配信日時 2021/09/08 09:00

【防衛省の秘蔵映像(31)】新防衛計画―航空自衛隊の組織と編成(4) 荒木肇

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こんにちは。エンリケです。

「防衛省の秘蔵映像」解説 第31回です。


冒頭文に深くうなづきました。

本文は空自です。

さっそくどうぞ。


エンリケ


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防衛省の秘蔵映像(31)

新防衛計画―航空自衛隊の組織と編成(4)

荒木 肇
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 1995(平成7)年の映像紹介
https://www.youtube.com/watch?v=qOvDvnV3bXY
 

□はじめに

 今回、アフガニスタンからの邦人輸送には空自の
国産中型輸送機C-2が1機と、C-130輸送機
2機が飛びました。ほかに救難・警護に必要だろう
ということから、陸自の中央即応連隊から輸送誘導
隊が参加したようです。詳しく報道はされませんが、
緊急任務のために参加隊員は家族にも行き先や内容
も告げずに飛び出していったといいます。

 外務省の職員の方々は「さっさと逃げた」などと
批判を浴びているようです。しかし列国と国の在り
方が異なる「軍隊がない国」の大使館には警備兵力
がありません。ふつう大・公使・領事館はその国の
領土と同じですから、国土防衛、国民守護のために
海兵隊や陸軍などの軍隊がいます。わが国にはそう
した制度はありません。

 もちろん、外国の駐在武官にあたるアタッシェ(
大使館付き武官)としての防衛駐在官(現役の陸・
海・空自幹部)はおりますが、身分は外交官でしか
ありません。警備官という立場の自衛官もいますが、
あくまでも館内の警備を企画する立場で、「戦う軍
人」ではありません。部下どころか武器だってない
のです。

 高邁な憲法論議も重要ですが、すぐに起きる危険
な事態に何かできないか考えなくてはなりません。
今度の選挙でも、こうしたことを語る人がいないの
は確かです。海外邦人の安全確保や撤収救援は何が
起きても外国任せ。「日本人は腰ぬけ」という批判
もあることを皆さん知っておられるのでしょうか。

 有力な総裁候補の方は、「自衛隊法の改正」で対
応できるとおっしゃっているそうです。それでは「
正当防衛」という事態でなくては武力行使ができな
いのは変わりません。離れたところの邦人の危険を
進んで救いにいくことはできないのです。


▼航空自衛隊の任務と組織

 空自の任務は「防空」です。海自・陸自と大きく
異なるのが、平時でも領空侵犯対処のために24時
間、警戒監視と緊急発進待機の態勢をとっています。
緊急発進はスクランブルといわれ、わが国の領空に
侵入しそうな「国籍不明機」があれば直ちに正体を
確かめに戦闘機が飛び立つことをいいます。

 航空作戦を担当する「航空総隊」を頂点にして航
空支援集団、航空教育集団、航空開発実験集団、補
給本部などの部隊・機関を中心にしています。航空
総隊は海自の自衛艦隊、そして現在の陸自陸上総隊
に相当する実働部隊です。また、隊務に関する防衛
庁長官の幕僚機関である航空幕僚監部(当時は東京
都港区檜町・現在は新宿区市ヶ谷)、その他の長官
直轄部隊・機関があります。

 これらが当時、25個の基地と、51個の分屯基
地に配置されていました。

▼航空総隊

 司令部は東京都府中市にあり、総隊司令官は空将
(外国軍の中将)です。隷下には全国を4区分した
空域を、航空方面隊(司令は空将・前同)・航空混
成団(司令は空将補・前少将)が分担していました。
それぞれの航空方面隊は、侵入機を戦闘機で要撃す
る戦闘航空団が2個、レーダーで国籍不明機を監視
し、バッジ(自動警戒管制組織)で連接する航空警
戒管制団、対空誘導弾で重要地域の局地防衛を行な
う高射特科群を3本の柱としています。

 「要撃」という言葉を昔は「邀撃」と書きました。
この「邀(よう)」という字の意味は迎(むか)え
る、待ち伏せるというものでした。「迎撃(げいげ
き)」も同じ意味です。自衛隊になって当用漢字を
使うにあたって、同じく「待ち伏せる」という意味
がある「要」を使うようにしたのではないでしょう
か。

