配信日時 2022/01/10 20:00

【我が国の未来を見通す(8)】 少子高齢化問題(8) なぜ「少子化」が進むのか?   宗像久男(元陸将)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
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こんにちは、エンリケです。

今年初めの「我が国の未来を見通す」です。

ことしも本連載をつうじて、

わが国の生き筋を見出す知的基盤、よすがと
し、情報戦に勝つ(負けない)ために必要な
視座、見方、発想、洞察、、などの力量を磨
いてください。

さっそくどうぞ

エンリケ




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我が国の未来を見通す(8)

少子高齢化問題(8)
なぜ「少子化」が進むのか?


宗像久男(元陸将)
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□はじめに

メルマガ読者の皆様、あけましておめでとうござい
ます。オミクロン株の拡大を気にしながらも、何と
かいつもの正月を迎えることができたというところ
でしょうか。

 私は、年末の慌ただしいなか、沖縄の石垣・武富・
西表・由布島4島巡りツアーに参加しました。1年
前から計画して、ようやくワンチャンスで実現した
久しぶりの沖縄旅行でしたが、目的の1つに、今や
国防の第1線である八重山諸島の「空気」を確かめ
ることもありました。

 現地では、石垣港内に10隻ほどの海上保安庁艦
艇が待機しているのを目にして、尖閣諸島警備のた
めの拠点になっていることを確認しました。しかし、
コロナ禍もあっていつもは中国本土や台湾からの
旅行者であふれている(らしい)島々は平穏そのも
ので、島民の皆様にも「いつか戦場になるかも知れ
ない」などの不安感を感じることはできませんでし
た。

八重山諸島は、沖縄戦では艦砲射撃を受けた程度で
上陸もなく、大きな被害を受けることはありません
でしたので、沖縄本島の皆様とは意識が違うのかも
知れません。逆に、(保守系)の現市長に対して「
市民の力で市長を代えよう」と書いた共産党の街頭
宣伝カーが目に入りました。現下の情勢に及んでも
このような主張をしている意図については説明する
必要ないでしょう。

 年頭にあたり、中国警戒論を唱える声が大きくな
りましたが、私もいよいよ日本の「覚悟」が試され
る時が来たと考えます。歴史上は、ヒトラーの野心
を見抜けなかったチェンバレン英国首相の「宥和政
策」が第2次世界大戦を引き起こしたとしてあまり
に有名ですが、現在の中国情勢はあの時とよく似て
いると指摘されています。

香港はすでに消滅の危機にありますが、香港の次は
台湾、台湾の次は東シナ海や南シナ海、やがて沖縄、
朝鮮半島、日本列島・・・この“歴史は繰り返す”
ような「悪夢」を何としても防ぐ必要があります。

そのためには、中国の現状変更路線に対して断固と
して戦うとのシグナルを送り続け、そのための体制
を強化することに加え、ヒトラーと同じことを企て
れば、やがて同じ運命になることをあの手この手で
教えてやることも必要でしょう。

 日本とは思えないような、西表島のマングローブ
の原生林や水牛車に乗って渡る由布島、そして、時
間が止まっていたかのような武富島の古民家集落、
石垣島のあくまで青い海と絶景・・・八重山諸島は
東京から2000キロも彼方にある島々ですが、台
湾まではわずかに270キロほどの距離しかなく、
現代戦では同じ「戦場」と言っても過言でありませ
ん。

現地に立って東シナ海を眺めながら、これらの島々
の「平穏」が未来永劫に続くことを祈りつつ石垣島
を後にしました。

▼世界の「平均出生率」(合計特殊出生率)

 さて、本題に戻りましょう。これまで我が国の「
平均出生率」が低下傾向にあることを取り上げまし
たが、外国はどうなっているのでしょうか? 我が
国の少子化対策を取り上げる前にチェックしておき
たいと思います。

 世界の人口は、1998年には60億人、201
1年70億人、2021年79億人と増加傾向にあ
ります。そして国連経済社会局人口部は、「世界の
人口は今後30年で約20億人増加し、2050年
に世界の人口は97億人に達する」と推計しており
ます。

 それを証明するように、現在の世界の平均出生率
は2.42もあります。各国のランキングは、ニジ
ェールの6.9を筆頭に、ソマリア6.1、コンゴ・
マリ・チャド5.9などアフリカ諸国が続きます。
ここに貧困、食料、環境に絡む問題が内在するの
ですが、それらはのちほど取り上げることにしまし
ょう。

 主要先進国の出生率は、フランス1.88、米国
1.73、イギリス1.68、ドイツ1.57、カ
ナダ1.50など、軒並み2.0以下ですが、日本
の1.34よりかなり高い数値を維持しています。
特に、フランスの1.88は驚異です。その背景な
どものちほど取り上げます。

