配信日時 2022/03/03 08:00

【情報機関はインテリジェンスの失敗をどう克服してきたか(5)】 組織の問題──9.11テロにおけるインテリジェンスの失敗   樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
合わせは以下よりお気軽にどうぞ
 
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こんにちは、エンリケです。

「情報機関はインテリジェンスの失敗をどう克服し
てきたか」の五回目。


ウクライナをめぐるインテリジェンス的視点からの
解説。非常に学びになります。


さっそくどうぞ

エンリケ



おたよりはコチラから
 ↓
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情報機関はインテリジェンスの失敗をどう克服して
きたか(5)


組織の問題──9.11テロにおけるインテリジェ
ンスの失敗


樋口敬祐(元防衛省情報本部分析部主任分析官)

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□出版のお知らせ

このたび拓殖大学の川上高司教授監修で『インテリ
ジェンス用語事典』を出版しました。執筆者は本メ
ルマガ「軍事情報」でもおなじみのインテリジェン
ス研究家の上田篤盛、名桜大学准教授の志田淳二郎、
そしてわたくし樋口敬祐です。

本書は、防衛省で情報分析官を長く務めた筆者らが
中心となり、足かけ4年の歳月をかけ作成したわが
国初の本格的なインテリジェンスに関する事典です。

2017年度から小学校にプログラミング教育が導入さ
れ、すでに高校では「情報科」が必修科目となって
います。また、2025年の大学入学共通テストからは
「情報」が出題教科に追加されることになりました。

しかし、日本における「情報」に関する認識はまだ
まだ低いのが実態です。その一因として日本語の
「情報」は、英語のインフォメーションとインテリ
ジェンスの訳語として使われているため、両者の意
味が混在していることにあります。

一方で、欧米の有識者の間では両者は明確に区別さ
れています。状況を正しく判断して適切な行動をす
るため、また国際情勢を理解する上では、インテリ
ジェンスの知識は欠かせません。

本書は、筆者らが初めて情報業務に関わったころは、
ニード・トゥ・ノウ(最小限の必要な人だけ知れ
ばいい)の原則だと言われ、ひとくくりになんでも
秘密扱いされて戸惑った経験から、ニード・トゥ・
シェア(情報共有が必要)の時代になった今、初学
者にも分かりやすくインテリジェンス用語を伝えた
いとの思いから作り始めた用語集が発展したもので
す。

意見交換を重ねているうちに執筆賛同者が増え、結
果として、事典の中には、インテリジェンスの業界
用語・隠語、情報分析の手法、各国の情報機関、主
なスパイおよび事件、サイバーセキュリティ関連用
語など、インテリジェンスを理解するための基礎知
識を多数の図版をまじえて1040項目を収録する
ことができました。

当然網羅していない項目や、秘密が開示されていな
いため、説明が不足する項目、現場の認識とニュア
ンスが異なる項目など不十分な点が多数あることは
重々承知していますが、インテリジェンスや国際政
治を研究する初学者、インテリジェンスに関わる実
務者には役立つものと思っています。



『インテリジェンス用語事典』
樋口 敬祐 (著),上田 篤盛(著),志田 淳
二郎(著),川上 高司(監修)
発行日:2022/2/10
発行:並木書房
https://amzn.to/3oLyWqi

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□はじめに

 2月24日、ついにロシアがウクライナに侵攻し、
今後の動向に一層注目する必要がありますが、ウク
ライナをめぐっては、昨年の秋頃から米ロの激しい
情報戦が顕在化してきました。

 ロシアは2021年秋以降、ウクライナ周辺に9万人
規模の兵力を集結させていました。NATO側の懸
念をよそに、ロシアは兵力集結の事実や侵攻の意図
を否定した上で自国内での部隊の移動は自由だと主
張してきました。

 アメリカはロシア軍がウクライナ国境近くで軍事
行動を活発にしているのは、2014年に続いて再び侵
攻する可能性があるからだと警戒を強めていました。

 これらのNATO側の懸念に対し、プーチン政権
は12月中旬、ウクライナ問題を含む欧州安保に関
する新たな合意案を提示しNATOと協議を開始す
ると言い出しました。

