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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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こんにちは。エンリケです。
加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。
今回は、
分隊支援火器といえばこれ!
ミニミ/M249です。
『ミニミ軽機関銃』
クリス マクナブ (著), 床井 雅美 (監修), 加藤 喬 (翻訳)
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武器オンチの日本人には
特におススメです。
ウクライナへの支援物資輸送にあたる自衛隊機の受
け入れをインドが拒否しましたね。
国内報道だけ見ていると、
世界事情の核は見えない。
そのことを如実に感じさせる出来事でした。
さてきょうの記事。
こんかいも非常に重要な内容ですね。
さっそくどうぞ
エンリケ
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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編 Takashi Kato
暴かれたロシア軍の弱点(3)──「泥将軍」
加藤喬(元米陸軍大尉)
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□戦争は身を挺して防ぐものだ
ウクライナは、ソビエト時代に配備されていた大
量の核兵器をソ連崩壊後もそのまま保有していまし
た。1994年、核不拡散条約に加盟した同国はすべて
の核兵器をロシアに移転。その見返りに、米英露は
ウクライナの主権と独立を尊重する「ブダペスト覚
書」に署名したのです。これでウクライナの安全は
保障されるはずでした。
ならば、連日報道されるウクライナの惨劇はなぜ起
きたのか? ひとつには「核を持たない国は核大国
による侵略を防ぐことができない」という現実があ
ります。また「米英は核戦争の危険を冒してでも民
主主義のために戦う」との期待が裏切られたことも
要因でしょう。
そして最終的には、覚書にせよ条約にせよ、突き詰
めれば一片の紙切れに過ぎない「約束」に自国の安
全を任せるのは愚かだったということです。ウクラ
イナに限った教訓ではありません。日米安保条約と
いう「約束」に頼る「核の傘」も、本番で機能する
かどうか分からないからです。
連日ウクライナで繰り広げられる凄惨な光景を前に、
日本が学ぶべきは「戦争は反対を唱えていても避
けられない。戦争は身を挺して防ぐものだ」との一
点に尽きます。
日本の存立を全うするために何をすれば良いのか?
その答えは、日本に累を及ぼす国々が何を恐れて
いるかを考えれば分かります。ロシアにせよ中国に
せよ北朝鮮にせよ、力を信奉する独裁者が恐れるの
は力。地下の隠れ家に潜んでいても身の危険を感じ
させる殺気と言ってもいい。ならば、日本が持つべ
きは「敵基地攻撃能力」に非(あら)ず。敵の中枢
を直撃する火力です。
米国のオンラインニュース『ザ・ディプロマット』
は本年1月26日、駐オーストラリア全権特命大
使山上慎吾氏の発言として、「日本政府は人工知能
やサイバー・セキュリティ分野で、AUKUS(オーカ
ス豪英米軍事同盟)に参加することにやぶさかでな
い」と報じています。これに続き4月12日付
『産経新聞電子版』は「AUKUS参加、米英豪が日本
に打診 極超音速兵器など技術力期待」とのスクー
プを掲載。プーチン大統領によるウクライナ侵攻と
習主席がもくろむ台湾併合不安を背景に、「露中封
じ込め」を目指す米英が「日本取り込み」を水面下
で進めつつある外交事情を示唆しています。日本は
この千載一遇の機会をフル活用し、抑止力を飛躍的
に高めるべきだと思います。
極超音速兵器の開発において、アメリカとイギリ
スは露中の後塵を拝しています。一刻も早い実用化
を目指す米英にとって、日本の最先端技術は喉から
手が出るほど欲しいもの。ならば開発協力の見返り
として、日本は米英に「核共有」を要求するしたた
かさを持つべきです。
核搭載「日の丸極超音速ミサイル」が完成した暁に、
これを偵察衛星や電子諜報およびスパイ諜報を組
み合わせれば、日本は敵の指揮中枢に斬り込める「
大太刀」(おおだち)を手にすることになります。
一般市民を殺傷したり相手国を焦土化したりするこ
となく、敵の指揮能力だけを狙い撃ちにするわけで
す。
現在ベルギー、ドイツ、イタリア、オランダ、トル
コがアメリカから提供されている核兵器同様、日本
の場合も核弾頭の起爆暗号はアメリカ大統領に属す
ることになりましょう。しかし日本人が日本製のミ
サイルに搭載し日本防衛のために使うのですから、
米側としても存立の危機に瀕した日本に対し使用許
可を渋ることはないと思われます。
また平素から日本政府は「侵略が切迫した場合は核
使用を躊躇しない」と言明することです。祖国を守
る「本気度」が強い抑止力につながります。
広島でも、長崎でも、東京でも、ハノイでも、マ
リウポリでも、ブチャでも、犠牲者は無防備な一般
市民。無辜(むこ)の血を流さぬためには、侵攻を
目論む独裁者らに「日本に手を出せば返り討ちにあ
う」との恐怖と逡巡(しゅんじゅん)をいだかせる
ことです。
居合の世界では、刀を抜かずとも相手を委縮させ戦
いを防ぐ極意を「鞘の内の勝ち」と言うそうです。
サムライの国にとって、これほどふさわしい戦争抑
止策はありません。
目下、プーチン大統領と習主席は次の一手を考えあ
ぐねています。「鞘の内の勝ち」を目指すなら今し
かありません。
▼暴かれたロシア軍の弱点(3)「泥将軍」
兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるため
には相手より優れた武器を持たねばなりません。兵
