配信日時 2021/11/26 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】台湾防衛の切り札(3)M109A6パラディン自 走榴弾砲

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp

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こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
分隊支援火器といえばこれ!
ミニミ/M249です。

『ミニミ軽機関銃』
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<尖閣有事を憂う日本の軍事費がアメリカの半分に
も満たない事実や、「対中包囲網の最弱リンクは日
韓関係」との糾弾には今から備えておくべきでしょ
う>

とのご指摘は極めて重要な気がします。
備えよ常に。



さっそくどうぞ


エンリケ

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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編 Takashi Kato  

台湾防衛の切り札(3)M109A6パラディン自
走榴弾砲


加藤喬(元米陸軍大尉)

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□「起こる必要のない失態」を繰り返すバイデン大
統領

 読者の方々が本稿を読まれる頃はすでに師走も目
前。ゆく川の如き時の流れをひときわ感じる季節で
す。
 
 バイデン政権が誕生してから11か月強。この間、
違法移民流入による国境危機、アフガニスタン撤
退作戦失敗、批判的人種論(CTR)プロパガンダ
による米軍分断などが相次ぎました。いずれも米社
会の箍(たが)をゆるめ、大国アメリカの権威を貶
めた出来事です。一見すると相互関係のない事柄の
ようですが、根底には共通するものがあります。そ
れは何か?
 
 トランプ政権は不法入国者に対し厳しく臨みまし
た。立ちはだかる「国境の壁」のイメージが越境志
願者を出発前に躊躇させ、何万人もの移民が殺到す
る国境危機は存在しませんでした。バイデン大統領
が国境重視策を受けついでいれば、中南米から移民
キャラバンが押し寄せる事態には立ち至らなかった
でしょう。国境問題が制御不能に陥ると、バイデン
大統領はこれを「国境警備隊による非人道的移民対
応」にすり替え、警察嫌いのマスコミに叩かせまし
た。
 
 アフガニスタン撤退の不手際は、同時多発テロか
ら20年目の9月11日にこだわったバイデン大統
領が、本来なら戦略的深慮に基づくべき撤退を「政
治ショー」にしたことが原因です。まず米市民やア
フガン協力者の避難体制を整え、タリバンの活動が
下火になる冬場に敢行していればこれほどの大失態
にはならなかったはず。それでも大統領は「撤退は
大成功し、米史上最長の戦争を終わらせた」と自画
自賛。人々を置き去りにした責任は、タリバンと撤
退合意したトランプ氏と、戦わず降伏したアフガン
国軍、そして国外逃亡したガニ前大統領に転嫁しま
した。
 
 白人を抑圧者として糾弾し、少数派に被害者意識
を植え付けるのが批判的人種論(CRT)。バイデ
ン政権はこのCRT教育を米軍将兵に強要。兵士間
の敵愾心と相互不信、ひいては士気低下を招いてい
るようです。しかし私の知る限り、ベトナム戦争後
の米軍は人種差別とは最も縁遠い組織。アメリカ軍
を制度的人種差別の温床と決めつけるCRTプロパ
ガンダは不必要なばかりか、将兵の戦意を削ぐ亡国
の所業に他なりません。
 
 してみると、これらはいずれも「起こる必要のな
い失態」だったわけで、バイデン大統領がその非を
認めず責任転嫁に終始したことがそれぞれの底流に
あります。
 
 寸分たがわぬパターンが、いま再び繰り返されよ
うとしています。エネルギー危機に端を発した31
年ぶりのインフレのことです。米国での移動や暖房
に欠かせないガソリンと天然ガスの価格が1年前に
比べ60%も値上がりしたのは、バイデン政権の目
玉政策「脱炭素戦略」の当然の帰結でしょう。
 
 バイデン氏は就任直後から、キイ・ストーンパイ
プライン計画の白紙撤回や天然ガスと原油採掘許可
の差し止め命令などを連発。グリーン・エネルギー
への転換を謳う党内左派と環境保護派の歓心を買っ
てきました。その結果、アメリカはエネルギー自給
体制を自ら手放し、米経済は再び産油国の思惑に左
右される状況に逆戻りしたのです。
 
エネルギー価格高騰が庶民の懐を直撃したこともあ
り、このところバイデン政権の支持率は41%にま
で下落しています。にもかかわらず、ホワイト・ハ
ウスのサキ報道官は11月12日「長期にわたるガ
ソリン価格の高騰は、グリーン・エネルギーへの迅
速な転換をより正当化するものだ」と発言。市井の
生活など眼中にないことを図らずも露呈しました。
 
また、天候に左右される風力や太陽光といったグリ
ーン・エネルギーでは安定した電力供給ができない
事実や、電力価格が極めて割高になる可能性はきれ
いに無視。同報道官の言葉が説得力に欠けるのは、
このようなご都合主義によるものです。
 
もっともバイデン氏本人も五十歩百歩。「石油や天
然ガス会社が消費者を食い物にし、価格を釣り上げ
ている証拠がある」と定石の責任転嫁論を展開する
始末だったからです。
 
