配信日時 2021/11/29 20:00

【我が国の未来を見通す(4)】少子高齢化問題(4) 「少子高齢化社会」の最大の問題点 宗像久男(元陸将)

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。お仕事の依頼など、問い
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こんにちは、エンリケです。

高齢化、少子化問題について我が国は世界の先頭を
走っている

とのご指摘は重要と思います。

対処モデルは我が国が作るのです。

どこかの国を見習おう、
という責任逃れ二番煎じ発想でなく、
「自分ごと」として脳内を切り替え、真摯に取り組
まないと、我が国はこの世から消えてなくなるで
しょう。


エンリケ



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我が国の未来を見通す(4)

少子高齢化問題(4)
「少子高齢化社会」の最大の問題点

宗像久男(元陸将)
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□はじめに

米国人戦略家のE・ルトワックは、産経新聞202
1年10月7日付の1面で「少子化は日本存亡の危
機 回避急げ」として、移民の受け入れに適さない
日本は「少子化対策に一刻の余裕がない」と警告し
ています。

ルトワックは「少子高齢化は、社会からエネルギー
や進取の精神、バイタリティーを失わせる」と指摘
するとともに、世界のランキングが56位にとどま
っている「日本の幸福度」についても言及し、「そ
の原因は少子化で孫が生まれて来ないためだ」とし
て「赤ん坊の存在は人々に笑顔を与え、社会を明る
くする。孫が1人でもいれば、生活の喜びは倍増す
る」と自ら3人の孫を持つ身からその体験を披露し
ております。

私も孫が1人おりますので、ルトワックの指摘はよ
く理解できます。一方、いまだ独身を謳歌している
長男もおり、時々「家族、特に子供がいることの重
要性」を説きますが、頭では十分わかっていても良
縁に巡り合えない現実に対していかんともしがたい
ものがあります。

 ルトワックはまた、「高齢化した国は難破船のよ
うなもので、最後は木っ端みじんになる。難破を回
避できるかどうかは、政治指導者が行動を起こすか
どうかにかかっている」と結論しています。

「少子高齢化にいかに立ち向かうか」について、外
国の事例を研究しつつ、読者の皆様と一緒に考えて
いきたいと考えておりますが、さまざまな政策を計
画し実行する必要があることからその先頭に立つの
は為政者であり、政治家であることは論を俟ちませ
ん。その政治家たちに火をつけ、背中を押すのは主
権者たる私たちです。そのようなことを頭におきな
がら、「少子高齢化」の現状や将来の問題点をもう
少し考えてみましょう。

▼「社会保障給付金」の推移 

 さて「少子化」と「高齢化」が同時並行的に進展
し、人口減少のなかで、高齢化率が大幅に増大する
のは先進国共通の現象でありますが、いま現在、ル
トワックが指摘するような抜本的な対策に踏み切ら
ないまま、「少子化」も「高齢化」も進展しそうな
のは、我が国の特有な現象なのかも知れません。

「少子高齢化」の問題を考えるために、最初に、我
が国の国家予算をさっと覗いてみましょう。予算の
歳出の内訳は、年金や介護・医療などの「社会保障
関係費」がダントツで約3割を超えています。次に、
地方の財政力の差の調整や財源の保障のための「地
方交付税交付金等」、それに国債の元金払いや利息
の支払いに充てられる「国債費」の合計で全体の7
割を超えています。残りの隙間に、公共事業費、文
教および科学振興費、防衛費などがひしめきます。

歳入は、所得税、法人税、消費税などの租税や税外
収入が歳入全体の6割ほどを賄い、残りの4割は、
公債金、つまり借金に依存しております。子細にみ
れば、社会保障費の30数兆円は、おおむね法人税
と消費税を合わせた額が財源となっています。

戦後、我が国の社会保障はゼロから始まりましたが、
年金、医療、そして介護など福祉サービスのため
に支出される税金や保険料の金額を示す「社会保障
給付費」は年々増え続け、50年あまりの間に約1
00倍になり、2021年には約130兆円まで膨
れ上がりました。厚生労働省は2025年には約1
50兆円になると見積もっており、高齢者数の増加
とともにその後しばらく増額されるのは明らかです。

問題はこの給付費を誰が担っているかです。その内
訳は、年金や健康保険の種類などによって差異はあ
りますが、給付費総額は、保険料が6割弱、国庫(
上記の社会会保障関係費等)が3割弱、地方負担が
1割強、その他資産収入等で賄っております。ちな
みに、この年金の資産運用を一手に行なっているの
が年金積立金管理運用独立法人(GPIF)で時々
話題になっています。

