配信日時 2022/09/02 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】ヘルファイヤミサイル:ザワヒリ容疑者を暗殺した 「空飛ぶ包丁」(1)   加藤喬(元米陸軍大尉)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

こんばんは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
WW2でドイツ国防軍が使用。WW2で最も知られた兵器
の1つであり、生産停止後も独自の存在感を発揮し
続けた伝説の名銃・MP38&MP40サブマシンガンです。

『MP38&MP40サブマシンガン』
アルハンドロ・デ・ケサダ (著), 床井 雅美 (監
修), 加藤喬 (翻訳)
2022/5/12 発行
https://amzn.to/3yvXWrj

武器オンチの日本人に
特におススメです。

わが核融合炉の実現を希望期待します。


さっそくどうぞ。


エンリケ


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編 Takashi Kato  

ヘルファイヤミサイル:ザワヒリ容疑者を暗殺した
「空飛ぶ包丁」(1)

加藤喬(元米陸軍大尉)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

□日本人の多元的宇宙観は人類の宝である

「文明にとって最も危険なのは、原子力を手にして
からの数百年だ。テクノロジーの発達が社会と政治
機構の成熟をはるかに上回るからだ」
 
 日系理論物理学者で科学啓蒙番組の人気ホスト、
ベストセラー作家でもある加來道雄(かく・みちお)
教授は、自著『ハイパースペース』でこう述べてい
ます。
 
 1950年代、高校生だった氏はサイエンス・フェア
ー(科学品評会)に自家製粒子加速器を出展。
これが、「水爆の父」として名高いエドワード・テ
ラー博士の注目を引きます。ほどなくテラー博士の
愛弟子となり、同博士の推薦で奨学金を得てハーバ
ード大学に進学。後年、物質と宇宙の起源に迫る量
子力学や「ひも理論(ストリング・セオリー)」の
最先端で才能を開花させました。水爆の父を恩師に
持つ人の「警句」には重みがあります。
 
 事実、米・英・仏・中・印・パキスタン・イスラ
エル・北朝鮮の核弾頭は総計1万3千発。そのうえ
露中が核兵器の先制使用をほのめかす昨今、人類が
「最も危険なテクノロジー幼年期」にあるのは間違
いありません。ヒトは原子に秘められた膨大なエネ
ルギーを手中に収めましたが、一方、未だに「国家
が戦争で領土を拡大する」という19世紀的アナク
ロニズムがまかり通る現実があるからです。
 
 加來博士はまた「第2次世界大戦から今日までの
間に、人類はそれ以前の200万年で得た知見を上回
る知識を蓄積している。科学によって得られる新知
識は10年から20年で倍層しているのだ」と述べ、ヒ
トの知性向上が幾何級数的であると主張。今はまだ
実現できていない技術、たとえば核融合発電の実用
化が思ったよりずっと早くやってくる可能性を示唆
しています。
 
海水に含まれる重水素を燃料にする核融合炉からは
事実上無限の電力が得られます。となれば、文明の
成長に必要なエネルギー供給問題が一挙に解消する
と同時に、これまで国家を戦争に駆り立ててきた大
きな要因「エネルギー争奪戦」が永久に排除される
ことを意味します。加來博士はここから「文明がひ
とたび惑星スケールの政治機構を達成すれば、最悪
の時期は脱したという事になろう」との希望を導き
出しています。
 
 加來博士本人は「惑星規模の政治システム」にた
どり着く道筋を明示していませんが、わたしはこの
道程に日本人の役割を見ます。唯一絶対の神や真理
とは距離を置く思想、すなわち、八百万の神に象徴
される多元的世界観です。
 
 グレコローマン文化に見られる唯一神や絶対正義
に従うと、ヒトはどうしても排他的になります。「
唯一絶対」の定義からして、自分ものとは異なる価
値を認めることができないからです。異文化は「邪」
であり「悪」であり「偽」であり、したがって排除
されなければならないとする「対立の構図」が生ま
れるのです。
 
 山、川、森、海、空、風にも等しく神の分身を感
じ、敬い、感謝する日本人の世界観ははるかに平等
かつ寛容です。対人関係、ビジネス、政治、外交と
いった個人と国家の営みも「勝者総どり」のゼロサ
ムゲームとは見ず、したがって、異なる意見や主義
主張に直面しても敵愾心を抑制することができる。
つまり話し合いの余地が生まれるということです。
 
 また、利害関係者全員が「損」をすることで対立
を解消しハッピーエンドにつなげる「三方一両損」
のような知恵も生まれます。生来日本人に「非対立
の心」が宿っている証左でしょう。
 
