配信日時 2022/03/07 20:00

【我が国の未来を見通す(16)】少子高齢化問題(最終回) 具体的「少子化」対策の提案(その6) 宗像久男(元陸将)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
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WEB http://wos.cool.coocan.jp
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こんにちは、エンリケです。

「我が国の未来を見通す」第16回です。


冒頭文はウクライナ情勢に関する
エッセイです。

こんなすごいレベルの内容に、
ここで触れられることを
心から感謝するばかりです。

私自身、もっていた重要な判断材料の一つを
この一文で修正できました。


本文にも強く感じるものがあります。

国(公)が個人(私)に介入することを極度に嫌う
戦後日本の国民性ですが、国が何かをくれるときだ
けは例外になります。

すなわち少子高齢化のような「国家緊急事態」にあ
たっては「給付金など」直接給付の大判振る舞い
が国家戦略的に重要で最適な対処になるでしょう。


さっそくどうぞ

エンリケ


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我が国の未来を見通す(16)

少子高齢化問題(最終回)
具体的「少子化」対策の提案(その6)


宗像久男(元陸将)

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□はじめに

前回、「ウクライナ情勢」に触れましたが、やはり
動きが激しく、数日先の情勢が読めず、とんでもな
い展開になる可能性があることがよくわかりました。
まさか原子力発電所を攻撃して“人質”にするよ
うな作戦が(机上の作戦としてはあっても)実際に
起こるとは考えてもみませんでした。“言語道断”
以外の言葉が見つかりません。

元自衛官の私は、いつもテレビの映像や新聞記事な
どの裏にあるロシアの戦略や軍事作戦について考え
ていますが、3月2日、イギリス王立国家全保障研
究所が「ロシアは1年前から計画していた。その目
的はウクライナの占領」と発表したとのニュースが
流れ、思わず納得しました。

時間をかけて練りに練って周到に準備した本作戦は、
当然ながら、ウクライナ侵攻の大義名分をはじめ、
ウクライナ政府の対応や軍・国民の抗戦能力、さら
には欧米諸国をはじめ国際社会の反発などについて
も“織り込み済み”の上で、それでも「侵攻が国益
に合致する」「侵攻目的を達成できる(勝算あり)
と判断した結果の侵攻だったと推測します。

しかし、現時点(3月5日)までの局面を見る限り、
ウクライナの抗戦意図や能力がこれほど強いのは
想定外だったのではないか、その結果が原発攻撃と
なったのではないかと想像しています(いずれ判明
することでしょう)。

本メルマガが世に出る頃の情勢は不明ですが、歴史
を振り返ると、予想もしなかったことが発端となっ
て突然、急展開することもよくあります。しかし、
ここまで来ると簡単に後には引けないし、簡単に妥
協はできないでしょうから、ロシアの今後の“出方”
が懸念されます。楽観は禁物と考えます。

それにしても、冷戦終焉から30年余り過ぎた現在、
「人類はなぜこのような局面を経験しているのか?」、
そして「未来への警鐘として何を汲み取ればいいの
か?」など、我が国の防衛のみならず大所高所から
国際社会の将来について考えてしまいますが、その
細部については、情勢が少し落ち着いた頃を見計ら
って紹介することにしましょう。