 さらに12月25日、ロシア国防省は、1万人以上の
部隊がウクライナと接する軍管区での1カ月の演習
を終えて撤収すると軟化の姿勢を示しました。
2月15日には、ロシアは演習を終えてウクライナ国
境から部隊を撤収したとする画像を公開しています。

 しかし、これに対しアメリカは、ロシアはむしろ
国境付近では兵力を増強しており、それは偽情報だ
とする情報を流しました。

 アメリカで今回このような形でロシアの情報戦に
対抗しているのは、2021年秋に編成された「タイガ
ーチーム」だとされています。

 そもそも、タイガーチームというのは、技術的問
題や組織的問題を調査し、解決するために編成され
た専門家グループのことです。

 これは、1964年の「設計と開発におけるプログラ
ム管理」という論文で、宇宙船の失敗原因を解明す
るための技術者グループを指す言葉が起源となって
います。

 たとえば、1970年アポロ13号の月面着陸ミッショ
ン中に機材が故障した際、宇宙船を無事に地球に帰
還させるために結成されたチームなどにもタイガー
チームの名称が使用されました。

 今回、政治的な問題を解決するため2021年11月、
バイデン大統領は、ホワイトハウスの国家安全保障
会議に国防総省、国務省、エネルギー省、財務省な
ど関係省庁の担当者を集め、ロシアのウクライナ侵
攻抑止を狙った大統領直轄の専門家集団であるタイ
ガーチームを結成しました。

 アメリカが、ロシアによるウクライナ侵攻の兆候
を示す機密扱いの情報までも積極的に開示すること
で、タイガーチームとしては、ロシアの軍事行動を
けん制するとともに、ロシアの情報戦に適切に対応
する狙いがあったと思われます。

 わが国のマスコミなども、アメリカの情報開示や
ロシアのフェイクニュースの暴露などにより、ロシ
ア側の発表をワンクッションおいて判断しようとい
う風潮が出てきたのはいい傾向だと思います。もち
ろん、一方的なアメリカの発表もしっかり精査する
ことが必要です。

 また、タイガーチームは欧州などと協調した外交
努力や経済制裁を含む圧力、米軍の展開、大使館の
警備体制など幅広いテーマを検討したとされます。
軍事的には、ロシアのウクライナへの限定的な武力
行使から大規模な侵攻までのシナリオを想定し、侵
攻から2週間後までの対応策をまとめたともいわれ
ています。

 一般的に考えれば、国家として重大な事態に対応
する際には、各省庁が連携して対処するのが当然だ
と考えられますが、今回このようにあえて報道され
ること自体、今までうまくいっていなかったことの
証左ではないでしょうか。わが国でもたびたび指摘
されている行政や組織の縦割りの問題が見え隠れし
ます。

 実はこの縦割り問題、9.11テロ時のインテリ
ジェンス・コミュニティーの大きな問題の一つでも
ありました。

 ウクライナ情勢につきましては、こんごも適宜、
インテリジェンスの視点から解説していきたいと思
います。それでは本編に入ります。


▼米情報機関の組織的欠陥

 9.11テロの後、この事件を調査するため、2
002年11月に9.11調査委員会の設立が決定
され、2004年7月22日に「9.11独立調査
委員会報告書」が公表されました。

 その中で全般的な問題点として第一に上げられて
いるのは、先回のメルマガで取り上げた「想像力の
欠如」でした。

 報告書では、その他にインテリジェンス業務が複
雑になるにつれて、各インテリジェンス機関がスト
ーブパイプ(縦割り組織)化しすぎて、互いの連携
がなくなった。さらに、これらの情報機関を取りま
とめる機能が不足していたという、インテリジェン
ス・コミュニティーの組織的欠陥が浮き彫りにされ
ています。

 インテリジェンスの専門家からは、これらの問題
が生じた背景として、冷戦後の戦略環境の変化が指
摘されています。つまり、冷戦期におけるアメリカ
の脅威はソ連であり、まさにソ連の動向こそがイン
テリジェンスの主対象でした。しかし冷戦が終結す
ると、地域紛争やテロなどの新たな脅威が顕在化す
るようになりました。

