配信日時 2022/09/05 20:00

【我が国の未来を見通す(36)】「気候変動・エネルギー問題」(1) 今なぜ「気候変動・エネルギー問題」なのか?    宗像久男(元陸将)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
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こんばんは、エンリケです。

本連載のアーカイブサイトができました。
https://wagamirai.okigunnji.com/

過去記事をすべて格納してますので、
ブックマークに入れ、折に触れ読んでみてく
ださい。



きょうから再開です。

きょうから気候変動・エネルギー問題がテーマです。

きょうの内容は、ガイダンスです。

環境問題は、じつはいまや「戦争の種」となる
「対立構造のひとつ」と化しています。

国益を図るために国家的対処が求められる課題です。
感情や学術レベルで対応できる課題ではもはやあり
ません。

わが国の未来を託す後輩たちへの
責任感を持つ大人が、記事をもとに課題を共に考え、
意見を創る場がこの連載です。

問題意識を共有し、考え、未来のわが国への足がかりを
作る一助にしましょう。


さっそくどうぞ


エンリケ



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我が国の未来を見通す(36)

「気候変動・エネルギー問題」(1)
今なぜ「気候変動・エネルギー問題」なのか?

宗像久男(元陸将)

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□はじめに(最近の国内事象から)

 約1カ月ぶりにメルマガを再開します。国内は、
安倍元首相の暗殺事件をきっかけにして、マスコミ
や野党の“矛先”が変わってしまったようです。

 昔から「政治家は落選すればただの人」といわれ
るように、政治家の先生方は、普段から「1票」で
も多く集めるために、“その票が清いか否かは別に
して”死に物狂いで駆け回ります。多少の“うさん
臭さ”には目をつぶり、票を入れてくれる人や組織
に近づき、“おべんちゃら”の一つもぶち上げるこ
とは政治を志そうする人は皆、体験していることで
しょう。

 何度も取り上げましたが、イギリスの歴史家トー
マス・カーライルの「この国民にしてこの政府あり」
という言葉が再び胸に刺さります。名前は失念し
ましたが、だれかが「政治家は自分より馬鹿な人間
に馬鹿だと言われる仕事だから、政治家にはなるな!」
との祖父の言葉を引用して文章を書いていたこ
とを思い出します。

選ぶ側のレベル以上の政治家が輩出されることはな
く、その延長で政府もそのレベルに留まるというこ
とでしょう。それが民主主義の本質であり、我が国
は、戦後、この制度を“最適な制度”として選択し
たのです(選択させられたというのが真実かも知れ
ませんが)。

正直申し上げますと、私自身は、この問題に全く関
心がありません。某女性政治家が「生産性がない」
という“事実”を発言しただけで大炎上しましたが、
これなども同じレベルの問題と思います。このよ
うに断言するのは、我が国が直面している、あるい
は将来直面するであろう問題に比べれば、あまりに
矮小な問題と考えるからです。このようなことに“
かまけている”余裕はないはずなのです。

民主主義国家と権威主義国家のどちらが国の意思決
定プロセスが単純でかつ容易かと問えば、明らかに
権威主義国家でしょう。国内の様々な事象に“知ら
ぬふり”はできないのでしょうが、為政者と違った
意見を汲み取ることなどに“かまける”必要はない
からです。執拗な世論調査もありません。権威主義
国家は、様々な知恵(謀略というべきか)を働かせ
ながら即断即決、即行動を起こすことができるので
す。我が国の周辺には、このような国家が複数存在
します。

我が国の伝統ともいうべき「空気の支配」というべ
きか国民的熱病というべきか、(その意図までは見
抜けず)マスコミに左右される一般の国民は仕方な
いとしても、国の舵取りを負託されている政治家に
あっては、「民主主義国家対権威主義国家」の対立
といわれる昨今の事象などを含め、ぜひ大局的な判
断に立って、国の舵取りをしてほしいと心より願っ
ております。

