配信日時 2021/08/04 09:00

【防衛省の秘蔵映像(26)】 ルワンダ派遣と阪神・淡路大震災(1) ─平成6年映像─ 荒木肇

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こんにちは。エンリケです。

「防衛省の秘蔵映像」解説 第26回です。

阪神淡路大震災発災直後の中部方面隊、中部方面総
監部の動きをかくも丁寧に読めるなんて、マニアや
関係者以外では初めてのことではないでしょうか?

松島元陸将、元中方総監のおことばも忘れてはいけ
ません。

国防安保自衛隊への無知は国家国民最大の罪です。

さっそくどうぞ。


エンリケ


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防衛省の秘蔵映像(26)

ルワンダ派遣と阪神・淡路大震災(1)
─平成6年映像─

荒木 肇
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 1994(平成6)年の映像紹介
https://www.youtube.com/watch?v=WQTZQU1VOC4


□はじめに

 そろそろ30年の昔になってきました。一世代で
す。まだ当事者の方々がいっぱいおられる時代です。
科学的な、冷静な歴史の領域にはならないでしょう。

 ルワンダ難民支援の派遣部隊長、神本光伸(かみ
もと・みつのぶ)1等陸佐(当時)やその部下にお
られて、実際に現地で活動した方々からも直にお話
をいただいたこともあります(1994年9月に派
遣)。

また、阪神・淡路大震災(1995年1月)で現場
の救援の最高指揮官だった中部方面総監松島悠佐(
まつしま・ゆうすけ)陸将からも直にお教えを受け
ました。

 この平成6年は、連立政権の首班は当時の社会党
党首村山富市(むらやま・とみいち)氏でした。わ
たしは決して「後出しジャンケン」は好きではあり
ません。過去のことを語り合う時に、今だからこそ
言えることは実際に多いのです。いや、すべてだと
言ってもいいでしょう。絶対に負けない位置に立つ、
結果を知っている側が当事者に下す批判は、後出
しのジャンケンのようなものです。

 この年7月、村山首相は「自衛隊が合憲であり、
日米同盟による安全保障は堅持する」と施政方針演
説を出しました。わたしなどは、ああ何十年にもわ
たり、実務に就くこともなく政権与党の批判だけを
してきた人たちも、さすがに現実を突きつけられて
腰が抜けたんだなと思ったものです。

 それでも、村山首相の阪神・淡路大震災での政権
の不手際をつかれた質問に、「なにぶん、初めての
ことじゃったから」という弁明は許せるものではあ
りませんでした。


▼地震が起きた

 平成7(1995)年1月17日、午前5時46
分。巨大地震が起きました。中部方面総監官舎は地
震で崩れた阪急電車伊丹(いたみ)駅から北へ2キ
ロのところにあります。中部方面総監松島陸将は寝
巻のまま、官舎の庭に飛びだしました。昭和の初め
に建てられた官舎はいまにも崩れそうでした。

 電話も不通、6時20分ごろ、防衛課長が部下の
私有車で駆けつけてきました。発生当時、総監部の
作戦室で運用当直についていたのはT2佐とN3佐
でした。自衛隊の部隊にはどこでも、休日・夜間を
問うことなく部隊ごとに当直が置かれています。

中でもこの運用当直は、通常の当直以外に陸上幕僚
監部、方面総監部、師団司令部には、非常時の司令
部活動が速やかにできるように置かれているもので
す。

 方面総監部運用当直の長はY防衛部長です。地震
発生と同時に動き始めたのは、この運用当直の人た
ちでした。情報収集・連絡確保のツールは防衛マイ
クロ回線です。隊員たちも続々と官舎や自宅から集
まってきました。

6時10分には陸上幕僚監部運用当直に第一報を送
ります。Y防衛部長は総監官舎に電話をしますが、
つながらない。そこで防衛課長にただちに官舎に行
かせるようにしたのです。総監部内には情報所、指
揮所が開設されました。6時30分、総監の命令の
もと中部方面隊全部隊は非常勤務態勢に入りました


▼近傍災害派遣態勢

 第3師団長の官舎は総監官舎から500メートル
ほど離れたところにありました。第3師団は兵庫県
を含む近畿2府4県の警備責任をもっています。師
団長は総監と同じく被害を受けましたが、幸い6時
ころに司令部に電話がつながりました。総監部と同
じように司令部内は片付けられ、司令部勤務員も6
時ころから続々と登庁してきます。

 師団第3部長、師団の運用、つまり作戦を担当す
る幕僚です。管内の被害状況をつかむために県庁や
県警本部と連絡を取ろうとします。県庁との間には
防災無線がありましたが、それが通じません。NT
Tも通じません。

 6時35分、伊丹警察署から連絡が入ります。阪
急伊丹駅が倒壊し、派出所が潰れて警察官が埋まっ
てしまったというのです。そこで伊丹に駐屯する第
36普通科連隊に近傍災害派遣として対応すること
にします。

 第36普通科連隊は歩兵です。重装備はありませ
んが、隊員はすでに出動準備を整えていました。6
時42分、偵察班が出ます。およそ3キロ離れた阪
急伊丹駅に急行しました。

 6時50分、2台の偵察オートバイが現場に到着
します。警察官は瓦礫の中に埋まっていました。人
手と土工具が必要と偵察員は判断し、無線で状況を
連隊本部に報告します。K連隊長はただちに第1中
隊長に出動を命じました。シャベル、斧、ジャッキ
、ロープ等をトラックなどに積んで7時35分、中
隊長以下42名が現場に向かいます。1名の警察官
は殉職されていましたが、もう1名の方は救助され
ました。これが自衛隊の人命救助の第1号になりま
した。

▼人命救助優先だ!

