『警視庁刑事部現場鑑識写真係─犯罪捜査に国境なし』
戸島国雄著
四六判232ページ
発行日 :2018.10
発行:並木書房
https://amzn.to/3FLYKJn
おはようございます、エンリケです。
警視庁一課長に就くのはほとんどが鑑識屋。
という話を聞いたことがあります。
ほんとかウソかわかりませんが、
素人に見えないプロの世界を垣間見れた感があって、
不思議に納得した記憶があります。
トンちゃんの愛称で幾多の大事件を手がけた「事件
現場の職人」戸島国雄──警視庁鑑識36年。警視
庁刑事部鑑識課現場写真係として独自の撮影方法を
編み出し、似顔絵捜査の道を切り開いたことでも知
られる「伝説の鑑識」です。
同僚や上司、後輩は異口同音に「鑑識の鬼」と評
します。
現役時代は警視総監賞をなんと107回も受賞。
ふつう、警察官人生で一回取れたら御の字とされる
賞です!
似顔絵捜査官第一号としても知られ、
定年退官後タイにわたり、いまもタイ国家警察大佐
として捜査の陣頭指揮に立つ「事件現場の鬼」と言
って差し支えない伝説の刑事です。
警察官は、2~3年で部署を異動するのが常ですが、
戸島さんの場合は鑑識写真係として、変わらずつね
に捜査一課長の片腕として活躍。
三島由紀夫事件、三菱重工爆破事件、ホテルニュー
ジャパン火災、日航123便墜落、宮崎勤事件、オ
ウム真理教事件という、戦後日本を代表する大事件
を担当されました。
ちなみに、いわゆる「ポリスライン(現場への立ち
入りを禁止する線)」を開発したのが戸島さんだ、
ということは意外に知られていません。
現在もタイ警察大佐として捜査の陣頭指揮にあたり
後進を指導しています。著者がタイ語で作った
『鑑識教科書』はタイ全土の警察で採用され、タイ
の犯罪捜査は飛躍的に向上したとされます。
本著は戸島さん三冊目の本で、78歳の今も「鑑識
に国境なし」の強い信念で最前線に立ち続けるサム
ライ日本人捜査員の生き様を描く感動のノンフィク
ションです。
戸島さんはこう語ります。
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現場鑑識活動の一つに、私が長年従事した鑑識写真
がある。事件現場を現状のまま保存することはむず
かしい。そのため、現場を写真で正確に記録する。
犯人の指紋、足跡、体液、犯行時に使用された凶器
や遺留品などを撮影していく。
事件現場をありのままに記録した鑑識写真によ
って、必要な時に事件発生時の状況を再現できるこ
とは捜査の過程で大いに役に立つ。また臨場できな
かった捜査官に現場の状況を容易に理解させること
ができる。……そのためには鑑識写真の撮影に失敗
があってはならない。失敗したからといって、あと
から撮り直すことはできない。鑑識写真係に課せら
れた役割と責任は重い。(戸島国雄)
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それではこのノンフィクションの中身を見ていきま
しょう。
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はじめに
鑑識担当の警察官は、犯罪事犯の捜査に日々心血
を注いでいる。どんなに凄惨な現場でも目をそむけ
ることなく、遺体のかたわらに這いつくばり、散乱
したものの中から事件に関係する証拠を一つひとつ
見つけ出す。
発見した証拠品はどんなに小さなものでも、そ
れを手がかりとして、犯行を読み取り、容疑者を割
り出していく。これが鑑識に与えられた任務であり
、使命である。
鑑識官というプロが動き出せば、犯罪者は逃げ
おおせることはできない。人の行為には必ず痕跡が
残り、完全犯罪は不可能である。これは私自身の経
験から断言できる。
現場鑑識活動の一つに、私が長年従事した鑑識
写真がある。事件現場を現状のまま保存することは
むずかしい。そのため、現場を写真で正確に記録す
る。犯人の指紋、足跡、体液、犯行時に使用された
凶器や遺留品などを撮影していく。
事件現場をありのままに記録した鑑識写真によ
って、必要な時に事件発生時の状況を再現できるこ
とは捜査の過程で大いに役に立つ。また臨場できな
