配信日時 2021/12/31 05:01

【本の紹介】『カウンター・テロリズム・パズル─政策決定者への提言─』 佐藤優監訳 ボアズ・ガノール著 河合洋一郎訳

『カウンター・テロリズム・パズル─政策決定者へ
の提言─』
佐藤優監訳
ボアズ・ガノール著
河合洋一郎訳
判型:A5判並製388ページ
発行日 :2018.02
発行:並木書房
https://amzn.to/3JiLVsw


おはようございます、エンリケです。

きょうで令和3年も終わりですね。
あなたにとって今年はどんな年だったでしょうか?

今日も本の紹介をさせていただきます。

テロリズムに関する実用書兼実務書。

佐藤優(作家・元外務省主任分析官)……テロリズ
ムは、現代における主要な脅威だ。新聞、テレビで
もテロに関するニュースが報じられない日はない。
しかし、テロリズムに関して、包括的に知ることが
できる書籍は少ない。本書は、私が知るなかで、テ
ロリズムに関して書かれた実用書兼実務書として最
も優れている。(中略)私がガノール氏の名前を初
めて聞いたのは、2001年3月のことだった。イ
スラエルのインテリジェンス専門家から、「近未来
にアメリカ本国かその同盟国で、国際テロ組織アル
カイダが、奇想天外な方法で大規模なテロを起こす
ことを警告している学者がいる」と言って、ガノー
ル氏の論文のコピーを渡されたことがある。そして
、その6カ月後の2001年9月11日にアメリカ
で同時多発テロ事件が起きた。この事件で国際関係
のゲームのルールが大きく変わった。
(「監訳者のことば」より)

監訳者の佐藤優さんのことば
「本書は、私が知る中で、テロリズムに関して書か
れた実用書兼実務書として最も優れている・」
は本当です。

著者はイスラエルのテロリズム研究家。
業界では世界的権威です。

◆著者略歴

ボアズ・ガノール(Boaz Ganor)
イスラエルのヘルツリヤ学際センター・国際カウン
ター・テロリズム政策研究所(ICT)の創設者、
現事務局長。テロリズムの世界的権威としてこれま
でに国連、オーストラリア議会、米連邦議会、米陸
軍、FBI、米国土安全保障省また世界各国の諜報・
治安機関で状況説明や証言を行なっており、さら
にコロンビア大学、シラキュース大学、ジョージタ
ウン大学、ランド研究所、ワシントン近東政策研究
所その他多くの一流大学やシンクタンクで講演して
いる。2001年、カウンター・テロリズム国家安
全保障委員会の諮問委員会メンバーに任命される。
国際アカデミック・カウンター・テロリズム・コミ
ュニティ(ICTAC)の創立者として活躍中。


監訳者の佐藤優さんについてはあまり説明はいらな
いでしょう。

◆監訳者略歴

佐藤優(さとう・まさる)
作家、元外務省主任分析官。1960年、東京都生まれ。
1985年に同志社大学大学院神学研究科修了後、外務
省入省。在英国日本国大使館、在ロシア連邦日本国
大使館に勤務した後、本省国際情報局分析第一課に
おいて、主任分析官として対ロシア外交の最前線で
活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕、起
訴され、2009年6月に有罪確定。2013年6月に執行猶
予期間が満了し、刑の言い渡しが失効。現在は作家
活動に取り組む。
『国家の罠』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受
賞。『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメン
ト賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『日本国
家の神髄』(扶桑社新書)、『世界史の極意』(NH
K出版新書)、『テロリズムの罠』(角川oneテーマ
21)など多数。


訳者の河合さんについては、この種の本やよみもの
ではよく目にしますね。

◆訳者略歴

河合洋一郎(かわい・よういちろう)
1960年生まれ。米国ボイジ州立大学卒業。国際関係
論専攻。90年代初めより、国際問題専門のジャーナ
リストとして、中東情勢、テロリズム、情報機関そ
の他を取材。「週刊プレイボーイ」「サピオ」など
に記事を発表。訳書に『シークレット・ウォーズ―
イランvs.モサド・CIAの30年戦争―(佐藤優監訳)』
『イスラエル情報戦史(佐藤優監訳)』(並木書房)


実用書なので、治安機関や軍機関、政治家、研究者
など対テロ活動にかかわる人が想定される読者層で
しょう。

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本書では対テロ戦争で政策決定者が直面する主要な
問題を取り上げる。インテリジェンス、攻撃、抑止、
そして防御活動に関する問題、法と刑罰、また情報
と教育に関する問題、国際協力、マスコミその他に
関係する問題などである。それぞれの分野でポイン
トとなる事柄をいくつか検証し、いろいろな解決法
をまず考える。そして各解決法の長所と短所を議論
したあと、イスラエルが長年にわたるテロとの戦い
で得てきた経験に基づき、問題を解決するためのひ
とつの選択肢を推薦する。

