───────────────────
ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
合わせは以下よりお気軽にどうぞ
E-mail
hirafuji@mbr.nifty.com
WEB
http://wos.cool.coocan.jp
───────────────────
こんにちは、エンリケです。
「我が国の未来を見通す」第15回です。
冒頭文は今話題の
「あの戦い」
です。
ウクライナが
「欧州最強の通常戦力を過去持っていた」
ことを、こんかい初めて知りました。
さっそくどうぞ
エンリケ
追伸
今回の戦いを通して、
閣下のおっしゃる「明日は我が身」と気と褌を引き
締め直した日本人がいかほどいたのか?
非常に気になります。
ご意見・ご感想はコチラから
↓
https://okigunnji.com/url/7/
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
───────────────────────
我が国の未来を見通す(15)
少子高齢化問題(15)
具体的「少子化」対策の提案(その5)
宗像久男(元陸将)
───────────────────────
□はじめに(ウクライナ戦争について)
私は、毎週月曜日夜発信の本メルマガを前週の木
曜日ぐらいには完成して送信することにしています。
この4日間の情勢の行方が読めないことから、ウ
クライナ情勢についてはこれまで一度も触れないま
までした。正直に申し上げれば、首脳会談が行なわ
れようとしている間は、戦争は起こらないことを歴
史は教えていますので、今週明けまでは、米ロの外
相および首脳会談が調整されていたので、首脳会談
に期待していました。
それが破綻したことがわかった今週初め、戦争が
まじかに迫っていることを見積もりつつも、24日、
これほど早く戦争の火ぶたが切って落とされるの
は予想していませんでした。それにしても、ロシア
(ソ連)はこれまで何度もオリンピックを利用して
きたという事実があるので、この点では本当に「歴
史は繰り返す」ものだと感心しています。
今後、この戦争がどのように展開するか、今日時
点で見積もることは難しいと考えますが、マスコミ
や有識者が全く触れないウクライナの軍事力につい
て少し触れておこうと思います(すべて公開されて
いるものです)。
ロシアとウクライナ戦力較差は、ウクライナ1国で
は逆立ちしても勝負にならないほど大きいのは明白
ですが、読者の皆さんは、1991年の独立当時、
ウクライナの通常戦力は欧州で最強だったことをご
存じでしょうか。ウクライナは当時、総兵力78万
人、戦車6500台、装甲車両7000台、火砲7
200門、航空機2000機など巨大な戦力を保有
していたのです。
それがなぜ弱体化したかの細部は省略しますが、2
3年が経過した2014年3月、つまり、クリミア
半島を失う危機に直面した時、総兵力は20万人に
落ち込み、そのうち即時投入できる兵力は6000
人に過ぎず、戦車・装甲車など機動装備は燃料が不
足し、バッテリーも除去されており、600機の航
空機のうち稼働するのは100機もなかったといわ
れます。
その上、クリミア危機の半年前の2013年10月
にウクライナ政府はほとんど準備もないまま「徴兵
制」の廃止を宣言したこともあって、クリミア半島
危機でウクライナ軍はいかなる措置も実行する能力
がなく、欧州最強レベルの通常兵力を保有していた
ウクライナは戦争を遂行できない国に転落していた
のでした。
特に、何ともショックなのは、クリミア半島に駐留
していたウクライナ軍人の大半が抵抗を放棄しただ
けでなく、「ロシアの軍人になる道」を選択したの
でした。
人類史上これほど強力だった軍隊がこれほどの短期
間に没落した事例は探すのが難しいと言われていま
す。現在は、18か月の兵役制度は「徴兵制」を維
持した状態で、「契約」による職業軍人の規模を増
やしていますが、それでも、世界第2位のロシアに
比し、22位のウクライナは、総兵力のみならず、
海空戦力を含む通常戦力の質・量ともに、残念なが
ら“戦い”にはならないでしょう。
よって、NATOに何としても入りたいウクライナ、
それを絶対阻止したいロシアですが、この戦争の
結果、ウクライナの“夢”が実現する可能性は低い
と考えるのが妥当でしょう。
ロシアの行動を非難することは当然としても、この
戦争を他山の石として、「明日は我が身」、改めて、
自らの国防力(ハード・ソフト両面)を強化する
重要性(必要性)を多くの日本人に気づいてもらい
