤマトタケルの生涯に触れる度に、歴戦の勇士で
あり不滅と思われた英雄の最期としてはどこかあま
りにあっけないような気がしてなりませんでした。
納得ができないような、物語を書き変えたいような
気持でした。

 ただ今回、宮崎正弘さんが安倍元首相の死に、ヤ
マトタケルを連想されたということを知り、なぜど
うしてこんなことに?というモヤモヤが少しほどけ
たような気がしたのでした。

「ヤマトタケルが日本からいなくなった」と思って
いる日本人は誰もいないであろうからです。

 それこれ考えてみると「国葬」というのは「未だ
居なくなっていない」安倍さんによる、他の誰にも
できない外交ステージなのではないかと、思えてな
りません。

今日も最後まで読んで下さりありがとうございます!
どうぞ良い1週間をお過ごし下さい!



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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。新刊『誰も語
らなかったニッポンの防衛産業』(産経NF文庫)、
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