 ウクライナ情勢などをめぐり、今またロシアの脅
威が顕在化してきたのは、歴史の皮肉ですが、いず
れにしろ冷戦後の世界はあまりにも不透明で不安定
でした。その環境の変化に対応するためには、従来
のアメリカのインテリジェンス・コミュニティーで
は、組織的に対応することができていなかったので
す。

 アルカイダのようなテロネットワークは、軍隊や
従来の大規模なテロ組織とは異なり、各地に点在す
る個人や小組織がゆるやかにネットワーク化されて
いるため、活動を捕捉しにくいのです。

 そのため、冷戦後は、ソ連を対象としていたよう
な従来の組織や従来のやり方では通用しなくなって
いたのですが、その組織の問題が衝撃的な形で現れ
たのが、9.11テロということができます。

 それではどのような組織的問題があったのでしょ
うか。いくつか事例を挙げて説明したいと思います


▼CIAと FBIとの連携不足―活かされなかっ
たフェニックスメモ

 9.11テロは、国外における脅威と国内におけ
る脅威の隙間で起こりました。つまり、CIAなど
の対外情報機関は海外を監視し、国外の機関に警告
を与えました。

 一方でFBIは、国内に潜入しているアルカイダ
のスリーパーの発見とそれらの活動を監視していま
した。

 9.11テロ後に北方軍が急きょ創設され、本土
防衛任務が付与されましたが、なんと当時はアメリ
カ本土を防衛する任務を有する統合軍はありません
でした。

 したがって、アメリカ国内の人やものを標的とし
たアメリカ国外からの脅威については、どの機関に
も明確な責任はありませんでした。

 もし、CIAとFBIで密接に情報が共有されて
いれば、テロは未然に防げたかもしれないというの
が教訓の一つです。

 事件後の調査では次のようなことが分っています。

 CIAは、イスラム過激派の思想に染まり、のち
に9.11テロ実行犯にもなったナワフ・アル・ハ
ズミとハリド・アル・ミフダールの海外での動きを
長年追跡していました。しかし、2001年1月、
タイのバンコクで二人の足どりを見失いました。

 ところが、その二人は2000年と2001年に
2回も何の問題もなく、アメリカに入国していたこ
とが分りました。しかも二人は2000年春にはサ
ンディエゴで飛行訓練まで受けていました。

 CIAがその足取りに気づいたのは、2001年
5月からFBIの国際テロ対策部門に出向したCI
A職員が、FBIの内部資料にハズミとミフダ―ル
が実名でアメリカに入国していたのを見つけたから
です。

 実は、CIAはハズミらの名前を国務省のテロリ
スト容疑者リストに載せていませんでした。そのた
め彼らがアメリカに入国しても、ビザなどを担当す
る移民帰化局(INS)の網には、引っかからなか
ったのです。

 その後、CIAは、やっと二人をテロリスト容疑
者リストに載せ、FBIに通告することにより、F
BIはアメリカ国内で捜査に着手することが可能と
なりました。

 しかし、FBIの本部が、ニューヨークの捜査官
に出した命令書にはルーティーン(通常業務)のラ
ベルが貼られていました。捜査官は通常の業務手順
に従い滞在先のホテルを捜査しました。したがって、
その捜査は、9月11日テロ事件が起きた直後に行な
われていたのです。

 さらに、2001年7月には、FBIのフェニッ
クス地方局の捜査官はビン・ラディンがアメリカの
民間航空学校に部下を通わせ組織的な活動を行なう
可能性があることを記した報告書(フェニックスメ
モ)を本部に提出しています。

 提言として、次のようなことが記されていました。
(1)民間航空学校のリストを作る、(2)これらの学校
との連絡体制を確立する、(3)ビン・ラディンについ
て各インテリジェンス機関と情報交換する、(4)民間
航空学校への志願者の滞在ビザ取得に関する情報を
入手する、というものでした。

 しかし、この報告書はFBI本部内ですら注目さ
れず、当然ほかのインテリジェンス機関との情報交
換もなされませんでした。CIAとFBIのテロリ
ストに対する危機意識も共有されていませんでした


