配信日時 2021/11/03 09:00

【防衛省の秘蔵映像(39)】ついに統合運用の時代に 2002(平成14)年の映像紹介 荒木肇

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にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。

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こんにちは。エンリケです。

「防衛省の秘蔵映像」解説 第39回です。

冒頭文の内容が実に興味深いです。

さっそくどうぞ。


エンリケ


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防衛省の秘蔵映像(39)

ついに統合運用の時代に
2002(平成14)年の映像紹介


荒木 肇
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2002(平成14)年の映像紹介
平成14年防衛庁記録 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=gi9VBNTdNyk

□はじめに

 それにしても立憲共産党ならぬ「立民」の方々は
どうなっているのでしょう。でも、ああ、やっぱり
彼らは昔の民主党と少しも変わらぬ「有司専制」、
「上意下達」、「社会主義」の人たちだったのだな
と思います。もっとも菅直人さんなどは自分の権力
を「期限を限った独裁だ」と喝破された方で、それ
が最高顧問ですから当然でもありましょう。

 まだ沖縄の基地移転についてはさせないといい、
そのくせ日米同盟は大事だといい、どう見ても支離
滅裂なのですが。興味深いのは160年昔の幕末で
も、保守(体制)勢力幕府は開国、当時の進歩派
(反体制)は鎖国という気分をもっていたことです。

いま、台湾への中国の侵攻がいわれ、尖閣諸島への
不法な言いがかりなどの事態があるのに、政府・与
党は国際的認識が現実的で、野党がそれに夢見がち
な情緒的なスローガンをあげる。たいへん興味深い
ことです。

 さて、平成14(2002)年の防衛庁。この年
の広報画像は「トピックス」を開設するという構成
になっています。

▼国際平和維持活動-東チモールへの派遣

インドネシアの東端に近いチモール島に、長い間の
運動が実を結び、ようやくインドネシアから分離独
立をすることになりました。1999(平成11)
年から、国際連合東チモール暫定行政機構(UNT
AET)が発足し、2002(平成14)年5月2
0日、いよいよ民主共和国が発足します。

面積は1万4900平方キロメートル、東京都、千
葉県、埼玉県、神奈川県の4都府県とほぼ同じ広さ
です。人口は約126万人、人種はテトゥン族、メ
ラネシア系、マレー系、中華系、それにポルトガル
系の人々です。宗教はキリスト教徒(カソリック)
が99.1%、イスラム教徒は0.79%だといい
ます。

 産業は農業が中心でしたが、豊富な天然ガスや石
油資源の開発に努めています。わが国とはコーヒー
などの輸出(ただし輸出価額のランクでは16位)、
自動車、機械等の輸入(同じく11位)をしてく
れています。

派遣されたのは北部方面隊の施設群です。施設科部
隊はエンジニア、列国の工兵になります。過去の派
遣では最大規模で群(普通科などでは連隊規模)の
680名が活動しました。首都デイリに群本部と本
部管理中隊、それに1個施設中隊で合計321名で
す。マリアナという町には1個施設中隊112名、
同じくスイアに1個施設中隊120名、同じくオク
シにも1個施設中隊127名ということでした。他
に連絡調整要員が3~5名ということで、群規模の
陸上自衛隊が平和維持活動に派遣されたのは初めて
のことでした。

もちろん仕事は、橋や道路の補修、建設、給水所の
補修・管理等の社会資本の建設支援です。話題にな
ったのは、この派遣人員の中に「女性」自衛官が7
名いたことでした。衛生や、通信、輸送等の分野で
活躍しました。このことはのちの「男女共同参画推
進」でもふれられます。

当時は全自衛官の中で、約1万名、4%しか女性は
いませんでした。現在は約6%、それがいずれ10
%にもすると言われています。少子化の中で、男性
ばかりに任せておくわけにはいかないということで
す。

▼インド洋での米英艦艇への給油活動

 国際テロへの対応の支援として、海自はインド洋
に補給艦を派遣して、行動中の英米軍艦に洋上給油
を行ないました。その回数は156回にも及んでい
ます(年末まで)。そして、その護衛、警戒のため
にということで、イージス艦「きりしま(DD17
4)」がインド洋に出撃します。

 「きりしま」はイージス艦の2番艦です。88年
度、90年度(平成2年度)、91年度、93年度
計画で、「こんごう」型が建造されました。「こん
ごう(DD173)」は93年3月、「きりしま
(174)」は95年(平成7年)3月に就役しま
す。

アメリカ海軍のアーレイ・バーク級駆逐艦をベース
にして、日本独自の要求を付け加えて計画されまし
た。基準排水量は7500トンで、弾薬や燃料も積
んだ満載排水量は9500トンという、帝国海軍な
ら1万トン級1等巡洋艦を思わせる大きさです。艦
名はやはり旧海軍の山岳名をつけた巡洋戦艦のそれ
らを継承し、「みょうこう(DD175)」、「ち
ょうかい(DD176)」と3番艦、4番艦も現在
も活躍中です。

