配信日時 2021/12/24 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】 台湾防衛の切り札(7)F16ファイティング・ファルコン

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp

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こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
分隊支援火器といえばこれ!
ミニミ/M249です。

『ミニミ軽機関銃』
クリス マクナブ (著), 床井 雅美 (監修), 加藤 喬 (翻訳)
2020/7/10 発行
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武器オンチの日本人には
特におススメです。


今年最後の配信です。
新年最初の配信は1月7日の予定です。

加藤さんのブレない言説を心から尊敬しています。

さっそくどうぞ


エンリケ

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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編 Takashi Kato  

台湾防衛の切り札(7)F16ファイティング・フ
ァルコン


加藤喬(元米陸軍大尉)

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□一縷の希望を抱きながら迎える静かなクリスマス
 
 このメルマガがお手元に届くのはクリスマス・イ
ブ。日本に住んでいた頃、クリスマスは「何となく
お祭り気分にさせてくれる外国の行事」に過ぎませ
んでしたが、アメリカでは人々が最も楽しみにして
いる祝日です。
 
 広大な国土に散らばった家族が一堂に会し、ある
いは友人知人が集まって祝杯を挙げ、懇親を深める
貴重な機会なのです。日本の盆と正月を足して二で
割ったような日だと言えるでしょう。もちろん信心
の篤(あつ)い米国人らにとって、「キリストの降
誕を祝う」のが本来のクリスマスであることは言う
までもありません。
 
 先日、公衆衛生局長官のヴィーベック・マービイ
中将(公衆衛生局長官は福祉省公衆衛生局士官部隊
の武官なので軍の階級を使います)が、ニュース番
組に出演し、クリスマスの「正しい過ごし方」につ
いて所見を述べました。曰く、
 
 「アメリカには何百万人ものワクチン未接種者が
おり、自らを危険にさらすだけでなく他人に感染さ
せる愚を犯している。したがってブースターを含む
ワクチン接種を受け、パーティーに出向く前には感
染テストを受けるのが賢明だ。そして、人とは換気
の効いた屋外で接し、室内では必ずマスクを着用す
る。このようにして感染リスクを抑えれば、充実し
たクリスマス休日を過ごすことができよう」
 
 マービイ中将の任務は全アメリカ市民の健康保護。
「石橋を叩いて渡る」態度をとらざるを得ない立場
にあるのは確かです。もっとも政府高官は概して
「状況が悪化した場合の言い訳づくり」、すなわち
保身に汲々とするものです。全世界に広がりつつあ
るオミクロン変種もマービイ長官の発言をことさら
細心なものにさせたのでしょう。
 
 とは言え、バイデン大統領の「7月4日の独立記
念日までには正常な生活が戻る」との公言を真に受
け、久々に自然体でクリスマスを過ごせると思って
いた人たちにしてみれば、マービイ中将の「度を越
した用心深さ」には冷や水を浴びせられたことでし
ょう。
 
 同中将はまた、市民を接種者と未接種者に分け、
後者を悪玉に仕立てる論法を使っています。これは
同胞市民らの溝を深めるものです。接種義務化をゴ
リ押しするバイデン氏にせよ、自宅マスク令を出し
たサンタクルーズ郡保健局の役人やマービイ中将に
せよ、個人的案件への政府干渉を厭(いと)う人々
に接種を無理強いすれば「意地でもワクチンを打た
ない」と反発する人間心理が分かっていない。こう
いう時こそ、昨今日本で話題の「聞く力」を発揮す
るのが正道。辛いパンデミック下でさらなる社会分
断を避けるには、ワクチン忌諱(きき)の理由に理
解を示したうえで、根気強く接種の効用を説き続け
るしかありません。
 
 そんな世知辛いクリスマスにも、希望の兆しがま
ったくないわけではありません。「オミクロン変種
の感染力が極めて強く、反面、毒性が軽微な場合、
同変種が意図せぬ自然のワクチンとして働き、大多
数の人々に免疫を与える」との仮説が一部の米研究
者によって提唱されているからです。
 
 現段階では臨床例が足りず、肯定も否定もできま
せん。しかし「怖いニュースは売れる」とばかり、
感染数のみ報道してパニックを煽る主流メディアは
もう沢山。一縷(いちる)の希望を抱きつつ気の置
けない人たちと静かなクリスマスを迎えるのが、武
漢ウイルス禍時代の市井の知恵ではないかと思いま
す。
 
 最後になりましたが、本年も『加藤大尉の軍隊式
英会話』をご愛読いただき本当にありがとうござい
ました。読者の皆さんがつつがなく年末年始を迎え
られますようアリゾナの片田舎にて願っています。
 
