配信日時 2021/05/14 20:00

【加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編】中国軍の領土野心に歯止めかける 台湾防衛の切り札(3)「台湾国産の超音速巡航ミ サイル勇風III型」

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ライターの平藤清刀です。陸自を満期除隊した即応
予備自衛官でもあります。
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どうぞ
 
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WEB http://wos.cool.coocan.jp

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こんにちは。エンリケです。

加藤さんが翻訳した武器本シリーズ最新刊が
出ました。

今回は、
分隊支援火器といえばこれ!
ミニミ/M249です。

『ミニミ軽機関銃』
クリス マクナブ (著), 床井 雅美 (監修), 加藤 喬 (翻訳)
2020/7/10 発行
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武器オンチの日本人には
特におススメです。


日米とも、堕ちるところまで堕ちつつある感を持ちます
ね。

ミレニアムレベルの歴史の大転換点に今はあり、あらゆ
る価値観が崩壊して新たな価値観に代わる、と私は感じ
ていますが。その顕われの一つでしょうか?


さっそくどうぞ


エンリケ

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加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編 Takashi Kato  

中国軍の領土野心に歯止めかける

台湾防衛の切り札(3)「台湾国産の超音速巡航ミ
サイル勇風III型」


加藤喬(元米陸軍大尉)

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□アリゾナの片田舎で目撃した「隣人間の深い溝」

わたしはアリゾナ州最南端の小さなコミュニティに
住んでいます。人口6500人に過ぎない国境の町
には交通信号も商店街もありません。メキシコまで
6キロ半。ボーダーパトロールの車両とヘリが越境
する不法移民や麻薬密売人に目を光らせていますが、
都会生活に付き物の犯罪や喧騒、忙(せわ)しなさ、
騒音をめぐる隣人とのいざこざなどとは無縁です。
鹿やイノシシ、コヨーテが彷徨する高原砂漠では時
間がゆっくり流れていきます。四方を荒野に囲まれ
ていればストレスが溜まるはずもなく、概して恵ま
れた生活環境だと言えましょう。

 そんな片田舎で先日、意外な論争が沸き起こりま
した。親しくしている隣人が「市警察のパトカーが
スピード違反取り締まりを始めたけど、ここは郡保
安官事務所の管轄じゃないのかな?」とコミュニテ
ィのネット掲示板に投稿したのです。1日で120
近いスレッドが立ちました。普段はあっても数件で
すから、住人らの関心度が伺えます。

 しかし・・・発言は回を追うごとに警察反対派と
擁護派の非難合戦に変貌。ついには「お前ら、警察
にへつらう哀れな連中だ。警官はヒーローなんかじ
ゃない。ギャングだ」、「なぜ警察の悪口を言うの?
スピード違反をすれば罰金を払うのは当たり前。
大人の振る舞いができない人は、バイデン政権がも
っと厳しい法律を作って取り締まってくれるわ」、
「民主党のせいで警察予算が削られ、我々を守って
くれる警官が足りないんだ」、「警察が市民を守っ
てくれると本気で信じているとは、おめでたいこっ
た・・・妄想癖でもあるのか」等々、敵意剥き出し
の個人中傷にまで堕ちました。

 デレック・ショービン元警官に対する有罪評決で
警察批判が勢いを得ているのは事実ですが、スピー
ド違反取締の話題を捻じ曲げた挙句、些細な挑発に
近隣住人らがこぞって罵り合う様はいかにも異様。
のんびりとした田舎ですら、人心に穿(うが)たれ
た深い溝が癒えていない事実に改めて思い至りまし
た。いったい何がアメリカをこのような分裂状態に
導いたのか?

 真っ先に思い浮かぶのが、昨今アメリカで連日話
題にのぼる「批判的人種理論」(Critical Race
Theory:CRT)。キャンセルカルチャーやアイデン
ティティ・ポリティックス、ウォーク(覚醒)運動
といった反アメリカ主義はいずれもこの思想に端を
発しており、その正体を見極める必要がありそうで
す。

 まず、批判理論とは1930年代にドイツで起こ
った社会・政治哲学を指します。ヨーロッパ社会を
階級闘争の視点で捉え、労働者階級を搾取する資本
主義からの人民解放を目指した西欧マルクス主義の
ことです。その中核となったフランクフルト学派は
ナチス政権の台頭を嫌って米国のニューヨーク市に
移転。名門コロンビア大学に活動拠点を置き、教育
分野と知識階層にマルクス主義を広めていったので
す。

 戦後フランクフルト学派の論客や大学教授らは、
ソビエトの現実がマルクスの夢見た「階層差のない
地上の楽園」とは程遠いことを自覚します。また出
自にかかわらず、教育と勤労を通じ社会的地位を向
上できるアメリカンドリームの国では、労働者革命
は起こり得ないことも追認せざるを得ませんでした。
しかし彼らはマルクス主義を見捨てることはせず、
公民権運動渦巻く60年代の社会不安を利用する
手を思いつきます。