「バイデン氏は米有権者の問題。日本に影響はない」
そう感じる読者もおられるでしょう。しかし・・・
11月16日に行なわれた米中首脳オンライン会談の
結果を一瞥すると、そうとばかりは言っていられま
せん。
 
バイデン大統領は「気候問題などで中国の協力姿勢
を引き出した」と成果を強調したものの、パンデミ
ック原因究明、新疆ウイグル地区での民族浄化、香
港での言論弾圧、台湾に対する武力恫喝、東シナ海
の実効支配化などは議題にもなりませんでした。核
戦力と通常軍備の急増にもかかわらず、中国を「敵」
ではなく「唯一の競争相手」と見るバイデン氏の
ナイーブさに、絶対権力者の地位を固めつつある習
氏は高笑いしたことでしょう。
 
会談後、バイデン大統領は台湾を「独立国」と呼び、
直後から火消しに追われました。事程左様に、バ
イデン氏の対中言動にはブレが目立ち、有事の際、
どこまで毅然と対峙できるかどうか不透明です。中
共への対応でも「起こる必要のない失態」が飛び出
す可能性はあり、そうなれば、日本へも「責任転嫁
」の砲口が向けられないとも限りません。
 
尖閣有事を憂う日本の軍事費がアメリカの半分にも
満たない事実や、「対中包囲網の最弱リンクは日韓
関係」との糾弾には今から備えておくべきでしょう。

それにしても、「本当にこの男で大丈夫か?」そん
な憂いがますます募る霜月です。



▼M109A6パラディン自走榴弾砲

 兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を
抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝
ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的な
破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を手
放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマの裏
面が「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

戦車と自走榴弾砲は形状が似ており、素人目には区
別がつきにくいものです。どちらも駆動装置として
無限軌道(キャタピラ)を用い、全周回転する旋回
砲塔を備えているからです。しかし、目前の敵陣突
破や対戦車戦闘を主任務とする戦車が強力な装甲と
直接照準式の火砲を備えているのに対し、自走榴弾
砲は後方から数十キロ先の目標を射撃するのが任務。

したがって、装甲は爆弾の破片や重機関銃の弾丸に
耐えられる程度のものです。また、目で見て狙いを
定めるのではなく、弾道計算から射角と装薬量を割
り出して標的に命中させる間接射撃を行ないます。

今回採りあげるM109A6パラディンは1962年から配備
されているM109 155ミリ自走榴弾砲に最新の近代化
改修を加えたものです。最も顕著な外見上の違いは
従来よりかなり長くなった砲身でしょう。この長砲
身に空気抵抗を減らす「ベースブリード式」の最新
型砲弾を掛け合わせることで、約18キロだった射程
が45キロに延びています。

しかしより画期的なのは、パラディンが慣性を利用
した測位能力と自動火器管制装置を兼ね備えている
ことです。従来型では射撃位置に停車後、乗員が車
外に出て自分の位置を測定したうえ目標までの弾道
を計算する必要があり、これには数分かかりました。
これに対しパラディンでは、走行中にデータ・リン
クを通じ砲撃データを火器管制コンピューターに入
力。停車後60秒で初弾を発射し、その後間髪を入れ
ず移動することができます。

この「射撃後即移動」能力は現代の戦場では死活的
に重要です。小型の対砲兵レーダーと弾道解析コン
ピューターが広く配備された今日、放物線を描いて
飛翔する砲弾はレーダーで捕捉され、発射位置が迅
速に特定されるからです。初弾発射後にもたついて
いると、敵砲弾の雨にさらされると言うことです。

台湾軍には40両のパラディンが供与されています
。中国人民解放軍の上陸作戦に備え複数の射撃位置
を事前に設定すれば、有事の際はこれらの地点を速
やかに行き来することで敵の反撃をかわしつつ、長
大な射程を活かし人民解放軍に甚大な損害を与える
ことができましょう。


教材ビデオ:
 US equipping #Taiwan with deadly weapons to t
ake to China ! - YouTube

https://www.youtube.com/watch?v=NGwVw4I2SSI&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=211

(本エピソードは4:24から始まります)

基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Inertial(イナーシャル)慣性の
Integrated with(インテグレイテッド ウィヅ)と
一体化した
Fire control system(ファイア・コントロール・シ
ステム)火器管制装置

シナリオ(カウンターを5:29に合わせてくださ
い)

The vehicle’s inertial positioning and navigat
ion system are integrated with the automatic f
ire control system.

(パラディンの慣性測位および航行システムは自動
火器管制装置と一体化している)

(今回のエピソードは5:40まで続きます)

英語一言アドバイス:
integratedは「統合された」または「一体化した」
と訳します。電子機器に使われるICは
integrated circuitと呼ばれ、日本語では「集積回
路」です。漢字にするとその意味がより良く表せま
す。

発音サイト:
integratedの発音 integrated - Google Search
http://okigunnji.com/url/137/

参考サイト:
M109A6パラディン自走榴弾砲 
M109 155mm自走榴弾砲 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/M109_155mm%E8%87%AA%E8%B5%B0%E6%A6%B4%E5%BC%BE%E7%A0%B2



(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン(近刊)』(いずれも並木書房)
がある。
 
 
追記

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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
 
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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