配信日時 2021/11/10 09:00

【防衛省の秘蔵映像(40)】BMD防衛の構想の始まり 2003(平成15)年の映像紹介 荒木肇

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荒木さんの最新刊

知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。

そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!

自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。

『自衛隊警務隊逮捕術』
 荒木肇(著)
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こんにちは。エンリケです。

「防衛省の秘蔵映像」解説 第40回です。

イラク戦争当時のことを思い起こすと、
なんとも未熟で恥ずかしいばかりです。

あなたはいかがでしょうか?

さっそくどうぞ。


エンリケ


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防衛省の秘蔵映像(40)

BMD防衛の構想の始まり
2003(平成15)年の映像紹介


荒木 肇
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2003(平成15)年の映像紹介
平成15年防衛庁記録 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=Umw4SS4pVcc


□はじめに

ご教示へのお礼と海自艦艇の区分等について。
いつもご愛読をいただいている元海上自衛官M様、
ご教示ありがとうございます。まず、艦と艇の区分
について、それは排水量を元にしたものではないと
いうお教えです。確かに1000トン以下の潜水艦
でも潜水艇とはいわず、潜水艦でした。また、基準
排水量、満載排水量などと同じ「排水量」でもさま
ざまな基準あることなどです。

さて、そこで少しでも関係のある記述を探してみま
した。『世界の艦船』1984(昭和59)年2月
号、特集「軍艦分類考」の中に高須廣一元海将補が
次のように書かれています。以下、その内容をご紹
介しましょう。

まず、海上自衛隊の前身である警備隊は1952(
昭和27)年10月に3つの種別を発表しました。
「警備船(750トン以上をPF、750トン未満
をLS)、掃海船、雑船」の3つでした。このとき
に旧海軍にはなかった符号と番号も定められます。
公式の種別は以上の通りでしたが、昭和28年度か
ら艦艇の国産化が始まり、甲型警備艦、乙型警備艦、
補給工作艦(のちの敷設艦)、大型掃海艇(敷設艇)、
丙型駆潜艇(魚雷艇)等の艦種名が使われました。

海上自衛隊の発足から所属艦船を自衛艦と雑船に分
けて、それぞれ6種別と8種別に分けます。そうし
て『艦と艇の区別は最初は警備隊時代のように基準
排水量750トンを境にしていたが、現在は500
トン程度に下げられているようである。海軍時代の
艦と艇の使い分けは船型の大小だけでなく、用兵的
な要素も含まれており、4000トン級の艇もあっ
たが、海上自衛隊では単に大小によっていると考え
てよかろう』と高須元海将補はまとめておられます。

 現在の保有艦艇に合わせてみると、ミサイル艇「
はやぶさ」は基準排水量200トン、掃海艦「やえ
やま」は同1000トン、掃海艇「すがしま」は5
10トンとなっています。輸送艦「ゆら」は(19
81年竣工)590トンで、高須元海将補のいわれ
る750トン未満から下がってきている例でしょう。
輸送艇1号とされたタイプは420トンでした。
ちなみに「ゆら」はLSU、「1号」はLCUとな
っています。

▼平成15年のトピックス

 映像は北朝鮮のノドン・ミサイルの発射シーン、
それからイラクのサダム・フセインの銅像の引き倒
しから始まります。3月20日から始まったイラク
の武力制圧も終わりました。わが国政府、小泉純一
郎首相はただちに米英軍の武力行使を支持します。

5月1日にはブッシュ大統領によって戦闘の終結宣
言が行なわれました。わが国はただちに緊急対処方
針に従って、国際連合難民高等弁務官事務所の要請
に応えて物資の無償譲渡、ヨルダンへの輸送を引き
受け、航空自衛隊を派遣します。

 第2は国際テロ対処行動、第3は国際平和協力活
動、第4に武力攻撃事態への対処に関する法整備、
そうして弾道ミサイル防衛システムの整備を挙げて
います。

▼イラク人道支援特別措置法

 この法律は7月26日に成立します。「イラク国
民の自発的努力による国家再建に、国際社会が支援、
促進しようとする取り組みに関して、日本が主体的・
積極的に寄与するための法律」と説明されています。

 先立つこと3週間ほど前に「PKO協力法に基づ
き、イラク難民救援国際平和協力活動」を行なうこ
とを閣議決定しました。

 自衛隊がイラク派遣をされるための条件が示され
ます。実行するのは、(1)医療分野です。戦場は
伝染病が蔓延するし、医療に関する状況もひどく貧
しいものです。(2)浄水や生活用水の供給等、給
水分野となりました。清潔な水の供給は、難民のた
めばかりではなく、その支援活動に従う外国軍や民
間組織の人にも必須のものです。(3)学校の建設
や補修、灌漑用水の補修と維持、道路や橋の補修活
動など公共施設の整備なども行います。(4)人道
復興支援に必要な関連物資の輸送の分野です。

