こんばんは、エンリケです。
「ライター・渡邉陽子のコラム」
「第3普通科連隊から第3即応機動連隊へ」の八回目。
こんかいは装備の紹介です。
さっそくどうぞ
エンリケ
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『ライター・渡邉陽子のコラム (369)』
第3普通科連隊から第3即応機動連隊へ(8)
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こんばんは。渡邉陽子です。
知床沖で遭難したKAZU1の捜索に飽和潜水ができる民間企業が
加わっています。飽和潜水はこのメルマガの最初の連載記事でした。
知らない人が多いと思い、TwitterとFacebookで紹介したところ、
一般の方や知人だけでなく、陸自OBからも「海上自衛隊の飽和潜水
は知らなかった」とコメントをいただきました。巻頭あいさつにし
ては長文になってしまいますが、ご参考までにアップしたテキスト
をご紹介します。
KAZU1の遭難は胸が痛む。飽和潜水とはなんぞや&海上自衛隊潜水
医学実験隊についてご紹介します。
知床半島沖で沈没したKAZU1の捜索は海保が対応不可の水深120mと
いう深さのため、飽和潜水ができる民間業者が対応しているようで
す。飽和潜水とは聞き慣れない名称かと思います。
人間は1気圧(大気圧)で空気を呼吸しています。潜水して加圧さ
れると窒素など空気中の不活性ガスが呼吸を通じて体内組織に溶解
していきます。そしてある深度に滞在し続けるとそれ以上は不活性
ガスが溶け込まない、つまり飽和状態となります。この状態を利用
して潜水するのが飽和潜水です。
つまり飽和潜水とは、作業を行ないたい深度の気圧まで事前に体を
加圧して体内の不活性ガスを飽和状態とすることで、より深い進度
での潜水が可能になり、減圧が一度で済む潜水方法です。
通常、深く潜ろうとすればするほど減圧に要する時間は必然的に長
くなります。たとえば水深90m(10気圧)で40分作業をした場合、
浮上には約6時間半の時間が必要です。そうしなければ体内で溶け
ていた不活性ガスが気化して気泡となり血管を閉塞、減圧症となる
恐れがあります。
しかし体が飽和状態に達すれば、どれだけ海底に滞在しようと体内
に溶け込んでいる不活性ガスの量がそれ以上増えることはないので
減圧時間は変わらない、これが飽和潜水最大の利点です。深い深度
での潜水作業が長時間可能&大気圧復帰の減圧が一度で済むので潜
水効率もよくなります。
この長所を生かし、自衛隊では潜水艦救難、航空救難、遺失物の観
察撮影、捜索、揚収などで飽和潜水を活用しています。民間では海
底油田の採掘などにこの潜水方法が用いられていますが、大がかり
な装置や多数の人員を必要とするため、かなり特殊で専門的なスタ
イルの潜水といえます。
海上自衛隊の潜水艦救難母艦「ちよだ」に配備されているのは潜水
医学実験隊の飽和潜水員。この部隊は2008年に450mの飽和潜水を
達成しており、その実力は世界随一。450mまで潜水すると浮上ま
で何週間もかかり、超絶閉塞空間で過ごす隊員たちにはメンタルの
強さも求められます。
飽和潜水では食料も加圧され、開封していないカップ麺はそのまま
の形でサイズが1/4ほどに縮小。メロンは透明に、ホイップは液体
に。飴を食べると飴の中の気泡が口中で破裂して大けがする恐れも。
味覚や食感も変わり、喉に詰まらないお茶漬けなどさらさらしたも
のが好まれます。
飽和潜水前には十分な健康管理が必要とされます。鼻が詰まった状
態での潜水は極めて危険ですし、飽和潜水中に咳をすると大気圧と
衝撃が異なり、胸郭にもろに響いて大変痛いのだとか。また、水中
で二酸化炭素が出てしまうため、飽和潜水前は喫煙者も煙草を控え
ます。
今回、自衛隊のヘリや艦艇は海上からの捜索に加わりましたが、海
底の捜索に潜水医学実験隊は加わりませんでした。「なぜ捜索しな
い」という声のために言い添えると、自衛隊への災害派遣要請には
「緊急性、公共性、非代替性」という3要素すべてを満たす必要が
