おはようございます、エンリケです。
今週もどうぞよろしくお願いします!
128回目の美佐日記。
例えば今回のテーマ。
あなたはどう受け止めるでしょう?
文明レベルの価値観大転換の渦中に今ある、
とわたしは感じており、この種のテーマが、
次の時代のわが国生き残りを図るうえで欠かせ
ないポイントになると考えています。
環境や食は、安保や国防軍事から最も遠いところに
ある風景だったかもしれません。
しかし変化はつねに辺境から始まります。
動向を注視してゆきたいものです。
さっそくどうぞ。
桜林さんの不朽の傑作
『誰も語らなかった防衛産業』の文庫版が、
潮書房光人新社から
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ではさっそく、
本日の「美佐日記」をお楽しみください。
エンリケ
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『自衛官が語る災害派遣の記録』に続く、第2弾
『自衛官が語る海外活動の記録』(桜林美佐監修・
自衛隊家族会編)が発売されています。中東シーレ
ーンの安全確保をめぐって新たな自衛隊派遣が行わ
れているこの時期にタイミングを合わせたような出
版です。現地で自衛官たちが何を思い、どのような
苦労をして、任務をこなしてきたか、25人の自衛
官のリアルな体験記です。
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桜林美佐の「美佐日記」(128)
そのうち魚も食べられなくなる……
桜林美佐(防衛問題研究家)
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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、令和3年6月の今回
は128回目となります。
以前、ある水産業界の偉い方にこんなことを問いか
けられました。
「日本に流通する最高級の魚の多くはどこに行くか
知ってる?」
何を問われているのか分からなかった私は「築地?
(今で言えば豊洲ですか)」とかなんとか答えたよ
うな記憶がありますが、正解は全く違いました。
「ゴミ箱だよ!」
えーっ、という言葉しか出ませんでしたが、どうい
うことかというと、高級な魚は料亭などに出される
が、そういう席では全てが平らげられるなんていう
ことはほとんどない。というか、手を付けられずに
残っているほうがむしろ多い。そして捨てられると
・・。
なるほど、そういうことなのかと初めて知りました。
その方曰く「刺身は場を盛り上げるための飾りのよ
うなもの」なのだと。高級魚ほど食べられることな
く演出に使われるわけです。
私自身は残念ながら刺身盛りを見ても全く盛り上が
らないのですが、かつてテレビリポーターをしてい
た頃は(やっていたんです実は)無理やり興奮しな
ければならず「それでは豪華なお刺身を頂きまーす」
と箸を出したのはいいのですが、フグを食べるよ
うにという指示だったにもかかわらずトンデモなく
違うものを取っていたようで(フグなんて知らなか
ったんですよね)、後でディレクターにたんまり怒
られた苦い記憶がよみがえります。
そんなことはどうでもいいのですが、今日の本題は
ここからです。
最近、お肉だけではなくそのうちに魚も食べられな
くなると言われるようになりました。
これは路上などから海に流れ出し魚の体内に入って
しまっているマイクロプラスチックが魚よりも多く
なってしまうからだとされています。
マイクロプラスチックは、プラスチックが粉砕され、
5mm以下になったものです。現在、50兆個以上の
プラスチックが世界の海を漂っていて、食物連鎖を
通して汚染は生態系全体に広がっていると言われて
いるのです。
そんな海洋プラスチックごみの中でも、特に深刻な
被害が出ているのが「ゴーストギア」だそうです。
「ゴーストギア」とは、海に流出した漁網などの漁
具のことです。
世界の海に流出している「ゴーストギア」は、毎年
50万~100万トンにのぼり、ウミガメや魚、海鳥な
ど、さまざまな海洋生物の命を奪っているというの
です。
北太平洋の「太平洋ごみベルト」では、浮遊する45
,000~129,000トンのプラスチックのうち漁網やロ
ープが、約46%を占めているということです。
そして、1970年代から魚は減少の一途を辿り、現
在は50年前の49%しか海洋生物がいないのだそ
うです。
しかし、漁網などだけで魚がいなくなるものでし
ょうか。
そうなんです。「ゴーストギア」の背景にはより
大きな原因があるのです。
それは「乱獲」です。
どこの国が乱獲をしてるのか。
中国、韓国がワースト1位と2位です。
やっぱり!奴等が悪い!と責任を追及したいとこ
ろですが、まだ続きがあります。
確かに中国の違法操業は目に余るもので、諸外国
の政府や漁業従事者、自然保護団体などが非難して
います。禁止された漁具の使用、他国海域の侵入な
ど国際問題になっています。
しかし、実はわが国にも捕鯨やイルカ漁などに批
判の声が多く、漁獲量は世界1位の中国(8259万ト
ン)より格段に少ないにもかかわらず(日本は世界
10位で417万トン)中国や韓国と同列に、いえ、そ
れ以上に野蛮な国として非難されてしまっているの
です。
良かれ悪しかれこれが欧米から見た「極東」の姿
だと受け止めなくてなりません。
やはり、今というのは、私たちの生き様、全ての
生命との関りを考える時代なのだと思います。
一方、中国漁船団の進出に目を向ければ、これは
安全保障そのものと言えます。
遠洋漁業に出る中国漁船は1万7000隻にものぼると
いう説もあり、米国の遠洋漁船300隻をはるかに上
回ります。
中国漁船は政府からの補助金で支えられ、武装した
「海警」の護衛を伴って朝鮮半島付近や南シナ海で
違法操業をしています。
ここまでして魚を求めるのは「14億人の胃袋を満
たすため」と言われますが、実際には中国の漁獲量
の半分近くはアジアや欧米に輸出されているといい
ます。
今やイカやタコなども中国がその市場を支配するよ
うになっているとのこと。こうしたことは生態系を
乱すだけでなく、各地域の漁業を圧迫しているので
す。
それはアフリカや南米に及んでいて、これらの国々
では地元漁師が海に近付けず「資源が枯渇してしま
う」と悲鳴があがっています。
アフリカのモーリタニアではタコを輸出していまし
たが、昨今は中国の乱獲により漁獲量が激減してい
ます。
同国のタコ産業は、1970年代にJICAが技術
支援をした経緯があるといい、50年間積み上げて
きたものが瞬く間に奪われてしまったのです。
また、海上自衛隊が海賊対処のために派遣されてい
るアデン湾があるソマリアも本来は漁業で生計を立
てていた人たちが中国船などに追いやられ職を失っ
たことから、海賊になってしまった経緯もあります。
ソマリアの海賊が中国や韓国の漁船を襲うのは自分
たちの獲るべき魚を奪われたからだったのです。
その背景を知ると、乱獲が続く限りアフリカの貧困
はなくなるはずがなく、取り締まらなければいけな
いのは海賊よりも違法漁船団なのではないかという
思いを強くしています。
いずれにしても、私たちが何も考えずにお魚を頂く
時代はすでに終わり、これからはここに安全保障、
国際問題が内在していると知らねばなりません。ま
た、信じたくないですが魚の体内にはプラスチック
も水銀も含まれているということも・・。
本当に、大きな課題を突き付けられていますね。あ
ー、今日は魚を食べようと思っていたのになんてこ
とを書くんだと思われたらごめんなさい!
今日も最後まで読んで頂きありがとうございました。
皆さんにとって素敵な1週間となりますように!
<おしらせ>
●月刊誌『丸』にて「誰も知らないニッポンの防衛産
業」連載中です。コツコツ書いてまいります!
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いる「国防ニュース最前線」、今週も伊藤俊幸・元
海将に解説をして頂きます!
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(さくらばやし・みさ)
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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。
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