かった捜査官に現場の状況を容易に理解させること
ができる。さらに、法廷では真実を明らかにするた
めに欠かせない極めて重要なものとなり、裁判の帰
結に影響を与えることもある。
そのためには鑑識写真の撮影に失敗があっては
ならない。失敗したからといって、あとから撮り直
すことはできない。現場鑑識写真係に課せられた役
割と責任は重い。
日本の警察はもちろん、私が奉職するタイの警
察でも医学、化学、物理学、心理学などの科学的知
見を応用した鑑識活動が重視され、その技術は飛躍
的に進歩している。その任務に国境はない。
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◆目次
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はじめに 1
第1章 警視庁刑事部鑑識課 9
京浜工業地帯の派出所勤務 9
最悪だった写真との出会い 13
現場保存の初体験 16
刑事課鑑識係に異動 19
最初の事件現場 22
古参刑事の無銭飲食? 25
羽田闘争事件出動! 27
東大闘争──三四郎池の水汲み 34
警視庁刑事部鑑識課へ転勤 38
初めての現場撮影 42
たった一人で遺体処理 49
航空写真に初挑戦 53
三菱重工爆破事件 58
雪の妙高高原の遺体発掘 59
つらい別れ 67
第2章 タイ国家警察局科学捜査部 76
タイ国警察へ鑑識指導 76
使えない英語 79
高層ビル火災の現場検証 83
気まぐれなトチャイ将軍 84
消えた運転手 87
将軍のきつい一発 89
癖(へき)と犯罪 93
甘い言葉に用心 101
第3章 鑑識の仕事は体で覚えよ 105
タイ人は犯罪のニュースが大好き 105
野次馬に荒らされる犯罪現場 107
「仕事は現場で覚えろ!」110
実技試験をカンニング 111
野犬に襲われる 115
タイで初の鑑識捜査の教科書 117
夜の事件現場 119
海外派遣先でも似顔絵作成 125
写真現像処理機の導入 127
危険な労災事故現場検証 129
第4章 ふたたびタイ警察へ 134
タイ式の人付き合い 134
バンコクのスリ被害 139
建設現場の殺人事件 142
奥深い「ワイ」の挨拶 145
「俺がその姿を見届ける」148
麻薬密売人との銃撃戦 152
サン警察庁長官からの依頼 156
チャイナタウンの女 158
引っ越し先は事故物件 162
たくましいタイの人々 168
第5章 同国人に気をつけろ 172
タイの火災現場 172
タイの結婚式 177
鑑識捜査の現場指導 183
元暴力団員の殺人事件 187
第6章 事件は続く 195
タイ南部のイスラム過激派 195
市場を狙ったテロ事件 204
深夜の宝石店荒らし 209
盗まれたキングコブラ 212
田宮教官とのタイ旅行 218
おわりに 225
著者略歴 227
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いかがでしょうか?
一人の男の生き様を共有し、自らの未知で活かすよ
すがを得る。
こういう読み方ができる良い本です。
もちろん、知られざる鑑識現場の様子や知識も
学べます。雑学として身につけておくだけでも
自分を豊かにしてくれる財産となります。
ぜひご一読ください。
今回ご紹介したのは、
『警視庁刑事部現場鑑識写真係─犯罪捜査に国境なし』
戸島国雄著
四六判232ページ
発行日 :2018.10
発行:並木書房
https://amzn.to/3FLYKJn
でした。
エンリケ
追伸
現場で技術識能を身につけ、卓越した能力を活かせ
る場を求めて国境を超える。
実に爽やかで素晴らしい生き方ですが、なぜこの方
の圧倒的な力を自国で活かせないのだろう?
という単純素朴な疑問が湧きました。
しかし本著を読み、その理由がよくわかりました。
どれだけつらかったろう。
視界がぼやけています。
『警視庁刑事部現場鑑識写真係─犯罪捜査に国境なし』
戸島国雄著
四六判232ページ
発行日 :2018.10
発行:並木書房
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