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荒木さんの最新刊
知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。
そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!
自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。
『自衛隊警務隊逮捕術』
荒木肇(著)
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おはようございます。エンリケです。
「陸軍工兵から施設科へ」第38回です。
巻頭文は秀逸ですね。
まさに今知りたい情報が簡潔にまとめられてます。
テーマに、さまざまな側面から光が当てられて
描き出されており、実に締まった一文でもあります。
さっそくどうぞ
エンリケ
メルマガバックナンバー
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陸軍工兵から施設科へ(38)
難航する救助坑の掘削
荒木 肇
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□ご挨拶・この危機での国政選挙
いよいよ参議院選挙が近づいてきました。ウクラ
イナでのロシアの侵略行動について、いろいろな議
論があります。中には「やられる側にも責任がある」
とか、「西側の意図的な報道が問題だ。ロシアにも
言い分がある」などという論者もいて、わたしのよ
うな政治についての素人にはたいへん興味深いです。
また、わたしには現在の軍事についても知識はほと
んどありません。それゆえに専門家とされる方々の
解説についても勉強になることばかりです。
各政党は7月の国政選挙にどういう訴えをしよう
としているのか。19日(日)の産経新聞に9党の
公約が要約されていました。その中でも防衛問題に
しぼってまとめてみました。
■公明党 「先進7カ国(G7)」をはじめとする
諸国の国際社会と緊密に連携し、ロシアへの経済制
裁を強化。人道・復興支援などで貢献する。専守防
衛の下に日米同盟の抑止力・対処力の一層の向上を
図る。防衛力整備も予算額ありきではなく、研究開
発費や自衛隊員の人材確保に必要な処遇改善など個
別具体的に検討する。非核三原則を堅持し、核保有
国と非核保有国との橋渡しをする。
■共産党 日米同盟の抑止力強化、敵基地攻撃能力
の保有、憲法9条改悪、防衛費の倍増に反対。米軍
普天間飛行場の辺野古移設を中止、普天間飛行場の
無条件撤去を要求する。輸送機オスプレイを沖縄か
らも本土からも撤去。
■自民党 国家安全保障戦略を改定し、新たに防衛
力整備計画を策定。NATO諸国の国防予算の対国
内総生産(GDP)比目標(2%以上)も念頭に、
真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年
以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達
成。弾道ミサイル攻撃を含むわが国への武力攻撃に
対する反撃能力を保有し、抑止、対処する。
■国民民主党 「自衛のための打撃力(反撃力)」
を整備。「専守防衛」に徹しつつ、必要な防衛費を
増額する。
■立憲民主党 日米同盟の役割分担を前提とし、
「専守防衛」との整合性を検討し、着実な防衛力整
備を行う。ミサイル防衛・迎撃能力の向上を図り、
脅威への対処能力向上に向けて研究開発を促進する。
米国との「核共有」は認めない。普天間飛行場の辺
野古移設を中止する。
■日本維新の会 防衛費をGDP比1%という枠を
廃し、2%を1つの目安とし、防衛体制を総合的に
強化し、「積極防衛能力」の整備を図る。「専守防
衛」の定義のうち、「必要最小限」に限るとの規定・
解釈の見直しに取り組む。「核共有」を含む拡大抑
止に関する議論を開始。憲法9条の平和主義・戦争
放棄を堅持し、自衛隊を明確に規定する。
■れいわ新選組 「専守防衛」と徹底した平和外交
によって、周辺諸国との信頼関係を醸成し、北東ア
ジアの平和と安定に寄与する。核兵器禁止条約を直
ちに批准する。
■NHK党 防衛費をGDP比2%程度に引き上げ、
現実的な国防力を整備。「核共有」の議論は積極的
に進める。日本版CIAといった対外情報機関の創
設に関して議論の準備を進める。
■社民党 「核共有」に断固反対。防衛力の大幅増
強に反対。米軍普天間飛行場の無条件全面返還を要
求。在日米軍基地の撤去。台湾有事を想定した日米
の戦争準備に断固反対。
世論調査によると、国民の9割が防衛費の増額に
賛成しているとのことです。そうした意見から見る
と、与党なのに公明党はいかにも歯切れが悪い主張
をしています。非核三原則という「核兵器を作らず、
