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荒木さんの最新刊
知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。
そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!
自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。
『自衛隊警務隊逮捕術』
荒木肇(著)
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こんにちは。エンリケです。
おまたせしました!
「陸軍工兵から施設科へ」
今日から再開です。
荒木先生ならではの「鉄道ばなし」は面白いですね!
<鉄道と電信は縁が深い>
<『指導物語』という鉄道映画>(1941年)
杉山元帥の珍しい経歴
<兵団なので中将が補職>
などなど、
軍事鉄道にまつわる話だけでない荒木節に、
ことしも目が釘付けです。
さっそくどうぞ。
エンリケ
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陸軍工兵から施設科へ(16)
交通兵旅団の誕生──気球隊から航空隊へ
荒木 肇
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□はじめに
明けましておめでとうございます。新しい年が始
まりましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
せっかくコロナの感染状態も落ち着いたと思ったら、
年末から新しいオミクロン株が見られるようにな
り、いわゆる第6波がやってきています。感染力が
たいへん高いと報道され、沖縄、山口、広島の各県
に「蔓延防止等重点措置」も出されました。
わたしが暮らす神奈川県も、東京都も感染された
方々が多くなっています。小池都知事はテレビによ
れば、飲食店での会食をまたまた4人以下に控える
という勧告を出すようです。人が動けば、集まれば、
感染は増えるということが分かったからというの
ですが、芸がないことだと思うのは私だけでしょう
か。今回も飲食店だけが悪者にされるという思いも
しないではありません。
やはり有効なのは身近な感染対策をしっかりする
ことなのでしょう。公共の場所ではマスクをする、
会食はしても飲食時以外はマスクを取らない、手洗
い、うがいの励行などを守ることが大切です。
それにしても沖縄、山口、広島とすぐにピンとき
たのが米軍の存在でした。アメリカの基準とわが国
のそれが違うということなのでしょう。異文化を身
近に感じる今回の感染報道でした。
▼交通兵旅団
日清戦争(1894~95年)の経験から、18
96(明治29)年に鉄道大隊ができました。2個
鉄道中隊と1個電信中隊が市ヶ谷台に編成されます。
この鉄道大隊が東京中野、いまの中野区役所のあ
る所に移りました。電信教導大隊も併設されて交通
兵の基礎ができたといわれています。
日露戦争(1904~05年)後には、鉄道、電
信、気球といった工兵を主体にした部隊ができまし
た。1907(明治40)年10月のことでした。
もともと電信隊には気球部が附属されていて、旅順
要塞の攻撃時にも2個の気球が参加しました。砲兵
の射弾の観測をしたり、敵陣の様子を写真撮影した
りしていたのです。気球のゴンドラから地上への連
絡は有線電話でした。
1908(明治41)年には、鉄道隊が分かれて
鉄道聯隊(3個大隊)、気球隊、電信隊となります。
この3つの部隊を統括したのが交通兵旅団司令部
でした。鉄道聯隊は千葉県の津田沼に移ります。交
通兵とはよく名付けたもので、たしかに鉄道と電信
は縁が深いものでした。また、気球ものちに航空兵
に発展することを考えると、よく考えられた名称だ
と思います。
また、津田沼の鉄道聯隊は演習線路として鉄道を
建設しました。現在の私鉄京成電鉄新京成線です。
津田沼から松戸(JR常磐線)を結びます。習志野
の第1空挺団や、松戸駐屯地にある陸自需品学校に
出かけるときに利用していますが、興味深い伝説が
あります。
それは軍隊の演習線だからグネグネ曲げてあり、直
線が少ないというのです。確かに線路はよく曲がり
くねり、なるほどわざと複雑にしたのかなどと思い
ました。
しかし、鉄道建設の専門家によると、それは俗説で
あり、地形の条件に沿って敷設した結果だというの