 西宮市民から救助の要請が届きます。市民病院が
倒壊し・・・ともいう。しかし、西宮は駐屯地の伊
丹市に隣接する10キロも離れたところです。駐屯
地の近傍で災害が発生したら直ちに対応できます。
県知事からの災害派遣要請がなくても連隊長は部下
に出動を命じることができるのです。

 問題は、近傍の被害状況でした。10キロも離れ
た他市に出かけて、その間に、伊丹市内で緊急事態
が起きていたら大変です。しかし、人命救助が何よ
り先だと連隊長は決心し、8時30分に重迫撃砲中
隊60人が西宮に出動します。この中隊は移動中に
土砂崩れの現場があり、市民30数名が生き埋めに
なっているとの情報を得ました。

 11時25分、連隊長は第2中隊と対戦車中隊を
土砂崩れ現場に送ります。この日、ここまでで、西
宮市に206名が出動し、6人を救出し、29体の
遺体を収容しました。昼頃には芦屋市からも被害通
報が出ます。連隊長の決心は正しく、「近傍」とは
いえない地域までも県知事の要請もないままに出動
し、人命救助に励んだのです。

▼都市直下型地震ではみな被災者

 自治体も警察も消防も被害者でした。神戸市の災
害・警備を担当するのは、姫路市にあった第3特科
(砲兵)連隊です。神戸には海上自衛隊の阪神基地
隊という掃海艇をもった180人ほどの部隊がいる
だけです。陸上自衛隊の実動部隊は神戸市にはおり
ません。

 姫路駐屯地は震度4でしたが、連隊は相応計画に
のっとって6時50分、非常勤務態勢に移行しまし
た。神戸の被害状況、移動経路の状況を把握しなく
てはなりません。ところが、県の防災課に連絡が取
れません。防災無線も県庁との間で通じないのです。
当然、NTTも役に立ちません。

 7時30分に県庁との連絡班を出しますが、道路
の渋滞がひどく、到着は午後になる始末でした。8
時10分にようやく県庁の防災係長と電話が通じま
す。被害状況を知りたいという警備幹部の問い合わ
せに係長は分からないをくり返すばかりでした。ま
るで『藪の中』のような話ですが、後になって係長
は「いずれ災害派遣をお願いすることになります」
と言ったと証言するが、警備幹部N3尉は聞いてい
ないといいます。自衛官はこうしたときには大変慎
重です。しかもN3尉は通話の責任者です。おそら
く係長は動転していたこともあり、災害派遣のこと
など言わなかったのでしょう。

▼パトカーの先導で進む

 姫路から神戸までは約50キロ。ふつうなら1時
間あまりで着く道のりですが、神戸に向かう多くの
車で道がふさがれ、見通しがつきません。H特科連
隊長はパトカーの先導が必要と考えて姫路警察署に
派遣を依頼します。パトカー1台が駆けつけますが、
連隊の車輌が約50台、それを見て警察官はさら
に1台のパトカーの増派を本署に要請しました。

 自衛隊は災害派遣に出動しても、警察のように交
通規制をする権限がありません。そこでパトカーの
先導が必要になります。連隊は9時には出動準備を
完了し、待機していましたが県知事の災害派遣要請
とパトカーがまだ来ません。

 県庁との電話はまた不通になり、10時ころにつ
ながります。連隊の警備幹部は「この電話で災害派
遣要請と考えていいでしょうか」と確認します。そ
れに対して、県の防災係長は「よろしく」と答え、
10時14分、長田署と兵庫署のパトカーが到着し
ます。部隊はようやく出発します。

▼自治体も市民も自衛隊を知らなかった

 松島総監は言われました。「自治体との協同や被
災された方々への生活救援活動を通じて、自治体も
市民も自衛隊のことをあまり知らないことをあらた
めて知りました」

 自衛隊の活動はうまくいって当たり前。少しのミ
スでも批判、非難が大きな声で報道されるのはいつ
ものことです。この阪神・淡路の大震災でも、地震
が起きた当初から「自衛隊が出遅れた」という自衛
隊叩きの報道がありました。わたしなどはテレビの
ニュースキャスターがしたり顔で語る「だから自衛
隊はだめだ」などという非難を聞きながら、いやむ
しろ当事者の自治体は批判されないのかと不思議で
した。

 でもよく考えてみれば、多くの自治体職員は組合
を作っており、放送界にも組合はあります。その組
合はたいていが反権力、反自衛隊の政治運動を行な
っており、組合同士がミスを指摘し合うことはない
のです。現在の地方公務員の方々の組合はどうか知
りませんが。

 松島総監はご自分の著書の中で、「大震災に限ら
ず、国の非常事態には自衛隊の活躍が期待されるし、
また当然それが自衛隊の任務でもあり、出来る限り
の努力をしなければならないが、だからこそ、自衛
隊の実情、特にその能力と限界をよく理解してもら
わなければならない」(『阪神大震災自衛隊かく戦
えり』時事通信社・1996年・あとがき)と書か
れています。

 映像の中には多くのリアルな活動ぶりが紹介され
ています。

 次回は、映像の中の、ルワンダ難民救援活動につ
いてお知らせします。



(つづく)


(あらき・はじめ)


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●著者略歴
 
荒木  肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
 
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
 

『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
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