加藤 喬



▼F16ファイティング・ファルコン

 兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を
抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝
ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的な
破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を手
放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマの裏
面が「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

 B52ストラト・フォートレス爆撃機、C130ハーキ
ュリーズ輸送機, F4ファントムII戦闘爆撃機、F15
イーグル戦闘機、F/A18ホーネット戦闘攻撃機。い
ずれも米国製の軍用機です。それぞれ用途は異なり
ますが、ひとつ興味深い共通点があります。長寿性
です。

 B52、C130、F4は運用開始から半世紀以上、F15は
45年、比較的新しいF18でも38年にわたり飛び続け
ている強者(つわもの)です。
ちなみに、DLI時代の教え子にB52のナビゲーターが
いました。この空軍大尉は軍人一家の出身で「ベト
ナム戦争中、父はB52のパイロットでした」が口癖
でした。親子二代が同一機種に関わっていたあたり
にも、この爆撃機の長寿ぶりがうかがえます。

 B52をはじめ、これらの機体は総じて基本設計が
優秀で、日進月歩のテクノロジーを順次組み込む構
造上の「余裕」を持たせてあったことが長寿の秘訣
であるようです。

 今回とりあげるF16ファイティング・ファルコン
も1978年から今日まで現役です。元々は制空戦闘に
特化した昼間軽量戦闘機で、武装も固定装備の20
ミリバルカン砲と短距離空対空ミサイル2発のみで
した。

1970年代に開発された機体の中でもとりわけ斬新で、
枠のない水滴型風防や翼と胴体が一体化したブレン
デッド・ウイングボディ、そしてパイロットの操作
を電気信号に変換して舵面に伝えるフライ・バイ・
ワイヤー制御システムなどを備えています。
いまも機能的、外見的に古さを感じさせません。

 F16は第4世代の全天候多目的戦闘機に発展し、
順次改良が続けられた結果、初飛行から43年経た今
も第一線で運用されています。今回とりあげたF16V
は最新鋭の近代化改修型。2026年までに、台湾空軍
がすでに保有する初期型のアップグレードと合わせ、
総計208機が空の守りにつくことになっています。
エンジンやレーダーの改良に加え、機体そのものが
強化され耐用年数が大幅に伸びています。

 中国人民解放軍空軍の殲-20(J20)など、ステル
ス性に優れた第5世代戦闘機と有視界外で互角に戦
うことは叶いませんが、F16Vは台湾有事に飛来する
米空軍のF22やF35といった最先端ステルス戦闘機と
の相互運用性に優れています。

 つまり、まずF22とF35が台湾空域で制空権を確立
します。しかるのちに上陸を目指す人民解放軍海軍
陸戦隊への水際対地攻撃、台湾沖の中国海軍艦艇へ
の対艦攻撃、そして、人民解放軍空軍の爆撃機、攻
撃機、輸送機、偵察機、そしてスホイ-27など第4
世代戦闘機の迎撃を補完するわけです。

 米空軍との相互運用を前提とする限り、F16Vは中
国の領土野心に対しかなりの抑止力を発揮するもの
と考えられます。

教材ビデオ:
 US equipping #Taiwan with deadly weapons to t
ake to China ! - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=NGwVw4I2SSI&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=21
1
(本エピソードは9:57から始まります)

基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Air superiority(エア・スーペリオリティ)制空権
Day fighter(デイ・ファイター)昼間戦闘機
Evolve into(イヴォールブ・インツー)~に発展する
Multirole(マルチロール)多目的の、多機能の

シナリオ(カウンターを10:20に合わせてくだ
さい)

It (F16)was primarily designed to be an air su
periority day fighter but has evolve into a su
ccessful all-weather multirole aircraft.

(F16は主に昼間制空戦闘機として設計されたが
、全天候多目的戦闘機に発展し成功を収めた)

(今回のエピソードは最後まで続きます)

英語一言アドバイス:
air superiorityは昨今「航空優勢
」と訳されますが、やや古い軍事用語である「制空
権」のほうが日本語としてなじむように感じます。
敵から大きな妨害を受けることなく、陸海空の作戦
を遂行できる状態を指します。

発音サイト:
air superiorityの発音How to pronounce air | HowTo
Pronounce.com 
https://www.howtopronounce.com/air

How to pronounce superiority | HowToPronounce.com
https://www.howtopronounce.com/superiority

参考サイト:
F16V 戦闘機 F-16 (戦闘機) - W
ikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/F-16_(%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F)#F-16E/F%E4%BB%A5%E9%99%8D



(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン(近刊)』(いずれも並木書房)
がある。
 
 
追記

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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
 
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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