たいと思っています。
今日(24日)の国会で「今こそ、日本の得意な平
和外交を発揮すべき」と首相に詰め寄る野党議員が
おりました。正気ではないと考え込んでしまいまし
たが、「少子化」の折から「10増10減」などと
ケチなことを言わず、国会議員が先頭に立ってその
数を減らして、その分を防衛費に回した方が日本の
将来は安泰ではと、またしてもテレビに向かってつ
ぶやいてしまいました。長くなりました。
▼「養子縁組」と「里親制度」
さて、気を取り直して、我が国「文化」を見直しで
きるかどうかの観点から、「養子縁組」と「里親制
度」も取り上げ、「婚姻」以外の「少子化」対策を
総合的に考察してみたいと思います。
我が国のみならず、「家父長制」を基本とする「家
族制度」を採用している国は、家長・稼業の後継者
や財産の相続者を得るための「養子縁組」制度が必
要とされてきました。この制度の歴史は古く、古代
ローマにおいてすでにあったようですし、我が国の
場合は、「大宝律令」の中に「養子縁組」の制度が
定められていました。
「養子縁組」とは、いわずもがな「実の親子関係の
ない人との間で、親子関係、またそれを通じた親族
関係を結ぶことを可能にする制度」ですが、最近で
は、子供を授かることができない若い夫婦が、子育
ての喜びのために養子をもらうケース、虐待のせい
で実の親のところに戻れない幼い子を、実の親と切
り離して養子にするケースなども増えてきています
。
「養子縁組」の制度は法律でこと細かに決まってお
り複雑ですので細部は省略しますが、我が国の場合
は、縁組数自体は年間8万件以上(アメリカに次ぎ
第2位の件数)ありますが、依然として、家業、財
産、家の苗字、お墓などを維持するための養子縁組
が主になっています。
これに対して、たとえば、アメリカでは、恵まれな
い子供に家庭を与えるための養子縁組制度、すなわ
ち「子のための制度」として養子縁組(アドプショ
ン)が導入されております。また、1990年代に
児童虐待が深刻化したことから、クリントン政権時
に「養子縁組と安全な家族法」が成立し、養子縁組
を増やすために国を挙げて取り組んできたという歴
史があります。
この結果、アメリカでは、「養子縁組」の認知度も
非常に高く、国民の約3人に1人が養子縁組を考え
たことがあるとアンケート調査に回答しているよう
で、実際に、年間12万件を超える養子縁組が成立
しています。このような社会的な関心の高さを背景
に、養育費の税控除(1世帯あたり最大1万256
0ドル)などもあります。
欧州においても、第1次世界大戦により孤児が増加
したことから、「子のための養子縁組」に関する養
子法制が導入されている国が増えました。フランス
においては、要保護児童の斡旋件数が年間約550
0件と、児童の養子についてはアメリカに次いで多
く、かつそのうち3分の2が国際養子縁組となって
います。つまり、この点についても「少子化」対策
に貢献していることになります。
逆に、「平均出生率」が世界最低の韓国は、儒教文
化の影響で血縁関係を重んじるため国内養子縁組が
進まなかったこと、未婚の母が社会で容認されない
ため子供を養育するのが困難なこと、母子家庭への
支援策が少ないこと、などがその背景にあるのも事
実のようです。
さて、我が国の「養子縁組」です。我が国は、昭和
63(1988)年、子どもが生涯にわたり、安定
した家庭で特定の大人の愛情に包まれて育つために
「特別養子縁組」を制度化しました。
「特別養子縁組」は、従来の「普通養子縁組」と違
い、養子の続柄を「養子(養女)」と記載するので
はなく、「長男(長女)」と記載されることをはじ
め、「普通養子縁組」が養い親(養親)と養子の双
方に制限が少なかったのに比し、「特別養子縁組」
は、養親は原則25歳以上で配偶者があること、養
子は原則6歳未満であること、縁組が成立する前に
「6か月以上の監護期間(同居して養育する期間)
を考慮する」といった要件があります。
実際に縁組が成立した件数は、1988年から20
20年までの33年間に延べ1万6052件と、本
制度が成立した当初は、年間1000件を超える年
もありましたが、その後減少し始め、近年やや回復
しているものの令和2年度は693件にとどまって
います。
我が国にはまた、「里親制度」という制度がありま
す。これは、「児童福祉法」に基づいて、親の病気、
家出、離婚、その他いろいろな事情により家庭で
暮らせない子供たちを自分の家庭に迎え入れて養育
する制度です。件数としては、毎年約6000人弱
が里親として登録され、対象となる子供を養育して
