配信日時 2021/10/15 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】オーカス(AUKUS)-2

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
お仕事の依頼など、問い合わせは以下よりお気軽に
どうぞ
 
E-mail hirafuji@mbr.nifty.com
WEB http://wos.cool.coocan.jp

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こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
分隊支援火器といえばこれ!
ミニミ/M249です。

『ミニミ軽機関銃』
クリス マクナブ (著), 床井 雅美 (監修), 加藤 喬 (翻訳)
2020/7/10 発行
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武器オンチの日本人には
特におススメです。

冒頭分を拝読し、
現実を知る。

実に得難い情報です。
ありがたい限りです。


さっそくどうぞ


エンリケ

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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編 Takashi Kato  

オーカス(AUKUS)-2


加藤喬(元米陸軍大尉)

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□分断が進む米軍内部の危機的状況
 
 アラスカ州立大学ROTC(予備役士官訓練部隊)時
代、「軍人は政治色のある活動に関わってはならな
い」と教えられました。当時は国民的人気を誇るロ
ナルド・レーガン大統領が冷戦終結に向け強いリー
ダーシップを発揮していた頃。米社会は概ねまとま
っており、人々にとって政治観や党派の違いはさほ
どの関心事ではありませんでした。そのうえわたし
はノンポリだったので、この軍人心得の意味をあま
り深く考えることはありませんでした。
 
 湾岸戦争後、中隊長になったわたしは何の折だっ
たか仲間の大尉らとクリントン政権を批判。それを
たまたま耳にした大隊長がおもむろに、「レイディ
ーズ、ジェントルメン、諸君はいまアメリカ合衆国
陸軍の軍服を着ているのだぞ」と言い残しそのまま
去って行きました。「大統領の好き嫌いにかかわら
ず、軍人は政治的に中立でなければ私心なく国を守
ることができない」とのメッセージに気づき、我々
は若気の至りを恥じました。
 
 先日来、2人の米軍士官が政治関与を理由に司令
官職を解任され世間の耳目を集めました。5月、新
設されて間もない宇宙軍のマシュー・ローマイヤー
中佐は「ロイド・オースティン国防長官の肝いりで
始まった人種・多様性プログラムは部下の将兵を少
数派と白人に分断している。これはマルクス主義に
基づいた批判的人種理論(CRT)の実践であり、兵
士らの相互不信と反目を助長するものだ」と著書と
ポッドキャストで警告。将軍らの圧力で退役を余儀
なくされました。
 
 9月には、海兵隊のスチュワート・シェラー中佐
がアフガニスタン撤退の大失態に言及し「海兵隊上
層部の誰一人として責任をとろうとしない。アフガ
ン国軍の崩壊を見抜けなかったオースティン国防長
官とミリー統合参謀本部議長も同罪だ」とネット上
で批判。同中佐は士官に対する処遇としては極めて
異例な「営倉送り」の憂き目に遭っています。
 
 自分の体験を踏まえると、ローマイヤー、シェラ
ー両中佐がとった行為の是非を軽々しく論じること
はできません。ただ、わたしが指摘したいのは、2
人の前途ある中堅将校が今後のキャリアや軍人年金、
強いては家族の生活を犠牲にしてまで直訴せざるを
得なかった米軍内部の危機的状況です。バイデン政
権によって米軍将兵の間に深い亀裂が穿たれつつあ
るのです。
 
「戦友が安心して背後を任せられる人間かどうか」。
兵士にとって重要なのはこの一点。互いに命を預け
合い戦うことができる仲間なら、人種や性別、宗教、
政治観、ゲイかストレートかバイかなどといった性
的指向はどうでもいいことなのです。わざわざ人
種・多様性教育を持ち出すまでもなく、将兵は「戦
争に勝つ」という究極の目的で一致団結しています。
 
ところが、バイデン最高司令官は「米国は奴隷制度
の上に築かれた恥ずべき人種差別国家」とのリベラ
ル思想に染まっています。その免罪符として「白人
は抑圧者。少数派は制度的差別の被害者」とのCRT
プロパガンダを兵士らに刷り込んでいるのです。軍
を政治の駒にし、多様性アピールの広告塔や社会改
革の実験台にするのは禁じ手。兵士らの士気を削ぎ、
軍そのものを弱体化するからです。
 
 シェラー中佐が指弾した通り、アフガン撤退の失
態に関し米政府上層部に誰一人責任をとる者がいな
かったのは事実。バイデン大統領は「全責任は私に
ある」と言った舌の根が乾かぬうちに、トランプ政
権と「戦う意思のないガニ前大統領とアフガン国軍
」に責任転嫁しています。
 
 また、オースティン国防長官とミリー統合参謀本
部議長は7月21日の段階でもいまだ「アフガン国
軍にはタリバンの攻勢に対抗し、国を守る能力があ
る」と公言しています。合わせると100年近い軍歴
を持ち最高機密情報にアクセスできる両氏が、士気
喪失したアフガン国軍の現状を見抜けなかったため
に多くの米兵やアフガン市民が犠牲となったのです。
責任は免れません。
 