 つまり、マルクスが描いた「労働者対資本家」と
いう対立構図を「黒人対白人」という図柄にすり替
えたのです。この「代置」はその後徐々に一般化さ
れ、90年代までには女性や黒人以外の少数民族を、
そして近年ではLGBTQ(性的少数者)を含むようにな
りました。その結果が「虐げられた人々対迫害者」
というアイデンティティ・ポリティックスなのです。

 フランクフルト学派に影響された60年代の急進
左派学生らは、後年、大学教授職や報道関係ポスト、
政府や企業の要職に就き今日に至っています。こ
れらのエリートはCRTの「新マルクス主義」という
本性を「反差別」「社会正義」「多様性」など聞き
心地のよいレッテルで覆い隠し、アメリカ人の意識
に浸潤させてきたわけです。学校、マスコミ、職場
での思想操作が米社会分断の下地になったと言えま
しょう。

 ちなみに、警察糾弾と警察解体運動の急先鋒BLM
(黒人の命も大切だ)の創設者パトリッセ・カラー
ズ氏は「筋金入りのマルクス主義者」を自認してい
ます。CRTとキャンセルカルチャーの近縁関係がこ
こにも垣間見えます。

 このように考えると、バイデン大統領が直面して
いる「分断のアメリカ」はトランプ政権の置き土産
などではありません。アリゾナの片田舎で私が目撃
した「隣人間の深い溝」も、戦後、アメリカのマル
クス主義者がアメリカ人同胞に対して行なってきた
反米運動の結果だと言えます。

 したがって、キャンセルカルチャーとアイデンテ
ィティ・ポリティックス、ひいてはCRTの信奉者で
あり広告塔であるバイデン大統領がこの国をまとめ
ることはまず不可能。唯一の超大国とは言え、この
ままでは、軍事と経済両面でアメリカを猛追する中
共に凌駕される日もそう遠くはありません。とすれ
ば、日本人の国防決意と実力が問われるのも時間の
問題です。

 建設が中断された国境の壁を遠望しつつ、アリゾ
ナの片田舎で二つの祖国の明日を憂うこの頃です。



▼台湾国産の超音速巡航ミサイル勇風III型

 兵器は人が生存をかけて使う道具。生き延びるた
めには相手より優れた武器を持たねばなりません。
兵器開発競争が文明の黎明から今日まで途切れなく
続いているのはこのためです。よく指摘される武器
の効用に「抑止力」(deterrence)があ
ります。刀を抜かずとも相手を委縮させ対峙を防ぐ
「鞘の内の勝ち」の如く、敵に攻撃を思いとどまら
せる圧倒的な破壊力のことです。「平和を望むがゆ
えに兵器を手放せない」。人類が陥って久しいこの
ジレンマの裏面が「抑止力」なのです。
「加藤大尉の軍隊式英会話:兵器編」では、それぞ
れの武器が持つ抑止力に着目。兵器と平和の関係を
考えていくことにします。

 中国共産党の領土野心に歯止めをかける中華民国
国軍(台湾軍)兵器の3回目、今回は台湾国産の超
音速巡航ミサイル勇風III型をとりあげます。

 2019年時点での台湾と中国の戦力を単純比較する
と、兵員数では189万人対269万人、航空戦力では83
7機対3157機、艦艇では87隻対714隻、戦車では1885
両対1万3050両という数字が出てきます。もちろん中
共が台湾侵攻に振り向けられる戦力はこれより小さ
くなりますが、それでも攻撃側が防御側を制圧する
目安である3対1に近い比率になり、人民解放軍が
優勢です。

 しかし、台湾の占領・併合はミサイルや航空機に
よる攻撃だけでは達成できません。実際に上陸して
台湾軍を制圧する機甲部隊と歩兵部隊が不可欠なの
です。当然、戦車や歩兵は艦艇で台湾海峡を渡る必
要がありますが、輸送中の戦車と歩兵は完全に無力
。したがって、できるだけ多くの揚陸艦艇を上陸前
に撃破することが台湾防衛の要になります。

 この任にあたり、人民解放軍海軍の上陸部隊を迎
え撃つのが勇風III型超音速ミサイル。主固体燃料ロ
ケットと固体燃料ブースター2基で超音速まで加速
し、その後はラムジェット・エンジンで超音速巡航
を続けます。目標に接近するまでは慣性誘導で、最
終段階では搭載レーダーによるアクティブ・ホーミ
ングで目標に着弾します。

 迎撃を避けるために対電子妨害装置を備えるほか
、命中直前に海面すれすれの高度で回避運動するこ
とも可能だとされています。重量225kgの弾頭は敵艦
艇の装甲を貫通して船体内で起爆するタイプ。射程
は400kmあります。手元の資料には速度の記述があ
りませんが、ラムジェット・エンジンはマッハ3か
ら5での巡航に適しているとされることから、この
領域で飛行するものと考えられます。