あるということです。
行方のわからない方が1日も早く見つかることを心から願っていま
す。了
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た。第3即応機動連隊に改編された際の一連の行事等をご紹介して
います。また同誌「世界の軍備」ページでは、「コロナワクチン大
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■第3普通科連隊から第3即応機動連隊へ(8)
3連隊に最初の16式機動戦闘車、通称MCVがやってきた際に行
なわれた入魂式。
御神酒を捧げたり玉串奉奠をしたりする神事は、撮影も禁じられて
いる神聖なものです。
神事に続いて冨樫勇一第2師団長、山崎3連隊長、齋藤準備隊長らが
MCVに部隊名を筆入れし、車両に魂を吹き込みました。
こうして新たな装備品を丁寧に迎え入れることは、機甲科にとって
きわめて大切な意味を持ちます。
入魂式の後には齋藤3佐が計画した戦力化訓練展示が行なわれ、即
機連が諸職種部隊と協同して戦闘する様相をわかりやすく示しまし
た。
天幕内には状況図、無人機・スカイレンジャーからの映像、射撃映
像、FCCS、ADDCS(対空戦闘指揮統制システム)の模擬画
像が表示されたモニタが並び、入魂式に参列した部内関係者が見ら
れるようになっています。
戦力化訓練展示は、名寄駐屯地の営庭、レンジャー塔そばに巡らせ
た鉄条網の先にある装甲車が敵の陣地で、そこを攻撃するという設
定です。
最初に第2飛行隊のUH-1が飛来、航空偵察により敵陣地を発見
して即機連の情報活動を支援します。さらに細部の敵情を入手する
ため、スカイレンジャーが偵察するとともに、第2偵察隊も地上偵
察を実施。
偵察バイクが敵から射撃を受けたため、スカイレンジャーの支援を
受けながらRCV(87式偵察警戒車)を活用した射撃による偵察を
実施。RCVが敵陣地を発見し、山崎連隊長に「規模1個分隊、陣
内に装甲車2両を発見」と報告しました。
偵察により判明した敵の陣地に対して火力を発揮すべく、120m
m迫撃砲が準備します。普通科の重迫中隊が扱っている120迫で
すが、即機連では野戦特科の火力支援中隊に配備され、特科職種の
隊員が運用することになります。
さらに第2特科大隊に装備されている99式自走155mmりゅう弾
砲も火力を発揮。この火砲はこの名寄から北は音威子府、南は塩狩
峠まで射撃できます。弾着の合図と同時に、擬爆筒やキャノンファ
イアの派手な煙の色がもくもくと上がりました。
火力部隊の射撃支援を受けていよいよMCV2両が前進を開始。
対機甲火力として敵の装甲目標に対して火力を発揮するとともに、
普通科部隊が突撃してレンジャー塔一帯の敵を撃破します。
敵の陣地に突入する普通科部隊の行動を容易にするため、砲弾を徹
底的に敵陣地に落とし、敵に壊滅的な損耗を与えました。
敵が損耗を受けている間に普通科部隊のWAPCがMCVと協同し
て突撃。装甲車の優れた防護力を利用して敵陣地に緊迫し、火力部
隊による射撃の最終弾と同時に突入しました。
敵の航空機が即機連の突撃を妨害するため飛来しましたが、第2高
射特科大隊の近SAMが対空戦闘能力を発揮しました。即機連には
この近SAMが2門配備され、平素から対空戦闘能力を保有します。
最後はメイン道路を機動中のMCVが横行行進射を実施して訓練展
示は終了しました。即機連新編の際に装備される各種装備品が登場
した、内容の濃い戦力化訓練展示でした。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
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□著者略歴
渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。
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