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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
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こんばんは、エンリケです。
本連載のアーカイブサイトができました。
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過去記事をすべて格納してますので、
ブックマークに入れ、折に触れ読んでみてく
ださい。
冒頭文の戦略的視座。きわめて重要と感じました。
戦術レベルのはなしだけで済ませてはいけませんね。
本文では、重要なポイントが取り上げられています。
さっそくご覧ください。
エンリケ
◆本連載のバックナンバーはこちらで
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我が国の未来を見通す(26)
「農業・食料問題」(8)
変革する農業経営(後段)
宗像久男(元陸将)
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□はじめに
本メルマガとは直接的な関連はないのですが、や
はり元自衛官としてはウクライナ情勢から目を離す
ことができません。今回も最近のウクライナ情勢の
変化について触れおきましょう。
「戦争は偶然の世界である。人間活動のどんな領域
でも、不可知の事物がこんなに大きな地位を占めて
いるところはない」とはクラウゼヴィッツの名言の
一つです。ここでいう「不可知」とは「人間のあら
ゆる認識手段を使用しても知り得ないこと」という
意味です。
このたびのウクライナ情勢は、ロシアにとっては、
当初から計画の基礎となった状況認識と全く異なる
戦局にぶつかり、自分で種を蒔いたとはいえ、「不
可知」の領域の繰り返しだったような気がします。
しかし、それを単に「不可知」と決めつけるのはあ
まりにも乱暴で、いわゆる“読み違い”とか“稚拙
”などと評価されるレベルなのでしょう。プーチン
大統領の最近の“いら立ち”はその事実を物語って
いると考えます。
時間が経つにつれて、西側の支援によってロシアと
ウクライナの相対戦闘力が逆転する可能性があるこ
とは予測できましたが、そのような事態を回避する
ため、プーチンがたびたび明言していたように、ロ
シアが化学兵器や核兵器の使用を含めて、想定外の
あらゆる行動をとる可能性があることは想定され続
けてきました。
しかし、これまでのところは、プーチンに残された
“理性”がブレーキをかけているのか、あるいはそ
れができない何か別の理由があるのかは不明ですが
、「通常戦」によるロシアとウクライナの「局地戦
争」に留まっています。その延長で、このままだと
戦局はどちらか一方に有利には展開することは考え
られず、長期戦の様相を呈してきました。
そのことを物語るような動きがありました。ウクラ
イナ第2の都市のハルキウ(ハリコフ)正面は、ウ
クライナ軍が国境付近まで押し返したようですが、
開戦以来3か月弱、マリウポリのアゾフスタリ製鉄
所の地下に籠城し続けてきた「アゾフ大隊」を主と
するウクライナ軍が5月17日、ついに投降を開始
し、陥落しました。
陥落というと、大東亜戦争におけるペリリュー島
、硫黄島、あるいは沖縄本島などにおける旧日本軍
の“玉砕”を思い出しますが、今回は、「人命を守
る」ことを優先した投降命令に従ったようです。け
が人も多く、武器や弾薬も尽き果てたのでしょう。
長期間、孤立無援のなか、あっぱれでした。
それにしても、ウクライナのNATO加入だけは絶
対阻止することを目的に始めた本戦争だったはずで
すが、フィンランドやスウェーデンがNATO入り
を表明し、加盟が実現すれば、逆にNATOの対ロ
包囲網を強化することにつながってしまいました。
フィンランドの中立政策は第2次世界大戦後の国境
紛争の結果ですが、スウェーデンが中立政策を変更
するのは、ナポレオン戦争以来、約200年ぶりと
いうことですので、今回の事態が両国をはじめ西側
諸国にいかに大きなショックを与えたかを伺い知る
ことができます。この歴史的大転換こそは「不可知
