配信日時 2022/08/31 09:00

【陸軍工兵から施設科へ(48)】 幻の弾丸列車計画(1)   荒木肇

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荒木さんの最新刊

知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。

そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!

自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。

『自衛隊警務隊逮捕術』
 荒木肇(著)
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おはようございます。エンリケです。

「陸軍工兵から施設科へ」第48回です。

面白いですね。

<日韓海底トンネルというのは朝鮮を縦断
し、奉天・北京を結ぶという大構想の下で
の1つの工事でした。>

との言葉は、重いですね。

そしてこの言葉は、
太閤秀吉の明征伐と朝鮮半島との関係に
そっくりそのまま当てはまります。

荒木先生のような、深い歴史研究の積み重ねが
生み出した教養と見識ある言葉の重みと深さと
普遍性を、日本人はもっと熟味含読した方がい
いと思います。

歴史事象や世間の出来事は、
政治用語でのみ語られるものではありません。
もっと教養ある日本人が増えてほしいです。

すべての分野は、深堀りすれば結局同じところ
に行きつくということです。


さっそくどうぞ
 
エンリケ



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陸軍工兵から施設科へ(48)

幻の弾丸列車計画(1)


荒木 肇

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 □日韓連絡海底トンネル

 旧統一協会関連の報道の中で、わが国と韓国を結
ぶ海底トンネルの話が出てきました。正直に言って、
あの計画を宗教団体が絡んで実行していた(たとえ
ポーズだけでも)という驚きがあります。

 今日からの話題は、いまの東海道・山陽新幹線と
その前身だった「弾丸列車」計画です。参考になる
のは青木槐三氏の回顧録。よくまとまっているので
お世話になります。

 東海道本線はいまも昔も産業の大動脈です。丹那
トンネルが開通し、東海道本線の輸送力も大きく向
上します。戦争が続き、大陸での戦闘が盛んになる
と内地からの物資輸送が死命を握ります。そこで計
画されたのが東海道線の複々線化、もしくは広軌(
標準軌)による車輌の大型化、高速化でした。

▼実現した広軌鉄道

 1964(昭和39)年10月1日、東京駅と新
大阪駅から同時に「東海道新幹線」の列車が発進し
ました。1日に30往復、60本の列車が新しい広
軌の線路の上を走りました。最高時速は毎時210
キロメートル、「ひかり」は4時間、「こだま」は
5時間で走り抜けます。これは大変な衝撃でした。

 わたしが小学生の頃には電車特急、「こだま」が
神戸まで6時間半で走り、「日帰り出張ができる」
というキャッチコピーでビジネス特急などといわれ
ています。1958(昭和33)年から運転が始ま
りました。朝一番で「こだま」に乗れば、昼には大
阪で会議が出来て夕方には上り「こだま」に乗るこ
とができるというのです。


 それからみても大阪まで2時間の短縮でした。ほ
んとうにゆうゆうと日帰りで関西に行けるようにな
った。びっくりしました。『昭和家庭史年表』(1
990年、河出書房新社)を開くと、同時に国鉄山
陽本線の広島・山口・小郡間の電化が完成しました。
全線の電化が実現します。九州までも早く行ける
ようになったと思います。

 10月10日は「第18回オリンピック」の開会
式でした。参加国は94カ国、参加選手は5541
人です。このことを記念して、「体育の日」が制定
されました。

 さて、この新幹線計画の出発点はどこだったのし
ょうか。青木氏は1907(明治40)年という説
を紹介してくれています。


▼東京-大阪を6時間で

 安田善次郎(1838~1921年)という人が
いました。一代で安田財閥を築いた人です。旧富士
銀行の母体となった安田銀行を設立し、晩年の寄付
行為では東京大学の「安田講堂」などで知られてい
ます。

 この人が出資して、資本金1億円の日本電気鉄道
会社の設立が計画されました。笠井愛次郎(九州鉄
道創立者)、立川勇次郎(鉄道企業家)、藤岡市助
(電気技師)の3人が技術方面を担当し、安田がそ
れをバックアップするという構想です。

