こんばんは、エンリケです。
一昨年と去年にお届けしたシリーズ
「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生」
のつづきをお届けしています。
過去配信した内容はこちら
http://okigunnji.com/watanabe/category1/category45/
五輪も、想像をはるかに超える感動とともに
無事終わりました。
やってよかったなあ、心からそう思っています。
さてきょうのコラムは、
福一出動時の話(その2)です。
さっそくどうぞ
エンリケ
追伸
東京五輪は終わりました。
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』
を読み、大会全般の支援に当たった
わが自衛隊に思いを馳せます。
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「ライター・渡邉陽子のコラム」バックナンバー
https://okigunnji.com/watanabe/
ご意見・ご感想はコチラから
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『ライター・渡邉陽子のコラム (336)』
神は賽子を振らない(15)
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こんばんは。渡邉陽子です。
東京オリンピックが終わりました。いいことも悪いことも、いろい
ろ思うことが多すぎて語りだすと止まらないので、3つだけ。
・板飛び込みの寺内健選手へのスタンディングオベーション。それ
に気づいた寺内選手、一瞬顔がゆがむんですよね。で、その後満面
の笑みに。寺内選手は泣くのこらえたけれど、私は泣きました……
・レスリングでは小原さんと米満さんというロンドン五輪金メダリ
ストのふたり(現在は体育学校のコーチ)が解説を担当。教え子の
乙黒拓斗選手の決勝戦も米満さんが解説し、金メダルが決まり乙黒
選手が抱き合った相手は、やはり体育学校コーチのロンドン五輪銅
メダリストの湯元さん。取材で人となりに触れた方々の声や姿に、
胸が熱くなりました。ちなみに湯元さんについてはメルマガ319回
「海上自衛隊幹部候補生学校15」(*)でもご紹介しています。
(*)
https://okigunnji.com/watanabe/category1/category55/entry324.html
・インタビューする側の人間なので、インタビュアーの質問が気に
なります。「どうでしたか」「いかがでしょう」という言葉で終わ
る質問は、なにを尋ねているのかを明確にせず、その判断を選手に
任せている「悪い質問例」だと思います。慣れている人ならインタ
ビュアーの求める回答をしてくれますが、そもそも的確な質問をす
べきですよね。
雑誌記事のお知らせです。
『PANZER』9月号に「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱
芳文の半生」第29回が掲載されています。在日米陸軍による支援や、
増援部隊撤収時期についての苦言などに触れています
。
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『丸』9月号の「世界の軍備」ページに「自衛隊の東京オリンピッ
ク支援」が掲載されました。1964年、自衛隊創設から約10年という
時期に行なわれた支援と今回の支援の違いについて紹介しています。
五輪で化学兵器を用いたテロが発生したら…などにも触れました。
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『正論』9月号「われらの女性自衛官」、今回は海上自衛隊東京音
楽隊のピアニスト、太田紗和子1曹です。太田さんを初めて取材し
たのは彼女が入隊2年目のとき。ピアノだけでなく人柄もとっても
素敵な方です。自衛隊の全音楽隊で、ピアニストとして採用されて
いるのは彼女だけです。
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■神は賽子を振らない(15)
JTF東北司令官に君塚東北方面総監を任命するセレモニーが始まっ
たのは11時だ。奇しくも11時1分、福島第一原発3号機が爆発した。
兵站体制の変更や即応予備・予備自衛官の招集など、やることが山
積みで仙台には行かず市ヶ谷に残っていた火箱は、執務室のテレビ
で爆発の瞬間を目撃した。
「これは水素爆発じゃないか!」
火箱は「原発に隊員が入っていないか確認しろ」と命じながら、
「これはおかしい。福島第一原発は大丈夫なんかじゃない、危険だ」
と、初めて実感した。
中特防の岩熊真司隊長ら6人の隊員を乗せたジープと給水車はちょ
うど3号機近くに到着、まさに注水作業に取り掛かる寸前だった。
爆発により降り注いだがれきで4名が負傷した。
放射性物質が漏れているとは聞いていた。しかし岩熊たちは注水を
頼まれ、政府・東電がそう言うなら1号機に続いてすぐ爆発が起こ
るようなことはないのだろうという前提で動いていた。
この日までに現地のLO(連絡官)に、もっと福島第一原発の実情を
確認すればよかったかもしれないと、後になって火箱は思った。
しかし仮にそれができていたとしても、LOは参加できない会議も
あり、どこまで情報を獲得できたかは不明だ。意見を言う立場でな
く、おのずと「要請があれば了解しました」という受け身の姿勢に
ならざるを得なかった。
しかし3号機の爆発が起きたことで、津波による一般的な災害対応
はJTF東北の指揮官君塚東北方面総監、原子力対応はCRF(中央即応
集団)の宮島俊信司令官と、役割が分端されることになった。
夜になると火箱のもとに、被災者の中には生活物資が不足し凍死、
餓死の恐れすらあるという情報が届いた。そこで被災者の生活支援
のため部隊の増強や民間物資輸送スキームの構成や自衛隊の灯油、
ガソリンを民間に転用するための準備を進めた。
実はこの夜、オフサイトセンターは「3号機以外も危ない」「オフ
サイトセンターは撤退」「2号機が重大危機」など、デマも含めて
さまざまな情報が飛び交い、パニック状態に陥っていた。そのため、
新たにCRFの副司令官がLOとしてオフサイトセンターに派遣された
ものの、相変わらず福島第一原発でなにが起きているのか、火箱の
元に正確な情報は伝わってこないままだった。発災から3日経って
も、陸上自衛隊のトップににすら情報は届かなかったのだ。
3月15日
6時10分、4号機が水素爆発を起こし、燃料プールの屋根が吹き飛
んだ。続いて9時7分には2号機から白煙が上がり、4号機では火
災も発生した。
すると9時32分に原発事故に関して、初めて首相官邸、政府の対策
本部から「原発がきわめて危険な状態。オフサイトセンターでの任
務や原発への燃料輸送を中止せよ」と指示があった。
発災からこのときまで、首相官邸、政府の対策本部から防衛省・自
衛隊への指示は一切なかったのである。
9時35分、火箱は一晩かけて準備した被災者支援のための部隊増強
と全国物流輸送支援について北澤防衛大臣に報告に行き、了承を得
た。
するとそれから1時間も経たないうちに大臣に呼ばれた。緊急の大
臣・幕僚長会議である。防衛大臣が言った。
「官邸から、福島第一原発が非常に危険な状態なので、自衛隊に放
水してもらえませんかと言う要請が来ています」
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
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□著者略歴
渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。
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