 ちなみにアジア諸国は、インドが2.22、中国
が1.69、香港が1.07、台湾が1.06,韓
国に至っては世界最下位の0.98です。最新の数
字では0.84ともいわれ、「1」を下回る「異常
事態」が3年連続で続いており、回復の兆しが見え
ないようです。これらから、日本を含む東アジア諸
国は、今後、人口減少に拍車がかかると予想されま
す。

我が国の参考になるので少しだけ補足しておきます
が、中国の場合は、昨年5月、10年に1度の国勢
調査に基づいて公表された最新の平均出生率は、さ
らに低い1.3という衝撃的な数字になっていまし
た。しかも男女比が118人(男子)対100人(
女性)(通常値は、106人(男子)対100人(
女子))という異常値を示しています。

 これは、出生前の性別判断が可能となって女子の
選択的堕胎が行なわれている結果といわれ、中国の
将来の人口構成に大きな歪みをもたらすだろうと分
析されています。中国政府は慌てて「3人子」政策
に舵を切ったようですが、統計データそのものの信
憑性に対する疑いもあって、楽観視はできないとの
見方が一般的です。

韓国にあっては、若者の雇用不安(非正規職が多く
、正社員になりにくい、失業率が高い)や住宅費負
担が大きいなどの構造的な要因に加え、コロナ禍の
影響で、今年は0.7台、来年は0.6台まで減少
すると見積もられています。婚姻件数も年々下回っ
ていますので、若者の間には「結婚するどころでは
ない」という意識が強まっているようです。

また、香港や台湾は、政情不安から子供たちの代に
苦しみを体験させたくないという将来へのネガティ
ブ意識が根底にあるようです。

▼我が国の「婚姻率」と「離婚率」

 さて我が国の「少子化」が進んでいる要因を分析
し、それぞれについて、これまでいかなる対策がと
られてきたのか、今後どうすべきか、などについて
考えて行きたいと思います。

まず「婚姻率」ですが、厚生労働省の発表によると、
2020年の婚姻件数は52万5490件で、「
婚姻率」は前年比0.05%減の0.43%(推計
値)です。「婚姻率」とは現在、婚姻している人の
割合ではなく、人口全体における結婚の発生頻度を
示しています。日本の婚姻率は戦前から1971年
頃までは0.8前後で推移していましたが、その後
は年々低下傾向にあり、2020年はコロナ禍の影
響もあってここまで落ち込んだのでした。

 また、男女の未婚状況を示す指標の一つに「生涯
未婚率」があります。この数値は、「45~49歳
」と「50~54歳」未婚率の平均値から「50歳
時」の未婚率を算出したもので、生涯独身を通す人
がどのくらいいるかを示す統計指標として使われて
います。

 男性の「生涯未婚率」は、1985年頃から上昇
傾向にあり、2020年に25.7%に達し、20
40年頃には29.5%に達すると見積もられてい
ます。女性の場合は、1975年からほぼ横ばいで
あったものが、1995年頃から上昇に転じ、20
20年には、16.4%、2040年頃には18.
7%に達するようです。

 男女とも穏やかな上昇が続くと予測されています
が、2040年頃の男性の生涯未婚率が約3割、つ
まり3人に1人は生涯独身を貫くというデータは衝
撃的です。

次に「離婚率」です。「離婚率」も「婚姻率」同様、
人口全体における離婚の発生頻度を示しています。
我が国の場合、0.1~0.2%の間で推移してき
ましたが、2002年には最高値の0.23%を記
録しましたが、直近数年間では0.2%を切って漸
減する傾向にあり、2020年は0.16%です。

 また、「特殊離婚率」という指標もあります。単
純に離婚数を婚姻数で割った数字で、我が国は、1
998年以来20年以上、30%を下まわったこと
がありません。よく言われる「3組に1組は離婚す
る」という指摘はこのことを指しています。この解
釈については異論もありますが、歴史的には日本は
元々「離婚大国」であるというデータも残っていま
す。

 総じて、「婚姻率」の減少が「少子化」の主な要
因となっているのは間違いないでしょう。その原因
としては、短期的には経済的な問題、中長期的には
男女間の価値観の移り変わりや社会環境の変化が影
響していると考えられています。その上、「婚姻率
」は、何か「社会的な変化」がない限り、今後もな
だらかな形で低下し続けるだろうと見積もられてい
ます。

「『婚姻率』増加のために、どのような『社会的な
変化』を引き起こすか」は、「少子化」対策の点か
らもカギの1つになりそうです。この続きは次回取
り上げましょう。



(つづく)


(むなかた・ひさお)



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【著者紹介】

宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、
陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇
宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、
北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上
幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東
北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸
将)。日本製鋼所顧問を経て、現在、至誠館大学非
常勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、
セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常
勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自
衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動
きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)



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