さて、このような情勢下で本メルマガを発信するこ
とにためらいがある上、あまりに次元が違うことで
恐縮なのですが、「少子化」対策については今回で
終わりにしたいこともありまして、個人的なことを
書かせていただくことをお許し下さい。
私は、昭和26年に福島県の寒村の農家、7人兄弟
の末っ子として生まれました。父親は子供の頃の怪
我のため左の薬指が固くてこぶしを握れなかったこ
と加え、長男だったことや年齢制限もあったのかも
知れませんが、兵隊検査は「乙種合格」になり、徴
兵はされませんでした(3人の叔父たちは徴兵され、
1人は戦死しました)。
 それもあって、両親は当時の「産めよ、増やせよ」
との政策を忠実に実行したのでしょう。終戦を挟
んで7人(男3人、女4人)の子供を作ることにな
りました。しかし、末っ子の私はさすがに必要ない
と思ったようで、中絶手術がなかった当時、母親は
実家の前を流れている川に入り冷たい水につかって
みたり、梯子の中段から落ちてみたり、とそれこそ
流産させようと決死の努力をしたようです。それで
も私はしぶとく母親のお腹の中で育ち、無事に産ま
れました。
分別がつく頃になってそのことを聞いた私はとても
ショックを受けましたが、その後に続いた「産まれ
てきたら、7人の子供に中でおまえが一番かわいい」
との言葉に騙されたような格好で、母親を責めるこ
とはしませんでした。
今でもよく覚えているのは、早朝から夜遅くまで、
休日もなく働き詰めに働き、7人の子供を育てた両
親の姿ですが、当時としては決して珍しいことでは
なく、周りの家も皆そうしていました。
冷静に振り返りますと、現在のアフリカなども同じ
ような状況なのでしょうが、避妊とか中絶を含め計
画出産が叶わなかった当時は、結果として“子だく
さん”になったという事実があったものと考えます。
時代が変わり、自分が2人の息子の親になって、両
親や子供時代の経験を息子たちにうまく伝えること
が出来ないまま時が過ぎ、息子たちはいつの間にか
おおらかな大人になってしまいました。「家族」と
いう枠から一歩も踏み出すことが出来ないのも事実
ですが、長男は未だ独身、次男夫婦には子供1人で
すので、我が家は、現段階ではあきらかに「少子化」
を促進する側にあります。
正直申し上げれば、「少子化」について偉そうなこ
とを言う立場にはないのですが、ウクライナ情勢を
睨み、改めて国防の重要な要素としての人口の確保
と国を守る意識に思いを致しながら、あえて筆を進
めたいと思います。

▼「婚姻数」と「多子化」増加施策の提案

「少子化」対策の最終段階です。我が国の国情に合
って最も可能性があると考えられるのは、やはり、
前回紹介しました(1)「結婚」を前提にして、「婚姻
数」と「子だくさん家族」(多子化)世帯の増加に
あると考えます。「少子化」対策の総括の意味を込
めて、そのために必要な「手立て」を一緒に考えて
みましょう。

この目標を達成するために、国や社会ができること
はたくさんあると考えますし、すでにさまざまな取
り組みを行なっていることは紹介したとおりです。
しかし、現状を見る限り十分でないことも明白です。

1月25日、厚労省より昨年1年間の婚姻数や出生
数が発表されました。まず、婚姻数は戦後最少の5
1万4242組(前年比、2万3341組(4.3
%)減)でした。出生数(速報値)は、前年比2万
9786人(3.4%)減の84万2897人で、
6年連続で過去最少を記録したようです。なお、速
報値には、日本に住む外国人と外国に住む日本人も
含まれます。9月に発表される確定値は日本に住む
日本人のみであることから、速報値より出生数がさ
らに少なくなります。

一方、死亡者数は、前年より6万7745人増え、
戦後最多の約145万2289人で、出生から死亡
を引いた自然増減は60万9392人減となり、は
じめて60万人を超えました。新聞の見出しには
「コロナ禍で少子化加速」とありましたが、コロナ
禍によって、「少子化社会対策大綱」に示されたよ
うな各施策をあざ笑うかのように危機的状態が加速
されてしまいました。

「コロナ禍」の影響は一時の現象との見方もあるの
でしょうが、これらの施策が功を奏さなかったのに
はそれなりの訳があると考えます。その原因をしっ
かり分析し、必要な政策変更を決断して実行するた
めには、所掌官庁やいわわる「専門家」に任せるだ
けでなく、さまざまな方面から“メス”を入れる必
要があるのではないでしょうか。