います。この人数をどのように評価するかは難しい
ですが、「東日本大震災」で福島の遺児・孤児17
00人のうち、約9割は、“親族里子”だったとい
う事実もあります。
政府も「少子化対策」の一環として、「里親・養子
縁組制度の促進と広報・啓発」を掲げてはいますが、
依然として、広く国民に普及して少子化対策と功
を奏しているとは言いがたいのが現状でしょう。
また我が国では、年間約20万人の妊娠中絶が行な
われているといわれます。それぞれ事情があるにし
ても、「少子化」対策からみればもったいない話と
思ってしまいます。マスコミでは時々、「赤ちゃん
ポスト」も話題になりますが、日本では熊本市に所
在する慈恵病院のみで、これまでの件数もわずかに
約150人ほどです。慈恵病院が学んだとされるド
イツには同様の施設が100カ所、イスラム教国家
のパキスタンなどでも300カ所もあるといわれて
います。
個々の人生やプライベートな部分にどこまで踏み込
むかは難しく、デリケートな問題でありますが、人
間の判断が社会の風潮や雰囲気に左右されることは
よくあることなので、今後の取り組みによっては期
待が持てなくはないと考えます。
▼どこまで「少子化」対策に踏み込むか?
以上、「少子化」対策を真剣に考えれば考えるほど、
その範囲はかなり広いことが理解できます。
それを前提に総括しますと、「少子化」対策の基本
は、「どのような形でも子供がたくさん産まれ、育
つ」ことが可能になればいいわけですが、とは言っ
ても、中国のように、政府(共産党)が「3人子政
策」に舵を切り、(お金のかかる)塾を強制的に閉
鎖させるというような強硬手段を行使することは我
が国では不可能です。
ならば、国民の多くに「いかにして子供をたくさん
作ってもらうか」を主に対策を練るしかほかに方法
がありません。
前回まとめましたように、その対策は、(1)「結婚」
を前提にして、「婚姻数」と「子だくさん家族」の
増加のために国を挙げてあらゆる手立てを考える、
(2)「不道徳」な面に目をつぶるか、(可能ならば)
社会的に認められる“日本なりのスタイル”で「婚
外子」を容認して国家や社会が支援する、の2形態
の両方、あるいはどちらかを重視した選択肢が白紙
的には考えられます。
(2)の選択肢から先に考えてみましょう。つまり、我
が国が諸外国のように「婚外子」、つまり「結婚」
を前提にしないで子供を作る(増やす)ような“風
潮”を拡大できるかどうか、言葉を代えれば、トッ
ドの警鐘のような我が国の「文化」ともいうべき「
家族」そのものを自らの手で大々的に壊すことを容
認できるかどうかとも言えるでしょう。
遠い将来は別にして、急激な変化は無理と考えるの
が妥当ではないかと考えますが、一方で、「少子化」
対策の観点で言えば、「婚外子」をまったく拒否
する社会も問題でしょう。現状では、わずかに約1
8万の未婚の母世帯から、毎年の出生数の2.3%
しか「婚外子」は誕生しませんが、「子育て」の苦
労が際立っているのは明らかです。
実際に、厚生労働省の調査によれば、母子世帯(さ
すがに未婚の母世帯の細部データはありませんでし
た)の平均就労収入は、181万円にしか過ぎず、
女性の平均給与所得269万円の7割弱に留まって
います。また、子供の進学率も高校など93.9%
(全世帯96.5%)、大学など23.9%(全世
帯53.7%)と低く、生活保護受給率も14.4
%(全世帯3.2%)も高くなっているなどのデー
タがそれを証明しています。
それに対して、すでに国や社会がさまざまな支援を
実施していることは明らかで、「児童扶養手当」と
して児童1人の場合4万2000円を上限(所得な
どによって一部支給あり)に支給され、2人目50
00円、3人目以降3000円と加算されます。こ
ちらは満18歳以降最初の3月31日までとありま
すので、高校卒業までは支援があるようです。
これらの額が多いか少ないかはさまざまな意見があ
ることでしょう。額を増やせば、「母子世帯」(中
でも「未婚の母世帯」)を奨励しているように誤解
されるでしょうし、そうかと言って、現状程度では、
両親が存在する世帯同様の子育てに支障を来す可
能性もあります。
世の中には「子供1人産めば1000万円支給する。
これが少子化対策だ」を明言する人もいますが、
あまりに乱暴です。理由は、親の“自助努力の精神”
を奪ってしまうからです。
「婚姻」に代わる“日本なりのスタイル”の考案、
そして短期間の普及もそう簡単ではなさそうです。
「何か」をきっかけにして普及拡大する可能性は大
いにあるとは考えますが、その風潮が我が国の「文