 起業目論見書(きぎょう・もくろみしょ)による
と、東京-大阪間に電気鉄道を建設する。営業は旅
客のみで起点を「渋谷」にし、神奈川県の松田、静
岡、名古屋、伊勢の亀山を経由し、大阪野田を終点
にしようというものです。松田は当時の東海道本線
(現在は御殿場線)と接続しようというものでしょ
うか。また、名古屋からは大垣や米原という関ヶ原
越えではなく、三重県の山中から奈良へ抜けて大阪
へという計画です。

 電柱や架線を採用せず、いまの地下鉄のように第
3軌条方式をとります。車体の下から横に集電用の
設備をつけ、横の3番目のレールから電気を供給し
ます。ゲージは国際標準軌(今の新幹線と同じ)で
全線は複線です。

 路線の総延長は287マイル60チェーン(約4
60キロメートル)、レールの規格は90ポンド(
1ヤードの重さ・約41キログラム)、曲線半径は
20チェーン(1チェーンは22ヤード、約20.
12メートルだから、約402メートル)、最大勾
配は20分の1でした。軽量な列車を計画していた
のですね。

 客車3輌ないし4輌で1編成。200馬力のモー
ター2基が各車輌に付けられます。客車の長さは最
大で73尺(約22メートル)、定員80人ないし
100人、洗面所トイレもあり、運転間隔は30分、
速度は停車時間も含めて毎時60マイル(約96
キロ)、600ボルトの交流電化です。

 これが1907(明治40)年に構想されていま
した。安田の発言によれば、電気鉄道に着目し、都
市近郊ばかりではなく幹線も電車にしたらどうかと
考えたといいます。当時は東京と大阪の間は最急行
で12時間半でした。完成は5年後とのことです。

▼東京-下関間の弾丸列車計画

 1934(昭和9)年鉄道省の岐阜建設事務所長
になっていた技師が思いつきました。関西線と東海
道線の間には距離がある、もう1本、伊勢や桑名あ
たりから京都へ抜ける線路があったらどうかという
のです。これが鉄道省中央で話題になりました。さ
らに東京と下関の間を14時間くらいで結ぶ、下関
と朝鮮の釜山(ぷさん)を海底トンネルで結んだら
、関東州の奉天、中国の北京までも結ぶことができ
るという話になったのです。

 この思いつきが具現化します。1939(昭和1
4)年8月、この新幹線構想のために鉄道省の中に
幹線課という部署がスタートしました。調査会も生
まれます。へええと思うのは、この会には海軍から
山本五十六(のち聯合艦隊司令長官・元帥)、陸軍
からは阿南惟幾(あなみ・これちか、敗戦時の陸軍
大臣)、それに実業界からは小林一三(こばやし・
いちぞう、阪急電車、宝塚少女歌劇などを創設)な
どが加わっていました。

 11月には答申案が出ましたが、線路を広軌にす
るか狭軌かでもめます。陸軍は初めの頃、広軌には
賛成せず、しかも電化には敵の爆撃による被害を恐
れて反対です。しかし、輸送力増強のことが重要で
あることを主張した国鉄側の意見が通ります。

 また、下関と東京の間を9時間で結ぶという大方
針も立ちました。東京-大阪間は4時間半を実現す
る。25年後の開業当時の東海道新幹線とあまり違
いがないという計画になりました。

 気がつかれたかと思います。日韓海底トンネルと
いうのは朝鮮を縦断し、奉天・北京を結ぶという大
構想の下での1つの工事でした。以前にも韓国側か
ら蒸し返された対馬海峡の下を通る「韓日海底トン
ネル」の必要性はいまでは何もありません。しかも、
工事費は全額日本の負担で、「領土である」対馬
の発展にも役立つというのは韓国輿論の「妄言」で
しかありません。


(つづく)


(あらき・はじめ)


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●著者略歴
 
荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
 
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
 

『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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