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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
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こんにちは、エンリケです。
「我が国の未来を見通す」第12回です。
もしかしたら、今の我が国は、
いまだに国家総動員体制時の統治システムを
引き継いでいるのでしょうか?
ご指摘の通り、子供にかかる教育費は、
中学卒業後から本格化するのです。
現実をきちんと把握できなくなる宿命を持つ
「システム硬直化」への無関心は国民に災いを招き
ます。
さっそくどうぞ
エンリケ
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我が国の未来を見通す(12)
少子高齢化問題(12)
具体的「少子化」対策の提案(その2)
宗像久男(元陸将)
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□はじめに
本シリーズは、なるべく正確なデータに基づく分析
を心がけておりますが、時々不思議な定義にぶつか
ることがあります。たとえば、15歳から64歳を
「生産年齢人口」としていることです。人口動態の
統計上変更できないのかもしれませんが、今日のテ
ーマである高校・大学の教育費のうち、高校進学率
は、文科省の「学校基本調査」によれば、98.8
%です。この中には、高校中退者(1.3%)、不
登校者(1.6%)も含みますが、どう考えても9
5%以上の子供が高校まで進学していることになり
ます。
確かにアルバイトしている高校生もいるでしょうが、
この高進学率から、15歳から17歳を「労働力」
としてカウントし、「生産年齢」として定義するの
は無理があるのではないでしょうか。
私が中学校を卒業した昭和40年代前半でさえ、高
校進学率は70%を超えていましたので、この年齢
層を「労働力」としてカウントできるのは実態とし
て3割弱でした。いったいいつの時代の実態を定義
しているのか不思議です。
なぜ冒頭にこの話題を取り上げたかと言いますと、
「15歳になると『労働生産年齢』に達したので、
『児童手当』は不要」、つまり、「生産年齢」の定
義と「児童手当の打ち切り」が連動しているような
気がしてならないのです。しかし、親の教育費の負
担が大きくなるのはこれからなのです。その実態を
探ってみましょう。
▼高校・大学と教育費負担は続く
まず、高校の教育費はいくらかかるのでしょうか。
我が国は、2010年に「高校無償化法」が成立
し、原則公立高校の授業料が免除され、私立高校の
場合は同額の「就学支援金」が支給されることにな
り、その額は年11万8800円です。
ただし、世帯年収が約910万円を下回る世帯に
限られており、さらに世帯年収が590万円以下の
場合は「加算支給」として上乗せされます。この「
就学支援金」は、2020年4月より、年収目安が
590万円以下の世帯については一律39万600
0円まで引き上げられました。この額は、全国の私
立高校の授業料の平均水準といわれます。
これらもあって高校の教育費は、一昔前よりはかな
り減額されていますが、調査によると、3年間にか
かる学習費総額は、公立の場合は約135万円、私
立の場合は約311万円(約2.3倍)といわれま
す。ただし、これらには学習塾や家庭教師費など学
校外活動費は含まれていません。学校外活動費は、
公立の場合は約53万円、私立の場合は約86万円
がさらに上乗せされます。
前回紹介しましたように、「児童手当」を受給して
いた中学時代の教育費は、公立の場合は約150万
円でその4分の1に相当する36万円(月1万円)
は「児童手当」で充当できましたので、子供が高校
に入ると親の負担がかなり増大することをデータは
示しています。
次に大学の教育費です。まず大学の進学率ですが、
近年、年々上昇しており、大学・短大、専門学校の
進学率は2021年には55.8%に達しました。
つまり、おおむね2人に1人は高校卒業後に進学す
ることになります。
大学の場合は進学する学部によりますが、国立の
自宅通学の場合は、4年間で約528万円(下宿で
826万円)、私立文系の場合は、自宅約688万
円(下宿978万円)、私立理系の場合、自宅約8
24万円(下宿1114万円)といわれています。
よって、「児童手当」打ち切り後、子供を高校・
大学まで進学させた場合の教育費は、公立高校・国
立大学で約798万円、私立高校・大学で999~
1135(下宿1425万円)と見積もられます。
これらをすべて合計しますと、1人の子供を大学
まで教育した場合の育児・教育費の総額は、145
3万円~3214万円ほどかかることがわかります。
あらためて、世の親は大変なことがわかります。
これに対して、前回、積算しましたように、所得制
限がかからない世帯の第1子・第2子のみの児童手
当総額は1人当たり198万円、第3子は252万
円まで増額されるだけですので、「子供を作りたく
ない、作っても2人以下」、それ以上は「経済的負
担が大きすぎる」という今どきの親の気持ちが理解
できるというものではないでしょうか。
「“子供を産む”ことは“生活水準を下げる”こと
とイコールだ」との言われ方をする場合があります
が、このような実態を反映しているといえるでしょ
う。
▼フランスの分厚い「子育て支援」
それでは、諸外国の「児童手当」に相当するような
国の子育て支援はどうなっているのでしょうか。中
でも、我が国の「少子化社会対策大綱」の希望出生
率1.8をすでに上回る平均出生率1.88を誇る
フランスはどのような子育て支援を実施しているか
を見てみたいと思います。
調べ得る限り、最新のデータを探してみましたが、
数字には古いデータも含まれています。また、共稼
ぎあるいはどちらか一方の収入によりそれぞれの収
入上限があるのが普通ということも前もって断って
おきましょう。
まず、フランスでは、妊娠・出産にかかる医療費は
すべて保険適用です。その上、出産すると出産一時
金942ユーロ(1ユーロ130円として122,
460円)が支給されます。また、妊娠4か月から
3歳まで「乳幼児(育児)手当」として月額185
ユーロ(24,050円)支給されます。
しかも子供2人以上の家庭にはこれにプラスして「
家族手当」があり、支給額は、子供2人で月115
ユーロ(14,950円)、3人で262ユーロ(
34,060円)、4人で410ユーロ(53,3
00円)、その後、1人増えるごとに147ユーロ
(19,110円)追加されます。しかも「家族手
当」は20歳になるまで支給され続けます。