これまで紹介しましたように、「少子化」対策で成
功している国がたくさんあります。それらの対策を
そのまま我が国に導入することは難しいとしても、
フランスやロシアのように、政府が「少子化によっ
て国家が危機状態に陥ることを回避する」と宣言し、
「少子化」対策を最優先してその仕組みを具体化し、
必要な予算を獲得することは政府や国会の“意思次
第”であると思います。

まず、「婚姻数」の増加対策については、国や地方
自治体のさまざまな施策についてすでに紹介しまし
たが、大事なことは「教育」と「雰囲気作り」にあ
ると考えます。教育については、幼少のころから
「結婚」や「家庭」の持つ意味や「子供を産み、育
てる」意義を繰り返し教えることが出発点ではない
でしょうか。

我が国は、戦前の反動から、戦後は「個人主義」を
美化し過ぎ、国民の社会的義務、さらには社会や地
域との「共生」の必要性などについて十分に理解さ
せてこなかったところにその根本要因があるような
気がします。その延長で、多くの国民が「結婚」と
か「子孫(後継者)を残す」ことについての理解が
不十分なまま今日に至っていると考えます。当然、
家庭内の教育も大事でしょう(その意味では、冒頭
のように我が身を恥じるばかりです)。

また、すでに「働きかた改革」も紹介しましたが、
この改革の中に、「子育て両立支援」や「女性活躍
推進」などがうたわれ、本気になって取り組んでい
る企業もあることでしょう。つい最近、個人的に関
係している上場企業で「総合職の女性社員が転勤時
期になり、子育てとの両立で悩んでいる」ことが話
題になりましたが、多くの企業に普及しているとは
思えません。

現時点では、男性が育児休暇を取れるのもごく一部
の企業のみと想像します。昨年6月に「育児介護休
業法」が改正され、従業員が育児・介護を理由とし
て離職することを防ぎ、男性・女性問わず仕事と育
児・介護の両立を可能にするために新たに変更が加
えられました。その中に「男性版産休制度」が創設
されたようですが、今年4月1日から施行されるの
を契機に、企業内に男女ともに仕事と育児の両立を
図る組織作りやそのような「文化」の定着が求めら
れています。

すでに指摘しましたように、現在のような、あまり
にもケチな「児童手当」を即刻見直し、「子供を2
人あるいは3人作った世帯に相応の手当を増額する」
との“分厚い支援”を実施すべきでしょう。仮に
「一人親」になったとしても、「国が子育て支援を
実施する」と明言できるくらいの社会システムを整
備すべきと考えます。

具体的な金額などについては、さらなる検討が必要
ですが、その上限は、前回も紹介しましたように、
親の“自助努力の精神”を奪ってしまうことを回避
することは大事な要件と考えます。親は、一般には
子供ために必要な努力は惜しまないと考えますが、
その経験を通じて、親自体が成長する面が多々あり
ますし、その姿を子供に見せることも子供の成長の
ために大事なことは論を俟たないでしょう。それを
奪ってしまうことは、別な意味でマイナス面が生起
する可能性もあります。その上で、育児を放棄する
親には「里親制度」などを利用した救済処置を国や
社会がしっかり担保すべきと考えます。

「少子化」対策の難しいところは、本来、個人の自
由に任されている「結婚」と「子育て」に国家や社
会が関与する是非とその限界にあると考えますが、
我が国の未来を左右する「少子化」対策については
、政府が率先して適度な「支援」と「雰囲気作り」
にまい進することが求められていると私は考えます。

ぜひとも、結婚適齢世代に「結婚」をして「子供を
たくさん作りたい」とのモチベーションを向上させ
るための「支援」や「雰囲気作り」はいかにあるべ
きかについて、強い意志をもってあらゆる角度から
検討して、これまでの政策の不十分な面については
勇気を持って是正してほしいと願っています。

▼「少子高齢化」の「日本モデル」

最後に、先進国の最先端を走る「少子高齢化」対策
に向けて、「少子化」と「高齢化」を合体させてい
かに立ち向かうべきなのかについても考えてみまし
ょう。私は、「15歳から64歳」となっている現
在の「生産年齢人口」を「18歳から69歳」に変
更し、これを「日本モデル」とすることがその出発
点と考えます。

