配信日時 2022/04/04 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(166)】ガソリン車からEV車転換の落とし穴    桜林美佐(防衛問題研究家)

おはようございます、エンリケです。

166回目の美佐日記です。


全く同感です。

EVの旗振りしている人の目標は「トヨタ潰し」で
あり、目的は「わが自動車産業潰し→わが国力を永
久に低下させつづけること」にある、という話を聞
いたことがあります。ほんとかウソかわかりません
が、実に納得ゆく見方ではあります。


さっそくどうぞ


エンリケ


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桜林美佐の「美佐日記」(166)

ガソリン車からEV車転換の落とし穴

桜林美佐(防衛問題研究家)

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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、令和4年4月の今回
は166回目となります。

 近所に素敵なパン屋さんがあって、隔日しか営業
していないのですが、何が素敵って、営業日の翌日
に売れ残ったパンを詰め込んだ袋が1つ300円で
売っているのです。

 店は閉まっているのに店先にずらっと並べてあっ
て、箱にコインを入れる方式。近くに住んでいると
ある省庁の偉い方が、そもそもパンを余らせすぎだ
し、こんなことをしたら商売にならないんじゃない
かと店主に直撃取材!?したらしいのですが、まあ
いいんですと。なんという太っ腹!

 でも、買うとつい一気に全部平らげちゃったりす
るので、良いのか悪いのか分からなくなっている今
日この頃です(そういえば、この日記を始めた頃「
グルテンフリーしてます」なんて言ってなかったっ
け?今や遠い過去・・・)。

 さて、先日は元内閣官房参与で産業遺産について
のスペシャリストといえる加藤康子(かとうこうこ)
さんとお会いし、貴重なお話を伺いました。

 加藤さんはハーバード大で企業城下町について学
び、鉱山の町や限界集落に足を運んで、それらを産
業遺産にすべく行動されている方です。最近は『E
V(電気自動車)推進の罠 脱炭素政策の嘘』とい
う本を共著で出され、話題になっています。

 江戸時代にさかのぼれば、鎖国をしていた日本は
まだ、大きな船を作ることすら禁じられていました。
当時はイギリスが世界の工業生産の大きな割合を
占めていて、そんな世界は日本にとっては未知のも
のでした。

 しかし、その小さな島国が、明治維新を経て瞬く
間に工業国になっていたのですから、考えてみれば
ものすごいことですよね。もちろん、簡単なことで
あるはずはなく、先人たちの強固な意志と行動力が
あったからこそです。これには当時の英国人も驚愕
したといいます。

 「日本は非西洋諸国で初めて、意志を以て産業化
を成し遂げ、世界の舞台で近代国家として認知され
た国」だと加藤さんは言います。

 小さな船しか作っていなかった国が、蘭書を片手
に鉄製大砲の鋳造に挑戦し、洋式船の模倣を試み、
重工業(製鉄・製鋼、造船、石炭産業)分野で急速
な産業化を成し遂げたのです。植民地になることな
く、たった50年余りの間でこれをやってのけたこ
とは世界史上にないことでした。

 だからこそ、産業革命遺産としてもっと胸を張る
べきなのですが、当の日本人がその価値をイマイチ
認識していないようです。

 「産業社会への転換において、鎖国政策の下で培
われていた『匠の技』と、職人文化において伝授さ
れる『暗黙知』、また長きにわたり西洋に国を閉じ、
封建制度の侍社会で培われた精神と道徳哲学が産
業化の質の面で、規模において、変化のスピードを
加速させた」と加藤さんは言い、深く頷かされると
ともに感動を覚えます。

 こうした黎明からして驚きに値する日本の工業、
戦後になって日本を強くしたものはなんといっても
自動車産業の発展でした。

 加藤さんは日本人が乗る車が国内で作られること
がとても大事だと訴えます。都心にいるとピンとこ
ないのですが、地方では1人に1台は必要なもので
すし、日本国内の道は軽自動車しかすれ違えないよ
うな道が80%を占めているというのです。手頃な
価格で保有できる車が日本人には不可欠ということ
になります。

 また、自動車産業が所在する市町村と観光を中心
としている市町村では実際、自動車メーカーがある
所のほうが断然潤っているといいます。製造業の存
在が最も地域経済を盛り上げるということになりま
す。つまり、工場の国外流出という流れは、日本の
地方経済を著しく弱くしてきたのです。

 これから電力が不足し、料金も上がるという中で
は、ますます国内での製造業の継続は困難になって
しまいます。

 「強い製造業がなければ、国民と民族の繁栄も存
在し得ない」と、おおー、いいこと言うじゃないと
思いますが、これは「中国製造2025」の文言で
す。かの国のほうがはるかによく分かっていらっし
ゃる。

 一方でわが国は「グリーン社会」の実現を目指す
といいます。日本のCO2排出量は3%、中国から
のは30%だといいます。日本が必死に3%を減ら
したところでそもそも大きく貢献する数字ではない
と加藤さんは指摘しています。

 むしろ製造業を基本としながらこれだけ低いこと
を世界にPRし、日本にこそ製造拠点を持って来る
べきだと。

 しかし、そのような努力をすることはなく、実際
にはガソリン車からEV車への転換という世界の流
れに追随し「脱炭素」を合言葉にEV車を買う人に
は国や東京都が、それぞれ60万円(つまり都民な
ら120万円)という多額の補助金を出しているそ
うです。これにより政府は2035年までに電気自
動車100%を目指すとしています。

 加藤さんが問題視するのはこうした極端な方針で
す。多くの選択肢を持つべきであり、国情を無視し
た選択と集中は危険なのです。寒冷地でのEV充電
は?充電に今よりはるかに電力需要が増えるのにそ
れはどうするつもりなの?と。

 雪で立ち往生した車両に自衛隊が災害派遣でガソ
リンを提供しましたが、電気だったらどうするので
しょう。

 また、すでに閉鎖する町工場も出てきていて、豊
田章男・自動車工業会会長か「550万人の大半の
雇用が失われる」と明言しています。

 そもそも現在日本の一大産業と言える自動車産業
を自ら潰すようなことをすれば、日本には何か残る
のか、という視点も重要です。

 高所得者が購入する高級車であるEV車に多額の
補助金として税金を使っている。特に雇用を産まな
いテスラ、ベンツ、BMW、アウディなどの購入に
補助金が必要なのか? 日本の税金は日本の企業の
ために使われるべきでは?という疑念が生じて当然
でしょう。

 「70万円で買える軽トラのほうがよほど国民生
活に貢献している」という加藤さんの言葉がずしり
と重かったです。

 今週も最後までお付き合い頂きありがとうござい
ました。皆様にとって素敵な1週間となりますよう
に!

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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。新刊『誰も語
らなかったニッポンの防衛産業』(産経NF文庫)



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