配信日時 2021/12/14 13:49

【本の紹介】『ジョミニの戦略理論 『戦争術概論』新訳と解説』 今村伸哉(編著)

こんにちは、エンリケです。

この本は、
孫子、クラウゼヴィッツと同じ程度著名な戦略思想
家ジョミニの主著『戦争術概論』の画期的な新訳と
ジョミニ戦略理論の詳細な解説がセットになったも
のです。

ジョミニといえばなんといっても「戦いの原則」です。
現在、各国軍のドクトリンにその法則は活きています。
その意味でジョミニを無視して現代軍事は考えられない、
と言って差し支えのない状況があります。

とはいえジョミニ自身は「戦いの原則」を自らは挙
げていないんですよね。このあたりの事情もこの本
を読むと詳細につかむことができます。

前半の『戦争術概論』の画期的な新訳ですが、
これまで「戦争概論」として知られている書(原書
房版、中公文庫版)は英語版からの重訳でした。
しかも、かなりの量抜粋された解説書でした。

今回初めてフランス語版原著から直接訳されたのです。
(とはいえ、掲載されているのはそのなかの一部です)

そして何よりお伝えしたいのは、
後半の今村さんの「ジョミニ解説」が実に素晴らし
いことです。

本邦初の「ジョミニ研究基本書」の名に値する内容
です。

ジョミニとその戦略理論をめぐる状況がすべて把握
できる研究基本書であるとともに、ジョミニ戦略理
論事典といって差し支えない「ジョミニと彼の戦略
理論と歴史のすべてが見える内容」でもあります。

言い過ぎでもなんでもなく、
この解説を読むだけでジョミニの何たるかがつかめ
ます。極端な話、面白がって読める人なら、数時間
で、にわかジョミニ研究者になれるかもしれませ
ん、、、


『ジョミニの戦略理論ー『戦争術概論』新訳と解説』
今村 伸哉 編著
出版年月日:2017/12/20
ISBN:9784829507292
判型・ページ数 :A5・410ページ
https://amzn.to/3oTYIZW


ではこのジョミニ研究基本書、事典の内容を見てい
きましょう。


◇内容説明

◎「戦争術概論」の書名表記について(編著者「は
じめに」より)

----------------------------------

ジョミニはクラウゼヴィッツの『戦争論』のように
戦争の定義と戦争全体について分析して論じたので
はなく、戦争遂行の理論と方策を論じたものであり
、「戦争概論」と表記するとあたかも『戦争論』に
準ずる印象を与える。また、ヨーロッパでは古代か
ら戦略、戦術などの軍事用語の区分が明確でなく、
一括して“戦争術”と表現してきた。18世紀末頃
にマイゼロアにより、ようやく戦略の用語が表明さ
れ定義された。さらにジョミニが戦争術の用語の区
分原理を本書で明確にした過渡期にあるところから
『戦争術概論』の方が適当であると考量した。

----------------------------------


『ジョミニの戦略理論ー『戦争術概論』新訳と解説』
今村 伸哉 編著
出版年月日:2017/12/20
ISBN:9784829507292
判型・ページ数 :A5・410ページ
https://amzn.to/3oTYIZW




◆目次

■第1部 ……… 原著翻訳 194頁

ジョミニ『戦争術概論―戦略、大戦術および軍事政
策の主 要な方策に関する新分析的描写』(今村伸
哉訳)

◎ロシア皇帝陛下に奉呈 ◎緒言 ◎戦争術の定義

◎第三章 戦略
定義および基本原則/戦いの基本原則/作戦方式/
作戦地域/作戦基地/戦略点および戦略線、戦域の
決勝点、作戦目標/作戦正面、戦略正面、防御線、
戦略陣地/作戦地帯及び作戦線/戦略線/一時的作
戦基地あるいは戦略予備隊による作戦線を確実にす
る手段方法/陣地戦の旧方式および行進の現行方式
/倉庫および行進に伴う倉庫の関係/要塞あるいは
塹壕線による国境防衛および攻囲戦/戦略に対する
防備野営陣地および橋頭堡の関係/山地における戦
略的作戦/大侵入および遠隔地遠征に関する付言/
戦略の要約

