配信日時 2021/09/13 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(141)】ベトナム難民から米軍史上初の将官となったルオン 少将

おはようございます、エンリケです。

今週もどうぞよろしくお願いします!

141回目の美佐日記。

自分でも不思議なくらい感動しました。
ぜひお読みください!


さて、桜林さんが参加・講演される
Youtubeライブシンポジウムが開催されます!

「防衛シンポジウム2021 in 京都」
『第三開国時代に備える国家安全保障』

日時:9月25日(土)14:00~17:00

今年は新型コロナ感染拡大防止の為、
一般のお客様の会場での観覧は行わず、YouTubeで
のネット中継となります。

他のパネリストは 宇都 隆史・参議院議員、
コーディネーターは 村田 晃嗣・同志社大学教授。

とのことです。

いいメンバーですよね。

参加を希望される方は、
こちらからお申し込みください。

https://forms.gle/yCEeFpD66Jw9MYXw7

来週土曜日ですね。

Youtubeライブなので、居場所に関係なく
参加できますよ。



桜林さんの不朽の傑作
『誰も語らなかった防衛産業』の文庫版が、
潮書房光人新社から
『誰も語らなかったニッポンの防衛産業』
という名で出ました!

まだの方はぜひご一読を。
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すでに読んだ方も、文庫でもう一冊!
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ではさっそく、
本日の「美佐日記」をお楽しみください。


エンリケ

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『自衛官が語る災害派遣の記録』に続く、第2弾
『自衛官が語る海外活動の記録』(桜林美佐監修・
自衛隊家族会編)が発売されています。中東シーレ
ーンの安全確保をめぐって新たな自衛隊派遣が行わ
れているこの時期にタイミングを合わせたような出
版です。現地で自衛官たちが何を思い、どのような
苦労をして、任務をこなしてきたか、25人の自衛
官のリアルな体験記です。

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ご意見・ご感想はコチラから
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桜林美佐の「美佐日記」(141)

ベトナム難民から米軍史上初の将官となったルオン
少将

桜林美佐(防衛問題研究家)

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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、令和3年9月の今回
は141回目となります。

 アフガンの退避問題を巡り、憲法や自衛隊法を変
えなければいけないという話が各所で出てきていま
す。

 それはそれで必要な論議ではあるのでしょうけど、
まるで日本チームの判断ミスは全て「憲法が悪い」
という論旨になっているようにも見えます。

 大使館の日本人が早々に現地から離脱したことと
は別次元の問題であり、何でもかんでも「法や制度
を整備すべき」という結論に落ち着かせてしまうの
は、いかがなものかと感じています。

 誰かを責めればいいというわけでは決してありま
せんが、だからといって、全てを「憲法のせい」に
するのは、どこか違和感があります。

 さて、こうした歴史の転換点を迎えた約2か月前
の6月25日、在日米陸軍司令官が交代しました。

 この日、退官したヴィエット・スァン・ルオン少
将はベトナム難民でした。ベトナム系米国人として
米軍史上初めて将官となった人物です。

 私は福岡在住中に熊本の西方総監部で、ちょっと
だけお目にかかる機会に恵まれたのですが、何か
「オーラ」といいますか、強いパワーを感じたこと
を印象深く覚えています。

 それもそのはずだと思ったのは、ルオン氏の生い
立ちを詳しく知ったからです。

 1975年4月30日、この日は、まだ少年だっ
た同氏にとって生涯忘れることのできない日となり
ました。

 「サイゴン陥落」

 つまり、共産主義の北ベトナムと南ベトナム解放
民族戦線(ベトコン)が南ベトナムの首都サイゴン
を接収して、南ベトナム側が無条件降伏を宣言した
日です。

 当時9歳だったルオン少年は家族と共にサイゴン
の空港に辿り着いたものの、出国のための書類を手
配している最中に空港が閉鎖されてしまいます。

 空襲や空爆、大砲や迫撃砲による攻撃に遭い、こ
こで死ぬのかもしれないという極限の経験をしたの
です。

 しかしそんな時に、米国による「フリークエント・
ウインド作戦」が発動されました。

 これは、空前の脱出劇と言われるもので、81機
のヘリが24時間のうちに、1000人以上の米国人
と約6000人のベトナム人を米空母まで搬送した
作戦です。

 各所で銃撃戦が繰り広げられる中、なんとかして
ヘリに辿り着けたのは、避難を望む人々の一部にす
ぎませんでしたが、それでも危険を顧みずに作戦は
遂行されたのです。

 米空母には、亡命を望む南ベトナム軍所属のヘリ
が無秩序に着艦許可を求めてきたといいます。

 そのため、米軍ヘリ(現在のUH-1)は避難者を空
母に降ろすと、南ベトナム軍のヘリの着艦場所確保
のために順次海に投棄されたのです。その数は45機
に上ったといいます。

 パイロットが海面上で脱出し、ボートで救出する
方法も取ったようです。

 この作戦について、8月17日付の毎日新聞には気
になる記述がありました。「当時、米国には南の市
民救出の義務はないと作戦に反対したのが、すでに
上院議員だったバイデン現大統領」だというのです。
何か因縁めいたものを感じざるを得ません。

 ともあれ、この作戦によりルオン少年とその家族
も命からがら空母「ハンコック」に乗ることができ
ました。

 ルオン少年は凄まじい恐怖の中で、アヴェマリア
の祈りを繰り返し唱えていたといいます。

そして溢れる涙をこらえながら父のシャツを引っ張
って「ここはどこ?」と尋ねました。父は米空母艦
上であることを伝えますが、なかなかその意味を解
することができない息子に「もう、世界でお前を傷
つける者は誰もいないということだよ」と説明した
のだそうです。

 その時にルオン少年は、いつか、米国に恩返しを
する職に就くと思ったといいます。

 陸上自衛隊の幹部向け雑誌「修親」9月号の吉田
陸幕長の巻頭言には、ルオン少将がお父さんの臨終
間際に交わしたやりとりが記されています。

 アフガン派遣の最終訓練検閲に参加していたルオ
ン氏は今際(いまわ)の際の父と会うことはできま
せんでした。電話をすると、返って来た言葉が最期
の父の声となりました。

 「自分に構うことなく任務を全うせよ」

 父は家族を守る責任を、米国は難民を守る責任を、
全力で果たそうとする姿を見てきたルオン少将、そ
して自らも生命を賭して米国に尽くしました。

 こうした経験を持つルオン少将は、アフガン撤退
の混乱をどのように見つめていたでしょうか。

 そして、いつかアフガンから逃れた人がルオン少
将のように米軍で活躍するような日が来るのでしょ
うか。

 想像がつきませんが、歴史には色々なことを考え
させられます。

今日も最後まで読んで頂きありがとうございました!
皆様にとって平和な1週間となりますように!


<おしらせ>

●9月25日(土)に「防衛シンポジウム2021
 in 京都」に参加し、講演させて頂きます。
14:00~17:00 今年は新型コロナ感染拡大防止の為、
一般のお客様の会場での観覧は行わず、YouTubeで
のネット中継となります。

パネリストは 宇都 隆史・参議院議員、コーディ
ネーターは 村田 晃嗣・同志社大学教授です。

申し込みフォーム は

https://forms.gle/yCEeFpD66Jw9MYXw7

です!


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業」連載中です。コツコツ書いてまいります!
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いる「国防ニュース最前線」、今週も伊藤俊幸・元
海将に解説をして頂きます!
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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。新刊『誰も語
らなかったニッポンの防衛産業』(産経NF文庫)



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