配信日時 2022/02/04 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】国防権限法(1) 加藤喬(元米陸軍大尉)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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どうぞ
 
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WEB http://wos.cool.coocan.jp

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こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
分隊支援火器といえばこれ!
ミニミ/M249です。

『ミニミ軽機関銃』
クリス マクナブ (著), 床井 雅美 (監修), 加藤 喬 (翻訳)
2020/7/10 発行
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武器オンチの日本人には
特におススメです。


毎回本当に、読み応えある新鮮な内容ですね!
今回のお話も実に納得ゆくものです。
法治国家の根本的な問題点を指摘している気もします。

国防権限法のはなしも、実に面白いです。
この種のはなしを聞く機会はありそうでありません。

では今日の記事、
さっそくご覧ください。

きわめて重要な内容です。


エンリケ


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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編 Takashi Kato  

国防権限法(1)


加藤喬(元米陸軍大尉)

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□天下の『ニューヨーク・タイムズ』紙のお粗末な
記事

 米連邦捜査局(FBI)によると、2020年と2021年
は連続で全米の殺人件数が急増した模様です。公式
報告書である「統一犯罪白書」はまだ発行されてい
ませんが、両年ともこれまで最悪だった1990年代半
ばの高水準に達したと推定しています。憂慮すべき
事態を受け、1月18日付ニューヨーク・タイムズ
(NYT)電子版は、
1)武漢ウイルス禍によって社会全体に無秩序が広
がり、人々の道徳心や順法精神が減退した。
2)逮捕の際に死亡したジョージ・フロイド氏の事
件がきっかけとなってBLM(黒人の命も大切だ)
運動が活発になり、バッシングを恐れた警官が積極
的な犯罪防止策を手控えるようになった。
3)過去2年間の銃器販売が過去最高を更新したこ
とから、より多くの人々が銃を携行し使うようにな
った。
の3点を主因とする記事を掲載しています。
 
 一読するといずれも理にかなった説明に思えます。
しかし、ちょっと待ってください・・・パンデミ
ックはその名のごとく世界中で起きていますが、日
本を含めた諸外国で殺人事件が急増したというニュ
ースは聞きません。アメリカでのみ「人々の精神荒
廃が殺人増加につながった」との主張は今ひとつ根
拠が希薄です。
 
 「息ができない」そう繰り返して亡くなったジョ
ージ・フロイド氏をめぐる警察不祥事を機に、反差
別運動が野火のごとく広まったのは事実。しかしこ
の記事が触れていないのは、BLMが主導する「反
差別デモ」が政治色の濃い「警察解体運動」にすり
替えられたこと、そしてそこに左派マスコミとリベ
ラル派政治家が飛びつき、ひと握りの悪徳警官らの
所業を理由に警察全般を悪玉に仕立て上げたことで
す。
 
「警察対少数派」という対立の構図は、マルクスが
唱えた「階級」闘争を「人種」に置き換えたもので
す。ここに民主党系知事や市長らの警察財源削減が
追い打ちをかけ、多くの優秀な警察官が早期退職を
選びました。
 
 法執行機関支援の非営利団体「全米警察基金」に
よれば「警察組織の86パーセントで人手不足が常態
化している」とのこと。NYTはこの報告を無視し
「警官が犯罪防止を手控えている」との暗に批判的
な表現を使っています。
 
 1999年以降、アメリカでは銃器を購入する際
「即時犯罪照会システム」による身元調査が行なわ
れています。重罪犯や逃亡者、精神疾患のある人々
の銃購入を防ぐためです。正確な数字は不明ですが
、概ね95パーセントの申請はパスするようです。
FBIによれば、2020年1月から7月にかけて行なわ
れた即時犯罪照会の件数は1200万件超。この数字か
ら推測すると、2020年の銃販売件数が新記録だった
とするNYTの結論は妥当でしょう。
 
銃器製造事業者団体は「許可された申請のうち約5
00万件が新規購入だった」としており、「全米各
地で警察解体が叫ばれるなか反差別デモ参加者によ
る暴動略奪が頻発し、これまで銃器を手にしたこと
のなかった人々が自衛目的で購入し空前の増加につ
ながった」との見方を示しています。同一の統計に
正反対の解釈が成り立つ好例であり、マスコミの主
張を鵜呑みにせず自ら納得できる意見を持つことの
重要さを示唆しています。
 
 殺人事件急増には、NYT記事には出てこないも
う1つの要因があると思います。アメリカ司法制度
の「回転ドア」と呼ばれる致命的な欠陥です。分か
りやすい例を挙げて説明します。
 
 昨年11月、ウィスコンシン州のウォキショー市
では恒例のクリスマス・パレードが行なわれテレビ
中継もされていました。そこに1台の大型車がバリ
ケードを突き破って乱入。路上の人々を次々に撥ね、
6人死亡、子供を含む60余人重軽傷という凄惨
な光景が現出したのです。
 
 その場から逃亡し同日逮捕された容疑者はダレル・
ブルークス、39歳。暴行、性犯罪、複数回の保
釈中逃亡、重罪犯による銃所持、家庭内暴力など、
22年間に3つの州で犯罪に手を染めてきた常習犯
です。
 
 この事件の直前にも交際相手を自動車で轢こうと
した容疑で逮捕されています。ところが保釈され自
由の身となったダレル容疑者は19日後、同じ車で
今回の凶行に及んだのです。
 