■第2部 ……… 2氏による詳しい解説 210頁
【解説】ジョミニの著書と戦略理論 (今村伸哉)

 第一章 ジョミニの生涯と経歴

 第二章 ジョミニの著書と著作過程
最初の論文/『軍の大戦術の理論と実践の講義』か
ら『大戦術論』へ/『大戦術論』から『大作戦論』
へ/『フランス革命戦争の批判と軍事史』/『ナポ
レオン自身が語った政治・軍事的生涯』/『戦争術
概論』

 第三章 ジョミニ戦略思想の形成と戦略概念
17世紀から19世紀初頭までの文化的胎動および
戦争・軍事的特色/ジョミニの戦略思想に及ぼした
啓蒙軍事思想家の影響/ジョミニ戦略思想の形成に
関する戦略理論と作戦原則

 第四章 ジョミニ戦略理論の真髄と批判
ジョミニ戦略理論の真髄と批判/ジョミニの兵站重
視とナポレオンの軍事システムへの批判/クラウゼ
ヴィッツの批判とジョミニの反論

 第五章 ジョミニ戦略思想の影響
ジョミニ戦略思想の大普及の原因/ヨーロッパにお
けるジョミニの著書の伝搬とその影響/ジョミニ戦
略思想のアメリカ軍事文化に及ぼした影響

 第六章 新戦略原則論と「戦いの原則」
ドイツ軍事学派の台頭とジョミニ戦略原則論の再生
/新軍事理論の発生と再生された「戦いの原則」
 終章 ジョミニ戦略原則論の諸問題と現代的意義

【解説】ジョミニの思想とその時代:フランス革命
~ナポレオン戦争の再解釈から (竹村厚士)



◇編著者略歴

今村伸哉(いまむら・しんや)
軍事史研究家。1960年防衛大学校卒業。国士舘大学
大学院政治学研究科修了。陸上自衛隊幹部学校指揮
幕僚課程修了。第三師団司令部幕僚、陸上自衛隊幹
部学校教官、オランダ国防省軍事史課・ライデン大
学・ウィーン大学客員研究員、防衛大学校教授、日
本文化大学教授などを歴任。

主な著書・訳書:
『戦略戦術兵器事典』全3巻
(監修・共著、学習研究社、1995~97年)、
『現代戦略思想の系譜―マキアヴェリから核時代まで』
(共訳、ダイヤモンド社、1989年)、
『軍事革命とRMAの戦略史―軍事革命の史的変遷
1300~2050年』(芙蓉書房出版、2004年)、
『歴史と戦略の本質―歴史の英知に学ぶ軍事文
化』上・下(原書房、2011年)


いかがでしょう?

我が国では、いや世界では、
孫子、クラウゼヴィッツ同様著名な戦略思想家ジョ
ミニは正しく読まれてきたのでしょうか?

不変の戦略原則を見つけ出したジョミニの主著
『戦争術概論』の画期的新訳とジョミニ戦略理論の
詳細な解説。フランス語版原著から翻訳された初め
ての訳書であるこの本は、そういう大きな問いに十
分こたえてくれるジョミニ研究基本書、ジョミニ戦
略理論事典です。

ジョミニの考え方や原則を使う人すべてが目に通す
べき内容と思います。読んでいて面白いから特にそ
う感じるのかもしれません。

今日ご紹介したのは


『ジョミニの戦略理論ー『戦争術概論』新訳と解説』
今村 伸哉 編著
出版年月日:2017/12/20
ISBN:9784829507292
判型・ページ数 :A5・410ページ
https://amzn.to/3oTYIZW

でした。


次回をお楽しみに!



エンリケ


追伸

最後に置かれている竹村さんの解説がまたいいですね。
最後の一文をぜひあなたにも読んでいただきたいも
のです。

『ジョミニの戦略理論ー『戦争術概論』新訳と解説』
今村 伸哉 編著
出版年月日:2017/12/20
ISBN:9784829507292
判型・ページ数 :A5・410ページ
https://amzn.to/3oTYIZW