我が国は、明治時代から「20歳を成人」と定めて
きた民法を改正し、今年4月より成人年齢を「18
歳」に引き下げます。また、昨年4月より「高齢者
雇用安定法」の改訂によって70歳定年が現実のも
のになりつつありますので、ちょうどいい機会なの
です。

その結果として、「児童手当」の支給年齢の上限を
現在の15歳から18歳の誕生前まで引き上げるべ
きでしょう。「将来の良質な労働者育成のために国
を挙げて取り組む」ことも政策として掲げれば、多
くの国民も納得するのではないでしょうか。

我が国の社会保障給付費は、戦後の50年で約10
0倍に増加し、今や130兆円になり、さらに今後
ますます増えることが予想されています。その内訳
は、年金、医療、介護費などほとんど高齢者のため
に支出しているのが実態です。

上記の「日本モデル」は、これまでの「少子高齢化」
対策が、「高齢化」対策に偏重し過ぎていたこと
を修正する宣言でもあります。このままでは、現在
の若者層は祖父母や親世代のためにせっせと貢ぐも
のの、自分たちの番になったら、ほとんど貢いでも
らえない公算が大です。この事実を知ったら、若年
層のやる気が失せることでしょう。そして、「将来
に明るい希望を持てない」ことが続けば、非婚化や
少子化がさらに進む可能性があります。

一方、自分たちの稼いだ分の一部が自分たちの家庭
や子供たちのために使われていることを知れば、希
望が持てるのではないでしょうか。「人生100年
時代」です。大多数の国民が長生きします。65歳
から70歳は年金受給対象年齢ではなく、一律では
ないにしても、所得や健康状態などに応じて年金を
納める側に回ってもらう、つまり「支えられる側」
から「支える側」に回ってもらうのです。

「児童手当」の増加分の財源が足りないのであれば、
「復興特別所得税」(税率2.1%)のように、
「少子化対策特別所得税」(仮称)を新設するのも
一案と思います。「特出し」をすることによって、
政策が気色鮮明になり、メッセージ力も増大します。

ほかにも「少子高齢化」に関連する政策は多岐に渡
りますが、これらをすべて「日本モデル」として組
み込み、新たな「少子化社会対策大綱」を策定し、
実行することを強く願っています。「雰囲気作り」
は「メッセージ力」に比例します。今回の「育児介
護休業法」などもこのままでは何のために改正する
のか、その趣旨が埋没し、なかなか定着しないこと
でしょう。

「少子高齢化」対策のための「日本モデル」として
パッケージ化して、我が国の「文化」として定着す
るまで、(内閣が代わっても)総理大臣が先頭に立
って、強く、継続的に、しぶとくメッセージを発信
すべきと考えます。

一方、役人にこのような判断をさせるのは無理なこ
とも事実でしょう。そのような決断と断固として実
行する、強い(欲を言うならば、発信力のある)為
政者の出現が待望されます。政治家を選ぶのは私た
ち国民です。現状を放置したままにすると、やがて、
平和や独立の維持を含め、すべてが“天につばする”
となって我が身に降りかかってきます(と断言しま
す)。
私たちの世代は、後世の苦しみをあの世から眺めて
いることでしょうが、日本国自体の存亡がかかって
います。そのことに早く気がついてほしくて本メル
マガを発信していることをご理解いただければあり
がたいです。

次回以降、「人口減」対策のもう1つ、つまり「移
民」政策の是非を取り上げます。こちらもあまり深
掘りはしませんが、さまざまな問題を抱えています。
長くなりました。




(以下次号)


(むなかた・ひさお)



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 【著者紹介】

宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、
陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇
宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、
北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上
幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東
北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸
将)。日本製鋼所顧問を経て、現在、至誠館大学非
常勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、
セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常
勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自
衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動
きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)



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