 ちなみに、ローマイヤー、シェラー両中佐が告発
した米軍の危機的現状をアメリカ主流メディアはほ
ぼ無視しています。米マスコミの受け売りが多い日
本の報道にも、このような視点と検証が欠けていま
す。しかし、盟邦アメリカを安全保障の要と頼る以
上、統計や兵器性能諸元からは見えてこない米軍の
「実力」も正確に把握しておく必要があります。日
本の政治家諸氏が「分断が進む米軍」の内情に目を
向け、自力本願の国防を目指すよう切に望む所以で
す。
 
 
▼オーカス(AUKUS)-2

 兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があります。刀を
抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ「鞘の内の勝
ち」のごとく、敵に攻撃を思いとどまらせる圧倒的
な破壊力のことです。「平和を望むがゆえに兵器を
手放せない」。人類が陥って久しいこのジレンマの
裏面が「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

 冷戦たけなわの1958年、アメリカはイギリスと相
互防衛協定を結びました。ソビエトに対する核抑止
力を増強するため、米国は原子力潜水艦建造と核兵
器使用に関する最高機密を英国に提供したのです。
以来60年間、先月の豪英米軍事同盟オーカス締結ま
で、米英がこの種のノウハウを他国と共有したこと
はありません。

 オーストラリアは20世紀初頭から英連邦に属し、
英国元首への忠誠心に篤(あつ)い国柄。また第2
次世界大戦では米英と共に日本軍と戦い、アメリカ
が主導した朝鮮戦争にも参戦しています。対中包囲
網の一員である前に、米英とは歴史を通じて紡(つ
む)がれた絆があり、これが同胞意識と信頼感につ
ながっているものと思われます。

 以前にも触れましたが、オーカスは原潜に搭載可
能なスタンドオフ兵器の提供も含んでいます。スタ
ンドオフ兵器とは文字通り「離れて立った位置から
使う兵器」という意味で、具体的には「敵の射程外
から攻撃する長距離ミサイルや滑空爆弾」を指しま
す。オーカスの場合は米国製トマホーク巡航ミサイ
ルです。

 トマホークは攻撃型潜水艦の魚雷発射管から撃ち
だせるミサイルとして設計されており、ブロックI
型は最大核出力200キロトンの核弾頭が搭載可能で
した。これは広島型原爆の10倍以上の威力に相当し
ます。中距離核戦力全廃条約によりブロックI型は
すでに退役していますが、400発近く生産された核
弾頭そのものは現在も保管されています。

 スコット・モリソン豪首相は「オーストラリア海
軍の原潜が核ミサイルを搭載することはない」と言
明しています。しかし、今後の台湾及び南シナ海情
勢の推移によって、対中核抑止力増強のため米英が
オーストラリアとの「核共有」を決断し、豪が受け
入れる可能性はあると思います。仮にそうなった場
合、トマホークの通常弾頭を保管中の核弾頭にすげ
替えることは造作もないことです。

 もちろん、共有された核兵器の安全装置解除は米
大統領のみが行なえます。したがってオーストラリ
ア独自の判断で使うことは不可能です。しかしなが
ら、アメリカでもイギリスでもなく、オーストラリ
ア海軍の原潜がオーストラリア人将兵の手で核兵器
を運用する事実は、「国を守る本気度」を中共の眼
前に突き付けることに他なりません。力のみを信奉
する習近平政権にとって、これは喉元に迫った槍先
も同じ。民意や野党というブレーキとけん制組織を
持たない強権国家と対峙するには、これぐらいの覚
悟が必要です。

教材ビデオ:
 (13) Australia to get #NuclearSubmarine techn
ology from US & UK ! -YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=xWFGfmqIl1A&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=202

(本エピソードは6:00から始まります)

基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Cooperation(コアポレーション)協力
、提携、連携
Stand-off weapon(スタンドオフ
)敵の迎撃圏外から攻撃するタイプの武器
Cyber warfare(サイバー・ウォーフ
ェアー)サイバー戦争

シナリオ(カウンターを6:53に合わせてくださ
い)
Importantly the cooperation will also include
long-range stand-off weapons, cyber warfare to
 name a few.

(重要なのは、オーカスは長射程のスタンドオフ兵
器やサイバー戦争関連の連携も含んでいることだ)

(今回のエピソードは最後まで続きます)

英語一言アドバイス:
「協力」「連携」を意味するcooperationは「会社」
を指すcorporationと綴りが似ています。うっかり
すると混同してしまいますから、以下のサイトで発
音を確認してください。

発音サイト:
 cooperation の発音 
cooperation - Google Search
http://okigunnji.com/url/132/

corporationの発音(比較)
corporation pronounce - Google Search
http://okigunnji.com/url/131/

参考サイト:トマホーク (ミサイル) - Wi
kipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%9E%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%82%AF_(%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AB)

サイバー戦争 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%90%E3%83%BC%E6%88%A6%E4%BA%89

スタンドオフ兵器 アウトレンジ戦法 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A6%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%B3%E3%82%B8%E6%88%A6%E6%B3%95


(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン(近刊)』(いずれも並木書房)
がある。
 
 
追記

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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
 
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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