  本書は、テロリズムにどう対処していいかわか
らない人々のガイド、政府のリーダーや議員、治安
機関の長、軍人、警察や緊急事態に対処する組織で
働く人々など、すべてのレベルの政策決定者のツー
ルとして書かれた。また学者、学生、多国籍企業の
社長、ビジネスマン、そして一般大衆の役にも立つ
はずだ。残念ながら一般の人々でもテロの台風の目
の中に入ってしまい、どうすれば次のテロ攻撃の犠
牲者にならずにすむか考えねばならないことがある
からだ。

  本書では政策決定の異なるモデルと方法を検証
する。そして対テロ政策をより多くの情報に基づい
た効果的なものとするための基礎知識を提供する。
それは政界、治安機関および官庁、地方行政、ビジ
ネス界や個人などすべてのレベルで有効な知識であ
る。

  イスラエルは長年、テロ攻撃の標的となってき
た国家であり、その対テロ能力はさまざまな面で有
効性が実証されてきた。カウンター・テロリズムの
主要問題を考えるのに適したモデルである。

  本書執筆のため、テロとの戦いに関係してきた
政策決定者たち――過去に首相、国防相、モサド長
官、ISA(シンベト:イスラエル保安局)長官、
軍情報機関長官、首相の対テロ顧問、国家安全保障
会議の対テロ調整官などを務めた経験のあるイスラ
エルの重要人物たちへのインタビューが行なわれた。

(本文より)

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現在の対テロ研究の国際スタンダードが把握できる
点がじつに有意義です。

縦割り感覚ではとても対処できない対テロ活動は、
国家間紛争であればハイブリッド戦争の主活動のひ
とつになると思われ、低強度紛争への取り組みとい
う点で特殊部隊が対処するケースが多くなることで
しょう。

わが軍の武器使用を、必要をはるかに超える形で縛
る「いまの憲法」の件でもたもたしている間に、我
が国をめぐる世界状況は信じられないほど加速度を
つけて変わってきました。

抑止の効かない相手が、テロ活動を主とする様々な
武力を通して我が国の意思を思い通りに動かそうと
試みる時代になります。

実はこれ、特に目新しい概念でなく、たとえば昭和
初期にわが国は大陸で経験しています。
あの時の経験と戦訓、知恵を今の国家指導部とエリ
ート層は受け継いでいるでしょうか?

さまざまな形で世界中の国々が体験することに
なる低強度紛争にいかに対処するか?

また、テロへの認識と対処意識を根本からしっかり
させるにあたって、実に役立つ一冊と感じます。

とくに、海外リスクと直面するエリートビジネスマ
ン、投資家の方は、どうしても欠落しがちな視座な
ので特におススメします。

では、現時点で世界一のテロリズム実用書・実務書
の内容を見ていきましょう。


●目次

監訳者のことば──1
テロリズムに関する実用書兼実務書   佐藤 優

ボアズ・ガノール氏との出会い/アート(芸術)と
してのインテリジェンス/政治(国家)指導者の能
力/テロリズムの定義/戦争犯罪とテロリズムの区
別/テロ対策と国民感情/インテリジェンスの重要
性/レッドラインを設けない/中立化(暗殺)工作/
壁と「鉄の屋根」/ハルカビの理論/「身体的圧
力」/司法の特別手続きと行政処分の拡大/マスメ
ディアの自主規制/「非合理な不安感」/総動員体
制/宗教に無関心な人が、突然、過激化する/北朝
鮮とISがテロ同盟を結成?/東京五輪へのテロ攻
撃/テロは自由民主主義的価値観への挑戦

序章 対テロ戦争のガイド 41

解決困難なテロリズムの特徴/実践的な対テロガイ
ド/本書の構成

第1章 テロリズムの定義 49

定義の必要性 49
国際的なコンセンサスを築く/テロリズムを定義す
ることの利点/あいまいなテロリズムという言葉/
テロリズムの定義を定める難しさ

テロリズムと犯罪 56
テロは犯罪行為か戦争行為か?/通常の刑罰でテロ
に対処することの難しさ

テロリズムと政治的反対運動 58
テロは過激主義者の政治運動/テロの実態をゆがめ
る用語の使い方

テロリズムと民族解放運動 60
テロを「民族解放運動」として正当化/「自由の戦
士」と「テロリスト」は区別できない

「無実の人々」という言葉の問題 62
「民間人に対する損傷」

テロリズムの定義の一案 64
混乱しているテロリズムの定義/定義の3つの要素
/テロリズムとゲリラ戦の違い/ゲリラ活動は許さ
れるのか?/米国務省のテロリズムの定義/テロリ
ズム根絶の可能性

