配信日時 2022/04/18 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(168)】ロシア兵の残虐な行為は変わらない……   桜林美佐(防衛問題研究家)

おはようございます、エンリケです。

168回目の美佐日記です。

桜林さんらしい、いい記事ですね。

さっそくどうぞ


エンリケ


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桜林美佐の「美佐日記」(168)

ロシア兵の残虐な行為は変わらない……

桜林美佐(防衛問題研究家)

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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、令和4年4月の今回
は168回目となります。

ウクライナでは多くの民間人が虐殺され、駅に集ま
っていた人々がクラスター弾とみられる砲撃を受け
殺害されるなど、筆舌に尽くしがたい光景が報じら
れています。

「なぜ逃げないの?」という声も聞かれるのですが、
実際、私たちも同じ境遇になったら、逃げない人
も少なくないと私は思いますし、私自身も子供や動
物を抱えているなら早いうちに避難を試みるでしょ
うけど、知らない場所への逃避行はかなりハードル
が高い気がします。

災害時などもよく言われますが、高齢の方や身体の
不自由な方などは自らの意志で避難をしないという
方が多く、外から見るとなぜ避難しないのか危ない
のに!ということなのですが、やはり住み慣れた場
所で乗り切れればそれの方がいいと考えるのが自然
なのだと思います。

「被害を楽観視しがち」という表現もされますが、
これはあまり適切な言葉と言えず、どちらかという
と、生き方、いえ死に方の選択というべきでしょう
か・・・。

いずれにしても、人は逃げるのが当たり前だと判断
し決めつけるのは大間違い、本当は正面から検討し
なければならない問題だと思います。

国民保護の問題点は数多くありますが、動きたくな
い人の意志をどうするのか、人間の尊厳の尊重につ
いては大きな課題であり、やはり地下シェルターの
充実は重要だと改めて感じています。

そして抑止力の要諦はやはり相手を恐れさせること
であり、シェルターを作ることは大事ですが、それ
だけでは抑止になり得ないということも今回、改め
て確信しました。

このことは、こちらからケンカを仕掛けることはし
ない、いわゆる「攻撃的な兵器」は持たないと誓っ
てきた日本人にとってモラルの矛盾に見え、容易に
受け入れられないことなのだと思います。

もっと言えば、戦争そのものを強く否定してきた国
民にとってみれば、戦争をしなければ今日を生き、
明日を迎えることができない、戦うことによって自
身や家族の生命を守っている人々を目の当たりにし、
もはや戦争そのものを否定することなど無意味で
あると気付きながらもそれを認めたくないという、
大いなるジレンマに陥っているのではないかと考え
ます。

今、ウクライナで起きている出来事が日本人に投げ
かけるものはあまりに大きく、また仮にこのことで
日本人が目覚めても、その覚醒の向こうに無数の人
々の犠牲があることに心を痛めています。

日露戦争前夜、日本ではある歌が流行しました。「
アムール川の流血」です。明治34年に旧制第一高
等学校(一高)記念祭で発表された寮歌です。

アムール川とは中露国境、旧満洲とシベリアの間を
流れる黒竜江のこと。中国側の対岸にあるブラゴヴ
ェシチェンスクという町には清国人が居留し、国際
都市さながらになっていました。

ところが、明治33年6月に義和団事件が起こりま
す。北京や天津で日本をはじめとする英・米・独・
仏・露・墺・伊の8か国連合軍と清国軍が戦火を交
えました。

ブラゴヴェシチェンスクも清国軍に襲われますが、
大きな被害はありませんでした。しかし、ここにい
る五千人もの清国居留民を快く思わなかったロシア
軍は老若男女の清国人を捕らえ、皆殺しにしアムー
ル川に投げ込んだのです。おまけにロシアは義和団
事件後も満洲に居座りました。

 一高の学生たちはこの暴挙を忘れないためにも、
さらに3年経った後に『アムール川』のメロディで
歌詞を変えた『征露歌』を発表します。

 「西暦一千九百年 恨みは深きアムールや 露人
の暴に清の民 罪無く逝けり数五千」

10年程経ってから陸軍幼年学校の生徒がこれをま
た替え歌し「万朶の桜か襟の色~」の『歩兵の本領』
になったわけです。

そしてこれが後になぜか「メーデーの歌」にもなっ
たのです。とにかく、昔からロシア兵による残虐な
行為は変わらないということは本当に残念です。

 今週も最後までお付き合い頂きありがとうござい
ました。皆様にとって素敵な1週間となりますよう
に!


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●YouTubeチャンネルくらら「国防ニュース
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「陸海空 軍人から見たロシアのウクライナ侵攻」
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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。新刊『誰も語
らなかったニッポンの防衛産業』(産経NF文庫)



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