こんにちは。エンリケです。
『武器になる「状況判断力」』の四回目です。
個人的になぞなぞやクイズが大好きです。
「パッ」とわかった瞬間の快感が忘れられませんw
さてこの連載では、
毎回冒頭に「謎かけ」があります。
考えていると楽しいですね。
電波塔の件は何とかわかりましたが、
前回の線路の件は全くわかりませんでしたw
きょう回答を見て、
思いもかけなかった視点を知り、
広い知識を持っておくと、思いもかけないところで
面白い人生に繋げられるなあ、と感じました。
きょうも謎かけ出ています。
同じ疑問を持っていたので、楽しみです。
本文では、各種用語の定義が行われます。
個人的に非常に重要なポイントと感じます。
同じ言葉を使っても、頭の中で全然違うものを思い
浮かべているようでは、意味あるコミュニケーショ
ンは取れませんからね。
なかでも、状況判断と情勢判断の違いを
戦術と戦略の違いと絡めてわきまえておくことは
非常に大切と思います。
また、
戦略はWhat、Why、戦術はHow to、
との指摘にもハッとさせられます。
ではきょうの記事。
さっそくご確認ください
エンリケ
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新連載:武器になる「状況判断力」(4)
状況判断と情勢判断
インテリジェンス研究家・上田篤盛(あつもり)
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□はじめに
皆様こんばんは。「武器になる状況判断力」の第4
回目です。
前回の謎かけは「千葉県の松戸駅と京成津田沼駅を
結ぶ全長は26.5kmの新京成線は山も谷もない
にもかかわらず不自然なカーブが連続する。直線で
結ぶと15.8kmであるが、なぜ10km近くも
余計に走っているのか?」でした。
答えは、「陸軍の運転用の練習に作られた。練習に
はカーブが多い方がよい」とのことです。一見不合
理と思われる事象も、視点を変えると合理になる。
多面的に物事を見る重要性を教えてくれます。
今回の問いは「最近、石油価格が上昇しているよう
です。リッター150円を超えています。さてその
理由はなぜか?」です。まずは頭の中で考えてみて
ください。
前回は指揮における状況判断の役割として指揮の核
心で「決心」を準備する作業という点についてお話
しました。今回は、状況と情勢のニュアンスの違い
に着目し、あえて状況判断を状況判断(狭義)と情
勢判断、戦術的状況判断、戦略的情勢判断に分別し
て、その特性などについて解説することとします。
▼状況と情勢とは?
筆者が初級・中級幹部時代に学んだ戦術教育の場で
は「状況判断」という言葉を嫌というほど聞かされ
ていました。しかし、防衛省の情報分析官であった
時代には「情勢判断」という言葉の方をよく目にし、
耳にするようになりました。
実際、さまざまな国際情勢・インテリジェンスの書
籍を読むと、情勢判断という言葉がよく目に入って
きます。そこで、まず状況と情勢について考察して
みます。
一般的に状況や情勢は、人や組織が生存する、ある
いは行動するために考慮しなければならない環境諸
条件の時々の「ありさま(有様)」を意味する言葉
といえます。ただし、情勢は国や世界など大きく見
渡した有様を表し、状況は身の周りなどの限定的な
範囲での有様を表すといえるでしょう。
そのため、状況には「個々の状況」「周囲の状況」
「その時の状況」、情勢には「国際情勢」「当時の
情勢」「将来の情勢」などといった分類や使用法が
見られます。
とはいえ、状況と情勢に明確な境界線があるわけで
はありません。環境諸条件の時間の長短と地理空間
の広狭で、主観的・感覚的に使用しているのが実態
でしょう。
▼状況判断と情勢判断
次に、便宜的に状況に関する判断を状況判断とし、
情勢に関する判断を情勢判断と呼称して、その特性
を見てみましょう。
作戦戦場では、指揮官が決心するための準備とし
て「状況判断」(軍事用語)を行ないます。たとえ
ば「敵は右正面に戦力を重点的に配備しているか、
それとも左正面が重点か?」などの敵の可能行動の
見極め(判断)から、「我は右から攻めた方が良い
か、左から攻めた方が良いか?」などの行動方針の
優劣を判断し、「明朝、敵を戦場に捕捉・撃滅する
ために左から攻める」などの決心を行ないます。
判断すべき事項は限定されていますが、判断するま
での時間が限られていますのでスピードが命です。
それゆえに、戦況速度が激しい作戦戦闘に従事する
軍隊組織では状況判断の思考過程(手順)がマニュ
アル(ドキュメント)化されています(後述)。
他方、政治指導者(政策決定者)などは国際情勢の
大局を継続的に判断して、国家の生き残りや繁栄の
戦略・政策を考えます。これらを誤ると致命傷にな
るので、長期かつ継続的な観察を行ない、その判断
には正確性が最も重視されます。正確性を高めるた
めに組織的な情報収集、情報分析を行ない、情勢を
判断して、戦略・政策判断します。
ソ連のスターリンはドイツとの戦いの中で、欧州、
中国、米国、日本に広範囲な諜報網を設定し、ドイ
ツの能力と意図に関する見極めを実施していました。
