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荒木さんの最新刊
知られざる重要組織「自衛隊警務隊」にスポットを
当て、警務隊とは何か?の問いに応えるとともに、
警務隊で修練されている「逮捕術」を初めて明らか
にしたこの本は、小平学校の全面協力を受けて作ら
れました。
そのため、最高水準の逮捕術の技の連続写真が実に
多く載っています。それだけでなく、技のすべてを
QRコードを通して実際の動画をスマホで確認できる
のです!
自衛隊関係者、自衛隊ファン、憲兵ファンはもちろん、
武術家、武道家、武術ファンにも目を通してほしい
本です。
『自衛隊警務隊逮捕術』
荒木肇(著)
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こんにちは。エンリケです。
「防衛省の秘蔵映像」解説 第23回です。
湾岸戦争期の映像です。
いろいろ思い起こすことがあります。
あなたはいかがでしょうか?
さっそくどうぞ。
エンリケ
メルマガバックナンバー
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ご意見・ご感想はコチラから
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防衛省の秘蔵映像(23)
湾岸戦争の衝撃
─平成3年映像─
荒木 肇
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1991(平成3)年の映像紹介
https://www.youtube.com/watch?v=3dPKuKb2AgY
□はじめに
映像の冒頭はいきなりスマート爆弾のものでしょ
うか。ピンポイントの爆撃が行なわれます。続いて
圧倒的なアメリカ軍によるエアランド・バトルです。
空軍の掩護のもとに攻撃ヘリが、戦車が、装甲歩
兵がイラク軍を圧倒します。この年、1月24日、
アメリカ軍を中心とした多国籍軍が地上戦闘を開始
しました。
その光景はあらゆる媒体で世界中に同時に知らさ
れます。「これはゲームではありません。ほんとう
の戦争です」とアナウンサーがテレビで叫んでいま
した。お茶の間に、現代戦が飛び込んできたのです。
誰もが驚いたのは、1990(平成2)年8月2
日の突然のイラク軍のクウェート侵攻でした。ろく
に武装勢力もなかったクウェートはあっという間に
イラク軍に席巻されました。首都は侵攻後、わずか
6時間で陥落します。わが外務省も、防衛省も、政
府も官邸も何をしたらいいのか、どのように行動し
たらいいのか、ほとんど誰もが分かっていなかった
という証言がいくつもあります。
7月18日には、サダム・フセイン大統領は、ク
ウェートがイラク国内の石油を盗掘していると非難
しました。要はクウェートの富と領土を手に入れ、
ペルシャ湾岸での影響力を強めようということが狙
いだったのです。このいささか古典的な喧嘩の方法
は、あっというまに国連の非難を浴びることになり
ます。安保理では即時無条件撤退を求める決議を採
択し、米英などの西側諸国はイラク非難声明を出し、
ソ連も武器援助停止を発表します。
8月7日には米国、8日には英国、10日にはア
ラブ首脳会議がサウジアラビアへの派兵を決定しま
した。こうしたなかで、西側の諸大国の中で、わが
日本だけが態度を明らかにしないという醜態を見せ
ました。海外派兵に通じるからと自衛隊をどう使う
かという議論は国会で潰されます。街には「戦争に
巻き込まれる」といったキャンペーンが張られ、中
には西側諸国による陰謀だという意見を述べる評論
家までいました。
大きな変化になったのは、わが国が多国籍軍に参
加するという人的貢献をせずに巨額の協力金を出し
たことへの海外からの軽侮と非難の声でした。
▼海自掃海隊の派遣
90億ドルにものぼる多額の協力金。しかし、そ
れも世界の国々、どころかクウェートにすら評価さ
れませんでした。「なんでも金か」、「金さえ出せ
ばいいのか」という国際社会のわが国への非難の声
は高まるばかりでした。ペルシャ湾には多くの日本
のオイルタンカーが航行し、まさに国益を守るとい
う行動が必要な時でした。
海部首相はとうとう、イラクが敷設した機雷を除去
するために母艦と補給艦とともに4隻の掃海艇を派
遣することにしました。史上初めての「海外派兵」
になります。もちろん、国内外の反対勢力は、ここ
ぞとばかり「憲法を守れ」、「戦争への道だ」、「
アメリカ帝国主義に追随する軍事行動だ」とキャン
ペーンを張りました。
その活動する映像や乗り組む自衛官たちの声も出
ています。掃海母艦は「はやせ(462)」。補給
艦は「ときわ(423)」で掃海艇は「さくしま(
671)」、「あわしま(670)」、「ひこしま
(669)」、「ゆりしま(668)」の4隻でし