▼活動地域について

「現に戦闘行為が行われておらず、そこで実施され
る活動の全期間を通じて、戦闘行為が行われないと
認められる。自衛隊の部隊等の安全が確保され、治
安状況が厳しい地域では状況の推移を注意深く見つ
めて活動する」

 こうした答弁が政府によってくりかえされます。
これは、「人道支援にかこつけて、他国へ自衛隊を
派遣し、武力行使をさせようとする。憲法9条の違
反行為だ」と主張する野党に対しての苦しい言い訳
でした。当時の防衛庁長官は、今回の自民党総裁選
挙でも「小石河連合」で名を落とした石破茂さんで
す。

 石破さんは、「活動の一時休止、または避難及び
中断などの実施要項を策定します」などと答弁をし
ていました。一国の、他国からは軍隊と見なされる
武装集団が「危険なことは決してない所でしか活動
せず、危なくなったら撤退する」という半端な公約
をしなければなりませんでした。

 今から思えば、派遣する与党も、反対する野党も
政治の道具に自衛隊員の生命を利用していたとしか
いえません。空自の派遣輸送航空隊は12月24日、
第1次隊がクウェートに出発しました。

▼国際テロへの対応が「他人事」に

 この頃でしたか。マスコミの世論調査によれば、
他国に攻め込まれたらどうするという問いがありま
した。興味深かったのが「降伏する。命までは取ら
れないだろう」という人がいた事実より、「国外へ
逃げる」と答えた若者が多かったことでした。戦争
という事態がよく分かっていないのです。空は制圧
され、海上は封鎖されて、島国の私たちはどうやっ
て国外へ出られるのでしょうか。

「降服すればいい」という人も回答者の中にはたく
さんいました。民間人が外国軍と出会ったときに、
無事に済むと思っている人がいます。過去の例、た
とえば関東軍の庇護下から離れた大陸の在留邦人が
どんな運命を迎えたか・・・。戦争は悲惨だ、話し
合えばいい、平和が一番だという教育ばかりしてき
た学校教育のせいでしょうか。

そういえば、前回の総選挙の時でしょうか? 国会
を囲んだ若者たちから「戦争になったら俺らが酒を
もって行って、外国軍と一杯やって仲良くなる」な
どという声が出ました。なんという能天気な若者を
育ててきてしまったのでしょう。

海上自衛隊はアル・カイダの活動を抑止するための
米海軍の艦船に326回、約34万キロリットルの
洋上補給を行なっていました。映像にも、補給艦「
とわだ(AOE-422)」の雄姿と、乗員たちの
活動ぶりが映っています。航空自衛隊は米軍の資材
の輸送に、217回の飛行を行なっていました。

世界の中で孤立しない、一国平和主義ではいかない
、アラブ地区の安定はわが国の平和な暮らしを支え
る重要なものなのだというテロ対処行動を支える認
識、「自分ごと」に捉える意識が大切だということ
でしょう。

▼BMDについて

 BMDというのはバリスティック・ミサイル(弾
道弾)防衛のことをいいます。BMは冷戦終結後、
一部の保有国から流出した技術によって多くの国が
手に入れた兵器です。これに対して、防衛システム
がなくてはならない。考えられたのがイージス・シ
ステムと、対空ミサイルペトリオットPAC-3に
よる多層防衛システムです。


指揮統制・通信基盤としてのバッジ・システムも連
動します。地上配備型レーダーや、海自のイージス
艦のレーダーによって探知して、弾道ミサイルを迎
撃する、まさに「専守防衛」にぴったりだと当時は
されました。

 ペトリオットPAC-3はアメリカ製の対空ミサ
イルです。もともと陸自が採用したホークと、空自
が運用したナイキ・ハ―キュリーズの後継としてア
メリカ軍が開発し、1982(昭和57)年から生
産が始まりました。陸自はその後、ホーク改や02
式という国産ミサイルを採用しますが、空自はナイ
キ・Jの後継としてペトリオットを採用します。6
0年度(1985)年度予算で調達が始まりました。

 1セットとされる基本単位は、フェーズド・アレ
イ型(イージス・システム護衛艦にも載っている回
転しないレーダー)目標捜索・追尾・ミサイル誘導
用レーダー1基、迎撃管制ステーション1基、発電
機1基、そして発射機で構成されます。すべて自走、
もしくはトレーラー牽引で機動力もあります。1
セットあたり4連装発射機を最大8基まで配置でき
て、40個の目標に対して同時追尾・攻撃ができる
そうです。

 ミサイルは長さ5.31メートル、胴体の直径は
410ミリ、最大速度はマッハ5、湾岸戦争ではイ
ラク軍のスカッド・弾道ミサイルをほぼ完璧に迎撃
できたことが話題になりました。当時では空自は6
個高射群にこれを配備する計画でした。問題はその
価格で、1個高射群の価格は約1200億円といわ
れました。



(つづく)


(あらき・はじめ)


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●著者略歴
 
荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
 
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
 

『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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