配信日時 2021/12/10 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】台湾防衛の切り札(5)M142高機動ロケット砲システム(HIMARS)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
分隊支援火器といえばこれ!
ミニミ/M249です。

『ミニミ軽機関銃』
クリス マクナブ (著), 床井 雅美 (監修), 加藤 喬 (翻訳)
2020/7/10 発行
https://amzn.to/3gGpNcq
※大好評発売中

武器オンチの日本人には
特におススメです。


わたしのなかで、

米西海岸には明るいイメージがありました。

でももうそれも過去のはなし。

今では、陰気で暗い、足を踏み入れたくないエリア
になってしまいました。

冒頭文を拝読し、あらためてその思いを強くしています。


さっそくどうぞ


エンリケ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編 Takashi Kato  

台湾防衛の切り札(5)M142高機動ロケット砲
システム(HIMARS)

加藤喬(元米陸軍大尉)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

□主流メディアでは報道されないアメリカの「地殻
変動」

 サンフランシスコから海岸線沿いに100キロほど
南下するとサンタクルーズにやってきます。南側に
優美な弧を描くモントレー湾を眺め、東側には深い
セコイヤの森が広がる風光明媚な港町。温暖な気候
も手伝ってカリフォルニアでも有数のリゾート地で
すが、スペインやメキシコ統治時代ののどかな雰囲
気が残っています。モントレーに住んでいた頃よく
出かけました。小奇麗で居心地のいい小都会でした。
 
 リベラルな学風で知られるカリフォルニア大学サ
ンタクルーズ校の所在地でもあり、1990年代初頭に
は大多数の住人が「マリファナの医療使用」を先駆
けて承認するなど政治的にもリベラルです。また反
戦・反核運動が盛んで、市議会は核兵器や原子力発
電所を拒否する「非核地帯」を宣言したり、テロ阻
止のためにブッシュ(子)政権下で制定された「愛
国者法」に人権侵害の立場から反対したりしていま
す。
 
 本来リベラルとは「個人の権利、市民の自由、民
主主義、自由市場経済を奨励する人々」を指す言葉。
リベラリズムの真髄は「貴方の意見には賛成でき
ないが、貴方の言論の自由は命がけで守る」との矜
持に顕れていました。この意味で、かつてサンタク
ルーズは米国の自由主義を体現するコミュニティだ
ったといえます。
 
 「かつて」と書いた理由は、サンタクルーズ郡保
健局が11月21日「サンタクルーズの全住人は接種の
有無にかかわらず自宅でもマスクを着用せよ」との
命令を出したからです。要請でも奨励でもなく「命
令」です。ネットで全文を読んでみましたが、違反
すると軽犯罪に問われ、罰金と禁固刑を科される可
能性があります。
 
 また「同郡保安官とすべての警察署長は住人がマ
スク着用命令に従うよう同法を執行する」と書かれ
ています。警官が令状なしに個人宅を訪れ、マスク
着用違反を検挙すると言わんばかりの文言に、反ユ
ートピアSF小説『1984年』でジョージ・オーウェル
が描いた全体主義国家を思い浮かべました。ナチス
ドイツや旧ソ連、中国などの監視・密告社会につな
がりかねない由々しき兆候は、アメリカの中国化と
言っても過言ではないでしょう。
 
 国家権力を厭(いと)い、個人の権利や自由競争、
民主主義を尊重するリベラリズムは、政府を絶対視
する独裁や権威主義とは正反対。では、なぜこの大
逆転が自由主義の牙城サンタクルーズで起こったの
か?
 
 推測するに、リベラル派には先取の気概があり変
化を恐れません。同じ民主主義を信奉するとは言え、
伝統や慣例に従った生き方を曲げない保守派とは一
線を画しています。
 
 また、リベラルな考え方を持つ人々は「ユートピ
アを追い求める理想主義者」でもあります。ここに
つけ込んでリベラル層に潜入、乗っ取ってしまった
のが一党独裁を「ユートピア」とする左派と社会主
義者だったのではないか。
 
「リベラル」という言葉の前向きなイメージで本性
を隠しつつ、マルクスが提唱した「階級闘争」を「
人種闘争」にすり替え、米社会の変革を画策するC
RT(批判的人種論)論者やキャンセルカルチャー
のことです。
 
 ちなみに、サンタクルーズの住人が「マスク強制」
にどう反応したかは検索してもヒットがありません。
おそらく、非常時だと諦め従順に受け入れた人もい
るでしょうし、聖域である家庭に官憲の目が及ぶは
ずはないと高(たか)をくくった向きもあるでしょ
う。いずれにせよ、地方政府の役人が「命令」で個
人のプライベートな行動を規制できると考えたこと
が空恐ろしい。パンデミックのどさくさにまぎれ、
自由や人権といった民主主義の根本が浸潤されてい
ます。
 
 カリフォルニア州の一地方都市に過ぎないサンタ
クルーズで起きた異変に気づく日本の政治家はまず
いないでしょう。しかし、日本の安全保障に直結す
る米社会の変質を察知するには、主流マスコミでは
報道されない、一見些細なアメリカの「地殻変動」
を知ることが不可欠です。
 
 
▼M142 HIMARS(ハイマース)

 兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を
抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝
ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的な
破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を手
放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマの裏
面が「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