」の極みであり、ロシアにとってはこれまた自らの
行動が産んだ結果としても大打撃でしょう。
心配なのは、この結果として、局面が大きく変わる
可能性があることです。つまり、これまでのロシア
とウクライナの「局地戦争」に留まらないばかりか
、ロシアと国境を接する国々との「地域戦争」、さ
らにはロシア(CSTO含む)とNATO間の「大
規模戦争」にまでエスカレートすることが懸念され
るのです。
この結果、エスカレーションのある段階で、ロシア
が自らの大損害を顧みず、核兵器を使用する「大義
名分」を明言できる事態、つまりロシアの「許容限
界」が近づいてきているとの見方もできるのです。
最近、ロシア国内でも戦争に反対する意見がプーチ
ンの足元から起こっていることがニュースになりま
した。その信ぴょう性は不明ですが、NATOとの
戦争になれば、ロシア自体も無傷ではすまないこと
を恐れた、真っ当な意見と考えるべきでしょう。
侵攻開始当初から盛んに利用されたフェイクニュー
スや明らかに事実と異なるロシア側の発言が最近、
めっきり聞こえなくなってきたのも気になります。
これが何を意味するのか、これも詳細は不明ですが
、ロシア側の衰退の兆候なのか、あるいは「嵐の前
の静けさ」、つまり乾坤一擲の作戦の前兆なのか、
しばらく神経をとがらせて見極める必要があるでし
ょう。
前にも述べましたように、人一倍猜疑心の強いプー
チンがこの後、どのような決断をするか、にかかっ
ているのでしょうが、時々報道されるように、プー
チンの健康をはじめ“命運”そのものが変化する可
能性もあるでしょうから、ウクライナそしてそれに
絡む欧州情勢はますます混とんとしてきたと考えま
す。
ロシアやNATOのリーダーたちに、レーガン元大
統領が提唱した「核戦争に勝者なく、決して戦うな
」の言葉の“重み”だけは忘れず、それを実現する
ためにあらゆる知恵を出すよう、切に祈りたいもの
です。
▼「農地所有適格法人」の増加
さて前回の続きで、「土地利用型」の農業経営につ
いてまとめておきましょう。依然として、難解な用
語のオンパレードで理解しにくいと思いますが、我
が国の農業問題を考える際の「現状」の把握はとて
も大事なステップと考えますので、しばらくお付き
合いください。
まず、「農業法人」について整理しておきますと、
「農業法人」とは、「農業を事業目的とする法人の
総称」と定義され、「具体的に農畜産物の生産や加
工・販売など農業に関連する事業を行う法人」のこ
とを指しています。しかし、「農畜産業の生産を行
う法人」のことを通称、「農業法人」と呼んでいる
ようですので、前回紹介しましたように、「土地利
用型」ではない形で農業に参入する企業を含む「農
業経営体」と「農業法人」は違うことになります。
「農業法人」はまた、法律上の名称ではなく、いわ
ば俗語ということですので、この付近にややこしさ
が残りますがまだ序の口です。
一般に、「農業法人」は「農業組合法人」と「会
社法人」に分かれます。「農業組合法人」は、「共
同利用施設等の設置を行う法人」(1号法人)と「
農業経営を含む法人」(2号法人)に分かれます。
「1号法人」は、法人それ自体は農業経営をするこ
とができませんが、「2号法人」は、(1)農民、(2)組
合(農業協同組合、農業協同組合連合会)、(3)農用
地等を現物出資した農地保有合理化法人、(4)法人の
事業から物資の供給もしくは役務の提供を継続して
受ける個人または当該事業の円滑化に寄与するもの
、からなると定款で定められています(細部は省略
します)。
「会社法人」は、「会社法」によって区分されて
いる「株式会社」「合資会社」「合名会社」「合同
会社」に区分され、この「会社法人」や「農業組合
法人(2号法人)」が農畜産業の生産を行なうため
には、「農地法第2条」の規定された一定の要件(
法人形態要件、事業要件、構成員要件、役員要件)
を満たす必要があります(これも細部はとても複雑
なので省略します)。
「農地法第2条」自体も、難解な法律用語の羅列な
のですが、第2条2には「農地について所有権又は
賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利を有
する者は、当該農地の農業上の適正かつ効率的な利