日本には、ゾルゲが満洲事変以後の日本の対ソ政策
を観察するという使命を受けて1933年に来日しまし
た。その後8年かけて、来日前の中国で徴募した尾
崎秀実を中心に諜報網を確立し、これを組織的に運
用し、日独関係、日本の対華・対米政策、軍部と政
治的意思決定との関係などの諸情勢を分析、判断し
ました。そして「日本は南進策をとり、ドイツと連
携してソ連に侵攻することはない」との判断を下し、
これに基づいてスターリンは極東方面の兵力を対独
正面に転用するとの戦略判断と決断を下しました。
国際情勢の判断には多くの組織やスタッフがさまざ
まな観点から関与し、その判断結果をインテリジェ
ンスとして政治指導者に提供します。政治指導者は
上がってきたインテリジェンスに基づいて、国家戦
略や外交政策などの総合的な判断と決断を行ないま
す。
このように国際情勢の判断には、考慮すべき要因が
広範多岐に複雑に絡みますので、作戦戦場の状況判
断のようにドキュメント化された定式はありません。
判断者個人の力量が物をいう世界です。
▼戦術状況判断と戦略情勢判断
状況(情勢)判断の理解を深めるために、戦略と戦
術の関係についてもみておきましょう。
戦略と戦術は共に軍事用語です。戦略が「大規模な
軍事行動を行うための計画や運用方法」、戦術とは
「戦略の枠内での個々の戦闘を行うための計画や遂
行方法」などと定義されています。つまり、戦略と
戦術は相互に上下する概念であり、戦略が上位、戦
術が下位になります。
今日、戦略と戦術は政治やビジネスなどの領域でも
広く使用されていますので、軍事での特性を踏まえ
た上で、一般でも通用する概念を探る努力がなされ
ています。
一般ビジネス書などでは、戦略は「企業目的や経営
目標を達成するためのシナリオ」などと定義され、
「目的、目標、ゴール、方針」などといった言葉で
表現されています。一方の戦術は「戦略を実現させ
るための具体的な手段」と定義され、「方法、やり
方、オペレーション」などといった言葉がよく使用
されています。
要するに、戦略とは「理由(why)や目的・目標
(what)を決定するもの」であり、戦術は「目的
や目標のやり方(How to)を決定するもの」であ
ると理解できます。このように理解すれば、一個人
においても戦略と戦術はあり、その意思決定の特徴
や相違点は認識しておく必要があります。
作戦戦場における状況判断は戦術的な判断です。こ
れを次のことを解説するために便宜的に戦術的状況
判断と呼称します。
戦術的状況判断は「目的や目標が決定(固定)して
いる状況下で、短時間の内にどの方策が良いかを判
断する」ことになります。つまり、上級部隊から使
命(mission、目的と任務から構成される米軍の概
念です)が示され、たとえば攻撃部隊の指揮官とし
て「敵は右正面に戦力を重点的に配備している蓋然
性が大」と判断し、「我は戦力が手薄な左正面から
の攻撃を有利」と判断します。すなわち戦術的状況
判断は方策、方法論の判断です。
他方、国際政治などでの国家戦略に関する、戦略
的情勢判断とでも呼称する判断では、使命を自ら確
立することが主眼となります。つまり、最初に「我
が方はかくかくしかじかの目的で、以下の行動をと
る」ことを判断し、決断する必要があります。この
ように、戦略的情勢判断は、自らの目的を何に求め
、自らの「任務」をどのように規定するかの判断で
あるといえます。
また、一般的には戦術的状況判断はより戦術的、小
局的、客観的です。そのため前述のように思考過程
のマニュアル化が行なわれています。
他方、戦略的情勢判断は戦略的、大局的、主観的で
す。後者は政治指導者などの戦略的価値観、すなわ
ち価値判断が情勢判断に大きく影響することになり
ます。
なお、特に分別する必要がない場合は状況判断も情
勢判断も状況判断あるいは状況(情勢)判断と表現
するといいましたが、これは、ここでいう戦術状況
判断(狭義の状況判断)と戦略情勢判断(広義の状
況判断)までを含んでいます。
(つづく)
(うえだあつもり)
【筆者紹介】
上田篤盛(うえだ・あつもり)
1960年広島県生まれ。元防衛省情報分析官。防
衛大学校(国際関係論)卒業後、1984年に陸上
自衛隊に入隊。87年に陸上自衛隊調査学校の語学
課程に入校以降、情報関係職に従事。93年から9
6年にかけて在バングラデシュ日本国大使館におい
て警備官として勤務し、危機管理、邦人安全対策な
どを担当。帰国後、調査学校教官をへて戦略情報課
程および総合情報課程を履修。その後、防衛省情報
分析官および陸上自衛隊情報教官などとして勤務。
2015年定年退官。著書に『中国軍事用語事典(共
著)』(蒼蒼社)、『中国の軍事力 2020年の将来
予測(共著)』(蒼蒼社)、『戦略的インテリジェ
ンス入門―分析手法の手引き』『中国が仕掛ける
インテリジェンス戦争』『中国戦略“悪”の教科書―
「兵法三十六計」で読み解く対日工作』『情報戦
と女性スパイ』『武器になる情報分析力』『情報
分析官が見た陸軍中野学校』(いずれも並木書房)、
『未来予測入門』(講談社)。
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