こんばんは、エンリケです。
一昨年と去年にお届けしたシリーズ
「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱芳文の半生」
のつづきをお届けしています。
過去配信した内容はこちら
http://okigunnji.com/watanabe/category1/category45/
初動が命。
はよく耳にする言葉ですが、現実に実際に対処した
ケーススタディを知ると、あらためて身に染みるところ
あります。
さっそくどうぞ
エンリケ
追伸
著者多忙のため、次週の配信はお休みです。
追追伸
東京五輪は一年延期されました。
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』
を読んで思いを馳せます。
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「ライター・渡邉陽子のコラム」バックナンバー
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『ライター・渡邉陽子のコラム (333)』
神は賽子を振らない(12)
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こんばんは。渡邉陽子です。
今週も『パンツァー』で連載中の「神は賽子を振らない 第32代
陸上幕僚長火箱芳文の半生」より、東日本大震災発災直後の様子を
お届けします。
陸幕長自ら方面総監宛に電話をかけるというのは通常なら考えられ
ないことなので、電話を受けた各方面総監も、ことの重大さ、深刻
さをより認識することになったと思います。
今回は、最後に列記した数字にもぜひご注目ください。
雑誌記事のお知らせです。
「丸」7月号に「日本の無人機最新レポート」が掲載されました。
竹内修氏の巻頭グラビアページと合わせてお楽しみいただければ幸
いです。ドローンは戦闘を変え、災害で命を救い、宅配便にもタク
シーにもなり……ものすごい可能性を秘めていて、知るほどに面白
く、空恐ろしくもあります。まずは国産ドローン頑張って欲しいで
す!
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PANZER8月号に連載「神は賽子を振らない 第32代陸上幕僚長火箱
芳文の半生」の最新号が掲載されています。ヘリによる原発への放
水準備が進むなか、水面下で計画されていた幻の「鶴市作戦」とは。
そして行方不明者捜索中の部隊は警察との間にトラブルが……
お手に取っていただければ幸いです。
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「正論」7月号に「われらの女性自衛官」第4回が掲載されます。
今回は航空自衛官の整備幹部。防大1期生であり、防大生の長女、
高校3年生の息子たち(双子!)のお母さんでもあります。取材時
は空幕勤務でしたが、現在は那覇の第9航空団整備補給群司令とし
て約700名の隊員を率いています。
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■神は賽子を振らない(12)
最後に電話したのが北海道の北部方面隊だ。第7師団(東千歳)、
第2師団(旭川)、第5旅団(帯広)、第11旅団(真駒内)とい
う4師・旅団がある。
「道央・政経都市である札幌を担う第11旅団は動かせない。5旅
団も津波が来るかもしれないから、今すぐには動かせないな」
同じ部署で一緒に勤務したこともある防大の3期下の後輩、千葉徳
次郎北部方面総監に「2師団は出せるか」と聞くと「出せます」。
「7師団は?」と聞くと、千葉総監が返事をためらった。
7師団は陸自唯一の機甲師団で、北海道防衛の虎の子である。「装
軌車や装甲車で自走化された部隊のため、災害派遣には不向き」と
いうのが千葉総監の考えだった。火箱はその意見を受け入れ、7師
団については司令部を動かさず、一部の隊員だけを出すことにした。
また、方面直轄部隊である野戦特科部隊の第1特科団と北海道全域
の防空を主任務とする第1高射特科団も出すように指示、さらに兵
站については東北方面隊に依拠するのではなく「北方の部隊は自ら
面倒を見ろ」と指示した。
というのも、北部方面総監部幕僚長時代の2004(平成16)年
に発生した新潟県中越地震で支援要請に応じて部隊を派遣したもの
の、管轄の東部方面隊に増援部隊への兵站支援組織が不足し、満足
な兵站支援を受けることができなかったという苦い体験があったか
らだ。結果、北部方面隊は岩手駐屯地に前方支援地域を開設し、自
分たちの部隊の兵站基盤を確保した。
北部方面隊の移動で最大の問題は、被災地と陸続きでないことだ。
部隊が機動展開するためには、隊員輸送のための輸送船が必要にな
る。
「船は俺がなんとかする。小樽でも苫小牧でもいい、どの港でもい
いからとりあえず部隊を集結させておけ」
これまたざっくりした指示だったが、部隊はそれに従った。
杉本海幕長に連絡し支援を頼んだところ、あいにく海自の輸送艦は
すべてドックに入ってしまっていて、出港まで48時間はかかると
いう。到底待てる時間ではないので、民間のフェリーを調達する指
示、利用することになった。
5方面隊の各総監すべてに指示を終えたのは15時15分。地震が
発生してから30分足らずという初動の段階で、火箱は以下の4点
を押さえたことになる。
・各方面隊に残置部隊と派遣部隊、待機部隊を明示すること
・津波対応のため架橋能力、道路補修能力を持つ施設団を同時派遣
すること
・人命救助と避難者の生活支援を当面の任務として優先させること
・兵站体制は北部方面隊、東部方面隊が被災地を挟むように支援す
ること
この結果、発災から72時間後には約3万人の部隊が現地で活動、
3月18日には「陸海空10万人体制」が成立した。
最後の生存者が発見された3月19日までに救助された被災者の総
数は2万7157名、7割以上を占める1万9286名を自衛隊が
救助した(救助者のうち1万4937名は陸自によるものである。
さらに、発災後72時間以内に自衛隊が救出した人は1万2351
名だった)。
参考までに、警察の救助実績は3749名、消防461名である。
阪神淡路大震災での救助実績が警察3495名、消防1387名、
自衛隊165名だったことを考えれば、初動が「命」に直結してい
ることを改めて思い知らされる。
(つづく)
(わたなべ・ようこ)
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□著者略歴
渡邉陽子(わたなべ・ようこ)
神奈川県出身。大学卒業後、IT企業、編集プロダクション勤
務を経て2001年よりフリーランス。2003年から月刊
『セキュリタリアン』『MAMOR』などに寄稿。
現在は自衛隊関連の情報誌などで記事を発表。メルマガ「軍事
情報」で自衛隊関連の記事を配信中。
2016年6月、デビュー作
『オリンピックと自衛隊 1964-2020』を刊行。
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