用を確保するようにしなければならない」と規定さ
れていることは紹介しておきましょう。
これらの要件を満たせば、「農業生産法人」として
認定されます。「農業生産法人」は、今まで以上に
事業の多角化による経営の安定発展や周年雇用によ
る労働力の安定的な確保を図ることができるように
、農業に関連する事業としては「農畜産物の製造加
工」「農畜産物の貯蔵、運搬又は販売」「農業生産
に必要な資材の製造」「農作業の受託」まで含むこ
とが認められています。
将来の農業救済を考える際にここはとても重要なポ
イントであると考えますので、通称、“農業の生産
を行う”「農業法人」(しかも俗語)に分類される
「農業生産法人」が“農産物の製造加工から農作業
の受託まで幅広くできる”とある不可思議さには目
をつぶることにしましょう。
さらに、「農業生産法人」は、平成28年4月に施
工された「改正農地法」により、「農地所有適格法
人」に呼称が変更されます。そして、法人の要件と
して重要な「構成員の比率」を当該法人を営む農業
と関係性のない者でも構成員として認めることや従
来の4ha超の許可権限を国から県に移すことなど
、各要件が大幅に緩和されました。
この改定によって、「農地所有適格法人の6次産業
化」を図り、経営規模の拡大を期待しているようで
す。「6次産業化」とは、「1次産業としての農林
漁業と、2次産業としての製造業、3次産業として
の小売業等の事業との総合的かつ一体的な推進を図
り、農山漁村の豊かな地域資源を活用した新たな付
加価値を生み出す取組」のことを指してします。細
部についてはのちほど触れることにしましょう。
「農地法」は令和元年にも改正されました。「6次
産業」としてさらに経営しやすい環境の整備や一般
企業による投資の増加を促すことが狙いのようです
。
法人が農業を営むにあたり、農地を所有(売買)し
ようとする場合は、必ず上記の要件を満たす必要が
あります。農林省の平成3年度のデータによれば、
「農地所有適格法人」は全国で1万9550法人を
数え、年々増加しています。
▼「農地のリース方式により参入する一般法人」も
増加
前回触れたような農地を利用しないで農業を営む法
人や「農地のリース方式により農業を営む法人」は
、「農地所有適格法人」の要件を満たす必要はあり
ません。法人化する場合、どのタイプの法人を選ぶ
のか、それぞれの法人形態の特色や自らの経営展望
に照らして選択することが求められています。
平成21年の「農地法」改訂によって、「リース方
式による参入」が自由化されたことはすでに述べま
したが、「リース方式」の場合、「農地の効率的な
利用」「一定の面積の経営」「周辺の農地利用に支
障がない」などの基本的な要件は「農業所有適格法
人」と同等ですが、「賃貸契約に解除要件が付され
ていること」「地域における適切な役割分担のもと
に農業を行うこと」「業務執行委役員または重要な
使用人が1人以上農業に常時従事すること」などの
要件を満たせば、全国どこでも賃貸契約を結ぶこと
が可能になっています(細部の手続きなどについて
は省略します)。
リース方式の参入法人は、「農業法人」と区別され
て「一般法人」と呼称されます。最新のデータでは
、全国で3669法人を数えていおり、その内訳は
、(1)農業・畜産業(約27%)を筆頭に、(2)食品調
達産業(約20%)、(3)建設業(約10%)、(4)N
PO法人(約8%)、(5)卸売・小売業(約5%)な
ど広範な業種に及んでいます。営農作物別では、(1)
野菜(42%)、(2)米麦等(18%)、(3)複合(1
6%)、(4)果樹(13%)、以下、工芸作物、畜産
、花きと続きます。
「一般法人」の借入面積はすでに1万ha(1法人
当たりの平均面積3ha)を超えているようですが
、全国の農地面積は、減少しているのはいえ、依然
450万haほどありますので、全体からみればほ
んの一部にしか過ぎません。
▼総括──農業構造の変化
農林省は、「食料・農業・農村白書」(令和3年
度版)で、最近の農業構造の変化を次のように説明
しています。これまでと重複をいとわず要約してお
きましょう。
わが国の基幹的農業従事者は2005年に224万
人から2020年には136万人へと88万人減少