 

第2章 カウンター・テロリズムの方程式 73

イスラエルの対テロ政策の変化 73
対テロ政策の3つの目標/テロのダメージを可能な
限り減少させる

テロ組織は環境の影響を受ける 76
テロリズムの規模と性質に影響を与える要素/「組
織にかかる圧力」/「テロ攻撃の目標となっている
国の動き」/「不合理な感情的動機」と「記念日」/
「テロ攻撃を実行するチャンス」

対テロ政策における軍事部門の重要性 85
テロは軍事的手段で排除できるか?/テロ問題の解
決には軍事と政治のすべてを使う

対テロ方程式 88
テロを行なう意思と実行する能力の関係/テロの意
思を弱める活動

対テロ政策は明確にすべきか? 91
対テロ政策が成文化されてこなかった理由/対テロ
政策は公表しない

 

第3章 対テロ戦争とインテリジェンス 94

戦略インテリジェンスと戦術インテリジェンス 94
諜報活動はカウンター・テロリズムの最前線/戦術
インテリジェンス/情報収集の手段

ヒューミントのリクルート 98
エージェントの違法行為は許されるか?/情報源の
使用可能期間は短い

90年代のイスラエルとパレスチナの協力 101
インテリジェンス能力の深刻な低下/危険にさらさ
れる情報源/ISAへの批判

インテリジェンスの国際協力 105
インテリジェンス銀行の設立

インテリジェンスと作戦の調整 106
対テロ用調整機関の必要性/「カウンター・テロリ
ズム局」の設立/調整機関の権限と力

政策決定者とインテリジェンス 110
インテリジェンスをどう扱うか

 

第4章 テロ抑止の問題 112

困難で複雑な抑止の仕事 112
テロ組織を抑止する難しさ/価値観の異なる相手/
対テロ抑止の成否/重要な抑止力のイメージ

イスラエルの抑止政策 118
テロをやめるまで報復する/効果がなくなった報復
攻撃/「テロリズムを抑止する手段などない」

テロ組織の合理性の問題 123
テロ組織の異なる価値観を理解する

自爆テロの抑止 125
自殺攻撃者が得られるもの/自殺攻撃のメリットを
なくす

テロ支援国家の抑止 128
テロ組織を利用する国家/イラク戦争のメッセージ/
テロの代償/制裁の抜け道を探す/リビアに対す
る国連決議/テロ支援国家に対するダブル・スタン
ダード/経済制裁の効果

防御的抑止 139
対テロ防御行動/テロ活動の「レッドライン」/抑
止行動の結果としてのテロリズムの激化

対テロ抑止の段階的モデル 142
政策決定プロセスの基本段階/政策決定プロセスの
最終段階

 

第5章 攻撃的・防御的対テロ行動 146

攻撃的対テロ行動 146
攻撃行動の効果の評価/攻撃行動の目標/攻撃行動
の代償

攻撃行動の有効性の評価 152
報復政策の有効性についての議論/4つの指標

ターゲテッド・キリングの有効性 157
モラルの問題/暗殺の正当性の検証/司法手続きの
必要性/合法的かつ許される暗殺/暗殺の有効性

イスラエルのターゲテッド・キリング 164
ミュンヘン五輪虐殺事件/パレスチナ自治区内での
暗殺/アンマンでの大失策/困難な倫理的判定/タ
ーゲテッド・キリングの有効性

ブーメラン効果 174
対テロ強硬策が新たなテロを招く?/ブーメラン効
果が原因のテロ/「ブーメラン効果など存在しない」/
ブーメラン効果を過剰に恐れてはならない

テロ組織に対する攻撃行動のタイミング 181
対テロ行動の3つのタイミング/テロリズムに対す
る4つの政策/変化するイスラエルの対テロ政策/
「テロ攻撃が起きるたびに報復していた時代は終わ
った」

防御的対テロ行動 186
警備不足がテロ攻撃の動機となる/防御的警備のた
めの莫大な支出/防御行動はテロを防止する鎖の最
後の輪

 

