『SAS英陸軍特殊部隊─世界最強のエリート部隊』
L・ネヴィル著
床井雅美監訳
茂木作太郎訳
四六判172ページ(オールカラー)
発行日 :2019.12
発行:並木書房
https://amzn.to/3FOdPKD
おはようございます、エンリケです。
1980年の駐英イラン大使館占拠事件で鮮烈なデビュ
ーを飾ったSASは世界で最も知られる特殊部隊と
なり、いまも世界の特殊部隊のリーダー的な存在と
いって差し支えありません。
実践を知る多くの兵士が語る「SASは憧れ」との言
葉もたくさん聞きました。
この本は、フォークランド戦争以降の主要作戦から
対テロ戦まで、成功事例だけでなく、失敗例や失策
にも言及しながら、SAS連隊の実像に迫ったもの
です。
さらに、イラクとアフガニスタンで実績をあげた米
統合特殊作戦コマンドとの密接な協同作戦について
も詳述されています。
作戦中のSAS連隊をとらえた珍しい写真も数多く
掲載されており、今まで目にすることのなかったS
ASやほかの英特殊部隊の戦闘服や装備品、車両や
武器を再現したイラストも収録した軍事ファンなら
必読の書といえます。
著者、監訳者は本書についてこう語っています。
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世界で最も広く知られた特殊部隊のひとつであるS
ASは、口の固さでも有名だ。1991年の「グランビ
ー」作戦後に思慮に欠ける回想録が数多く発表され
たことから、連隊は隊員と支援隊員に生涯にわたる
守秘義務を課した。したがって、SASの作戦や訓
練を捉えた公式写真は存在せず、公にインタビュー
に応じる元隊員もいない。当然のこととして、本書
に掲載した写真は隊員の顔や、そのほかの秘密に属
する対象は黒く塗りつぶされており、また記述も情
報保全に配慮したものとなった。
〈「はじめに」より〉
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監訳者・床井雅美さんのことば(一部)
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かつて私は銃砲の調査・研究のため、イギリスに
ある「パターンルーム」と呼ばれる非公開の武器コ
レクション収蔵施設をしばしば訪れた。そこにある
のはイギリス政府が保管する各種の銃砲で、まさに
世界中のとりわけ軍用の小火器が集められていた。
ここを訪れると毎日、朝から夕方まで、さまざ
まな銃を直接、手にして操作方法や作動の仕組みを
調べたり、分解・結合の要領を確認させてもらった。
主任管理者のハーブ・ウッドエンド氏とは銃砲
に対する関心を通じて公私共に親しくお付き合いす
ることになり、訪問時には毎回、週末に氏の自宅に
泊めてもらい、近所のパブで深夜まで銃砲談義が尽
きない間柄となった。残念ながら彼は亡くなり、そ
の後「パターンルーム」のコレクションは、ほかの
場所に移され、より秘密めいたものとなった。
なぜこのようなエピソードを披露するのかと、
読者は不思議に思うかもしれない。じつは私の「パ
ターンルーム」訪問と本書は思わぬつながりがある
のだ。ここでの調査中のこと、ジーンズ姿のラフな
服装の屈強な若者が数人でやってきて、収蔵品の銃
砲を箱に詰めて、民間車両と変わらないバンに載せ
てどこかに持ち出していく場面にしばしば出会った。
運び出されていたのは、あるときは旧ソビエト/
ロシア軍の装備品であり、あるときは特定の地域
で多く使用されている銃器だった。
ウッドエンド氏に彼らは何者なのかと尋ねると
、氏はニヤッと笑い指を口に当てると、「秘密の仕
事をしている兵隊たちだよ」と言葉少なに教えてく
れた。疑いなく彼らはSASの隊員たちであった。
SASがこれから実任務に派遣する隊員たちの
教育訓練のため、派遣先の地域で使用されている実
物の武器の教材として、ここのコレクションを活用
していたのだ。
たとえ私服姿でも彼らは独特の雰囲気を漂わせ
ており、ふつうの若者とは違っていた。おそらく厳