先月末、産経新聞が「米海兵隊が離島防衛を想定し
た陸自との訓練で、高機動ロケット砲システムを日
本国内で初めて展開する」と報道しました。この最
新鋭ロケット砲システムが、今回とりあげるM14
2 High Mobility Artillery Rocket System(HIMARS:
ハイマース)です。

高機動ロケット砲と言われてもどんな武器なのか今
一つ実感が湧きません。ハイマースは現在陸上自衛
隊が運用中の多連装ロケット砲システム(Multiple
Launch Rocket System:MLRS)の小型版。重い装軌式
の車体を装輪式に改め、中型輸送機でも迅速に運搬
できるようにしたものです。

空挺部隊や海兵隊の長距離火力支援を任務とし、M
26ロケット弾を使用する場合の射程は32キロ。
目標上空で多数の子爆弾を放出し、約2ヘクタール
(6000坪)の地域にバラまきます。子爆弾は着弾と
同時に爆発。兵員や軽装甲車両を殺傷破壊します。
この集束爆弾(クラスター爆弾)は湾岸戦争でも使
用され、イラク兵が「鋼鉄の雨」と呼んで恐れたと
言います。

M26は無誘導のロケット弾で偏流の影響を受けやす
い欠点があります。そこでハイマースではGPS誘導
型MGM-140 ATACMSミサイルも使用し、命中精度を上
げています。またこの地対地ミサイルの追尾装置を
改良し、対艦ミサイル能力も付加する計画です。

広範囲の敵を一挙に殲滅できるハイマースは、人民
解放軍海軍陸戦隊の台湾上陸を水際で阻止する火砲
として、また、沖合の揚陸艦を狙い撃つ対艦ミサイ
ルとして威力を発揮します。それはまた、日本の離
島防衛にも極めて有効な兵器システムであることを
意味します。

教材ビデオ:
 US equipping #Taiwan with deadly weapons to t
ake to China ! - YouTube

https://www.youtube.com/watch?v=NGwVw4I2SSI&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=21
1

(本エピソードは7:02から始まります)

基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Take on(テイク オン)~と戦う
Fortification(フォーティフィケイション)
要塞 防護施設
Seeker(スィーカー)追尾装置
Engage(エンゲイジ)交戦する
Surface combatant(サーフィス
 コンバッタント)水上戦闘艦艇

シナリオ(カウンターを7:53に合わせてくださ
い)
The missile was initially meant for surface-to
-surface warfare and was designed to take on t
argets such as air defenses, troop fortificati
ons but with the introduction of advanced targ
eting multi-role seeker, it will be able to en
gage moving targets including Chinese surface
combatants in seas.

(ハイマースは当初は地対地戦闘用で、敵の防空施
設や部隊防護施設を攻撃するためのものだった。し
かし、先進多機能照準追尾装置の登場で、中国海軍
の水上戦闘艦艇を含む移動する標的とも交戦できる
ようになる)

(今回のエピソードは8:12まで続きます)

英語一言アドバイス:
engageにはいくつか異なる意味があります。
たとえば和製英語にエンゲージリングがありますが、
これはengagement ringのことです。この場合、
engageは「婚約する」という意味になります。軍事
用語では「交戦する」と訳します。

発音サイト:
engage の発音 engage - Google Search
http://okigunnji.com/url/139/

参考サイト:
米海兵隊が最新鋭ロケット砲システムを離島防衛に

<独自>米軍が最新鋭砲空輸へ 離島防衛を想定
 - 産経ニュース (sankei.com)
https://www.sankei.com/article/20211127-JTKR76RKXFJHNN5KLJJJLXIX4Y/

高機動ロケット砲システム HIMARS - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/HIMARS



(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン(近刊)』(いずれも並木書房)
がある。
 
 
追記

『ミニミ軽機関銃』
https://amzn.to/3gGpNcq
※大好評発売中

「MP5サブマシンガン」
http://okigunnji.com/url/14/
※大人気継続中

『AK-47ライフル』
http://amzn.to/2FVniAr
※根強い人気

『M16ライフル』発売中♪
http://amzn.to/2yrzEfW

『ガントリビア99』発売中!
https://www.amazon.co.jp/dp/4890633456/
 
『アメリカンポリス400の真実!』発売中
https://www.amazon.co.jp/dp/4890633405
 
『チューズデーに逢うまで』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063326X
 
『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
 
---------------------------------------
 
日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
----------------------------------------
 
 
PS
弊マガジンへのご意見、投稿は、投稿者氏名等の個
人情報を伏せたうえで、メルマガ誌上及びメールマ
ガジン「軍事情報」が主催運営するインターネット
上のサービス(携帯サイトを含む)で紹介させて頂
くことがございます。あらかじめご了承ください。


最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝し
ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。

-----------------------------------------
メールマガジン「軍事情報」
発行:おきらく軍事研究会
(代表・エンリケ航海王子)

■メルマガバックナンバーはこちら
http://okigunnji.com/url/105/

メインサイト:
https://okigunnji.com/

問い合わせはこちら:
https://okigunnji.com/url/7/

メールアドレス:
okirakumagmag■■gmail.com(■■を@に置
き換えてください)
------------------------------------------
 

配信停止はコチラから
https://1lejend.com/d.php?t=test&m=example%40example.com
 
----------------------------------
投稿文の著作権は各投稿者に帰属します。
その他すべての文章・記事の著作権はメー
ルマガジン「軍事情報」発行人に帰属し
ます。

Copyright (C) 2000-2021 GUNJIJOHO All rights reserved.