その対立は、外交や軍事や経済だけではありません。
今回から取り上げる気候変動やエネルギー問題な
どにまで及んでいます。詳しくは後述しますが、国
際社会をおおむね2分している対立構図の中でこの
種の問題も考察しないと、とんでもない方向に向か
う可能性があります。いや、すでに向かっているの
かも知れません。

最近の欧米列国のあいつぐ政権交代、あるいはその
技量が未知数のリーダーの出現などをみるに、我が
国のみならず、民主主義国家の“かまけ”は共通し
ています。これが最大の弱点ともいえるでしょうし、
このような状態が続くことは、逆の立場からみれ
ば願ってもないことで、“思うまま”になる可能性
さえあります。

そうはいっても、あまりに盤石で過剰な体制をもっ
て真正面から対立すると、新たな軋轢が生まれ、「
窮鼠猫を噛む」のような状態が発生する可能性もあ
るでしょう。今も続く「ウクライナ戦争」はそのよ
うな“悪夢”が現実のものになった事象として様々
な教訓を教えてくれました。

「権威主義国家」がこの世からなくなることはない
という前提のもと、また過去に失敗したように、「
やがて民主主義国家に近づいてくるだろう」などと
の幻想はきっぱり捨て、「あらゆる局面で、緊張し
合いながらもいかに共存していくか」が問われてい
るのだと思います。そのためには、“あらんかぎり
の知恵”が必要なことは言うまでもありません。

今は、トーマス・カーライルの言葉を覆す、つまり
、国民から選ばれながらも、並の国民などがはるか
に及ばない知恵や実行力を有するリーダーの出現が
待望されているものと考えます。そのようなリーダ
ーを今から見つけ、育てるのは至難の業でしょう。
だれかが「君子豹変」することをひたすら祈り続け
ている昨今です。


▼「気候変動・エネルギー問題」を考える

 さて、今回から「我が国の未来を見通す」の第3
編として「気候変動・エネルギー問題」を取り上げ
ます。9月2日現在、不思議な動きをしながら発達
している台風11号が沖縄を襲うとしています。大
事に至らないことを祈るばかりですが、これも「異
常気象」の一現象と解説され、その原因もまた「気
候変動」の一言で片づけられています。

 元自衛官の私は、当然ながら気候変動のような問
題についても専門家でありません。この問題に関し
ては、「京都議定書」(1997年)や「パリ協定
」(2015年)など、国際的な地球温暖化対策に
ついては関心を持ってニュースを観ていましたが、
それでもつい数年前まで、平均的な読者の皆様とほ
ぼ同様の知識しか持ち合わせていなかったと思って
います。

 その頃だったでしょうか、書店にひんぱんに出入
りしていますと、店頭に平積みされている気候変動
やエネルギーに関する書籍が目につくようになって
きました。その中で、マイクロソフト創業者ビル・
ゲイツの『地球の未来のために僕が決断したこと』
が目に止まり、購入して読破したのが、この問題に
強く関心を持つきっかけになりました。

実は、その時は気候変動問題というよりも、「ビル
・ゲイツのような人物がなぜこのようなタイトルの
本を書いたのだろう?」という興味から手に取った
ことをよく覚えています。本書は、私の事前の予想
とは全く違い、「このまま放置すれば人類が地球に
住めなくなる、何とかしたい」との視点で書かれて
おり、大変ショックを受けました。

次に、ビル・ゲイツの指摘そのままの書籍名『地球
に住めなくなる日』(デイビット・ウオレス・ウェ
ルズ著〔米国人ジャーナリスト〕)を見つけました
。そこには「2050年まで100都市以上が浸水
し、数億人が貧困にあえぐ」とありました。

そして、順番が逆になりましたが、環境問題や気候
変動問題が米国内で関心を持たれるきっかけとなっ
たといわれるアル・ゴア元副大統領の『不都合な真
実』に目を通す機会を得ました。本書は、写真やイ
ラストを満載してビジュアルで訴える工夫がしてあ
り、まさに「無視をするには不都合な真実」がたく
さん描かれ、とても説得力がありました。