器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく続
いているのはこのためです。よく指摘される武器の
効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を抜
かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝ち」
の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的な破壊
力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を手放せ
ない」。人類が陥って久しいこのジレンマの裏面が
「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。
ウクライナ戦争で暴かれたといわれる「露軍の弱
点」最終回は「泥将軍」です。
米陸軍武器科の新米少尉だった80年代後半、メリ
ーランド州アバディーン試験場で戦車回収訓練に参
加しました。沼地にはまって動けなくなった戦車を
引っ張り上げる手順を学ぶためです。M88装甲回収
車のワイヤーを行動不能になった戦車につなぐ訳で
すが、これが「言うは易し」。ブーツが泥に取られ
思うように進めず、かと言って後戻りもできないか
らです。バランスを崩して倒れこもうものなら、四
つん這いの姿勢で泥に絡めとられます。ものの十数
分で、われわれ新任少尉らは一人残らず泥人形にな
っていました。訓練場の一角に作られた「模擬沼地」
でもこの有様。延々と続く湿地帯における作戦の困
難さを想像し暗澹としたものです。
1812年にはナポレオンが、1941年にはヒトラーが
ロシア侵攻作戦を試みましたが、両者ともこの「泥
との戦い」に敗れ撤退を余儀なくされています。本
ビデオに出てくる「ラスプーティサ」とは、雨や雪
解けで未舗装路や平原での移動が困難になる春と秋
を意味するロシア語です。走行不能の泥沼そのもの
を指すこともあり、この場合は「泥将軍」と訳しま
す。
二度もロシアを侵略者から救った泥将軍が、今回
はロシア軍を絡めとったのはいかにも皮肉です。キ
エフ攻略を目指すロシア軍機甲部隊はぬかるんだ平
原に行く手を阻まれ、舗装道路を使うしかありませ
んでした。歩兵と航空機による援護もなしに道路を
進む車列は「格好の獲物」。読者の方々も、ロシア
の戦車や歩兵戦闘車が次々と対戦車ミサイルの餌食
になる画像をご覧になったことでしょう。
プーチン大統領は元KGBの諜報員。従軍体験はあ
りません。雪解けが始まる季節に開戦を判断したこ
とから見て、「泥将軍」を考慮しなかった可能性が
あります。むろん軍上層部は知っていたはずですが、
皇帝プーチンの逆鱗に触れることを恐れ諫めること
ができなかったのでしょう。
ロシア軍が見せた脆弱さの根本には、プーチン氏に
よる計画立案の不手際と忠臣の欠如がありそうです
。
教材ビデオ:
(1) 7 ways military of #Russia got exposed in
#Ukraine ! - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=in8Lbj0-Dxc&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=249
(本エピソードは8:23から始まります)
基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Phenomenon(フェノメノン)現象
Rasuputisa(ラスプーティサ)ロシアやウクライナ
で、雪解けや雨で道路がぬかるみ通行不能になる春
と秋を指す
General mud(ジェネラル マッド)泥将軍
シナリオ(カウンターを9:07に合わせてくださ
い)
This phenomenon is known as raspurisa. Some mi
litary experts call it“General mud”
(この現象はラスプーティサとして知られ、軍事専
門家は「泥将軍」と呼ぶ)
(今回のエピソードは最後まで続きます)
英語一言アドバイス:
phenomenon は「現象」と訳されます。
単なる事実というよりは、不可思議な出来事との含
みを持つ場合もあります。
発音サイト:
phenomenonの発音 phenomenon - Google Search
http://okigunnji.com/url/144/
参考サイト:
泥将軍 Rasputitsa - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Rasputitsa
(かとう・たかし)
●著者略歴
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン(近刊)』(いずれも並木書房)
がある。
追記
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『チューズデーに逢うまで』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063326X
『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320
オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
きょうの記事への感想はこちらから
⇒
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ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac"
と表現します。
『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
加藤 喬
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