た。
隊司令は落合畯(おちあい・たおさ)1等海佐で
す。「ゆりしま」、「ひこしま」はいずれも198
8(昭和63)年竣工の排水量440トン、全長5
5メートル。「あわしま」と「さくしま」はどちら
も1989(平成元)年竣工した前同490トン、
前同58メートルの新鋭艇でした。
「はやせ」は1971(昭和46)年竣工のベテ
ランでした。掃海隊群の旗艦として建造されました。
砂塵や炎上する油田からの煙、50℃にものぼる
炎熱の中で、隊員たちはガルフ・ドーン(湾岸の夜
明け)作戦に従いました。34個の機雷を処分し、
その貢献は大きく評価されました。
▼避難民輸送に待機した空自
愛知県小牧基地に待機するC-130輸送機も登
場します。「中東派遣」と大きく書かれた物資がつ
まった段ボールが準備されていました。邦人の救助、
避難する人々を救いにゆくのだと、まなじりを決し
ている自衛官たちの姿も映ります。4カ月もの間、
隊員たちは待機を続けました。
▼長崎県雲仙普賢岳噴火
6月3日、雲仙普賢岳が爆発します。巨大な火砕
流が発生し、陸自第4師団(福岡)の第16普通科
連隊(大村駐屯地)を中心に、当時では最長の災害
派遣が始まりました。大規模な火砕流の発生があり、
多くの方が亡くなります。
島原城内に司令部を置いて、陸上自衛隊は1日当
たり最大で300輌の車輌、20機の航空機、隊員
1100人を活動させました。献身的な活動ぶりを
見て、当時の市長さんが「人命よりも重い責任感、
使命感を見た」と自衛隊への感謝の言葉を述べられ
ました。
装甲ドーザーや60式装甲兵員輸送車などが活躍
します。また、ヘリに搭載された映像伝送装置(ア
ビオニクス)が地上部隊に現地の状況をすぐに送っ
ています。
▼89式装甲戦闘車デビュー
富士で行なわれた総合火力演習には、戦車かと思
わされるような砲塔やキャタピラーをつけた装甲車
両が初めて登場します。これこそ90式戦車と行動
を共にすべく開発された普通科(歩兵)の戦闘車で
した。
73式装甲車は74式戦車と行動できる性能を備
えていました。73式装甲車は乗員12人、水密化
構造によって、水上航走能力があり、NBC(核・
生物・化学兵器)防護機能がついています。後部の
ドアには2個、両側面に4個の銃眼(じゅうがん)
が設けられ、乗員は限られた視界ではあるものの、
視察と射撃もできました。
80年代に入ると、各国では20ミリ~35ミリ
の機関砲を備え、敵の対戦車ミサイル陣地や歩兵戦
闘車を撃破できることを目的とする戦闘車の開発を
始めました。アメリカはM2ブラッドレー(25ミ
リ機関砲)、ソ連のBMPII(30ミリ機関砲)な
どがそれにあたります。
わが陸自はスイス・エリコン社のKDE35ミリ
機関砲を採用しました。この砲は87式自走高射機
関砲やL90高射機関砲と同じものです。この発射
速度を少し落としたものを載せました。初速は対戦
車用弾で1385メートル/秒、距離1キロメート
ルで60度の角度で当たっても40ミリの装甲を撃
ち抜くという高性能です。
他国のどの戦闘車も敵ではありません。戦車すら
命中場所によっては撃破できます。エンジンは三菱
の船舶用水冷直列6気筒、インタークーラー・ター
ボ・スーパーチャージャー付ディーゼル。排気量は
16リットル、600馬力を発揮します。重量は2
6.5トンなので、重量当たりの馬力はトンあたり
22~23馬力にもなりました。軽快な機動力はこ
こからきています。また、対戦車ミサイルを砲塔左
右に1発ずつ搭載するのが特徴です。
ただし、価格が95(平成7)年現在で5億80
00万円といわれます。73式装甲車が1億300
0万円、さらには74式戦車が3億8000万円で
したから、主力戦車より高価な装甲戦闘車になりま
した。
もちろん、配備先は北海道の第7師団です。機甲
師団である同師団は3個戦車連隊と1個普通科連隊
をもっています。その第11普通科連隊は、この装
甲戦闘車に歩兵が乗って戦うのです。いまも本州で
は富士教導団の普通科教導連隊が装備しています。
▼掃海艦「やえやま」とイージス艦「こんごう」
イージス搭載護衛艦「こんごう」が進水しました。
名前がすごいですね。旧帝国海軍で奮戦した巡洋戦
艦で金剛山から名前をとった金剛です。昭和63年
度計画艦でした。同時に12目標に対応できます。
対空ミサイルはスタンダードSM-2MRです。
建造費は当時で1223億円ですから、74式戦車
が320輌あまり買えますね。
イージスというのはギリシャ神話の最高神ゼウス
が娘のアテナに与えた盾の名前です。この盾は一切
の邪悪を払うとされています。艦橋構造物の左右4
面についたフェーズド・アレイ・レーダーが眼にあ
たります。ミサイルは垂直に発射され、そのセルは
90といわれます。ミサイルの搭載数は74発、ア
スロックは16発ともされているようです。
