184回の美佐日記。
正直、ビックリしました。
知らない方は非常に多いと思います。
理屈ばかりが先走る無機質なイズムは、
有機的な人間性をスポイルし、規則だらけの息
苦しい世の中を作ります。
その結果、
船頭多くして舟、山に登る。
を絵にかいたような国になりつつある。
それが今の日本のような感を持ちます。
国防分野でこういうことが常態化すれば、
士気の低下→抑止力低下
を招くのではないでしょうか。
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桜林美佐の「美佐日記」(184)
知られざる過酷な現実ー自腹を切る自衛官
桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、令和4年8月の今回
は184回目となります。
『レ・ミゼラブル』は、フランスのヴィクトル・
ユーゴーが書いた小説で主人公のジャンバルジャン
がパンを盗み、その罪のために一生追い回されると
いう物語ですが、最近、自衛隊においても、食べて
はいけないパンを取った罪で処分を受けるという事
案が起きています。
今年2022年7月、航空自衛隊の入間基地で5
0代の1空尉が懲戒処分を受けました。その理由は
4月のある朝、234円を払い有料喫食をしていた
同1尉はパン2個か、ご飯1杯かのどちらかを選ば
なくてはならないにもかかわらず、ご飯とパンの両
方を取ってそれを配膳係に見つかったといいます。
パンはその場で返却したということですが、同1
尉は自らルール違反をした旨を申し出て停職3日間
の処分を受けたのだそうです。
同1尉は「ご飯を少量に減らしたため、パンを取
っても問題ないと思った。認識不足だった」 とコ
メントしているとのこと。
また、昨年に空自那覇基地で「パンと納豆を規定
量を超えて食べた」罪で、40代の航空救難団飛行
群那覇救難隊の3佐が停職10日の処分を受けてい
ます。
被害額計175円。同3佐は複数回「不正に取っ
た」のだそうですが、理由として「配食の量が少な
く感じたため、多く取った」と話しています。
自衛官が何らかの不祥事を告発されたりするのは、
その人物に他にも問題がある場合が多く、パン云
々は根本的な問題ではないのではないかと思ってい
ましたが、実際「食」をめぐる処分事案が頻発して
いることは事実です。
8月17日付の朝日新聞でも「食めぐる処分 自
衛隊で多発なぜ」という記事が載っていましたが、
実はパンだけではなく「カレー」をめぐる事件?も
続いているのです。
昨年4月、舞鶴の海上自衛隊第23航空隊所属の40代
の防衛事務官の男性が、2年間にわたり毎週金曜日
にカレーライスを食べ続けたとして、停職4日の懲
戒処分になりました。
また海上自衛隊の各地の基地などで、金曜カレー
の味見をするのを習慣にし、部下が食べるのも黙認
していたとして5人の幹部自衛官が4日~5日の停
職処分になっています。
昔はおおらかだった食堂の規則が非常に厳格にな
り、事前に申し込みをした上で喫食代金を払ってい
る隊員しか食堂で食事はできなくなっています。
そのことを周知徹底するための、いわば見せしめ的
にこのような人たちが次々に報じられているのでは
ないかと思われます。
会計検査院や財務省の厳しいチェックがあるため、
本来は自衛隊としてもこのようなことで処分をした
り、まして世に晒すようなことをしたいはずはあり
ませんが、部内への意識づけ強化が一層必要なご時
世のため致し方ない処置ということでしょうか。
以前、私が自衛隊の「余った」(本来は余らない
ことになっている)食べ物をフードバンク等に提供
できないかと提案したところ、目くじら立てて反対
する人がいたのは、こうした事情があるからなので
しょう。
また、例えば、海上自衛官がどこかの部隊に用事
で行って、たまたま金曜のカレーができた時間にな
ったので、じゃあせっかくだから食べて帰ろう、な
んてことをして処分されたという話も聞きます。
自衛隊の部隊を訪問する時は、昼食を食べるなら
食べる、食べないなら食べないと予め決めて、食べ
たいなら代金を払わなくてはいけません。
当然、自衛隊ではない私たち一般人が部隊を訪問
してお昼ご飯を食べるような時というのは、料金を
払う必要がありますし、けっこうそこの部隊のどな
たかが自腹で払ってくれていてご馳走になるケース
もあると思います(この場を借りて心から御礼申し
上げます)。
有識者として自衛隊に講師などで訪れることがあ
る方にこのことを話すと「今まで知らなかった!」
と驚かれていました。
夜に会食がある時も、先生の分はみんなでワリカ
ンか偉い方が出していることが多いのではないでし
ょうか(この場を借りて改めてありがとうございま
す)。
協力者を表彰するような時も招待された表彰され
る人は会費を払って(もちろん交通費も)会食に出
席するそうですが、そういう姿勢でいいのでしょう
かね?
公務員には交際費というものがないため、接遇の
ために経費を使って領収書を切るなどという考え方
そのものがありません。そうしたことから、昔はカ
ンパがあったりしてなんとか上手くやりくりしてい
たところもあるようですが、今は寄付受けも厳しく
そういきません。
しかし、他部隊の行事に呼ばれたり、協力団体の
会合や、地域の催しに参加するために隊員個人の支
出でなければならないというのは過酷な現実です。
自分の所属する部隊の記念行事に伴う祝賀会など
にも会費を払わねばならないため、最近の若い隊員
さんには出たくないという人も少なくありません。
参加費を払っているのに、制服を着て飲んだり食
べたりするわけにはいきませんし、お客さんからは
作業員という立場に見られてしまいます。
はじめから制服の自衛官は作業員だと割り切って
いれば、全く問題ないのに、会費を徴収されている
のに飲物も口にすることなく働くという、参加者も
こんな事情を知っている人は不憫な自衛官のことが
気になってちっとも楽しめません。
自衛隊の偉い人が自腹で行事に出たり訪問者にふ
るまう分は耐えてもらうしかないかもしれませんが、
少なくとも隊員さんから所属部隊の行事の会費を徴
収するのをやめることくらいはできないものでしょ
うか。
このことは自衛隊OBの方たちも訴えていましたが、
新型コロナの発生で会合そのものがなくなっていた
ため、ついぞ忘れられていた話でした。しかし、こ
こにきて「食」をめぐる事案が問題視されていると
いうので、だったらこちらもどうにかして欲しいと
思った次第です。
今日も最後まで読んで下さりありがとうございま
す!どうぞ良い1週間をお過ごし下さい。
<おしらせ>
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(さくらばやし・みさ)
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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。新刊『誰も語
らなかったニッポンの防衛産業』(産経NF文庫)、
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(ワニブックス)
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に、心から感謝しています。
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