▼北米航空宇宙防衛軍と米連邦航空局の連携不足

 アメリカの空の守りは北米航空宇宙防衛軍(NO
RAD)と米連邦航空局(FAA)という二つの機
関の密接な協力によって成り立っています。

 NORADは、アメリカとカナダによって195
8年に創設された共同統合防衛司令部で、その任務
は北米大陸の空域を防衛することにあります。

 もともとソ連の脅威に対して設立されたため、冷
戦が終結しソ連の脅威が大幅に低下すると、NOR
ADの警戒基地は縮小されました。1990年代に
なると一部の国防関係者は、警戒基地を完全に撤廃
すべしと主張したほどでした。

 冷戦後のNORADは、巡航ミサイルを最大の脅
威と認識していました。テロリストが飛行機を使用
する脅威も想定はされていましたが、それは大量破
壊兵器の輸送に使われる可能性であり、民間旅客機
をハイジャックした上で、それを誘導ミサイルのよ
うに使うことなどは想定されていませんでした。

 FAAについては、民間飛行の安全と警備を管理
する権限が法的に定められていましたが、それが現
実的に意味するところは、飛行中の航空機間の距離
を安全に保つことでした。

 FAAには22か所の航空交通管制センターがあ
り、それらはいくつかの地方管制センターごとにグ
ループに分けられています。そして、空域全体の空
路交通の流れを統括している航空交通管制システム
指令センター(ATCSCC)と密接に連携をとっ
ています。

 FAA本部は連邦空域システムの管理の最終責任
を負っており、同本部の運営センターは、航空機事
故やハイジャックを含む事件の報告を受けることに
なっています。

 2001年7月3日、FAAはテロに関する文書
を回覧しましたが、そこには、確実なテロ計画はな
いものの、テロリスト集団は「ハイジャックの計画
と訓練」をしているとありました。

 しかし、その地域は、アラビア半島と(もしくは)
イスラルにおけるハイジャック可能性についてで
あり米国内のものではありませんでした。

 9月11日の4機のハイジャック機は、主にボス
トン、ニューヨーク、クリーブランド、インディア
ナポリスの地方管制センターによって監視されてい
ました。

 各センターは自分たちの監視網の中で1機の航空
機が異常な動きをとっていることは知っており上級
のセンターに報告しましたが、自分たちの監視網以
外で起きている情報については上級のセンターから
共有されてはいませんでした。

 また、FAAとNORADには、ハイジャック発
生時に協力して対処する取り決めがありました。

 ハイジャックが確認された場合、担当のハイジャ
ック対策要員は国防総省の国家軍事指揮センター
(NMCC)に通報し、ハイジャック機を追尾して
異常を報告する随伴用空軍機(ハイジャック機を追
尾する空軍機)を要請すること、緊急時には捜索と
救助の支援を要請することになっていました。

 しかし、実際にはFAAのボストンセンターは規
定されたとおりに、指揮系統を通じて軍の支援を求
める取り決めに従っていませんでした。

 NORAD隷下の北東空域防衛管区(NEADS)
がFAAから知らせを受けたのは、ハイジャック
機がWTCの北棟に激突する9分前であり、その際
の報告も4機がハイジャックされたという情報だけ
でした。

 NORADとFAAの脅威に対する関心が全く異
なっていたことから、情報共有や連携は円滑にいっ
ていなかったというのが当時の実態です。

▼国家安全保障会議(NSC)の機能不全

 NSCは、国家安全保障に関する問題について、
軍、関係省庁・機関の政策や機能を調整するととも
に、国内、対外、軍事政策の統合に関して大統領に
助言することにあります。

 そのため、NSCはインテリジェンス・コミュニ
ティーから、重要なインテリジェンスを吸い上げ、
全局面を把握する責務を負うことになっています。

 しかし、9.11テロではこの中枢機構が十分に
機能しておらず、国内外に対する対応や連携に関す
る指示が適切になされていませんでした。

 FAAは、2001年5月1日から9月11日ま
での間、27もの特別警備概要を出しましたが、そ
の中に自爆テロや旅客機がテロリストの武器となる
可能性についての警告は一つもありませんでした。