 なぜか? 保釈裁量に際し、検察当局が犯歴調査
を怠ったからです。当然、ネバダ州から出ていた性
犯罪容疑での逮捕令状も一顧だにされませんでした。
 
 事程左様に「容疑者の人権」を偏重するリベラル
な検事や政治家は、重罪犯らをいとも簡単に社会に
解き放つ傾向があります。これが全米で連日のよう
に行なわれている「回転ドア」で、釈放され再び街
を跋扈(ばっこ)する凶悪犯らの毒牙にかかるのは
、いつも決まって善良な市民であり無垢な子供たち
です。
 
 ちなみにNYT記事は、殺人事件の「解決策」と
して銃規制を挙げています。もう一回、ちょっと待
ってください・・・ダレル被告のような常習犯は法
律など歯牙(しが)にもかけない文字通りの「無法
者」。銃規制に従うのは順法精神ある市民だけです。
 
 とすれば、銃器没収を謳うリベラル政治家や主流
メディアの論客らは、丸腰にされた一般市民を武装
犯罪者に差し出しているのも同然です。日本でもア
メリカでも主流マスコミは報道しませんが、銃を所
持する一般市民が犯罪を未然に防いだり、無差別殺
傷事件の拡大を防いだりする事例は多々あります。
NYTの報道姿勢には「銃イコール悪・犯罪」との
強い先入観があると感じます。
 
ベトナム戦争への米国介入のきっかけとなったトン
キン湾事件が一部捏造だったことを暴露するなど「
報道の自由の守護者」と高く評価されてきたNYT
ですが、世論が党路線で二分された昨今、時として
その底意を検証することも必要でしょう。
 

▼国防権限法(1)

 兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があ
ります。刀を抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ
「鞘の内の勝ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまら
せる圧倒的な破壊力のことです。「平和を望むがゆ
えに兵器を手放せない」。人類が陥って久しいこの
ジレンマの裏面が「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

今回とりあげる米国防権限法とは国防総省の活動や
計画に予算をつける法律のことで、毎年上下両院で
可決された後、大統領が署名して成立します。

昨年12月にバイデン大統領が署名した権限法では
、軍人給与の引き上げや武器装備品購入予算に加え
、台湾支援の活動も盛り込まれました。環太平洋合
同演習(Rim of the Pacific Exercise: RIMPAC)
への中華民国(台湾)海軍招待のことです。

 1970年代後半から米海軍は隔年でRIMPACを主宰し、
各国海軍と共に軍事演習を行なっています。海上自
衛隊の初参加は1980年。この際はヘリ搭載護衛艦
「ひえい」(2011年退役)とミサイル護衛艦「あま
つかぜ」(1995年除籍)、8機のP2-J対潜哨戒機
(1994年運用終了)を派遣しています。

ちなみに2012年にはロシア海軍が、2014年
には中国海軍がそれぞれ初参加していますが、これ
は軍人同士の交流を通じて信頼関係を築き、偶発的
な軍事衝突を回避するのが目的でした。

今回の中華民国海軍招待は事情がかなり異なります。
同国の世界保健機構加入や「中華民国」としての
五輪参加に異を唱える中国を念頭に置いた「台湾は
事実上の独立国」とのメッセージだと思うからです


前述の通り、同権限法は民主党と共和党が超党派で
可決しており、この意思表示は海軍省や国防総省の
みならず、米国議会が一致団結して台湾を支援して
いることを如実に示しています。

厳密に言えば国防権限法は「武器」ではありません
。しかし習近平国家主席がその成立過程と内容を正
しく理解すれば、台湾侵攻に対する強い抑止になる
ものと思われます。

教材ビデオ:
 Democrats and Republications have agreed
onething - stronger military ties with
Taiwan ! - YouTube

https://www.youtube.com/watch?v=q8XvE6ZJ1bI&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=237&t=237s

(本エピソードは0:17から始まります)

基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Bill(ビル)法案
Permit(パーミット)認める
RIMPAC(リムパック)環太平洋合同演習
Military exercise(ミリタリー・エクササイズ)
軍事演習

シナリオ(カウンターを0:50に合わせてくださ
い)

Importantly,the bill (National Defense Authori
zation Act) permits Taiwan to be invited to th
e Rim of the Pacific(RIMPAC)military exercise
this summer.

(重要なのは、米国防権限法が今夏の環太平洋合同
演習への台湾招待を認めていることだ)

(今回のエピソードは1:30まで続きます)

英語一言アドバイス:
 permitは「許可する」「認める」という動
詞と、「許可証」という名詞です。抑揚が微妙に異
なるので注意してください。発音サイトに両方を添
付します。聞き分けると同時に、発音も意識して選
別してください。


発音サイト:

permitの発音 最初が動詞で次が名詞の発音
です。How To Say Permit -YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=9j2dSjTvLNo


参考サイト:

国防権限法 米国防権限法が成立、バイデン大統領
が署名=ホワイトハウス | Reuters
https://jp.reuters.com/article/usa-defense-biden-idJPKBN2J611E

リムパック 環太平洋合同演習 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%92%B0%E5%A4%AA%E5%B9%B3%E6%B4%8B%E5%90%88%E5%90%8C%E6%BC%94%E7%BF%92



(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン(近刊)』(いずれも並木書房)
がある。
 
 
追記

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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
 
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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