 超音速巡航する勇風III型対艦ミサイルは、水平線
上に現れてから着弾までの時間が短く、迎撃が極め
て困難。したがって台湾侵攻に対する大きな抑止力
となっているのは間違いありません。

教材ビデオ:
 TOP 5 WEAPONS OF TAIWAN THAT CHINA WOULD BE R
EALLY WORRIED ABOUT! -YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=E2vp2urM1FQ&list=PLk2kWhtlkeERNmHhjjwD0qbox5r9ZGvvh&index=96

(本エピソードは6:35から始まります)

基本語彙(カタカナ表記は大雑把なものです)
Counter(カウンター)対抗する
Surface vessel(サーフィス・ヴェッセル)
水上艦艇
Fleet(フリート)艦隊

シナリオ(カウンターを7:06に合わせてくださ
い)

Taiwan began the Hsiung FengIII program in 1994
to counter the growingnumber of China’s surfa
ce vessels and its advancing fleet defense sys
tem.

(増加の一途をたどる中国軍の水上艦艇と進歩する
艦隊防衛システムに対抗するため、台湾は1994年に
雄風III型プログラムを開始した)

(今回のエピソードは7:45まで続きます)

英語一言アドバイス:
 vesselには複数の異なる意味があります。
体の中の管を指す場合もあり、blood vesselなら
「血管」です。また器や杯の意味もあります。軍
事用語で使われる場合は「船舶」や「大型ボート」
です。これに水面を意味するsurfaceを付けると水
上艦艇になります。

発音サイト:vesselの発音
 How to pronounce vessel | HowToPronounce.com
https://www.howtopronounce.com/vessel

参考サイト:ラムジェット・エンジン
 ラムジェットエンジン - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%88%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3

雄風III型 (ミサイル) - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%84%E9%A2%A8III%E5%9E%8B_(%E3%83%9F%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%AB)

(かとう・たかし)



●著者略歴
 
加藤喬(かとう・たかし)
元米陸軍大尉。都立新宿高校卒業後、1979年に渡米。
アラスカ州立大学フェアバンクス校他で学ぶ。88年
空挺学校を卒業。
91年湾岸戦争「砂漠の嵐」作戦に参加。米国防総省
外国語学校日本語学部准教授(2014年7月退官)。
著訳書に第3回開高健賞奨励賞受賞作の『LT―あ
る“日本製”米軍将校の青春』(TBSブリタニカ)、
『名誉除隊』『加藤大尉の英語ブートキャンプ』
『レックス 戦場をかける犬』『チューズデーに逢う
まで』『ガントリビア99─知られざる銃器と弾薬』
『M16ライフル』『AK―47ライフル』『MP5サブ
マシンガン』『ミニミ機関銃』『MP38/40
サブマシンガン(近刊)』(いずれも並木書房)
がある。
 
 
追記

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『チューズデーに逢うまで』関係の夕刊フジ
電子版記事(桜林美佐氏):
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150617/plt1506170830002-n1.htm
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20150624/plt1506240830003-n1.htm
 
『レックス 戦場をかける犬』発売中
http://www.amazon.co.jp/dp/489063309X 
 
『レックス 戦場をかける犬』の書評です
http://honz.jp/33320

オランダの「介護犬」を扱ったテレビコマーシャル。
チューズデー同様、戦場で心の傷を負った兵士を助ける様子が
見事に描かれています。
ナレーションは「介護犬は目が見えない人々だけではなく、
見すぎてしまった兵士たちも助けているのです」
http://www.youtube.com/watch?v=cziqmGdN4n8&feature=share
 
 
 
きょうの記事への感想はこちらから
 ⇒ https://okigunnji.com/url/7/
 
ブックレビューの投稿はこちらから
http://okigunnji.com/url/73/
 
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日本語でも英語でも、日常使う言葉の他に様々な専
門用語があります。
軍事用語もそのひとつ。例えば、軍事知識のない日
本人が自衛隊のブリーフィングに出たとしましょう。
「我が部隊は1300時に米軍と超越交代 (passage of
lines) を行う」とか「我がほう戦車部隊は射撃後、
超信地旋回 (pivot turn) を行って離脱する」と言
われても意味が判然としないでしょう。
 
 同様に軍隊英語では「もう一度言ってください」
は "Repeat" ではなく "Say again" です。な
ぜなら前者は砲兵隊に「再砲撃」を要請するときに
使う言葉だからです。
 
 兵科によっても言葉が変ってきます。陸軍や空軍
では建物の「階」は日常会話と同じく "floor"です
が、海軍では船にちなんで "deck"と呼びます。 
また軍隊で 「食堂」は "mess hall"、「トイレ」
は "latrine"、「野営・キャンプする」は "to bivouac" 
と表現します。
 
 『軍隊式英会話』ではこのような単語や表現を取
りあげ、軍事用語理解の一助になることを目指して
います。
 
加藤 喬
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