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荒木さんの最新刊
知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。
そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!
自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。
『自衛隊警務隊逮捕術』
荒木肇(著)
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こんにちは。エンリケです。
「防衛省の秘蔵映像」解説 第46回です。
あの頃のこと。
思うところ多々ありますね。
さっそくどうぞ。
エンリケ
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防衛省の秘蔵映像(46)
「動的防衛力」の提唱
2009(平成21)年の映像紹介
荒木 肇
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2009(平成21)年の映像紹介
平成21年防衛省記録 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=O98hU16rWNU
□はじめに
22大綱、続いて25大綱と次々と新しい方向性
が示されます。16大綱から6年が経ちました。政
権も民主党が握り、この年(21年)には鳩山由紀
夫氏が総理になりました。鳩山氏は、「トラスト・
ミー(わたしを信じてくれ)!」という米大統領へ
の迷言で有名です。菅直人氏は翌20年に総理大臣
になります。
菅氏と自衛隊といえば、その8月、「改めて法律を
調べてみたら、総理大臣は、自衛隊の最高指揮監督
権を有すると規定されております」と、当時の統合
幕僚会議議長たちに挨拶されたことを思い出します。
20日付の朝日新聞に大きく報道されました。
これはもともと2日の衆議院予算委員会で自民党の
石破茂政調会長から、「自衛隊の最高指揮官として
制服組から話を聞いたか」と追及され、あわてて会
談をセットしたときのことでした。菅氏は自衛隊法
第7条に「内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊
の最高の指揮監督権を有する」と定めていたことを
知らなかったのです。
このとき、防衛大臣北沢俊美氏にも菅氏は「防衛大
臣は自衛官ではないのですよ」と声をかけました。
自衛官とは階級をもち、制服を着る義務がある諸外
国では武官のことです。文民統制の上から、防衛大
臣は文民でなくてはなりません。憲法第66条に「
大臣は文民でなくてはならない」と規定されてもい
ます。
菅氏はその事実も、防衛に関する重要な制度も知ら
なかったことが分かる発言でした。この翌年には、
彼は自衛隊の最高指揮官として「東日本大震災」に
臨みます。自衛官に様々な命を懸けた任務を命じる
立場になりました。
鳩山氏はすでに米国との間の約束だった普天間基
地移設問題で、「最低でも県外へ移設させる」など
と現実無視の発言をしました。
鳩山氏の妄言はまだあります。2011(平成2
3)年2月のことでした。すでに首相ではなく、一
衆院議員だったのですが、辺野古への基地移転にな
ったことをふり返ります。「国外、県外と摸索した
が、結果として辺野古しか残らなかった。辺野古と
なったときの理屈付けに抑止力という言葉を使わせ
てもらった。それを方便と言われたら方便かもしれ
ない」とインタビューに答えました。
そんな中でも自衛隊はこうした文民統制の下に、
さまざまな活動・任務を続けています。前回も書い
たように、平成19(2007)年には国際活動が
本来任務化とされ、中央即応集団が発足します。
平成21(2009)年の防衛白書によれば、自然
災害が増え、国際緊急援助活動が増えてきた。これ
は軍事力の軍事作戦以外への運用などが起きたこと
を意味し、国際社会での軍事力の役割が多様化した
ことを表すとしています。
また、南シナ海での中国の活動が活発化してきまし
た。イランではウランの濃縮実験が行なわれ、それ
らに対応する米軍の再編などの戦略の世界再構築な
どのグローバルなパワーバランスの変化などが起き
ています。それに加えて、北朝鮮の核と弾道ミサイ
ルの開発などがありました。わが国周辺の軍事情勢
の複雑化に対応する必要性が明らかになってきたの
です。
▼「基盤的防衛力構想」から「動的防衛力」へ
「基盤的防衛力構想」は07(平成7=1995)
年で、それまでの防衛構想を踏襲する考え方として
認められたものでした。それはわが国への軍事的脅
威に直接に対抗するのではないということです。
周辺国家がどうあろうとも、わが国が「軍事大国」
になることは決して致しません、その代わり私ども
