配信日時 2022/02/21 20:00

【我が国の未来を見通す(14)】 少子高齢化問題(14) 具体的「少子化」対策の提案(その4) 宗像久男(元陸将)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
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こんにちは、エンリケです。

「我が国の未来を見通す」第14回です。

「わが国は現在、千年規模の価値観大転換点にある」
と感じていますが、今回の記事を拝読すると、改め
てそう感じます。


●●以前と以後

でわが国朝野を支配する価値観が180度変わる


そういう時代の大転換点の真っただなかに
いま私たちはいるのでしょう。


さっそくどうぞ

エンリケ


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我が国の未来を見通す(14)

少子高齢化問題(14)
具体的「少子化」対策の提案(その4)

宗像久男(元陸将)

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□はじめに

 1月31日に墜落したF15のパイロット2名の
残り1名が2月13日、ようやく発見され、ご家族
のもとに帰ることができました。2週間もの間、酷
寒の海の中で放置されていたことを思いながら、殉
職者の無念さやご家族の悲しみ、加えて、現役時代
に部下や仲間たちを失った経験がよみがえり、本当
に胸が痛みます。

 陸海空自衛隊の殉職者の累計は、昨年の追悼式(
11月20日)時点で2019柱を数えました。「
任務遂行時に不幸にして職に殉じた隊員を追悼する」
ために、毎年、追悼式が挙行され、ご遺族はもち
ろん、(鳩山総理以外は)内閣総理大臣も必ず出席
され、追悼の辞を捧げられます。

各県などでも、主要な駐屯地(基地)で年に一度は
当該地域の殉職者の追悼式を必ず挙行します。もち
ろん、国家や社会のために不幸にして命を落とされ
る公務員は、自衛隊員以外、警察官や消防士なども
おりますが、自衛隊の場合は、国防という危険と隣
り合わせの任務を遂行するため、いくら注意を払っ
ても殉職者をゼロにすることは難しいことも事実な
のです。

私は、自衛官OBの1人としていつも無念の思って
いるのは、このような事故や殉職者の発生に対する
マスコミの報道姿勢や国民の関心が、ほかの事故、
たとえば、殺人とか交通事故などと同じような感覚
でとらえられていることです。せめて、ニュースの
最後に殉職者に対する敬意やねぎらいの言葉の一つ
も加えてほしいと願っています。

時々、私たちは時代の波とか社会の風潮で感覚が鈍
くなって、何が正常で何が異常かを判断する能力(
分別)が劣ってきているのではないかと考える時が
あります。

オリンピックの結果に一喜一憂している間も、ある
いは、コロナウイルスが感染拡大して多くの国民が
疲弊している最中にあっても、(憲法に明記されて
いない)自衛隊という組織の中で、空で、海で、そ
して陸で、限られた予算の中、酷寒や大雪に悪戦苦
闘しながら、身の危険を顧みず黙々と己の任務を全
うしている自衛隊員がいること、できれば、その結
果、国の平和や国民の安寧な生活が維持されている
ことを認識していただきたいのです。そして、命を
懸けた結果の殉職が決して“無駄死に”にはなって
いないことを理解していただきたいと願っています。

そのような認識と理解が、殉職隊員を見送る国民の
せめてもの礼儀であり、(できれば)義務であって
ほしいというのがOBの1人としてのささやかな願
いです。欧米諸国の軍人が頑強なのは、そのような
行為が“祈り”として国民の間に定着して後押しし
ていることも付け加えておきましょう。

ついでに言えば、現役時代から言い続けてきたこと
でもあるのですが、「自衛官が命を懸けて守るのに
“ふさわしい”国家に早くなってほしい」と。「そ
うしないと、自衛官がかわいそうだ」との思い、残
念ながら今でもぬぐい捨てることができません。

▼主要国の「婚外子」の増加と背景(続き)

さて前回の続きで、アメリカです。アメリカでは「
婚外子」が社会的・文化的に容認されつつあること、
国や社会全体が支援する仕組みを構築していると
の楽観的な考え方が根底にあるようで、「婚外子」
の増加が出生率そのものを押し上げていいます。

「婚外子」の割合(2017年)は、全体では約4
0%ほどですが、子細にみると、黒人(約69%)、
原住民(約68%)、ヒスパニック(約52%)、
白人(約28%)、アジア系(約12%)とその
順番がほぼ確定しており、アメリカ社会の特徴を物
語っています。

微妙な問題だけにこれ以上深入りすることは止めま
すが、最近、アメリカでは10代の妊娠・出産が問
題になっています。10代でシングルマザーになる
ことは貧困を産む要因ともなっている一方で、精神
的な面ではむしろ充実感を感じる少女も多いという
ことで、1人で子供を産み、育てようとする「選択
的シングルマザー」の増加が社会現象になっている
のです。

そのシングルマザーたちの子供を作る1つの方法と
して、「精子銀行」が大きな産業となっています。
全米におよそ30の精子銀行があり、ここを訪れる
女性の2割ほどがシングルであり、今までに全米で
およそ20万人、ニューヨークだけでも1万5千人
の子どもが生まれているといわれます。このような
現象は日本人にはなかなか理解できないかも知れま
せん。