127ミリの単装速射砲はイタリアのOTOメラ
ラ社のもの。砲身長は54口径(127ミリ×54)
で、発射速度は毎分45発、最大射程は2万368
0メートルにもなります。竣工は1993(平成5)
年3月に予定され、2番艦は「きりしま」、3番艦
は「みょうこう」です。
掃海艦「やえやま」は1000トンを超える大型
掃海艦でした。海自では排水量1000トンを境に、
以上を艦、未満を艇とします。「やえやま」は艦種
記号もMSO、掃海艇のMMCとは異なるのです。
マインスウィーパー・オーシャン(海洋)とコー
スタル(沿岸)の違いになります。
外見上の特徴も艦橋上部には衛星通信受信用のド
ームがあり、艦橋直前に船底のソーナーを揚降(よ
うこう)用のウィンチがありました。掃海能力は数
百メートルにもなり、深々度用の係維掃海具と機雷
処分具をもちます。
この全木造の大型掃海艦の任務は、海自の潜水艦
のための航路啓開です。いまや機雷は高性能化とと
もに深々度化が進んでいます。潜航中の潜水艦にと
って大きな脅威を除く、それが掃海艦です。この後、
「つしま」、「はちじょう」も建造されます。
▼米軍との共同訓練
陸上幕僚監部による指命演習は2年になくなりま
した。この演習は担当師団が行ない、たとえば対機
甲演習、対空挺着地演習などと主題を決めて行なわ
れていたものです。ところが、これが大規模かつ周
到に計画されるために負担は大きかったのでした。
そこで、この年から少し軽くなって方面指命演習に
なりました。
日米合同統合指揮所演習も行なわれ、ナレーショ
ンからは一層のコンピューター化などという言葉が
出ています。滋賀県饗庭野では「びわこFTX91」、
北海道では実員や車輛が動いて「ノースウィンド9
1」などという名称の演習が行なわれています。
ソ連のゴルバチョフ大統領が来日するといった変
化もありました。防衛医科大では初の女子学生が卒
業します。映画にも協力し、陸自は「熱い瞬間(と
き)」などという作品もありますが、わたしは観た
ことはありません。「ゴジラ対キングギドラ」を覚
えていらっしゃる方もいられるでしょうか。
次週の平成4年の映像は、いよいよ国際平和協力
法の成立でカンボディアに施設大隊が出発します。
(つづく)
(あらき・はじめ)
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●著者略歴
荒木 肇(あらき・はじめ)
1951年東京生まれ。横浜国立大学教育学部卒業、
同大学院修士課程修了。専攻は日本近代教育史。
日露戦後の社会と教育改革、大正期の学校教育と陸
海軍教育、主に陸軍と学校、社会との関係の研究を
行なう。
横浜市の小学校で勤務するかたわら、横浜市情報処
理教育センター研究員、同小学校理科研究会役員、
同研修センター委嘱役員等を歴任。1993年退職。
生涯学習研究センター常任理事、聖ヶ丘教育福祉専
門学校講師(教育原理)などをつとめる。1999年4月
から川崎市立学校に勤務。2000年から横浜市主任児
童委員にも委嘱される。2001年には陸上幕僚長感謝
状を受ける。
年間を通して、自衛隊部隊、機関、学校などで講演、
講話を行なっている。
著書に『教育改革Q&A(共著)』(パテント社)、
『静かに語れ歴史教育』『日本人はどのようにして
軍隊をつくったのか―安全保障と技術の近代史』
(出窓社)、『現代(いま)がわかる-学習版現代
用語の基礎知識(共著)』(自由国民社)、『自衛
隊という学校』『続自衛隊という学校』『子どもに
嫌われる先生』『指揮官は語る』『自衛隊就職ガイ
ド』『学校で教えない自衛隊』『学校で教えない日
本陸軍と自衛隊』『あなたの習った日本史はもう古
い!―昭和と平成の教科書読み比べ』『東日本大震
災と自衛隊―自衛隊は、なぜ頑張れたか?』『脚気
と軍隊─陸海軍医団の対立』『日本軍はこんな兵器
で戦った─国産小火器の開発と用兵思想』『自衛隊
警務隊逮捕術』(並木書房)がある。
『自衛隊の災害派遣、知られざる実態に迫る-訓練
された《兵隊》、お寒い自治体』 荒木肇
「中央公論」2020年3月号
https://amzn.to/31jKcxe
PS
弊マガジンへのご意見、投稿は、投稿者氏名等の個
人情報を伏せたうえで、メルマガ誌上及びメールマ
ガジン「軍事情報」が主催運営するインターネット
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くことがございます。あらかじめご了承ください。
最後まで読んでくださったあなたに、心から感謝し
ています。
マガジン作りにご協力いただいた各位に、心から感
謝しています。
そして、メルマガを作る機会を与えてくれた祖国に、
心から感謝しています。ありがとうございました。
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