人類がテクノロジー幼年期を生き延びるには、この
「非対立の心」をあらゆる機会に応用し、ヒト社会
と政治の成熟度を次のレベルに押し上げることが必
須なのです。
 
 ちなみに、北朝鮮の核保有によって核拡散防止体
制は実質的に崩壊しました。金正恩総書記は核を持
たなかったカダフィ大佐とサダム・フセイン大統領
の末路を自らに重ねており、今後、非核化に応じる
ことは決してありません。それどころか、世界を二
分する新冷戦が激しさを増すにつれ、同盟や安全保
障条約を疑問視し始めた多くの国々が、自国の存立
をかけ核武装に踏み切るでしょう。
 
 核でハリネズミのようになった国々が対峙し合う
光景は決して快いものではありません。残念ながら
これが、先制攻撃を生き延び、相手国を核報復で壊
滅させる「狂気」の政策、相互確証破壊(Mutual
Assured Destruction: MAD)で平和を維持する「テ
クノロジー幼年期」の実相です。
 
 最後にいま一度申し上げます。日本人の多元的宇
宙観は人類の宝であり、危機に溢れた幼年期を大過
なく通過するために不可欠な知恵です。とすれば、
この核飽和世界にあって、日本は日本人の手でどう
あっても守り抜かねばなりません。
 
 人類生存のカギを握る日本には、自前の核抑止力
を以て生き延びる義務があると言ってもよい。「テ
クノロジー幼年期の終わり」を人類が迎えられるか
否かは日本人の知恵にかかっています。



▼ヘルファイヤミサイル:ザワヒリ容疑者を暗殺し
た「空飛ぶ包丁」(1)

兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるため
には相手より優れた武器を持たねばなりません。兵
器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく続
いているのはこのためです。よく指摘される武器の
効用に「抑止力」(deterrence)があります。
刀を抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内
の勝ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒
的な破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器
を手放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマ
の裏面が「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

 今回から数回にわたり、敵の要人暗殺用に改修さ
れたヘルファイヤミサイル、通称「空飛ぶ包丁」を
取り上げます。

 第2次世界知戦中の1945年、米軍が敢行した東京
大空襲の死傷者は26万人以上。同時期に英空軍が行
なったドレスデン空襲では2万5千人のドイツ市民
が命を落としています。1970年代のベトナム戦争で
も、敵国民の戦意喪失を目的とする都市無差別爆撃
は続けられました。

当時も従軍記者らによる戦争報道はありましたが、
活字やニュース映画が与える爆撃の印象は「どこか
遠い外国で起きている戦争」の域を出ず、アメリカ
市民に強い衝撃を与え反戦機運を盛り上げるには至
りませんでした。

 インターネットの到来がこれを一変。戦場の一般
市民1人ひとりがニュースキャスターとなり、生々
しい戦闘場面を刻々と世界に向け発信できる時代に
なりました。戦況のネット配信は、無差別爆撃に対
する世論の反発を恐れる政治家らに強い圧力をかけ、
攻撃目標を軍需施設などに限定する精密爆撃が主流
となったのです。これをさらに一歩進めたのが、目
的を重要度の高い敵軍司令官やテロリストの暗殺に
絞った超精密攻撃。7月31日、カブールに潜伏中だ
ったテロ組織アルカーイダの指導者ザワヒリ容疑者
を殺傷したドローン攻撃がその典型です。

 当初の報道では「2発のヘルファイヤミサイルが
発射され、ザワヒリ容疑者は死亡。一緒に潜伏して
いた家族らは無事だった」とあり、わたしは半信半
疑でした。ヘルファイヤと言えば「対戦車ミサイル」
との思い込みがあり、強力な爆発弾頭を備えたミサ
イルが民家に命中すれば巻き添え被害は避けられな
いと考えたからです。

 本ビデオはその疑問をきれいに解消してくれまし
た。今回使われたヘルファイヤは大幅な改良を経た
派生型で、爆発する弾頭の代わりに6本のブレード
を内蔵するタイプだったのです。

 着弾寸前に展開されるブレードはミサイルの断面
積を数倍に広げ、命中率を高める役割があります。
ニックネームは「空飛ぶ包丁」ですが、生身の人間
を殺傷するのに刀のような鋭利さは不用でしょう。
弾頭自体が持つ運動エネルギーだけで充分な殺傷力
があるはずです