が軍事力の空白地帯になって周辺地域においての不
安要因とならないようにします。そのためには独立
国としての必要最小限の「基盤的な防衛力」は持た
せていただきますという宣言です。
そうして決められたのが、陸上自衛隊でいえば、定
員が18万人から16万人に減らすことでした。し
かも常備隊員は14万5000人、新しい制度の即
応予備自衛官が1万5000人ということです(合
計で16万人)。これは部隊の規模にも関わります。
地域配備をする部隊が12個師団、2個混成団の
14単位が、8個師団と6個旅団になりました。も
ちろん、北海道の第7師団(ただ一つの機甲師団)
は別です。戦車は全国で約900輌、火砲も約90
0門でした。
海上自衛隊は機動運用される護衛艦部隊は4個群、
地方隊の護衛艦は3個隊が減る7個隊、掃海部隊は
1個群が減りました。陸上哨戒機部隊も3個隊がな
くなり、作戦用航空機も220機から170機に大
幅減少。空自の航空警戒管制部隊が28個群から8
個群、20個隊に改編され、空中警戒飛行隊が増1
個増えました。作戦用航空機は430機から400
機へと削減です。
これが「基盤的防衛力構想」の始まりでした。その
後、前に説明した経緯で防衛力はとにかく削減とい
う流れでした。映像には3自衛隊の取り組みがさま
ざま登場しますが、22(2010)年には「動的
防衛力」という言葉が登場します。
▼「動的防衛力」とは
22大綱は装備については、陸自では戦車と火砲
をさらに400輌、400門に削減し、編成定数も
15万4000人にします。海自は護衛艦が48隻、
潜水艦は22隻に増え、空自は作戦用航空機が34
0機と削減されました。
官房長官談話は次のような内容でした。(1)わ
が国に直接脅威が及ぶことを防止し、及んだ場合は
排除し、被害を最小限にすること。(2)国際的な
安全保障環境の改善、脅威が及ぶこと防止しすると
あります。軍事技術水準をふまえた高度な技術力と
情報能力に支えられる「動的防衛力」に舵を切ると
いったものです。
たしかに映像を見ると、弾道ミサイル防衛につい
てはイージス艦による対空ミサイルSM-2、空自
のペトリオット・ミサイルによる迎撃などが映りま
す。北沢防衛大臣の部隊視察、防衛大学校での訓示
などがおさめられています。
▼海賊対処法
当時、ソマリア沖アデン湾での海賊行為が話題に
なりました。世界では年間400件あまりの海賊行
為があり、うち半数以上の217件がアデン湾での
出来事でした。資源の多くを世界から、とりわけ燃
料資源を中東からの海上輸送に頼るわが国です。
「海賊対処法」が制定され、武器の使用も許される
ようになりました。
3月には護衛艦「まきなみ(DD112)」と「
さざなみ(同113)」が呉を出港する様子が映り
ます。この両艦は「たかなみ」型に属し、満載排水
量6300トン、127ミリ(5インチ砲)を備え、
30ノットを出せて、ヘリコプターも搭載した当時
の汎用護衛艦の最大タイプでした。
2隻は商船や客船のグループ(8隻から12隻)
の前後に位置し、900キロにも及ぶ護衛航海をし
ます。また、これに協力するP3C哨戒機も派遣さ
れ、基地のジブチ空港には陸自の警備隊が常駐し、
空自のC-130は人員物資の輸送に励みました。
年末までに92回も護衛をし、P3Cも126回の
飛行をしたそうです。
面白い話題は、このときではありませんが、日頃
熱心に「反自衛隊」、「海外派兵反対」を主張する
団体が運営する旅客船が、旭日旗を揚げる自衛艦に
護衛を平然と要求したという事件でした。なんだ、
何でも話し合いで解決するはずだろう、こういうと
きだけ自衛隊かと話題になりました。
▼トピックス
世田谷区三宿駐屯地にある自衛隊中央病院の新病
棟完成がありました。自衛官やその家族ばかりでは
なく、一般の方も受診できると広報しています。コ
ロナ禍の中で、この病院の恩恵が大きかったことを
忘れてはなりません。
護衛艦「ひゅうが」が就役しました。初めての全
通飛行甲板をもつDDHでした。大きな飛行甲板で
は3機の対潜水艦ヘリコプターが同時に運用できる
ようになりました。また、女性自衛官区画が設けら
れ、約20人の女性乗組員が生まれます。3代目の
砕氷艦「しらせ」も就役しました。
空自のトピックスは、これまでの管制システム・
バッジからジャッジに替わったことです。もちろん、
性能向上が大きく、弾道ミサイル防衛にも貢献しま
す。
また現在の上皇陛下、当時の今上陛下の御在位2
0周年記念式典への自衛隊の参加が観られます。奉
祝歌が人気グループ、「EXILE」だったことが
記憶によみがえります。
さて、次回は25大綱についてまとめをして、いっ
たんこの内容を休ませていただきます。
(つづく)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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