この後の2002、2003年度で1隻ずつ建造さ
れたのは、「あたご(DD177)」、「あしがら
(DD178)」です。これらは2007(平成1
9)年と08年に相次いで就役します。そうして現
在は、さらに15年度と16年度に計画された2艦
が活躍しています。「まや(DD179」と「はぐ
ろ(DD180)」です。昨年と今年に就役してい
ます。

面白いのは、今後建造される新造艦の番号です。海
自はこれまで対空能力も高い大型護衛艦に「16」
から始まる番号を付けてきました。1960(昭和
35)年竣工の自衛艦隊や護衛艦隊の旗艦も務めた
「あきづき(DD161)」、対空護衛艦「あまつ
かぜ(DD163)」がその例になります。

ところが、空母タイプのDDHが181番を付けた
「ひゅうが」があり、182は「いせ」、艦名も帝
国海軍の航空戦艦でしたから、次は「飛龍」か「蒼
龍」かなどといっていましたが、「いずも」が18
3、そして「かが」が184。そうなると、さらに
建造されるイージス・タイプの新型艦は何番が割り
振られるのでしょうか。


▼さまざまな事態に対応する改編

 同時テロに対しての改編が陸自でも行なわれまし
た。新編されたのが、ワイヤーと愛称された「西部
方面普通科連隊(Western Army Infantry Regiment)
です。南西島嶼の防衛のために西部方面総監の直轄
部隊として誕生します。方面ヘリコプター隊と協働
して機動性が高く、隊員のレンジャー・バッジ保持
者の割合が高いのが特徴でした。詳しい方はお気づ
きでしょうが、現在の「水陸機動団」を構成する
2個連隊の母胎といっていいでしょう。

 また、首都を守る第1師団が政経中枢師団に指定
されました。都市型の戦闘、それはとりもなおさず
NBC攻撃も含んだテロ、ゲリラに対しての備えを
する師団になります。そこで重装備を廃してしまい
ました。第1特科(野戦砲兵)連隊は「特科隊」に
なります。5個大隊の榴弾砲部隊が一気に減りまし
た。

 装備を改変し、機動力を増し、多様な事態に対応
する普通科連隊も誕生します。御殿場市の板妻に駐
屯する第34普通科連隊です。時代は対ゲリラ・コ
マンドゥでした。

▼武力攻撃事態対処法制

 この年、ようやく本格的な有事に対処する3法制
が作られます。実に25年にもわたり国会で審議さ
れることもなかった3つの法案がようやく通りまし
た。ただし、ここでも文民統制の厳守がいわれ、総
理大臣が下した決定は閣議決定された後に、国会の
審議を通し、それからようやく自衛隊に命令が下り
ます。でも、「自衛隊法の一部改正」が成りました。
部隊の移動や輸送、土地の利用、建造物の建設、衛
生医療、そして戦死者の取り扱い等への特別措置で
す。

 阪神・淡路大震災でパトカーの先導を待った自衛
隊。陣地を造るには土地の所有者の同意を得ること、
野戦陣地の構築も許可が要ることなどなど。また戦
死者を認定し、それを葬る時にも自治体等の協力が
なくてはならないなどなどの様々な解決をしておか
ねばならないことばかりでした。


▼女性共同参画推進

 「婦人自衛官」や「婦人自衛官教育隊」などとい
うのはおかしい。女性としようという声も上がりま
した。仕事と育児の両立の支援もしよう、施設や服
制の面でも配慮し、防衛庁職員、自衛官の採用・登
用の促進をしようとなりました。いま、潜水艦や護
衛艦の乗員に、陸自では戦車にも乗り、空自では航
空機の操縦員にも女性がなるようになりました。

 東チモールにも7人の女性自衛官が加わり、PK
Oでもその能力が発揮されたとナレーションは語り
ます。映像にも機器の整備に携わる女性の姿が映っ
ています。また、予備自衛官の2種類、「即自=即
応予備自衛官」と「予備自=予備自衛官」に加えて、
「予備自補=予備自衛官補」が紹介されています。

 即自も予備自も自衛官経験者だけがなれました。
それをこの14年度から、訓練を修了し、志願し、
選考された自衛官補も予備自衛官になれるようにな
ったのです。映像には、いまは高名な活動家である
葛城奈美さんが1期生として訓練に出頭する様子が
あります。なお、私事ながら我が家の娘も、このと
き学生の身分でしたが同期生になり、その後、予備
自衛官として予備陸士長にまでなりました。懐かし
い時代です。

 新しい国会では、憲法改正、コロナ、経済対策、
尖閣諸島、ロシアとの北方領土、そして北朝鮮の拉
致被害者奪還など、難問が山積しています。



(つづく)


(あらき・はじめ)


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●著者略歴
 
荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
 
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
 

『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
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