 それにしても・・・ヒトとはより巧みな兵器の開
発に血道をあげるものです。当然ながら、兵器も含
めた技術競争はイタチごっこで終わりがありません
。巻頭言でも触れたように、人類が「テクノロジー
幼年期」を無傷で卒業するためには、ヒトが政治・
社会分野で大きく成熟する必要があります。


教材ビデオ:
 (5) Hellfire R9X | Nin
ja Missile takes out Al
-Qaeda Leader Zawahiri
! - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=9fsWTlDlnAk&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=246

(本エピソードは3:28から始まります)
 
基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Explosive(エクスプロッスィブ)爆発す

Warhead(ウォーヘッド)弾頭
Mince(ミンス)肉を細かく切る ミンチにす

Dub (ダッブ)ニックネームを付ける
Anvil(アンビル)金床 ハンマー台
Ginsu(ギンス)アメリカ製の包丁で、切れ味
がよいことで知られる。

シナリオ(カウンターを3:28に合わせてくださ
い)

But the AGM-114R9X seems to be different.  The
 weapon instead of using explosive warhead is
thought to deploy 6 long blades that extend ou
tward just before impact and minces its target.

(しかし、AGM-114R9Xは従来のミサイルとは異なっ
ているようだ。爆発する弾頭の代わりに、着弾寸前
に6本の長いブレードを展開して目標を細切れにする
のだ)

It is dubbed as “flying anvil”, “Ninja bomb” a
nd “Flying Ginsu” because the blades are so sh
arp, they can rival a chef’s knife.

(同ミサイルは「空飛ぶ金床」とか「ニンジャ爆弾
」そして「空飛ぶ包丁」などのニックネームで呼ば
れる。板前が使う包丁並みに切れ味がよいからだ)

(今回のエピソードは5:22まで続きます)

英語一言アドバイス:
minceは「ミンチ」という日本語にもなっており
「細切れにする」「ひき肉にする」 という意味です。

発音サイト:mince発音 mince - Google Search
https://onl.sc/Ee6vX7u

参考サイト:
ヘルファイア・ミサイル ヘルファイア (ミサイ
ル) - Wikipedia(一番最後のAGM-114R9Xの項を参
照してください)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%E3%83%AB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%82%A2_(%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AB)

ザワーヒリー容疑者 アイマン・ザワーヒリー -
 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B6%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%83%92%E3%83%AA%E3%83%BC

米国に暗殺されたアルカーイダの指導者たち
Hamid Mir interviewingOsama bin Laden and Aym
an al-Zawahiri 2001 - アルカーイダ - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%A4%E3%83%80#/media/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Hamid_Mir_interviewing_Osama_bin_Laden_and_Ayman_al-Zawahiri_2001.jpg

ミチオ カク博士 ミチオ・カク - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%81%E3%82%AA%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%82%AF



(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン』(いずれも並木書房)がある。
 
 
追記

『MP38/40サブマシンガン』
https://amzn.to/3yvXWrj
※最新刊!

『ミニミ軽機関銃』
https://amzn.to/3gGpNcq
※大好評発売中

「MP5サブマシンガン」
http://okigunnji.com/url/14/
※大人気継続中

『AK-47ライフル』
http://amzn.to/2FVniAr
※根強い人気

『M16ライフル』発売中♪
http://amzn.to/2yrzEfW

『ガントリビア99』発売中!
https://www.amazon.co.jp/dp/4890633456/
 
『アメリカンポリス400の真実!』発売中
https://www.amazon.co.jp/dp/4890633405
 
『チューズデーに逢うまで』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063326X
 
『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
 
---------------------------------------
 
日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
----------------------------------------
 
 
PS
弊マガジンへのご意見、投稿は、投稿者氏名等の個
人情報を伏せたうえで、メルマガ誌上及びメールマ
ガジン「軍事情報」が主催運営するインターネット
上のサービス(携帯サイトを含む)で紹介させて頂
くことがございます。あらかじめご了承ください。


最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝し
ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。

-----------------------------------------
メールマガジン「軍事情報」
発行:おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)

■メルマガバックナンバーはこちら
http://okigunnji.com/url/105/

メインサイト:
https://okigunnji.com/

問い合わせはこちら:
https://okigunnji.com/url/7/

メールアドレス:
okirakumagmag■■gmail.com(■■を@に置
き換えてください)
------------------------------------------
 

配信停止はコチラから
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com
 
----------------------------------
投稿文の著作権は各投稿者に帰属します。
その他すべての文章・記事の著作権はメー
ルマガジン「軍事情報」発行人に帰属し
ます。

Copyright (C) 2000-2022 GUNJIJOHO All rights reserved.