配信日時 2022/02/25 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】ウクライナ危機──キンジャール空中発射ミサイル (1)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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どうぞ
 
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WEB http://wos.cool.coocan.jp

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こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
分隊支援火器といえばこれ!
ミニミ/M249です。

『ミニミ軽機関銃』
クリス マクナブ (著), 床井 雅美 (監修), 加藤 喬 (翻訳)
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武器オンチの日本人には
特におススメです。

冒頭文は必読です。

インテリジェンスの世界で知られる孫子
も「己を知る」ことの戦略的緊要性を指
摘してますね。

「彼を知りて己を知れば、百戦して殆うからず」
「彼を知らずして己を知れば、一勝一負す」
「彼を知らず己を知らざれば、戦う毎に
必ず殆うし」





では今日の記事、
さっそくご覧ください。

きわめて重要な内容です。


エンリケ


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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編 Takashi Kato  

ウクライナ危機──キンジャール空中発射ミサイル
(1)

加藤喬(元米陸軍大尉)

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□他者の痛みに鈍感な欧米指導者─日本人の持つ
「非対立の心」が世界を救う

ワクチン接種をめぐり、欧米の首脳らが自国民の分
断を煽る発言に走っています。
 
「未接種者に対する我々の我慢も限界に近づいてい
る。彼らのワクチン拒否のために全アメリカ人が犠
牲を払っているのだ。(科学に従い)正しい決断(
接種)をするべきだ」(バイデン大統領)
 
「接種義務化に反対するトラック運転手らが首都オ
タワを目指しているが、この連中は『泡沫のごとき
少数派』だ。彼らの意見は容認できるものではない。
科学に従って接種し、お互いを守り、自由と権利
を維持するために立ち上がったカナダ人の代弁者で
はない」(トルドー首相)
 
「フランスの全国民を怒らせるつもりはない。だが、
未接種者だけは徹底的にウンザリさせてやる。こ
れが私の戦略だ。刑務所送りにこそしないが、接種
を受けるまで連中の社会生活を最大限制限する。レ
ストランにもカフェにも劇場にも映画館にも行けな
くしてやる」(マクロン大統領)
 
 国の最高指導者らが率先して人心を分断する図は、
不可解かつさもしいものです。彼らは一様に「科
学に従え」を繰り返しますが、この主張には人間心
理への洞察が不足しているのではないか。
 
 身近な例を挙げれば、日本には「ふぐ料理」「レ
バ刺し」「生牡蠣」「刺身」を、アメリカには「生
焼けバーガー」を愉しむ人々がいます。食中毒にや
られたくないのであれば、科学的所見に従い避ける
のが望ましいのでしょう。しかし人は時として「危
険と美味」を天秤にかけ後者に軍配を上げることも
あります。
 
 趣味の世界も同様で、「スカイ・ダイビング」「
ロック・クライミング」「スキューバ・ダイビング」
「サーフィン」「オートバイ」の愛好者は「生命
の危険と高揚感を秤(はかり)にかけ、後者に価値
を見出します。日常生活また然り。
 
 車を運転する人の2人に1人は50年のドライバ
ー人生中、死亡事故を起こしたり巻き込まれたりす
るとの統計がありますが、大多数のドライバーは危
険より車の利便性を選び日々ハンドルを握ります。
 
 事程左様に、科学や統計を妄信すれば自転車に乗
ることや泳ぐことはおろか、転落を避けるため自宅
の二階に行くこともできない羽目になりましょう。
煎じ詰めると、ヒトはリスクと利益のバランスをと
りつつ毎日生きているのです。ワクチン接種も同じ
ことです。
 
 ここで忘れてならないのは、リスクを許容する基
準は人によって千差万別だという事実。事故死の確
率が極めて低いからといって、嫌がる友人にパラシ
ュートを背負わせ飛行機から蹴落とすわけにはいき
ません。
 
 逆に「騙されたと思って食べてみろ」と知人にレ
バ刺しを勧められても私は箸をつけないでしょう。
どこまでリスクを冒すかの判断はあくまで個人のも
のだからです。
 
「私は科学を代表する者だ。私への批判は科学を批
判することだ」と公言する米国立感染症・アレルギ
ー研究所所長のファウチ博士といえども、ワクチン
を体内に入れるか入れないかの決断を個人に代わっ
て下すことはできません。
 
 ちなみに、米仏加などで施行されたワクチン義務
化が「高い接種率が政権浮揚につながる」との読み
に基づくものだとしたら、それは「科学に従う」の
ではなく「科学の政治利用」……非民主的な振る舞
いです。バイデン、トルドー、マクロン三氏の尖っ
た物言いには、そんな邪推もしたくなります。
 
 閑話休題。欧米政界のエリート三氏が「他を顧み
ず接種を押し通そうとする態度」はどこから来るの
か? 「空気を読む」国民性を差し引いても、接種
義務化はもちろん「未接種者へのパワハラ発言」な
しに接種率80パーセントを成し遂げた日本の総理
らに比べると、バイデン氏らの猪突猛進ぶりは異様
です。
 
 この「自分だけが正しい」との確信は「世の中に
は唯一絶対の真理や神が存在する」と考えるグレコ
ローマン文化の産物でしょう。自らの正義を疑わな
い者たちは、他者の痛みに鈍感なのです。
 