この辺までの私は、まさに、(1)地球温暖化が進
んでいる、(2)このまま放置すれば人類は地球に
住めなくなる、(2)その原因は人類が創り出して
いる二酸化炭素(以下、CO2と記載)である。よ
って、(3)地球を救うためには、CO2の削減、
つまり脱炭素政策を推進しなければならない、とい
う「流れ」に何の疑いを持たないまま、ことの重大
性に自分なりの問題意識を持つようになっていまし
た。

一方、そのような米国にあって、トランプ前大統領
は、地球温暖化に懐疑的で、「アメリカの製造業の
競争力を削ぐために中国によって中国のために作り
出された」といかにもトランプ氏らしい主張を繰り
返し、2017年に「パリ協定」から離脱意向を表
明、19年に正式に離脱しました。

このあたりからでしょうか、なぜ「トランプ大統領
は懐疑的なのだろうか、別な見方(分析)があるの
だろうか?」と地球温暖化のこれまでの主張に疑問
を持ち始め、持ち前の“好奇心”が頭をもたげて、
「気候変動問題の真実」を掘り下げて研鑽する必要
を感じ始めました。

そして丹念に様々な書籍を読み、そこに記載されて
いるデータを比較分析しているうちに、将来の気候
変動を警告する側の論点とは全く正反対の見方があ
ることもわかりました。その立場からすれば、国連
の下部組織で、今や気候変動に関して最強の権威を
保持し、人類をリードしているような「IPCC(
気候変動に関する政府間パネル)」の見解にも懐疑
心を持たざるを得ないことも、素人ながら知ること
となりました。

そして、今年2月には「ウクライナ戦争」が勃発し
ました。その戦争が原因となって原油や天然ガスが
急騰、世界のエネルギー秩序が崩壊し、「エネルギ
ー戦争」がエスカレートしていることが話題になり
ました。この余波が、“資源を持たざる国”日本に
襲いかかれば、その影響は甚大なものがあることは
明白でしょう。

また、我が国においては、東日本大震災の影響でや
がてほとんど稼働しなくなる原子力発電所の問題や
再生エネルギーの限界などもあり、一口に「脱炭素
政策」と唱えてもその実現には様々な問題があるこ
と、さらには、少子化・過疎化が進展することから
、エネルギー問題には新たな問題が生起する可能性
があることもわかりました。

これまで、本シリーズで取り上げた「少子高齢化問
題」や「農業・食料問題」は国内問題でした。しか
し、「気候変動・エネルギー問題」は地球規模、つ
まり国際社会と一緒になってその対応策を考えなけ
ればならない問題です。しかし、我が国独自の要因
から、より複雑で、かつ難しさも倍加する可能性が
ありますし、この問題には、政治的・経済的・外交
的な要因、つまり各国の「国益」が複雑にからんで
いることも明らかです。

素人ゆえに限界もありますが、素人なるがゆえにあ
らゆる“拘(こだわ)り”を捨てて、より客観的で
幅広い角度からこの問題の本質をあぶりだしたいと
考えております。読者の皆様にはしばらくお付き合
いいただきますようお願い申し上げます。

▼分析の手順

 本問題の分析は、私が辿ったプロセスと同じ手順
で展開して行こうと考えております。

まず、「地球温暖化が進展している」とのデータを
明らかにして、その結果、地球上にいかなる影響を
及ぼすか、これまであまり関心がなかった読者の皆
様に、その“すさまじさ”を紹介しましょう。そし
て、その原因こそが、産業革命以来の人類の諸活動
によって生み出された、CO2を主にする「温室効
果ガス」の増加がその原因であるとする説を紹介し
ましょう。その結果、地球を救うためには、CO2
の削減、できれば「CO2排出ゼロ」が望ましく、
国際社会を挙げて「脱炭素化」が必要であるという
考え、そのために現在取り組まれている様々な方策
などについて紹介します。