化」として定着するには時間がかかると考えざるを
得ないでしょう。
理由はともあれ、未婚の母となって「子供を産み、
育てる」ことは当分、決死の覚悟が必要なことが言
うまでもないことでしょう。当事者たちの自助努力
を阻害しない程度に、個々の事情に応じてきめこま
かく国や社会がその支援策を拡大していくことが現
実的な選択肢と考えます。
その中には、「養子縁組」や「里親制度」など、血
縁地縁を超えた「子育て」制度の充実も必要不可欠
でしょう。個人の人生に深入りすることは難しいで
すが、この世に命を持った子供を何としても育て、
立派な人生を送ってもらいたいと国や社会が支援す
る、つまり国を挙げて「命を大切にする」(「命の
尊厳」を第1に考える)との強い意志の表明と普及
こそが「少子化」対策の“1丁目1番地”と思うの
です。
次回、(1)の「婚姻」を前提にした具体的な「少子化」
対策を提案し、「少子化」対策をまとめたいと思
います。
(つづく)
(むなかた・ひさお)
宗像さんへのメッセージ、ご意見・ご感想は、
このURLからお知らせください。
↓
https://okigunnji.com/url/7/
【著者紹介】
宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、
陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇
宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、
北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上
幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東
北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸
将)。日本製鋼所顧問を経て、現在、至誠館大学非
常勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、
セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常
勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自
衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動
きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)
▼きょうの記事への、あなたの感想や疑問・質問、
ご意見をここからお知らせください。
⇒
https://okigunnji.com/url/7/
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
PS
弊マガジンへのご意見、投稿は、投稿者氏名等の個
人情報を伏せたうえで、メルマガ誌上及びメールマ
ガジン「軍事情報」が主催運営するインターネット
上のサービス(携帯サイトを含む)で紹介させて頂
くことがございます。あらかじめご了承ください。
PPS
投稿文の著作権は各投稿者に帰属します。
その他すべての文章・記事の著作権はメールマガジ
ン「軍事情報」発行人に帰属します。
最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝し
ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。
●配信停止はこちらから
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com
----------------------------------------------
発行:
おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)
メルマガバックナンバーはこちら
http://okigunnji.com/url/105/
メインサイト
https://okigunnji.com/
問い合わせはこちら
https://okigunnji.com/url/7/
---------------------------------------------
Copyright(c) 2000-2022 Gunjijouhou.All rights reserved