これとは対照的に、日本人は八百万の神、すなわち
「自然のすべてに神が宿る」という世界観を古来よ
り育んできました。この大らかさが、意見を異にす
る人々を受け入れる「懐の深さ」につながっている
ようです。複数の真理を認める「度量」と呼んでも
よいでしょう。安倍、菅、岸田三氏の接種をめぐる
言動がいたって寛容なのもこのためではないかと思
います。
 
 パンデミックへの対応を通じ、私は日本人が持つ
「性根の優しさ」を再発見した気がします。ただ一
つの真理に拘泥しないからこそ、自分とは異なる視
点にも理解を示せるのです。
 
 翻って、現下の国際社会は自国の正しさ、正当さ、
正義によってがんじがらめになっています。この危
険な自縛を解くカギは、ことによると、日本人が生
来持っている「非対立の心」なのかも知れません。
もちろんそのためには、まず、欧米や近隣諸国が一
目置くだけの「力」を付けることが先決。日本が目
指すべきは「心優しき剣豪」なのです。
 
 
▼キンジャール空中発射ミサイル(1)

 兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があ
ります。刀を抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ
「鞘の内の勝ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまら
せる圧倒的な破壊力のことです。「平和を望むがゆ
えに兵器を手放せない」。人類が陥って久しいこの
ジレンマの裏面が「抑止力」なのです。

「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

 本校執筆時の2月17日現在、バイデン政権が予
測していたウクライナ戦争は勃発していません。一
部のロシア軍部隊が撤退を始めたとの報道がある一
方、東ウクライナのドンバス地方が砲撃されたとの
ニュースも飛び交っています。

 巻頭言でも触れましたが、ウクライナ危機に関与
する国々にはそれぞれ大義名分があります。ソ連邦
の崩壊を「20世紀最大の悲劇」と見るプーチン大
統領にとって、かつてソ連の一部だったウクライナ
をロシアの覇権下に取り戻すことは正当かつ必須の
使命に違いありません。

 一方、冷戦中「ソ連封じ込め」を目的に結束した
北大西洋条約機構(NATO)諸国から見れば、ウ
クライナを軍事的に支援し「ロシアの力による現状
変更」を阻止するというのが錦の御旗です。

 またソ連崩壊で民族の独立を果たしたウクライナ
の人々は、欧米諸国を味方につけてロシアによる併
合を凌(しの)ぎ、民族自決の権利を恒久的に維持
したいのが本音でしょう。こういった思惑を背景に、
各プレーヤーはさまざまな兵器を配備し「度胸比べ」
の睨み合いを続けています。

そこで今回から数回にわたり、ロシア軍が投入準備
を整えたとされる兵器システム「キンジャール空中
発射ミサイル」を取り上げます。

 今回のビデオによると、ロシア軍は質量ともにウ
クライナ軍を凌駕する戦力を備えています。一対一
の戦いなら、ウクライナ軍に勝算はないとされてい
ます。したがって、仮にウクライナ侵攻が実行に移
される場合、NATO諸国による軍事介入を阻止す
ることが迅速な勝利の前提条件になります。この目
的を達成するため、バルト海に面するロシア西部の
都市カリーニングラードに配備されたのがキンジャ
ール空中発射弾道ミサイルです。

 キンジャールはミグ31K迎撃機から空中発射さ
れ、全航程で迎撃回避運動を行なうことができます。
マッハ3近い速度と実用上昇限度25000メートルを
誇るミグ31Kから発射することで、原型となったイ
スカンデル短距離弾道弾に比べ4倍近い射程を持つ
と言われています。

教材ビデオ:
 Dont intervene in #Ukraine - #Kinzhal has EU
capitals in range! - YouTube

(本エピソードは0:14から始まります)

https://www.youtube.com/watch?v=MqNNJBV3hO4&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=239

基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Bring out(ブリング アウト)持ち出す 取り出す
Dreaded(ドラデッド)非常に恐ろしい
Platform(プラットフォーム)基本 システム

シナリオ(カウンターを3:02に合わせてくださ
い)

To achieve this, Russia has brought out one of
 its most dreaded weapon platforms, the Kinzha
l equipped MIG-31K strike aircraft.

(外部介入を阻むために、ロシアは最も恐れられて
いる武器システムの1つであるキンジャール空中発
射ミサイルを装備したミグ31Kを持ち出してきた)

(今回のエピソードは3:12まで続きます)

英語一言アドバイス:
日本語になっているplatformは「駅の乗降口」です
が、たとえば銃器用語でAR15 platformといえば、
AR15小銃の基本構造を備えた「土台となるライフ
ル・システム」を指します。

発音サイト:
platformの発音How to pronounce platform | HowToPr
onounce.com
https://www.howtopronounce.com/platform

参考サイト:
キンジャール空中発射ミサイル Kh-47M2Kinzhal
 - Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Kh-47M2_Kinzhal

INF条約とキンジャール空中発射弾道ミサイルの関
係性、ロシアの思惑(JSF) - 個人 -Yahoo!ニュース
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20181029-00102193

ミグ31Kキンジャール装備型ミサイル母機 MiG-31
 (航空機) - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/MiG-31_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)


(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン(近刊)』(いずれも並木書房)
がある。
 
 
追記

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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
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ブックレビューの投稿はこちらから
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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