 FBI本部内ではテロの脅威について議論された
ものの、それが末端の職員まで伝わっていたかは定
かではありません。アシュクロフト司法長官は、テ
ロの脅威についてCIAなどから説明を受けていま
した。

 司法長官は、FBIやINS(移民帰化局)に指
示を与える権限を持っていましたが、当然FBIが
何らかの対策をとっているだろうと推測し、特段の
指示は与えていませんでした。

 CIAは8月6日の「ビン・ラディンはアメリカ
を襲うことを決定した」と題したPDBで、ビン・
ラディンのアメリカ攻撃計画は目下進行中との見解
を示しました。

 ところが、この後すぐには、NSCにおいてアメ
リカにおけるテロ攻撃の可能性についての会議が開
催されることはありませんでした。


 以上のように、それぞれの関連組織において、テ
ロを示唆する何らかの情報はありました。しかし、
それらが適切にNSCに上がっていき情報が統合さ
れ、適切な判断がなされるということはありません
でした。

▼9.11テロ調査報告書による問題点の結論

 以上のような調査を踏まえ、2004年7月22
日に9.11委員会が出した最終報告書には、当時
のアメリカにおけるテロに関する認識やインテリジ
ェンスの問題点について次のようにまとめてありま
す。

(1) 第一にイスラム原理主義者によるテロ活動を、
アメリカに対する新たな脅威と見なすかどうかをめ
ぐって、政府高官の認識が定まっていなかった。

(2) 第一の問題が理由となって、9.11テロが発
生するまでテロ対策が国家安全保障上の最優先事項
に設定されていなかった。

(3) テロリズムという脅威に対抗する上で、インテ
リジェンス・コミュニティーに属する各省庁の能力
に限界があった。

(4) インテリジェンス・コミュニティーに属する省
庁間での情報共有が不十分で、職務分担が不明確で
あった。さらに中央情報長官(DCI)のインテリ
ジェンス・コミュニティー全体に対する指導力に限
界があった。

(5) テロに関連する情報(インフォメーション)は
あったが、それらをつなぎあわせる「想像力が欠如」
していた。

▼9.11テロ調査報告書によるインテリジェンス
の組織上の問題点

 そして改善すべきインテリジェンスの構造上の問
題点として、次の点が挙げられています。

(1) 統合的な情報業務を遂行する上で組織構造的な
壁(縦割り行政、いわゆるストーブパイプ)がある。

(2) 国内と国外のインテリジェンス活動を統括する
ような共通的な業務上の指針や基準が欠落している。

(3) 政府全体としての情報に関する資源を効果的に
運営する管理能力が分割されている。

(4) 中央情報長官(DCI)として情報収集の優先
順位の設定や収集手段に関する統制力が弱い。

(5) DCIは少なくとも三つの役職を兼務しており
業務過多で、インテリジェンス・コミュニティーの
統括者としての機能を十分に果たしていない。

(6) インテリジェンス・コミュニティーに関する業
務は複雑で、かつ秘匿しすぎている。


 以上を見ると、調査報告書は、当時の9.11テ
ロの問題点を的確に指摘していると思います。

 次回は真珠湾奇襲と9.11テロにおけるインテ
リジェンスの失敗を比較したいと思います。



(つづく)


(ひぐちけいすけ(インテリジェンスを日常生活に
役立てる研究家))



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【著者紹介】

樋口敬祐(ひぐち・けいすけ)
1956年長崎県生まれ。拓殖大学大学院非常勤講師。
NPO法人外交政策センター事務局長。元防衛省情報
本部分析部主任分析官。防衛大学校卒業後、1979年
に陸上自衛隊入隊。95年統合幕僚会議事務局(第2
幕僚室)勤務以降、情報関係職に従事。陸上自衛隊
調査学校情報教官、防衛省情報本部分析部分析官な
どとして勤務。その間に拓殖大学博士前期課程修了。
修士(安全保障)。拓殖大学大学院博士後期課程修
了。博士(安全保障)。2020年定年退官。著書に
『国際政治の変容と新しい国際政治学』(共著・志
學社)、『2021年パワーポリティクスの時代』(共
著・創成社)、『インテリジェンス用語事典』(共
著・並木書房)


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(代表・エンリケ航海王子)

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