しい訓練を通して体の一部になっている何かが、周
囲をけん制していたに違いない。
本書には北アイルランドで任務中のSAS隊員
たちは住民のなかにうまく溶け込めなかったとの記
述があるが、納得できる指摘だ。ちなみに彼らはボ
ンバージャケットを着ていなかった。
私が直接、SAS隊員たちと言葉を交わすこと
はなかったが、職務上ウッドエンド氏は武器情報を
通じて彼らと関係が深く、氏を通じて興味深い話を
聞くことができた。ここでその多くを紹介すること
はできないが、そのなかの武器に関する話を少し紹
介しよう。
SASの作戦は危険な地域に少人数で投入され
ることが多い。作戦は彼らの身体的な能力や技術・
技能だけを頼りに計画されるのでなく、事前に作戦
に必要なあらゆる情報が与えられる。戦闘中、対峙
することになるであろう敵の武器に関する情報もき
わめて重要で、それが役立っているからこそ、限ら
れた兵力で大きな成果を上げる理由のひとつだとい
う。
SASは、イギリス軍の一般部隊と異なり、さ
まざまな武器を独自に採用している。なかには特別
仕様のものもある。たとえばマニュアルセフティを
追加装備させたグロック・モデル17ピストルなど
がよい例だ。50口径(12.7mm弾を使用)の
バーレット・モデル82スナイパーライフルは、少
人数で行動する彼らが強力な火力を発揮できるうっ
てつけの武器だ。そのため開発・実用化後のきわめ
て早い時期に採用している。
しかし、ごく初期のバーレット・モデル82に
は欠陥があった。それは銃をコックしてセフティで
ロックし、その状態で引き鉄を引き、その後セフテ
ィを解除すると暴発してしまうのだ。SASはこれ
をいち早く発見し指摘した。メーカーは早速改善し、
以降、欠陥は解消された。
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本書『SAS英陸軍特殊部隊』(The SAS 1983-2
014)は、軍事・戦史研究の分野で定評があるオス
プレイ社の「エリート」シリーズの1冊です。
著者のリー・ネヴィル氏は、このシリーズで多くの
著作があり、欧米諸国の軍事、現代戦史、とくに特
殊作戦部隊の任務や運用と、その兵器や装備品につ
いて精通しているジャーナリストです。
本書は同氏著作の邦訳『米陸軍レンジャー』『欧州
対テロ部隊』(いずれも小社刊)の続編といってよ
いでしょう。
では、1983年以降のSAS連隊戦史をコンパクト
につかめるガイドブックの内容を見ていきましょう。
◆目 次
はじめに 2
略語解説 7
第1章 SASの編制と隊員の選抜 9
デイビッド・スターリングによって創設/3つのS
AS連隊/フォークランド紛争での襲撃作戦/SA
S連隊の編制/SASの隊員選抜プログラム
第2章 伝説が生まれた日 19
「ニムロッド」作戦/対テロ任務の「パゴタ・チー
ム」誕生/全員がCTとCQB任務に精通/各国対
テロ部隊に訓練指導/世界のテロ事件の現場へ/S
ASが公式に認めた人質救出作戦/進化するSAS
の対テロ技術/常時2個小隊がCT即応待機/ロン
ドン同時爆破テロ事件
第3章 IRAとの死闘 37
監視と待ち伏せ攻撃/射殺は正当か?─やっかいな
疑惑/「テロリストに命乞いの機会はない」/待ち
伏せ攻撃「ジュディー」作戦/ジブラルタルでの「
フラウィウス」作戦/波紋を呼んだカンボジアへの
派遣
第4章 湾岸戦争(1990~1991年)54
活躍の場を与えられなかったSAS連隊/イラク補
給路の監視任務に従事/「スカッド発射機」急襲作
戦/「ブラボー・ツー・ゼロ」論争/分断されたブ
ラボー・ツー・ゼロ隊/イラク軍正規部隊との死闘/
スカッド・ミサイルの脅威を減少させた/砂漠機
動作戦技術の完成/回顧録の出版差し止め
第5章 バルカン半島へ派遣(1994~1999年)78
セルビア兵との戦い/戦犯容疑者の追跡/コソボの
独立支援
第6章 シエラレオネでの人質救出(2000年) 83
「バラス」作戦/知られざるSASの活躍