アジアで最も「婚外子」の割合が多いニュージーラ
ンドの事情についても触れておきましょう。

ニュージーランドは、国全体で「ファミリーファー
スト社会の実現」との考えが定着しています。20
17年、当時37歳で首相に就任した女性のジャシ
ンダ・アーダーン首相が現職の首相として世界初と
なる6週間の産休を取得したり、国連総会に幼児を
連れて行ったりしたことで話題になりました。

「ファミリーファースト」を実現するため、まずは、
法律や制度、社会システム全体が「子育て家庭」を
最優先する形成になっていること、そして、夫婦・
子供たちなど家族の構成員全員が毎日、「家族事」
を最優先する行動とタイムマネジメントの努力を
することも定着しています。その結果、“楽しい子
育てエンジョイ・ライフ”を実現する環境が整備さ
れているようです。

ニュージーランドには、「パートナーシップ」とい
って、婚姻関係になくても2年間の同棲期間を経る
と事実婚となります。そのため、婚姻関係を結ばず
に、事実婚のまま何十年も一緒に暮らしていたり、
子供が居たりするカップルが多く存在します。それ
がニュージーランドではごく自然なことらしく、「
気がついたら一緒にいた」というようななりゆきで
カップルになる人が多く、互いが愛情をもって特別
の思いがあれば、約束はなくても硬い絆で結ばれる
ということのようです。

これら各国の諸事情を総括すると、国によって少し
差異はありますが、「結婚」と「子供」に対する考
え方が、私たち日本人が想像する以上には様変わり
しつつあることでは共通しています。

その結果として、良し悪しは別にしても、各国の「
少子化」を回避し、国や社会全体の活性化に寄与し
ているようにも見えるのです。

▼我が国の「婚外子」増加の可否

さて、主要先進国のような考え方を我が国にそのま
ま適用できるのでしょうか?

我が国の法律においては、「子どもは結婚した夫婦
から生まれるもの」という前提があります。フラン
スのPACS制度やニュージーランドのような“お
おらかさ”がない我が国にあっては、未婚の親から
生まれた子を持つ世帯は、補助や公的支援を受ける
ためにより煩雑な手続きを踏む必要があり、結果と
して、「婚外子」は不利益を受けてしまいます。「
できちゃった婚」が多いのもそのような理由がある
からです。

一方、「婚外子=不道徳」と決めつけたまま、「結
婚」と「子供を持つこと」の結びつきを強くしたま
ま放置すると、「非婚化」そして「少子化」がさら
に進むことを覚悟する必要があるでしょう。

厚生労働省の調査(平成28年)によれば、我が国
の母子世帯の総数は206万世帯、父子世帯数は4
0万5千世帯で、これらの世帯数はここ15年間ほ
ど一定です。その理由の9割弱は配偶者との離婚や
死別ですが、文字通りの未婚の母(シングルマザー)
世帯は18万世帯(9%弱)で、ここ数年間では
増加傾向にあります。

この数字を多いとみるか少ないとみるかが難しいよ
うに、先進国を見習い、我が国の「文化」ともいう
べき「家族」「結婚」「子育て」の考えを修正する
柔軟性が期待きるかどうかと考えれば、そう簡単で
はなく、悩ましいものがあります。

私は、内閣府の「少子化社会対策大綱」がこれら諸
外国の事情まで調査した結果として出来上がったも
のと信じたいですが、(以前に取り上げました)フ
ランスの歴史人口学者・エマニュエル・トッドの「
日本社会の基礎となっている『家族』の過剰な重視
が『非婚化』『少子化』を招き、かえって『家族』
を殺す」との警鐘に耳を傾けてみる価値はあると考
えます。

突き詰めれば、我が国の選択肢は、
(1)「家族」を重視して「少子化」を容認する
(我慢する)、
(2)「結婚」を前提にして「婚姻数」と「子だくさ
ん家族」の増加のために国を挙げてあらゆる手立て
を考える、
(3)「不道徳」な面に目をつぶるか、(可能ならば)
社会的に認められる“日本なりのスタイル”で「婚
外子」を容認して国家や社会が支援する、のいずれ
かではないでしょうか。

このままでは、(1)がますます拡大し、その結果が
さまざまな問題が生起することはすでに紹介しまし
た。

やはり、(2)と(3)を具体的に分析し、現実味のある
選択肢を採用するしか、「少子化」対策上、ほかの
手段がなさそうです。

次回以降、「養子縁組」「里親制度」を含めて、
「子供を作り、育てる」原点に立ちかえって再度考
えてみたいと思います。区切りがいいので、今回は
この辺にしましょう。



(つづく)


(むなかた・ひさお)



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 【著者紹介】

宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、
陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇
宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、
北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上
幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東
北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸
将)。日本製鋼所顧問を経て、現在、至誠館大学非
常勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、
セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常
勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自
衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動
きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)



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