配信日時 2021/11/01 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(147)】日本独自の「特定海域」を作った先人の知恵

おはようございます、エンリケです。

今週もどうぞよろしくお願いします!

147回目の美佐日記。

「特定海域」については私も非常に勉強になりまし
た。てっきり「国際海峡」とばかり思っていました。

海への無知は命取りになりますね。


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ではさっそく、
本日の「美佐日記」をお楽しみください。


エンリケ

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桜林美佐の「美佐日記」(147)

日本独自の「特定海域」を作った先人の知恵


桜林美佐(防衛問題研究家)

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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、令和3年11月の今
回は147回目となります。

中ロの艦隊10隻が日本列島をほぼ一周した様子は
、やはりちょっと気持ちが悪いですよね。

 津軽海峡や大隅海峡を通り、その映像がニュース
でも映し出されました。日本はこの2つの海峡を含
めた5つの海峡について「特定海域」と定めている
ことも改めて報じられました。

 これは、本来は12マイルの領海の範囲内だけれ
ども、こうした島と島の距離が近い箇所は1つの国
の領海が多くなり過ぎるので特別に領海を3マイル
に設定しているもの(適切な説明になっていないか
もしれません!)といった理解を私はしています。

これは国内法の「領海法」(「領海及び接続水域に
関する法律」)によって規定されていて、日本が「
特定海峡」を規定したのは「非核3原則」と関係し
ているとも言われています。

冷戦時代、核弾頭を積んだ米潜水艦が津軽海峡を抜
けて日本海に展開する想定があり、もし日本の領海
を通過することになると「非核3原則」に抵触する
からです。

それは政治的に耐えられないので「特定海域」とい
うものを作り、堂々と合法的に通れるようにしたと
いう説です。

具体的には、宗谷、津軽、対馬西水道、対馬東水道、
大隅海峡には、本来の領海12マイルではなく領海3
マイルを適用し、中央部分に公海を作り出していま
す。

このことについて「そんなのおかしい。ぜんぶ日本
の領海にすべきだ」という声も出ているようですが、
それが日本にとって必ずしも良いことではないよう
です。

もし全てを日本の領海にすると、実は、国連海洋法
条約でこのような狭い場所などは「国際海峡」に指
定されることになります。

そうなると、いかなる国の艦艇であれ「通過通航権
」が与えられ、外国潜水艦が潜航したまま通れるこ
とになってしまうのです。

そして、国際海峡においては通過通航権によって「
上空通過の自由」が認められるため、航空機も飛べ
るようになってしまいます。戦闘機があっという間
に本土に侵入できるようになることは大きな脅威で
す。

つまり、見えない潜水艦やスピードの速い戦闘機が
入って来ることはどうしても避けたいのです。

日本独自の特定海域を作ったのは、こうしたことを
防ぐための先人たちの知恵だったと言えそうです。
全て領海にすると「国際海峡」になって、かなり行
動の自由を与えてしまうからです。

そもそも国際海峡における「通過通航制度」なんて
言葉、もっともらしく言われますが、冷戦当時に米
ソが主張したことがそのまま受け入れられた制度の
ようです。

日本としては、独自の法によって米国の核の持ち込
みというより、むしろソ連の自由航行と飛行を防い
だというのが大きかったようです。

そうえいえば、今年4月に不思議な報道があったこ
とを思い出します。

昨年末、米海軍補給艦「アラン・シェパード」が対
馬海峡で「航行の自由作戦(FONOP)を実施し
たというもの。

「はあ?」

と思った方も多いことでしょう。私も意味が分かり
ませんでした。

それも「日本の主張に対抗するため」だというので
穏やかではありません。

しかし、米国が「航行の自由作戦」の対象としてい
るのは、南シナ海だけではなく、けっこうあるよう
です。

米国務省が作成している「航行の自由作戦」リスト
には、しっかり日本の国名が入っているのだそうで
す。

米軍は何か事が起これば世界中のどこにでも速やか
に展開する態勢をとっていますので、いずれかの国
が領海やEEZの通過について厳しく規制をしてい
ると米軍の活動が疎外されてしまいます。

それを避けるために「航行の自由作戦」を随時実施
して見せるのです。日本の対馬海峡に対しては、領
海を決める「基線」が、日本が決めたものが米国か
ら見れば直線に引き過ぎだという、いわば線の引き
方に意見の相違があるようです。

だからといって「航行の自由作戦」を日本にするか
~っ!?と言いたいところですが、なんだか定例行
事化しているようにも見えます。

いずれにしても「国際海峡」や「通過通航権」、そ
して「特定海域」の話は、とても複雑です。また、
以前は中国の存在は今のように大きくありませんで
したので、今後、見直すべきことも出てくるのかも
しれません。引き続き勉強したいと思います。

今日も最後まで読んで頂きありがとうございました!
 皆様にとって素晴らしい1週間となりますように!

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業」連載中です。
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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。新刊『誰も語
らなかったニッポンの防衛産業』(産経NF文庫)



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