次に、「地球の温暖化は人間の活動と関係ない」と
する見方とその根拠を取り上げます。概略を紹介す
れば、人類が地球に住み始めるだいぶ前の約5億年
前までさかのぼれば、地球は温暖化と寒冷化を繰り
返してきました。私たちも「氷河期」という言葉を
習いましたが、地球温暖化は、そのサイクルの延長
にしか過ぎないとの考え方です。「CO2の増加が
地球の温暖化を促進した」という考え方とは逆の「
地球の温暖化がCO2の増加に拍車をかけた」との
分析も興味深いものがあります。

「CO2は一度作り出されるとその5分の1は、1
万年後も残っている」との分析もありますが、この
説からすると、仮に、地球温暖化の主要因がCO2
であり、2050年頃まで「CO2排出ゼロ」を実
現しても、その効果がどれほどのものなのか、など
の分析も紹介することにしましょう。

私自身は、現段階ではどちらの説が正しいのか、実
際にはよくわかりません。しかし、両論を知ってし
まった現在、「地球温暖化はCO2が原因で、脱炭
素化を推進しなければならない」との考えを本当に
“鵜呑みにしていいのか”とか、CO2排出ゼロに
向かって人類がやらなければならないことやその可
能性などについて疑問を持ち始めていることは間違
いありません。

少なくとも、国連をはじめ、そのCO2排出ゼロを
主張する側が、その逆の立場の意見をどのように理
解し、さらに自説が正しいとするならそれを覆す更
なる根拠(データ)を示す必要があると思うのです
が、私自身は見つけることができませんでした。そ
の結果として、先にこぶしを挙げてしまった手前、
逆に「不都合な真実」になってはいないかと疑う部
分も残ってしまのです。

これらについては、読者の皆様に一緒を考えて行き
たいと思いますが、我が国が脱炭素政策を推進して
いくと、国内産業は衰退し、国力が低下することは
様々なデータから明白です。逆に脱炭素の目標を数
十年先にずらしたことによって、しばらくの間、我
が国の削減量より何十倍ものCO2を排出し、国力
が増大する中国のような国もあります。このあたり
も総合的に考える必要があると考えます。

そのような視点も踏まえて、後半はエネルギー問題
を分析しようと計画しています。まず、世界のエネ
ルギー問題に関する現状と将来について分析したの
ち、我が国のエネルギー問題の現状と将来を分析し
ます。ここにこそ、わが国独自の極めて悩ましい問
題が内在しています。しかし、我が国のリーダーが
決断さえすれば、一歩踏み出すことができる技術を
保有していることも事実です。

これらを含め、「気候変動」という地球規模の問題
も、一歩間違えば我が国の存亡を左右する問題との
認識に立ってしっかり分析したいと考えますし、ウ
クライナ戦争以降、取り巻く環境が全く変わったな
かで、我が国のエネルギー政策はどうあるべきかに
ついても考えて行きたいと思います。展開如何によ
っては、若干の軌道修正があるかも知れませんが、
概略このような流れで「気候変動・エネルギー問題」
を進めて参ります。ぜひ一緒に考えて行きましょ
う。


(つづく)


(むなかた・ひさお)



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 【著者紹介】

宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学
校卒業後、陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロ
ラド大学航空宇宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第
8高射特科群長、北部方面総監部幕僚副長、第1高
射特科団長、陸上幕僚監部防衛部長、第6師団長、
陸上幕僚副長、東北方面総監等を経て2009年、
陸上自衛隊を退職(陸将)。日本製鋼所顧問を経て、
現在、至誠館大学非常勤講師、パソナグループ緊
急雇用創出総本部顧問、セーフティネット新規事業
開発顧問、ヨコレイ非常勤監査役、公益社団法人自
衛隊家族会理事、退職自衛官の再就職を応援する会
世話人。著書『世界の動きとつなげて学ぶ日本国防
史』(並木書房)




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(代表・エンリケ航海王子)

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