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荒木さんの最新刊
知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。
そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!
自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。
『自衛隊警務隊逮捕術』
荒木肇(著)
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おはようございます。エンリケです。
「陸軍工兵から施設科へ」第49回です。
冒頭文に共感しています。
さっそくどうぞ
エンリケ
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陸軍工兵から施設科へ(49)
幻の弾丸列車計画(2)
荒木 肇
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□ご挨拶
安倍元総理の国葬が話題になっています。たしか
に賛成・反対があり、その意見の表明はまったく自
由です。それがわが国の良さであり、民主主義、自
由主義が維持されていることの証です。しかし、反
対論者のあまりに品がない、悪口雑言に嫌気がさす
のは私だけでしょうか。一部の新聞や雑誌、あるい
はSNSでもまき散らされていますが、根拠のない、
一方的な罵詈は控えるべきではないでしょうか。
少なくとも長期政権を担った元総理、しかも海外か
らも多くの弔問客がみえるような偉大な政治家を送
る葬儀です。それをまったく否定し、あたかも国費
の無駄遣いとでもいうような主張には呆れてものも
言えません。葬儀には、送られる方の格や立場があ
ります。マスコミの一部には警備費だけで30億円
もの巨費が必要だなどと、あたかも生活に苦しむ庶
民から見て問題だなどという物言いをする輩がいま
す。
いつものマスコミの手口です。生前、元総理はホテ
ルの3000円ばかりのカツカレーについてまで悪
罵を浴びせられました。一国の総理は、我々のよう
な者が食べる1000円のカツカレーを出すような
店には行けないのです。よく考えれば、悪口をいう
記者さんは、どんな店で、どんな値段のランチを食
べているのでしょうか。
同じように自衛隊の総合火力演習も、決まり切った
1日で砲弾やミサイルが何億円という報道の仕方も
ありました。いまも防衛予算がウン兆円とか非難し
ていますが、その内訳や合理性について検討するこ
ともなく、金額が多い、無駄遣いだなどと主張して
いるように聞こえます。
政治家の中にも、財源がどうの、金額がどうのとい
う方々もいます。国家の存亡のときに、そんなレベ
ルの低い話でいいのかと考えてしまいます。もちろ
ん、周辺諸国の気持ちを忖度しろなどと言う人は論
外ですが。
▼弾丸列車計画
夢を語り合っていた時代には東京-下関間を14
時間くらいと考えられていました。それが1939
(昭和14)年の実行案が出て来た頃には9時間に
決まりました。
現在の東京発下り「のぞみ」の博多までの時刻表を
見てみましょう。令和4年9月1日からのダイヤで
は、「のぞみ1号博多行き」は早朝6時に東京駅を
発車します。品川、新横浜と停車し、名古屋に7時
34分、大阪には8時22分、岡山に9時10分、
広島に9時50分、そうして新下関は通過しますが
小倉駅に10時37分、終着博多には10時52分
となっています。大阪まで2時間20分余り、博多
まで4時間50分ほどとなっているのが現在です。
現在の高度な技術で支えられた新幹線が達成して
いる記録、その倍でしかありません。具体的にはど
うしようとしたのでしょうか。答申によると、まず
線路は在来の東海道や山陽線と並行する必要はない。
複線にする。旅客列車を集中して運転せよ。貨物
列車運転のために速度は落とすな。線路の幅は14
35ミリメートル、線路や建造物の規格は朝鮮、満
洲の幹線鉄道と同等、もしくは上にせよ。東京-大
阪間は4時間30分、下関まで9時間を目標にせよ。
直ちにこの計画を実行に移せ。というものでした。
この弾丸列車構想は15カ年継続で、総額5億5
610万1000円ということになりました。19
40(昭和15)年から600万円で用地買収と測
量に取りかかることになります。ちなみに手元の昭
和13年版の国勢図絵を見てみると、一般会計の歳
出は28億1390万円となっています。うち軍事
会計費は14億1910万円、戦時下ですから歳出
の50.4%にのぼります。
▼計画の細部
青木槐三氏の『国鉄』によると、ゲージ(軌間)
は国際標準軌1435ミリ、曲線半径は2500メ
ートル以上、最高速度200キロの列車が走行可能。
勾配は上り連続で最高1000分の10、下りは
1000分の12(1000メートルの水平距離を
進むと10メートル高度が上がり、下りは同じく1
2メートル高度が下がる)、レールは1メートル当
たり60キログラム、カント(カーブでの片側線路
の高さ)は最大16センチ、停車場の有効長は旅客
列車500メートル、貨物列車600メートル、ホ
ームの高さは1200ミリメートルでした。
蒸気機関車はHD53型とHC51型、HD60
型の3つのタイプです。いずれも3気筒で過熱テン
ダー機関車で先輪、従輪ともに2軸ずつ、Dは動輪
4つ、Cは同3つを表します。HC51型は運転整
備重量160トン、HD60型は172トンもあり
ました。在来の東海道本線と同じく、電気機関車が
東京-沼津間を担当します。HEF10とHEH5
0の2型式が開発されることになりました。
この広軌蒸気機関車の重量を在来線最大の旅客機
関車C62の重量を比べてみます。もちろん、C6
2は戦後の1948(昭和23)年製造ですが、運
転整備重量145トン、貨物用の最大機D52の運
転整備重量は137トンでした。
この機関車については、当時の実情を探究された
齋藤晃氏の『蒸気機関車の挑戦』(1998年、N
TT出版)が勉強になりました。学ばせていただい
たことに感謝しつつ、ご紹介します。
駅は、東京、横浜、小田原、沼津、静岡、浜松、
豊橋、名古屋、京都、大阪、神戸、姫路、岡山、福
山、広島、徳山、下関の17とされます。実キロ数
は東京-大阪間が492.5キロ、大阪-下関間が
489.7キロを予定し、合計で982.2キロ、
在来線より1割以上短くなっていました。
東京-大阪間を4時間半で走ると平均速度は10
9.4キロ、山陽区間は同じく108.9キロにな
ります。停車時間を入れると、それぞれ時速115.
5キロ、117.1キロとなって、通して時速1
16.3キロとなります。これを達成するには最大
時速150キロが必要になる理屈でした。このため
全速で走るためには曲線半径は1500メートル、
最低でも800メートルが必要でした。
来週はさらに車輌や線路について調べてみましょ
う。
(つづく)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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