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荒木さんの最新刊
知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。
そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!
自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。
『自衛隊警務隊逮捕術』
荒木肇(著)
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おはようございます。エンリケです。
「陸軍工兵から施設科へ」第35回です。
いつもながら一升飯のはなしには心揺さぶられますw
わたしも一升飯を日々平らげる人になりたいものです。
さっそくどうぞ
エンリケ
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陸軍工兵から施設科へ(35)
丹那トンネルの建設
荒木 肇
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□ご教示へのお礼
SS様、加藤氏の説のご紹介ありがとうございま
す。確かに現場写真を見ると、客車の天井部が破壊
され、線路の損傷など見当たりません。下から爆砕
されたのではなく、内部からの爆発とも思えます。
また、昔の映画だったと思うのですが、鉄道が交差
するところで上部の線路が爆発する演出になってい
ました。河本大佐の証言もなく、たしかに真相はい
まだに闇の中ですね。ご教示、ありがとうございま
す。今後ともよろしくお願いします。
▼箱根の山を越えろ
東海道新幹線が開通したときに、その工事額が話
題になりました。2000億円弱でできると当初予
算を計上しましたが、実際には約3800億円かか
ってしまいました。当初予算の約2倍です。
それでは、1934(昭和9)年に開通した丹那
トンネルはどうだったのでしょう。この大工事の詳
細は、吉村昭氏の小説『闇を裂く道』に明らかにな
っています。トンネル全長2万5603フィート
(約7800メートル)、予算は770万円、7年で
完成する予定で1918(大正7)年に工事に着手
しました。
ところが完成したのは正味16年間もかかり、工
費は予算の3倍にもあたる2600万円にもなった
のです。
初めてこのトンネルが企画されたのは1908(
明治41)年のことでした。東海道線の箱根越えを
やめて、国府津-小田原-真鶴-熱海と海岸線を進
み、そこから三島に抜ける現在のコースの調査を始
めたのは後藤新平(1857~1929年)の指示
です。
後藤は岩手県水沢に生まれ、苦学しましたが医師と
なり、内務省衛生局に勤めたのが官歴の始まりでし
た。1898(明治31)年には台湾総督府の民政
長官となり児玉源太郎総督のもとで働きました。日
露戦後には南満洲鉄道総裁、1908年には逓信大
臣となっています。このときに現在の東海道線、同
新幹線の丹那トンネル越えを構想したのです。
大きな工事は、その事前の調査費がかかります。工
費の1割くらいともいわれますが、予算はたいてい
オーバーします。その上、長い時間がかかるので、
用地買収費も上がることが多いし、もちろん工費も
あがります。また、調査では明らかにならなかった
トラブルも珍しいことではありません。
▼動力を確保せよ
まず、トンネル掘っていくうちに困難は増しまし
た。それは予想にもしなかった地下水の大量発生で
す。現在のリニア新幹線も静岡県内の水資源の問題
が争点になっています。なにぶん、「国策」の優先
度が現在よりもはるかに高かった大正時代でした。
ここからは吉村昭氏の労作のお世話になります。
トンネルは熱海口と、三島口の両方から掘削され
ました。1918(大正7)年3月21日のことで
した。起工式が行なわれます。熱海の梅林の近くで
す。熱海線建設事務所長は鍬を手にして儀式を終え
ました。
工事は1884(明治17)年に完成した柳ヶ瀬
トンネル掘削で確立した削岩機で穴を開けてダイナ
マイトで岩盤を破壊する工法を採用しました。とこ
ろが、ここに問題が起きました。削岩機を動かす力、
電気が高かったのです。富士水電株式会社の申し
出は、通常の2倍というとても高額だったそうです
。
そこで、機械力に頼らずに人力で、照明もカンテラ
で行なうといった昔ながらの工法でトンネルは掘ら
れることになりました。熱海口の土も粘土質で、工
夫たちがツルハシで掘り進むこともできました。掘
削の手順はオーストリアの方式を採ることにしまし
た。まず、細い導抗(どうこう)を掘り、それを十
分に固定してから上方や左右の方向にトンネルを広
げてゆくやりかたです。
底設導抗といわれる最初の穴は、幅3メートル、
高さ2.5メートルのものでした。土が崩れてくる
恐れがあるので、支保杭(しほこう)という太い松
でできた鳥居のような構造物を造っていきます。そ
の下にトロッコのレールが敷かれ、掘りだした土石
を運び出しました。
その鳥居の列が数百メートルに達すると、後ろか
ら本来のトンネルの大きさの穴に広げてゆきます。
より太い丸太や板で、高まる土圧から穴を支えて煉
瓦を積みました。
入口から60メートルほど進んだところで地質は
粘土から黒い岩に変わりました。安山岩です。これ
は三島口の安山岩と同じで、電力がないために機械
掘削ができないことも相まって工事は大変遅れだし
ました。
▼蒸気の力を使おう
それなら火力発電所を造ろうという意見が出まし
た。それが良いとなりましたが、発電所の建設には
時間がかかります。その間は、やはり手掘りで進む
しかありません。そこで、鉄道の特技である蒸気力
を使おうという意見が出ます。ところが、ここでも
思わぬ障害が生まれます。
世界大戦の好景気です。蒸気汽缶はひく手あまた
で品不足。おかげで大変な値段がついていました。
さんざん苦労した結果、古い蒸気機関車の汽缶を使
うことにしました。それを仮動力所として、据え付
けが始まりました。10月に入った頃でした。
そうして11月になると、世界大戦は終わりを告
げました。1914(大正3)年に遠い欧州で戦争
が起こると、わが国には深刻な不況が訪れます。わ
が国から欧州への輸出は途絶えました。工業製品等
の輸入もできなくなり、経済はたいへんなダメージ
を受けることになります。
これが一転、好況になったのは翌15年夏のこと
でした。欧州各国から軍需品の注文が殺到し、同じ
く好況だったアメリカからの生糸買いつけが増えま
した。また、欧州各国からの輸入に頼っていた東南
アジアや南アメリカの各国から、欧州製品に代わっ
てわが国に雑貨等の注文が入るようになったのです。
好景気になれば物価は上昇します。指数でいえば、
戦前に比べて物価はほぼ2倍になりました。カネ
の価値が下がり、インフレが始まります。平均賃金
が2倍になれば問題はありませんが、給与は5割増
しにしかならなかったのです。庶民の暮らしは厳し
いものになりました。
有名な富山県の漁師のおかみさん達が立ちあがっ
た「米騒動」はトンネルの工事が始まってすぐの1
918(大正7)年7月23日でした。米の価格が
1升(1.8リットル)で40銭という値段がつき
ました。戦争前には12銭とか13銭でした。漁船
に乗った漁師たちは1日に1升の米を食べました。
これではとても、家族が6人もいれば米代だけで月
に40円ほどにもなってしまいます。月収が20円
から30円という暮らしでは、ほんとうに大変でし
た。
9月27日には、立憲政友会総裁の原敬(はら・
たかし)に組閣の大命が降下します。庶民は爵位を
もたない士族原を「平民宰相」として期待をもって
迎えました。
次回は落盤事故が起きた1921(大正11)年
の出来事をお知らせします。
(つづく)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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謝しています。
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心から感謝しています。ありがとうございました。
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