です。実際に乗ってみると、河岸段丘の線に逆らわ
ず、地形に従って合理的に建設した結果と思えます。
▼映画『指導物語』
また、鉄道聯隊については興味深い映像もありま
す。『指導物語』という鉄道映画です。1941
(昭和16)年10月の公開です。「加藤隼戦闘隊」
などで主役を務めた藤田進さんが鉄道聯隊の初年兵
になり、千葉機関区に派遣されて機関手教育を受け
ています。指導にあたる老機関士が丸山定夫さん、
その長女が原節子さんです。
この映画には、いわゆる戦争を賛美するような、あ
るいは露骨な戦意高揚のような場面はありません。
自分に配当された若い兵士にきちんと機関手として
の能力を教育しようとするベテラン機関手の誠実さ
と、それに応えようとする兵士の真面目さが印象に
残ります。
映画ファンの評判によると、この映画の主役はC
58蒸気機関車ではないかというほど機関車が目立
ちます。2台の機関車が列車をひいて並走するとこ
ろは佐倉の先、総武本線と成田線の実在の直線区間
です。出演したC58217号機はたしか千葉県旭
市の西の宮公園に動態保存されていましたが、現在
はどうなっているのでしょうか。
聯隊の兵士たちが保線の実習をしているところ、
線路を担いで枕木の上に運ぶところなども映ってい
ます。当時、千葉駅まで電化されているので、自動
ドアで開く古い電車も見られるのが楽しいです。
老機関士の家庭の描き方も楽しく、しっかり者の
長女、気楽な妹たち2人の様子は少しも戦時下の緊
張感は感じられません。これも当時の社会のふつう
の様子だったのでしょう。それにしても、「かまた
き」といわれた機関助手の石炭くべの様子はみもの
です。
▼交通兵団に昇格する
1915(大正4)年には、旅団は交通兵団と格
上げになります。今までは旅団でしたから指揮官は
少将でした。今度は兵団なので中将が補職されます。
初代兵団長は井上仁郎中将です。工兵出身で、明
治35年には鉄道大隊長、日露戦争では臨時軍用鉄
道監として安奉線建設指揮官、戦後には軍務局工兵
課長になった鉄道のエキスパートでした。
また、航空関係の指導にあたる少将がいました。
司令部附で山田陸槌(りくつい)少将です。やはり
工兵出身で参謀本部通信課長、鉄道聯隊長、チンタ
オ攻略時の臨時鉄道聯隊長、舞鶴要塞司令官などを
歴任しました。1919(大正8)年7月には中将
に進み、交通兵団長になります。その後。教育総監
部工兵監になる優秀な人です。
▼気球隊は航空大隊になる
気球隊は手狭になった中野から埼玉県所沢に移転
しました。1915(大正4)年12月には気球隊
は航空大隊と名前を変え、気球中隊、飛行中隊各1
個をもつようになります。翌年にはさらに1個飛行
中隊が増設されました。このときの大隊長は鳴滝紫
磨(なるたきむらまろ)工兵中佐です。鳴滝中佐は
工兵第6大隊長、この航空大隊長のあとは鉄道第2
聯隊長、少将に進み広島湾要塞司令官、中将になっ
て運輸本部長になりました。まだ、この頃は航空の
専門家は育っていませんでした。
1917(大正6)年には航空第1大隊となり、
岐阜県各務原(かかみがはら)に第2大隊が設けら
れます。このときの初代大隊長はのちの杉山元(す
ぎやまげん)元帥陸軍大将でした。杉山元帥は珍し
い経歴の人で、聯隊長も旅団長も経験していません。
その代わり、陸軍省軍事課長、軍務局長、陸軍次官、
大臣、参謀次長、参謀総長、教育総監まですべて務
めたという大変な人です。ただし兵科は歩兵でした。
1919(大正8)年の秋季大演習では、指揮下
の航空第2大隊は活躍します。その功績もあってか、
参謀本部附になり国際連盟空軍代表随員、大正10
年には大佐になって軍務局航空課長になりました。
そうして1925(大正14)年5月に航空兵科が
独立すると少将になっており、航空本部補給部長に
なったのです。異論もあるようですが、「陸軍航空
育ての親」とも書かれています。
次回は航空兵と工兵のつながりをお知らせしまし
ょう。
(つづく)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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謝しています。
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心から感謝しています。ありがとうございました。
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