配信日時 2021/07/05 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(131)】情報のワナ──世の中を見て歩くことの大切さ

おはようございます、エンリケです。

今週もどうぞよろしくお願いします!

131回目の美佐日記。


「情報のワナ」

ほんとうに危険ですよね。
私も常に心がけています。

さっそくどうぞ。


桜林さんの不朽の傑作
『誰も語らなかった防衛産業』の文庫版が、
潮書房光人新社から
『誰も語らなかったニッポンの防衛産業』
という名で出ました!

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ではさっそく、
本日の「美佐日記」をお楽しみください。


エンリケ

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『自衛官が語る災害派遣の記録』に続く、第2弾
『自衛官が語る海外活動の記録』(桜林美佐監修・
自衛隊家族会編)が発売されています。中東シーレ
ーンの安全確保をめぐって新たな自衛隊派遣が行わ
れているこの時期にタイミングを合わせたような出
版です。現地で自衛官たちが何を思い、どのような
苦労をして、任務をこなしてきたか、25人の自衛
官のリアルな体験記です。

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桜林美佐の「美佐日記」(131)

情報のワナ──世の中を見て歩くことの大切さ

桜林美佐(防衛問題研究家)

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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、令和3年7月の今回
は131回目となります。

放送日が過ぎてしまったのですが、AMラジオのニ
ッポン放送で先般、私が構成を担当したドキュメン
タリー番組が再放送されます(少しだけ、インタビ
ューなどが追加されています)。

放送日時は7月4日(日)25:30~26:30
でしたが、1週間以内でしたらスマホやPCで「radiko」
を開いて頂けば聴くことができます(7月11日まで
ということですね)。

タイトルは「繰り返すコロナという危機・あなたは
誰と乗り越えますか?」です。

どうぞよろしくお願いいたします!

 繰り返すコロナという危機・あなたは誰と乗り越
えますか? | ニッポン放送 |
https://radiko.jp/share/?sid=LFR&t=20210705013000


 さて、先日は元防衛研究所教授で現在は日本大学
危機管理学部教授の小谷賢さんのインテリジェンス
についての講話を聴く機会がありました。

 今回は先の大戦時に優れた暗号解読技術を持ちな
がらもそれを活かすことができなかった当時の実態
についてのお話だったのですが、堀栄三さんの本な
どにもあるように、いくら確度の高い情報を取得で
きてもそれが作戦に反映されなければ何も意味がな
い、という当たり前のことを改めて実感しました。

 作戦部が常に優位であり、情報部が軽視された。
その背景には、作戦部は「情報」という言葉に「イ
ンフォメーション」をイメージし、情報部は「イン
テリジェンス」と認識していたという齟齬があった
といいます。

 それなので、すでに出来上がっている作戦に対し
て、その計画を変更しなくてはならない情報が入っ
たりすることは、作戦遂行の「邪魔」以外のなにも
のでもないわけです。

 そして都合のいい情報だけを取り入れることにな
り、そのまま作戦を進め悲惨な敗北を期するという
・・・。

このために幾多の若者が短い人生を終えなければな
らなかったかと思うと、胸を締め付けられます。

関東軍が行軍演習を行うにあたり、2週間かけて1
0数名の人員が偵察を行い、その場所での行軍は不
可だと報告したにもかかわらず、現地参謀が「困難
性を過大に報告している。通過は可能だと信じる」
という結論だったのだとか。で、結局やってみたら
できなくて中止になったといいます。

もう一つ、情報取り扱いの難しさは「いかに共有す
るか」であることもよく言われます。

陸軍と海軍で情報共有がなかったなど、私たちは反
省材料を多く知っていながらも、現在においても、
ともすれば情報は「持っている」ことに価値を見出
してしまいがちです。

情報収集、分析が目的化してしまい「そもそも何の
ためなのか」が見失われてしまう、自衛隊でもそん
なことが起きていないか、いえ、日本全体でもこん
なことになっていないか、しっかり見ていかないと
いけませんね。

また、当然のことながら、立場が上になるほど末端
の情報からは距離ができます。そして、その人にと
って都合のいい情報ばかりが入ってくるようになる。
その結果、重大な判断を誤る。

そう思うと、ああ私は偉くなくてよかった、なんて
安心しがちですが、さにあらず。

Google検索でも、Yahoo!ニュースでも、AIによって
自分の傾向に合ったものが提供されています。広告
も同様です。

「情報が溢れている」と思って見ているスマホやP
Cの情報って、結局は自分好みのものばかりになっ
ている可能性大なのです。

私たちはいつのまにか、自分に都合のいい情報だけ
に聞く耳を持った旧軍の失敗を批判できないほど
「都合のいい情報に取り囲まれた」環境に置かれて
いるかもしれません。

そういえば、最近は本をAmazonなどで買うようにな
り、本屋さんをぶらぶら歩くことがなくなりました。

ある有名な新聞記者の方から、新人記者には「デパ
ートを歩け」と教えているという話を聞いたことが
あります。

大切だと思います、世の中を見て歩くこと。

とはいえ、近所に本屋さんがなくなっちゃったとか、
なかなか出かける時間がないとか、色々と事情が
あると思われますので、在宅でも書店ぶらぶらのよ
うなことができないものでしょうかね~。

いずれにしても、現代社会は、たとえ政治家や軍人
でなくても、誰しもが「情報のワナ」にかかる危険
性があるということを知っておく必要がありそうで
す。

今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。
皆さんにとって素敵な1週間となりますように!


<おしらせ>
●月刊誌『丸』にて「誰も知らないニッポンの防衛産
業」連載中です。コツコツ書いてまいります!
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●会員制月刊誌『テーミス』でも自衛隊ルポを連載中
です! http://www.e-themis.net/

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いる「国防ニュース最前線」、今週も伊藤俊幸・元
海将に解説をして頂きます!
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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。新刊『誰も語
らなかったニッポンの防衛産業』(産経NF文庫)



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