第7章 アフガン戦争I(2001~2006年)91
無謀な「トレント作戦」/第21と第23連隊のア
フガン任務
第8章 イラク戦争(2003~2009年)95
イギリス特殊部隊「ロー」作戦/SBSの不名誉な
戦い/SASとデルタ・フォースの強固な関係/
前政権重要人物の追跡/洗練されたSASの戦術/
手荒な米軍の捕虜の取り扱い/「魔法の杖」でテロ
リストを追いつめる/延期された派兵期間/イラク
南部バスラでの戦い/人質救出作戦/SAS隊員の
救出作戦/SASへの惜しみない賛辞/作戦成功の
影に尊い犠牲/「クライトン」作戦の終了
第9章 アフガン戦争II(2006~2014年)126
「キンドル」作戦─タリバンとの戦い/殺害者リス
ト/高価値目標の拘束・殺害作戦/人質を全員無傷
で救出/「集落安定化」作戦/多発する新たな戦い/
いまも続くアフガニスタンでの作戦行動
第10章 SASの兄弟部隊 143
新たなUKSF支援部隊/オーストラリアとニュー
ジーランドのSAS/SASの血筋をひくヨーロッ
パ特殊部隊
第11章 SASの小火器 148
出番が減ったMP5サブマシンガン/モデルL119A1ラ
イフル/スナイパー・ライフル/進化するスタン・
グレネード
[イラスト]
制服と装備品(I)14
制服と装備品(II)30
制服と装備品(III)44
制服と装備品(IV)72
車両(I)88
車両(II)112
SASの主要な小火器 152
SASの特殊用途用武器と部隊章 156
参考文献 164
監訳者のことば 166
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◆著者略歴
リー・ネヴィル(Leigh Neville)
アフガニスタンとイラクで活躍した一般部隊と特殊
部隊ならびにこれら部隊が使用した武器や車両に関
する数多くの書籍を執筆。オスプレイ社からは6点
出版され、さらに数冊が刊行の予定。戦闘ゲームの
開発とドキュメンタリー制作において数社のコンサ
ルタントを務める。
◆監訳者略歴
床井雅美(とこい・まさみ)
東京生まれ。デュッセルドルフと東京に事務所を持
ち、軍用兵器の取材を長年つづける。とくに陸戦兵
器の研究には定評があり、世界的権威として知られ
る。主な著書に『世界の小火器』(ゴマ書房)、ピ
クトリアルIDシリーズ『ベレッタ・ストーリー』
『最新マシンガン図鑑』(徳間文庫)、『現代ピス
トル』『ピストル弾薬事典』『最新軍用銃事典』
(並木書房)など多数。
◆訳者略歴
茂木作太郎(もぎ・さくたろう)
1970年東京生まれ。17歳で渡米し、サウスカ
ロライナ州立シタデル大学を卒業。海上自衛隊、ス
ターバックスコーヒー、アップルコンピュータ勤務
などを経て翻訳者。訳書に『F-14トップガンデ
イズ』『スペツナズ』『米陸軍レンジャー』『欧州
対テロ部隊』『シリア原子炉攻撃(近刊)』(並木
書房)。
いかがでしょうか?
理屈や理論は、戦史研究のなかで血を通わせないと
現実に活かせません。教義や理論は、現実の戦史研
究とセットでないと、机上の空論で終わります。
兵士の命をもてあそぶことがないよう、軍事ファン
にも、そのことを強く意識してほしいものです。
今回ご紹介したのは、
『SAS英陸軍特殊部隊─世界最強のエリート部隊』
L・ネヴィル著
床井雅美監訳
茂木作太郎訳
四六判172ページ(オールカラー)
発行日 :2019.12
発行:並木書房
https://amzn.to/3FOdPKD
でした。
エンリケ
追伸
やはり、信頼できる情報源を通じて知識と理解を深
めるのが一番です。世界最強の特殊部隊とされるSAS
(Special Air Service:英国陸軍特殊空挺部隊)に
ついてもそうです。マニアもファンも好奇心の人も、
まずはこれからどうぞ。
『SAS英陸軍特殊部隊─世界最強のエリート部隊』
L・ネヴィル著
床井雅美監訳
茂木作太郎訳
四六判172ページ(オールカラー)
発行日 :2019.12
発行:並木書房
https://amzn.to/3FOdPKD