企業の保険料は労使折半が通常ですが、それらを含
めて、これらいずれの財源も主に生産年齢層が担っ
ていることは間違いなく、この「支える側」の生産
年齢人口(15歳~64歳)がすでに減少傾向にあ
り、今後、ますます減少することが問題なのです。

▼「社会の支え合い構造」が変化

我が国は、1961年に「国民皆保険」を開始しま
した。その頃の「支えられる側」にあたる高齢化率
はわずかに約6%でした。しかし、今は約30%に
近づき、将来、その比率が40%になろうとしてお
ります。他方、生産年齢人口の割合の比率は最大7
0%あったものが徐々に減りはじめ、現時点では約
60%、将来は50%に近づきます。

つまり、明らかに「社会の支え合い構造」が変化し
つつあるのです。具体的に言えば、1965年頃は
「胴上げ型」(65歳以上の1人を生産年齢層が
9.1人で支える)だったものが、2012年頃は
「騎馬戦型」(1人を2.4人)になり、2050
年頃には「肩車型」(1人を1.2人)になると予
測されています。つまり、おおむね1人で1人を支
えることになるのですから、それが可能であるとは
とても考えられないのです。

 なかでも、問題なのは年金でしょう。「賦課(ふ
か)方式」(現役世代から徴収した保険料を高齢者
に給付)を採用している年金は、徴収される人が減
れば支給総額が減る一方で、受給される高齢者が増
えるわけですから、受給のバランスが崩れるのは目
に見えています。

これについて、厚生労働省は5年ごとに「所得代替
率」(現役時代の男性の平均月収の何%が年金にな
るか。現在は、61.7%)の変化を計算し、年金
制度を検証しております。直近では2019年に検
証しましたが、その際に老後を迎える夫婦の年金等
の平均収入に対して支出が上回ることから算出され
た結果、「老後2000万円問題」が話題になりま
した。

将来の推計は、経済成長率や出生率などの変化によ
って変わりますが、2050年頃には積立金がゼロ
になると見積られているようですし、最悪の場合、
世界に誇る「国民皆保険制度」そのものが破綻の危
機に遭遇する可能性もあるのです。

次の検証は3年後の2024年に行なわれるようで
すが、その時にはどのような結果になるか注目して
いるところです。少なくとも、今の私たちが知って
いる各指数がより厳しくなることは100%間違い
ないでしょう。

一般的に言えば、年金積立金の目減りの対策は年金
の減額か受給開始年齢を引き上げるしか選択肢がな
いことは明らかです。このメルマガの読者の皆様の
中には、私を含めてすでに高齢者に分類される方も
多いと思いますので、「自分には関係ない」と突き
放すことは可能です。

しかし、「少子化」と「高齢化」が結びついた「少
子高齢化社会」の問題は、今や全世代の国民ひとり
一人に突き付けられた問題と認識する必要があると
私は考えます。

平均寿命が伸び「高齢化」が進展しても、「少子化」
でなければ、「支え合い構造」にあまり変化はなく、
まさに“ハッピーエンド”なのですが、我が国の実
態は「高齢化」も「少子化」もほぼ世界の最先頭を
走っております。前に紹介した「ライフシフト」に
書かれた、超高齢化時代における人生戦略とは少し
違った考え方や生き方が求められているのかも知れ
ません。

具体的にどう立ち向かうか、について、次号以降、
一緒に考えて行きましょう。


(以下次号)


(むなかた・ひさお)



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【著者紹介】

宗像久男(むなかた ひさお)
1951年、福島県生まれ。1974年、防衛大学校卒業後、
陸上自衛隊入隊。1978年、米国コロラド大学航空宇
宙工学修士課程卒。陸上自衛隊の第8高射特科群長、
北部方面総監部幕僚副長、第1高射特科団長、陸上
幕僚監部防衛部長、第6師団長、陸上幕僚副長、東
北方面総監等を経て2009年、陸上自衛隊を退職(陸
将)。日本製鋼所顧問を経て、現在、至誠館大学非
常勤講師、パソナグループ緊急雇用創出総本部顧問、
セーフティネット新規事業開発顧問、ヨコレイ非常
勤監査役、公益社団法人自衛隊家族会理事、退職自
衛官の再就職を応援する会世話人。著書『世界の動
きとつなげて学ぶ日本国防史』(並木書房)



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