こんばんは、エンリケです。
一昨年と去年にお届けしたシリーズ
「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生」
のつづきをお届けしています。
過去配信した内容はこちら
http://okigunnji.com/watanabe/category1/category45/
自律組織は自前の情報機関を持たなきゃいけない。
改めてそう感じました。
さっそくどうぞ
エンリケ
追伸
東京五輪は終わりました。
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』
を読み、大会全般の支援に当たった
わが自衛隊に思いを馳せます。
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「ライター・渡邉陽子のコラム」バックナンバー
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『ライター・渡邉陽子のコラム (337)』
神は賽子を振らない(16)
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こんばんは。渡邉陽子です。
全国で大雨の被害が相次いでいます。被害に遭われた方、心よりお
見舞い申し上げます。
ところでこのごあいさつを書いている今、翌日に2回目のワクチン
接種をひかえています。私の周囲は2回目の副反応がかなりきつか
ったという人が多いので、ちょっと怯えています。でも「ワクチン
打たない派」の人のご意見を聞いたらかえって「早く打ちたい」と
思ったので、雨にひるまず行ってきます。
雑誌記事のお知らせです。
『PANZER』9月号に「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱
芳文の半生」第29回が掲載されています。在日米陸軍による支援や、
増援部隊撤収時期についての苦言などに触れています
。
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『丸』9月号の「世界の軍備」ページに「自衛隊の東京オリンピッ
ク支援」が掲載されました。1964年、自衛隊創設から約10年という
時期に行なわれた支援と今回の支援の違いについて紹介しています。
五輪で化学兵器を用いたテロが発生したら…などにも触れました。
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『正論』9月号「われらの女性自衛官」、今回は海上自衛隊東京音
楽隊のピアニスト、太田紗和子1曹です。太田さんを初めて取材し
たのは彼女が入隊2年目のとき。ピアノだけでなく人柄もとっても
素敵な方です。自衛隊の全音楽隊で、ピアニストとして採用されて
いるのは彼女だけです。
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■神は賽子を振らない(16)
3月15~16日
北澤防衛大臣から「官邸から、福島第一原発が非常に危険な状態な
ので、自衛隊に放水してもらえませんかと言う要請が来ています」
と言われたとき、火箱は瞬時に「放射能拡散下の原発にバンビバケ
ット(ヘリコプター用消火バケツ)に水を入れて放水することかな」
と思った。
陸海空すべての自衛隊にヘリ部隊はあるが、海自は洋上での活動が
中心、空自は救難部隊などもあるものの、山林火災などの災害派遣
で出動する機会が多いのは陸自のヘリ部隊だ。
だが防衛大臣も統幕長も、「陸がやれ」とは言わない。大臣は「決
死隊のようなことはさせたくない」と言う。
会議は「放水について検討する」で散会したが、陸自がこの危険な
任務を担うことになると、火箱を含む全員が認識していただろう。
大臣室を出て、4幕僚長は統幕長室に移動した。しばし沈黙のなか、
火箱は腹をくくった。
「統幕長、(陸自が)やるしかないでしょう。これから作戦を検討
します」
陸幕の部長クラスを集めて会議結果を説明し、「状況不明、しかも
リスクがある。成果も確信も持てないが、とにかくやるしかない」
と情報収集を開始、統幕と共に作戦を練り始めた。その一方で、火
箱の胸の中には「どうしてもっと早く言ってくれなかったのか」と
いう悔しい思いがあふれていた。
政府が、東電が、もっと早く原発内部で起きている状況を詳細に知
らせてくれていれば、わかっていることを包み隠さず教えてくれて
いれば、地上からの注水も全国からありったけの放水車を集めて一
斉注水できていただろう。そうすれば1号機や3号機の爆発を防げ
ていたかもしれない。少なくともこの3日間で自衛隊としての作戦
を立てれば、違った方向で原発事故に対応できたと思うと悔やんで
も悔やみきれなかった。
しかも、原発上空から放水するという要請があったこの時点でも、
放射能が周辺や上空にどれくらい飛散しているのか、原子炉のどこ
まで近づくことができるのか一切わからない。原発の状況は火箱で
すらマスコミ報道から知るしかない状態だった。
「作戦を立てるには敵の状況を把握しなければならない。敵=原発
の状況がこれだけわからないと、作戦も立てようがない」
それが本音だったが、それでもやるしかない。
懸念されていることは、3、4号機の燃料プールが干上がったら放
射能が拡散し、二度と原発周辺に近づけなくなること、そして原子
炉内に海水は入れているが、枯渇すればメルトダウン、メルトスル
ー、最悪原子炉が破烈するかもしれないということだ。
この状況を踏まえ、統幕・陸幕で検討のうえ、まず4号機の燃料プ
ールへの投下を行ない、次いで3号機への投下を行なうことになっ
た。併せて2・4号機のホウ酸投入も準備した。
建屋上空でヘリの搭乗員や機体にどのような放射線被ばくがあるか
も予測できないので、ヘリの密閉化とクルーに対する完全防護を指
示し、また放射線遮蔽に有効だというタングステンシートをCH‐
47ヘリの座席や床に貼った。
16日、14時20分。
ヘリが放水予定の4号機近くに到達すると、放射線量が高く線量計
の警報機が鳴りっぱなしになった。
折木統幕長は「最初は無理するな、一度帰ってこい」と作戦中止を
了承した。
しかし放水するとばかり思っていた火箱は思わず統幕長室に駆け込
み、「時間がないのになにやってるんですか!」と、防大の2期先
輩である折木統幕長に食ってかかった。
「明日は絶対やりましょう」
ただ、このフライトにも成果があった。モニタリングにより、機内
の空間線量は予想以上に低く、4号機の燃料プールには水が入って
いるのを確認できたのだ。これにより、17日に3号機に放水する
ことが決まった。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
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□著者略歴
渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。
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