その上、子供が小学校に入ると、「新学期(準備)
手当」が新学期ごとに支給されます。6から10歳
までは1人当たり370ユーロ(38,100円)、
11歳から14歳までは391ユーロ(50,7
00円)、15から18歳までは404ユーロ(5
2,500円)と少しずつ加算されるようです。
これらを合計してみますと、フランスにおいては、
子供1人の場合は、「家族手当」がないため、総額
約176万円ほどですが、2人の場合は、子供が2
0歳になるまで総額約481万円、3人の場合は約
871万円、4人の場合は約1264万円と跳ね上
がります。
昨年は、コロナ禍の影響に伴う収入減を補填するた
め、「新学期(準備)手当」が最高500ユーロ(
65,000円)まで引き揚げられたことがニュー
スになりましたので、上記、子育て支援金がさらに
増額されたことになります。
これ以外に、「片親手当」も支給されます。収入
によって差異がありますが、子供1人につき、日本
円で月額約76,000円、1人増えるごとに月額
約2万円が増額されます。双子や子供3人以上の家
庭には週に1~2度、家事代行格安派遣サービスも
あるようです。
このように、国が子供を作りたい家庭を手厚く支
えている上、フランスでは学費はほぼ無料ですので、
かかる費用は給食代くらいです。大学は、原則、
在住地の大学に入りますので、受験地獄のようなも
のはなく、進学塾にも行く必要がありません。皆、
自宅から通うので、下宿代・アパート代も必要あり
ません。
さらに、各地に大小さまざまな保育施設があり、ベ
ビーシッターを家庭で雇う制度(アフリカからの移
民者などが多い)が普及し、育児と仕事が両立しや
すい環境が整っています。これらから、育児休業を
終えて復帰した母親の約6割は、フルタイムで勤務
しているといわれます。
いろいろな意見があるとは思いますが、フランスが
平均出生率1.88を維持している要因(背景)を
納得できるものと考えます。
▼ロシアの「母親資本」
ロシアの子育て支援にも触れておきましょう。19
99年ごろ、ロシアは、「年間70万人」という超
スピードで人口が減少し、平均出生率は1.16ま
で落ち込みました。それが、2012年には1.6
9、13年には1.71、14・15年には1.7
5まで回復しました。
出生率が増えた秘密の1つに「母親資本」という制
度を導入したことがあるといわれます。その概要は
次の通りです。
まず「母親資本」を得る資格は、(1)第2子以降を出
産した婦人、または第2子以降を養子縁組した婦人
(2)第2子以降を養子縁組した独身男性、(3)母親が
母親資本の権利を喪失したあとに、第2子以降の子
の親権を得た、または養子縁組をした父親、です。
その権利を得ると、年によって少し差異はあります
が、約45万3千ルーブル(1ルーブル2円で換算
すると約90万円)支給されます。
ロシアの年収は、日本円換算で46万円~170万
円ほどですので、「母親資本」の約90万円は、特
に田舎に住む人にとっては家が買えるほどの大金で
あり、「子供2人産むと、家を買える」ということ
が広まったようです。
出生率のV字回復には、長い育児休暇が取得可能な
ど、ほかの施策もあったようですが、「母親資本」
が“大きな動機”になったと結論づけられています
。
▼まとめ──「子供を作る」できれば「2人以上の
子供を作る」対策
正直、フランスやロシアと我が国とのあまりの差異
に言葉が出ません。両国に比べれば、我が国の子育
て支援はまさに“お茶を濁す”程度であることがわ
かります。ちなみに、「1人当たりGDP」は、フ
ランスと日本はほぼ同等、ロシアに至っては日本の
4分の1ほどです。
少なくとも「2人以上の子供を作る」家庭に対する
手厚い支援は必須でしょう。それも、両国のように、
子供を産まない、あるいは1人っ子の家庭が羨(
うらや)ましく思うほど差をつけるべきと私は考え
ます。また、「児童手当」は最低でも18歳まで延
長すべきでしょう。
我が国がこのような分厚い子育て支援を導入しよう
とすれば、必ず財源確保の問題が出てきて、目先の
問題に膠着する財政当局が反対するのは明白です。
また、必ず「不公平だ」と叫ぶ集団も出てくること
でしょう。
しかし、両国に見習うべきは、両国が人口減を国家
的危機と認識した上、それを食い止めて国力を衰退
させないため、国を挙げて必死になってその対策を
断行していることにあると考えます。
その「必死さ」が国民の間に広く伝搬して「子供を
増やす」雰囲気が出来上がっているのではないでし
ょうか。
次回、この延長で「婚外子」なども取り上げてみた
いと思いますが、対策が遅れれば遅れるほど出生率
のV字回復は困難になります。
コロナ禍の影響で、我が国にあっても「少子化」が
危機に瀕していることは明白なのですが、国会の論
争でも「少子化」対策が一向に話題にならないのは
不思議です。
(つづく)
(むなかた・ひさお)
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【著者紹介】
宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、
陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇
宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、
北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上
幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東
北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸
将)。日本製鋼所顧問を経て、現在、至誠館大学非
常勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、
セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常
勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自
衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動
きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)
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(代表・エンリケ航海王子)
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