配信日時 2021/11/24 09:00

【防衛省の秘蔵映像(42)】いささかだれ気味(?)の広報動画  2005(平成17)年の映像紹介 荒木肇

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荒木さんの最新刊

知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。

そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!

自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。

『自衛隊警務隊逮捕術』
 荒木肇(著)
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こんにちは。エンリケです。

「防衛省の秘蔵映像」解説 第42回です。

冒頭文、読み応えあります。

中共とロシアの接近は、
わが脅威の第一位といっていいほどの、
戦略レベル危機ですね。

今わが国が、
極めて危険な状況下にあるのは間違いないでしょう。


さっそくどうぞ。


エンリケ


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防衛省の秘蔵映像(42)

いささかだれ気味(?)の広報動画
 2005(平成17)年の映像紹介


荒木 肇
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 2005(平成17)年の映像紹介
平成17年防衛庁記録 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Qd1-2-xLZr8

□はじめに・中露の示威

 第2次岸田政権が生まれ、林芳正氏が外務大臣に
なりました。もともと、日中の友好に努める議員連
盟の方だそうですが、やはり中国に忖度される方な
のでしょう。もちろん、政治家の方々の高邁な見識
など、わたしのような庶民はうかがい知ることもで
きませんが、きちんと抗議し、相手の真意を引きだ
し、こちらの要求を通したのでしょうか。

 だいたい外務省というのは古い言葉ですが、伏魔
殿(ふくまでん)のようなイメージがあります。何
をされているのかよく分かりません。なんだか分か
らないけれど、何か魔物が潜んでいるような気がし
ます。チャイナ・スクールとかいう中国留学組がい
て関係を深め、有用な情報を集めるといった話も聞
きますが、逆に取りこまれている人も当然いるのだ
ろうと想像できるのです。

 中国とロシアの海軍が協力して「連合艦隊」を組
み、わが国周辺で示威をする。あるいは中国の海中
情報収集艦がわが国領海に入って活動する。そうし
た主権を侵す行動に、「遺憾砲」や「懸念砲」しか
撃たないらしいです。何の効果もありません・・・
と言っては、外交問題の素人がと笑われるかも知れ
ませんね。

 おかげで「平和」ではないか、日中の経済、友好
も維持しているではないかというご意見もありまし
ょう。そうして、東京都の一人の市長さんは在留の
外国人に参政権を与えるという条例案を議会に出す
そうです。何を考えているのかと無見識なわたしな
どは思いますが、そうした人を首長に信任するとい
った人も多いのでしょう。


▼初歩的な校正ミス

 今回の映像紹介は、これはいささか・・・と思わ
される内容がありました。国民保護の法案の内容の
紹介です。Part3、「国民保護業務計画」の紹
介には驚かされました。(1)の避難住民の誘導、
つまり運送力が不確実な場合の運送実施、これは当
然です。自治体と協力して、避難する住民を誘導し、
安全な後方に下げるのは自衛隊の仕事でしょう。

 問題は(2)です。「在日米軍施設等の所在地域
における住民の『非難』のための運行に関わる調整
等」とありました。有事になれば、同盟国たる米軍
基地、施設は当然、攻撃を受けるおそれはあります。
その近くの住民は当然、避難させられるわけでしょ
うが、「非難」とは何でしょうか。こうしたミスが
あり、見逃した責任は誰にあるのでしょう。当然、
防衛庁内局の広報担当の責任でしょう。

▼イラン復興支援に参加したLAV

 国際平和への貢献で大きく取り上げられているの
が、今回もイラク復興支援活動です。その中に、わ
ずかですが車輌が登場します。装備品として開発さ
れた自衛隊の専用車輌です。特徴的なものをご紹介
しましょう。

 まず軽装甲機動車です。内地の師団、旅団の普通
科(歩兵)部隊を装甲化するために開発されて20
02(平成14)年から配備が始まりました。だか
らイラク派遣部隊の花形ともいうべき存在でした。
愛称は「ラブ」、ライト(軽)・アーマード(装甲)・
ビハイクル(車輌)、L.A.V.の略称です。

 軽いといっても、大きさは全長4.4メートル、
全幅2.04メートル、全高1.85メートルとい
って小柄ですが、重量は約4.5トンです。これよ
り車体が大きい、高機動車が約2.55トンになり
ます。ジープの後継であるパジェロ(正式には73
式小型トラック)は約2トンですから、装甲という
のはずいぶん重いものだと分かります。