している。65歳以上の農業従事者が全体の70%
(95万人)を占める一方で、49歳以下の若年層
は11%(15万人)にとどまっている。ただし、
15歳~44歳層は、この5年間で12.4万人か
ら14.77万人に増加している。
農業経営体は、2020年は108万経営体でこ
のうち約96%が個人経営体である。経営耕地面積
の割合でみると、主業経営体(農業所得が主の世帯
単位の経営体)と法人経営体が占める割合は201
0年の56%が2020年には63%へと増加した
。また、地目別では畑が81%を占め、地域別では
北海道で90%を占めている。
団体経営体(個人経営体以外の経営体)のうち法
人経営体が増加傾向にある。2010年の団体経営
体は3万6000、このうち法人は2万2000だ
ったが、2020年では全体が3万8000経営体
となり、法人は3万1000に増えた。また、「集
落営農」(「集落」を単位として専業農家・兼業農
家等を含めた集落の農家の協力のもと、農業生産過
程の全部または一部について共同で取り組む組織)
の法人化も進んでいる。
品目別でも法人経営体の占める割合が増えている
。稲作では2010年の3万9000経営体が20
20年には9万1000経営体へ大きく増加してい
る。このように、法人化していないものも含め団体
経営体は中山間地域や都市的地域など、どの地域で
も増え、法人化が進展している。
1経営体あたりの経営耕地面積は、2010年で
は2.2haだったのが、2020年には3.1h
aと拡大している。この間に借入農地は0.6ha
から1.2haへと倍増しており、「担い手」への
農地集積が進んでいる。
全体でみると、最も大きな割合を占めていた0.
5ha~1ha層の経営体が大きく減少している。
ただ、地域差があり、1経営体あたりの平均耕地面
積は中国、四国、近畿では1.1~1.4haにと
どまっている。「担い手」の世代交代期にあるなか
で、地域ごとの動向分析が必要である。
以上が「農業構造」の変化の概要ですが、白書はま
た、「食料供給のリスクを見据えた総合的な食料安
全保障の確立」についても触れており、「国際連合
食糧農業機関(FAO)」の食料価格指数を取り上
げ、その急激な高騰を示しています。ウクライナ危
機をふまえた動向にどこまで盛り込み、どのように
今後の課題を提示するかについても注目されていま
す。
これらを総括しますと、これまで農林省を主に政府
が取り組んだ農業政策は一定の効果を挙げているこ
とは間違いないようですが、農業従事者や荒廃農地
の減少傾向は止まらず、食料自給率は低下傾向にあ
るなど、農業食料問題の“抜本的解決”には至って
いないことも“現実”なのでしょう。
本メルマガは、次回以降、その原因はどこにあるの
か、あるいはどのような救済策が必要なのか、など
新たなテーマを掲げ、皆様と一緒に考えて行こうと
思います。
(つづく)
(むなかた・ひさお)
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【著者紹介】
宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学
校卒業後、陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロ
ラド大学航空宇宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第
8高射特科群長、北部方面総監部幕僚副長、第1高
射特科団長、陸上幕僚監部防衛部長、第6師団長、
陸上幕僚副長、東北方面総監等を経て2009年、
陸上自衛隊を退職(陸将)。日本製鋼所顧問を経て
、現在、至誠館大学非常勤講師、パソナグループ緊
急雇用創出総本部顧問、セーフティネット新規事業
開発顧問、ヨコレイ非常勤監査役、公益社団法人自
衛隊家族会理事、退職自衛官の再就職を応援する会
世話人。著書『世界の動きとつなげて学ぶ日本国防
史』(並木書房)
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(代表・エンリケ航海王子)
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