第6章 民主主義のジレンマ 192

テロをめぐる対立する意見/テロリズムと民主国家
の世論/意思決定者に対する世論の影響力/世論の
影響力の限界/テロ攻撃と選挙の関連/法律万能主
義と法律無視のはざま/倫理的問題/民主主義と情
報活動のジレンマ/テロ容疑者の盗聴をめぐる問題/
テロ容疑者の尋問方法の問題/テロリストの尋問
ルールの原則/合法的な尋問の範囲/「時限爆弾」
的状況の定義/民主主義を守るため、非民主的手段
を使う/「おだやかな身体的圧力」の適用/尋問さ
れて死亡─最悪のケース/きわどい区別/「これが
民主主義の宿命」/攻撃的対テロ行動のジレンマ/
テロ組織に対する攻撃行動は許される/防御的民主
主義のジレンマ/テロ対策決定の指針/カウンター・
テロリズムのルール

 

第7章 対テロ立法と処罰のジレンマ 231

対テロ立法に取り組んできた英国/対テロ法が抱え
る問題/イタリアとドイツの対テロ法/イスラエル
の対テロ法/テロ資金の没収/範囲限定のテロリズ
ム防止立法/対テロ緊急立法/テロ組織の非合法化/
公開裁判および証拠に関する特権/テロ関与被疑
者の起訴/立法上のジレンマの要約/テロリストに
対する処罰のタイプ/集団的処罰/テロリストの住
居の破壊/家屋の破壊と立入禁止の有効性/行政処
分/境界閉鎖/境界閉鎖の限界/行政拘留/追放/
追放に対する国際的な圧力

 

第8章 テロ報道のジレンマ 281

テロ組織とメディアの互恵関係/テロ攻撃に対する
メディアの報道姿勢/報道がテロ対策の強化につな
がる/テロリストが望むのはインパクトである/テ
ロ組織の戦略にとりこまれるメディア/ジャーナリ
ストのジレンマ/生放送のジレンマ/どこまで報道
を続けるか?/テロリスト提供のビデオを放映する
べきか?/テロリストから取材に招かれたら/検閲
のジレンマ/メディア自身の報道規定

 

第9章 心理・士気のダメージに対処する 302

市民の士気喪失を狙う/「合理的な恐怖感」と「非
合理的な不安感」/テロリストの心理戦/予想され
る攻撃に関する警戒情報の公表/市民の対処能力の
強化/イスラエルにおけるテロリズムの心理・士気
に及ぼす影響/政策決定における士気の要素/公衆
が政策決定者に及ぼす影響/士気を目的とする攻撃
的手段の使用/「恐るべきは恐怖そのものだ」

 

第10章 国際協力に関する問題 327

国際テロリズムの脅威/4つの国際的対テロ行動/
テロリズムと戦うための国際憲章を策定/テロリズ
ムとの戦いにおける協力/国際共同による対テロリ
ズム枠組みの設定/世界平和への危機

 

総括 イスラエルの対テロ戦略 342

テロ対策の諸機関を束ねる統括官/代々引き継がれ
る対テロ戦略は存在しない/行動上の対処法/完璧
ではないが、大筋では成功している/カウンター・
テロリズムの原則

付録資料A テロリズムとメディア─シェファイイ
ム会議のサマリー 355
付録資料B 対テロ国際協力に関するコンファレン
ス参加者の勧告 358

脚 注 360

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いかがでしょうか?

各章は、実用書、実務書らしく実に簡潔にポイント
が整理整頓されて紹介されています。

まさに教科書的で、新しい知識を身につけるにあた
っては実に無理なく進めます。

冒頭にある佐藤さんと著者の対談も興味深い内容で
す。

対テロ実用・実務書であり、テロリズム研究書でも
ありながら、実に読みやすい点も、読まなきゃわか
らぬうれしいポイントです!




きょう紹介したのは、

『カウンター・テロリズム・パズル─政策決定者へ
の提言─』
佐藤優監訳
ボアズ・ガノール著
河合洋一郎訳
判型:A5判並製388ページ
発行日 :2018.02
発行:並木書房
https://amzn.to/3JiLVsw

でした。

最後になりましたが、今年一年ありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

どうぞよいお年をお迎えください。


エンリケ

追伸

テロ対処もそうですが、政治にかかわるすべての分
野で言論という知的土台は極めて重要です。

言論という思考基盤が機能しないと、政治という行
動もうまく機能しなくなります。

我が国の政治が平成以降、あきらかに変な状態に見
えるのは、非常に幼稚で、国家観を持たず、未成熟
で、薄っぺらく、イズムによりかかりすぎという不
健全な状態に堕ちていった言論界の姿をモロに反映
していると私は感じています。

テロを考えたり語るにも、知的土台が不可欠です。
必要な行動・思考・判断力はそこからしか生まれな
いからです。その知的土台を培ってくれるのが本著
のような実用書ではないでしょうか?

おススメです↓
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