 開発の狙いは戦場での機動力の向上と、戦略機動
も可能ということでした。戦略機動可能とは、わか
りやすく言えば大型輸送ヘリのCH47や空自輸送
機C130などによる空輸ができるようにするとい
うことです。ということは、とにかく防弾鋼板を厚
くするか、どこかで折り合いをつけて重量を考える
ということになります。おそらくイラクに派遣とい
うことでは、安全性の向上のために増加装甲を付け
たのでしょう。そうした話が聞かれました。

 両側に4つドアがあります。ルーフには左右に開
く大きなハッチがあり、そこにはMINIMI機関
銃を取りつけることができ、総合火力演習などでは
01(マルヒト)式軽対戦車誘導弾も隊員が発射す
ることも見られます。

 乗員は操縦手と1名が前席に、後席には2名が乗
れます。当時の小銃班はMINIMIを1挺と、8
4ミリ無反動砲もしくは01式軽対戦車誘導弾1筒
ですから、班長搭乗車と合わせて小銃班3輌となり
ました。小銃小隊は3個班で成るので、小隊長車を
合わせて10輌で1個小隊になります。

 装甲化されたジープですが、価格は2004年度
で1輌3200万円です。無装甲の高機動車のおよ
そ4倍に抑えられました。この頃、調達数は年間約
150輌となり、1個連隊分ずつも増えてゆきまし
た。製作にあたったのは小松製作所ですが、近年、
防衛装備品からの撤退があり、ラブの後継車輌も開
発しないということになりました。

▼MINIMI機関銃

 小銃分隊には、小銃と同じ弾薬を使う掩護用の自
動火器として軽機関銃が配備されます。陸自でも8
9式小銃が制式化されれば、5.56ミリの同口径
の機関銃が必要となりました。それまでは、7.6
2ミリの64式小銃と62式機関銃の組み合わせで
したが、今度は国産ではなく外国製の導入となった
のです。

 もともとはベルギーのFN社の製品で、アメリカ
軍もM249として採用されています。ライセンス
生産は住友重機械工業で行なわれました。重量は機
関銃としては約7キログラムと軽量で、特長は給弾
に3つの方法が選べるところです。

 専用の200発入りの箱型弾倉、小銃と同じ30
発箱型弾倉を使うことができ、しかも金属製のリン
ク・ベルトによる給弾もできます。価格は約300
万円であり、小銃と比べて10倍にはならないとい
う低価格が実現されました。ちなみに89式小銃は
約34万円でした。

▼世界平和に貢献する人道派遣

 イラクでは陸自の派遣部隊が社会資本の復旧と建
設、医療支援を行ないました。空自はさまざまな物
資や人員の輸送に貢献し、海自もインド洋での外国
艦艇への給油支援に活動しています。海自の遠洋航
海の途次、フランスに寄港したときに給油を無料で
してくれた、インド洋でのフランス艦への給油のお
返しだというエピソードも楽しいです。

 パキスタンの地震災害への陸自ヘリ部隊の活動も
ありました。3000メートル級の高地でも起きた
死者4万人もの悲劇でした。物資の輸送に、傷病者
の救助に、山岳気象の中で標高1000~1300
メートルの高地で活躍する陸自のヘリの映像に感動
します。

 インド洋・スマトラ島沖の地震による災害にも陸
自、海自、空自が出動していました。映像には海上
自衛隊の輸送艦から海岸に進むLCAC、つまりエ
アクッション艇の姿も見えます。米国のテキストロ
ン社製で、全長約25メートル、幅は13メートル、
エンジンはガスタービンで出力約1万5000馬力、
速力は40ノットです。「おおすみ」には2隻が搭
載され、艦尾の開口部から出入りします。

 そうしてゴラン高原でのアンドフ活動です。現在、
統合幕僚監部防衛計画副部長の白川訓通陸将補が
隊長だった若い頃が映っています。

 また、この年から統合幕僚長が3自衛隊を統括・
指揮し、総理大臣を直接補佐するシステムになりま
した。


(つづく)


(あらき・はじめ)


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●著者略歴
 
荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
 
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
 

『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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