持たず、持ち込ませず」という戦後平和主義の伝家
の宝刀も「核共有」という意見が出てくると、あら
ためて議論の必要が生まれてきました。
実際のところ、隣人である北朝鮮、中国、ロシア
という核保有国があり、弾道弾ミサイルなどによる
核の威嚇があるのが現実です。自前で作るか、米軍
に我が国内に核兵器を配備してもらうといったこと
も選択肢の一つであるのは当然です。
もっとも自民党は岸田首相がそういう議論もあり得
ないと否定しています。ご自身を被爆地である広島
の政治家だともいい、そこに「唯一の被爆国」とい
う長い間の心理的縛りを感じさせられます。
立憲民主党は日米同盟の役割分担をいい、やはり
「専守防衛」。そうして「核共有」認めない、それ
でも普天間飛行場の移転工事も中止。どうやって米
国と話し合う気でしょうか。彼らの頭の中の構造と、
自己中心にしか思えない日米同盟への考え方、支持
者の皆さんも同じなのかなと心配になります。
ある報道番組では論者を集めて、そこに古庄元海将
まで招いて防衛費増額反対の論陣を張っていました。
古庄さんも発言を切り取られ、しっかり反増強論者
にされていました。
これから選挙戦もますます烈しくなるでしょう。ど
んな審判が国民から下るのでしょうか。
▼難航する救助坑掘削
坑口から290メートルの位置でした。トンネル
の全断面に大きな岩石が土といっしょに積み重なっ
ていました。飛散した支保工の丸太、板や岩石が押
し出されてきていたのです。崩壊の場所は坑口から
317メートルのあたりと推定されました。
第1救助坑が掘られ始めたのは午後7時30分、
事故発生から3時間10分が経っていました。救助
坑というのは大きい必要はありません。閉じ込めら
れた者を救えばいいのです。人間が這って通れるだ
けの「たぬき穴」とも言われた小型の坑道で十分で
した。
救助員たちは水が流れる木製の樋の中に腹ばいに
なりました。クロマツの丸太を深く地中に打ち込み
ます。小さな支保工の枠を造るためです。丸太と丸
太はカスガイを打って固定します。次は、その枠に
そって矢木(やぎ)という頑丈な樫(かし)の板を
カケヤ(小型の木製の槌)で前方に打ち込んでいき
ます。こうして板で包まれた枠の中の土石を取り除
いていって坑道を造っていくのでした。
ところが困難があります。前方を崩壊した支保工
の丸太や板、岩石がさえぎっているのです。矢木を
打ち込んでいくためには、岩石をツルハシで砕き、
丸太や板はノコギリで切るしかありません。第2救
助坑は左側の側壁ぞいに掘られました。トンネル下
部の排水溝を使った第1と左側壁ぞいの第2、それ
ぞれ20名の坑夫が働いていました。
崩壊した場所の先に生存者がいるかどうかです。
それを確かめる方法がありました。トンネルの床に
は切端から坑口まで送風管が伸びています。長さ4
メートル、直径20センチの鉄管をボルトでつない
でありました。新鮮な圧搾空気を坑口から送ってい
たのです。それが切れているとは考えにくく、古く
から伝わる鉄管信号を試みることになりました。金
槌(かなずち)などで鉄管を叩き、信号を送り合う
のです。
鉄管の直径は20センチもあるので、食糧等も送
ることができました。また、縄を通せばそれを使っ
て物品や手紙の交換もできたのです。
午後8時30分、救助工事開始から1時間後、技手
が鉄管を叩きました。叩くと、すぐに耳を鉄管につ
けて反応があるかを調べます。何度も試みましたが
何の反応もありません。それでも技手は金槌を叩き
続けました。
午後9時、最初の遺体が発見されます。坑外には
テントが張られ、そこが救護所になって医師や看護
婦が待機していました。多くの医薬品もそろってい
ます。
午後11時30分、第3救助坑が掘られることに
なりました。トンネル下部と左側に加えて、右側の
側壁にそったものです。こうして3方向から救助坑
は掘られてゆきます。
朝になると、三島口を掘っていた鹿島組から応援
がやってきました。夜を徹して、山を越えてやって
きたのです。鹿島組の幹部は坑内を見ると、金属製
の枠が工事を妨げていることを知りました。煉瓦を
積むときの型枠です。熱海事務所の技術者もそれを
知っていました。すでに連絡をとって酸素ガス金属
切断機が東京から送られてくるのを待っていました。
鹿島組の幹部はすぐに電話を三島口派出所にかけ
ました。ガス切断機を送ってもらえるように頼みま
す。派出所主任の技師は、すぐに部下に三島町の町
工場をあたって切断機と酸素ガスボンベを借り出し
てくるように命じました。2時間ほどで切断機もガ
スボンベも見つかります。技師たちはリヤカーにそ
れらを積み、山道を半ば走るように進みました。
次回はいよいよ救助坑の貫通と生存者の発見です。
(つづく)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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