 このほか、航空方面隊には、航空施設隊、基地防
空隊、音楽隊などもあります。

 航空団(司令・空将補)は司令部と飛行群(群長・
1等空佐)、整備補給群、基地業務群で編成されて
います。飛行群には2個飛行隊(隊長・2等空佐)
があります。警戒管制団(司令は空将補)は司令部、
防空管制群、数個の警戒群、整備補給群、基地業務
群、移動警戒隊、警戒資料隊、その他の部隊から成
っていました。

▼防空の要・航空方面隊

 北部航空方面隊は三沢基地(青森県)に司令部を
置いています。北緯39度以北の北の空を守ってい
ます。千歳基地に第2航空団(F-15)と三沢基
地に第3航空団(F-1支援戦闘機)を置いて、警
戒管制団はやはり三沢に司令部があり、レーダーサ
イトは9か所です。高射群(ペトリオット・ミサイ
ル)は第3高射特科群(北海道空知支庁長沼町と千
歳)に、第6同(青森県西津軽郡車力町・北海道渡
島支庁八雲町)と第1基地防空群(千歳・北海道石
狩支庁当別町など)があります。

 中部航空方面隊は、東経134度以北の本州上空
を受け持ちます。戦闘機部隊は第6航空団(石川県
小松基地、F-15とF-4改)と第7航空団(茨
城県百里基地、F-15とF-4改)です。ミサイ
ル部隊は関東地区の第1(本部は埼玉県入間基地)
高射群、中京・阪神地区を守る第4(本部は岐阜基
地)高射群になります。レーダー部隊は入間に司令
部を置いて警戒群が8個です。また、海上遠く離れ
た東京都小笠原村硫黄島(いおうじま)に移動訓練
基地を置いたので同島に基地隊を置いています。

 西部航空方面隊は福岡市の南にある福岡県春日市
に司令部を置き、同基地には警戒管制団(7個警戒
群)司令部、第2高射群本部(芦屋・築城・高良台
にミサイル・サイトがある)もあります。芦屋(あ
しや)は福岡県遠賀郡の町、築城(ついき)は福岡
県築上郡(ちくじょうぐん)の町、高良台(こうら
だい)も同県久留米市になります。北九州市、福岡
市の防空態勢はこの通りの充実ぶりです。飛行部隊
は新田原(にゅうたばる・宮崎県新富町)基地に第
5航空団(F-15とF-4改)と築城基地の第8
同(F-1とF-15)ですが、新田原ではイーグ
ル・ドライバー(F-15パイロット)の養成課程
もありました。

 南西航空混成団は、航空方面隊のミニ版です。那
覇には第83航空隊(F-4の1個飛行隊)、警戒
管制隊本部、第5高射群本部もあります。レーダー
サイト(警戒)は4か所で、他には奄美大島に通信
隊があり、ミサイル・サイトは3か所になります。

▼総隊直轄の部隊

 百里(ひゃくり)基地にはつい先ごろ引退した偵
察航空隊がありました。F-4ファントムを改造し
たRF4-Eを装備していました。地上すれすれも
飛ぶこともあり、緑や茶色を使った3色迷彩と機首
のシャーク・マークが独特でした。

 警戒航空隊、グラマンE-2Cホークアイ早期警
戒機を13機装備していました。基地は三沢です。
E-2Cは1976(昭和51)年のソ連戦闘機M
iG-25の函館空港着陸事件をきっかけに、低空
侵入機への対処能力を向上するために導入したもの
です。もっとも空自はこの高い能力を低空侵入機の
捜索だけでなく、地上レーダーサイトの機能代替、
通信中継など航空作戦全般の指揮中枢機能として運
用していました。目標情報を自動処理して、バッジ
システムと要撃機に目標情報の自動伝送も行いまし
た。平成5、6年度予算でAWACS(ボーイング
E767)4機の導入が認められます。

 バッジシステムの情報処理の総まとめ、総隊戦闘
指揮所の運用を担任する防空指揮群も府中にあり、
プログラム管理隊(入間基地)がソフトを受け持っ
ています。また、アグレッサー(敵役)部隊として
名人揃いといわれる新田原の飛行教導隊も直轄です。

 総隊司令部飛行隊は、連絡・要務飛行のためのT
-33、T-4だけでなく、電子訓練支援のための
電子戦機C-1EやYS-11Eなどもありました。

 パトリオット部隊要員教育のための静岡県浜松基
地の教導高射隊も総隊直轄です。

 次回は航空教育集団、航空支援集団、補給本部、
長官直轄部隊等を紹介します。そうして、平成8
(1996)年の画像紹介に進むことにいたしまし
ょう。



(つづく)


(あらき・はじめ)


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●著者略歴
 
荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
 
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
 

『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
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