配信日時 2021/04/19 08:00

【桜林美佐の「美佐日記」(121)】トウモロコシをめぐる無視できない問題……

おはようございます、エンリケです。

今週もどうぞよろしくお願いします!

121回目の美佐日記。

桜林さんの未来が、とても楽しみです!

さっそくご覧ください。


エンリケ

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桜林美佐の「美佐日記」(121)

トウモロコシをめぐる無視できない問題……


桜林美佐(防衛問題研究家)

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おはようございます。桜林です。「男もすなる日記
といふものを、女もしてみむとてするなり」の『土
佐日記』ならぬ『美佐日記』、令和3年4月の今回
は121回目となります。

 そういえば、あの時に買ったあれ、どこに置いた
んだっけ?

 なんてことってありませんか?

 私はあまりにも忘れっぽいので、記憶力に良いと
いうイチョウ葉のサプリメントを買いましたが、飲
むのを忘れ、引き出しにしまったままです。

 そんな「あれどこに行った?」話が、先日、国会
で出ていました。

 立憲民主党の亀井亜紀子議員の質問で「前から疑
問だが」と切り出されたのは「トウモロコシのゆく
え」でした。

 2019年8月に日本が買った米国産トウモロコ
シ。これは当時の安倍総理とトランプ大統領との間
で、唐突にトウモロコシの話を切り出したトランプ
大統領に半ば押し切られたような恰好で購入が決め
られたもので、この時も「シンゾーがたくさん買っ
てくれた」と、トランプ氏を喜ばせました。

 で、結局この時の約6万8000トンのトウモロ
コシはどこに行ったのか? 農水省によれば「順次
使用されたと考えている」ということですが、報告
を求めているわけではないので、正確なところはよ
く分からないようです。

 そもそも日本は毎年約1600万トンものトウモ
ロコシを輸入していて、その9割が米国からのもの
だといいます。

 え~っ、私たちトルティーヤとかそんなに食べて
ないのに~?というお定まりの反応をわざとらしく
したくなりますが、私たちの消費はコーンそのもの
やスナックだけではありません。

 むしろ、飼料用が大半で、約75%が畜産で消費
されています。鶏肉1キロにトウモロコシが2~3
キロ、豚肉1キロにトウモロコシ5~6キロ、牛肉
1キロには10キロものトウモロコシが使われてい
るということで、日本人も間接的に大量の米国の穀
物と水を摂取していることになります。

 輸入された残りの約24%の消費が加工用で、ト
ウモロコシの主成分であるデンプンからコーンスタ
ーチができ、甘味料、ケチャップ、ドレッシング、
粉末スープの原料などなどに生まれ変わります。コ
ーヒーフレッシュもミルクではなくトウモロコシか
らできていることは知られていますよね。

 この他、スナック菓子、カップ麺、酢、酒類、乾
電池、オムツ、鎮痛剤までにも入っているらしく、
挙げれば切りがないようです。

 コーンを使っているお酒なんか飲んでないわと思
いきや、これは発泡酒や第3のビールのことだそう
で、発泡酒系を常飲している私たち(勝手に皆さん
も飲んでいると想像)にとってはちょっとショック
な情報です。

なぜなら、発泡酒に限らず、私たちの身の回りにあ
る食品に使用されているのは、害虫が食べると死ぬ
ように遺伝子操作されているあれです。そう「遺伝
子組み換え」トウモロコシなのです。

家畜の飼料になっているコーンもそうですから、肉
を食べれば知らず知らず口にしていることになりま
す。

元来は牧草を食べていた牛に、米国政府の補助によ
り安価になった遺伝子組み換えトウモロコシを与え
るようになったことで、丸々と太るようになりまし
た。しかし、内臓に負担がかかり、抗生物質などを
投与しなければならず、その結果として発生したの
がO-157による食中毒でした。

このような経緯から、日本の食品事情を調べている
人は、日本と米国との関係に不信感を抱いているた
め、わが国には日米関係について批判的な見方をす
る人たちが常に存在するのではないかと、私は最近、
改めてつくづく感じています。

どうして主婦の人たちは安全保障を理解しないんだ
ろう、日米同盟の意義や核抑止などを理解してもら
うにはどうしたらいいんだろうと、頭を悩ませてい
ましたが、理屈ではなく、どうしても信じられない
のでしょう。

トランプさんにごり押しされて日本が余剰トウモロ
コシを引き取った姿を冷ややかな目で見た人に「い
やいや、イージスアショアとかオスプレイの話は別
ですって!」などと言っても共感するはずはありま
せん。

これらの買い物については、日米同盟重視派も懐疑
的な案件もありますので理解されなくても致し方な
いですが、日米同盟ありきの日本の防衛のリアリテ
ィに関しても聞く耳を持ってもらえなくなるのです。

因みに、中国では豚肉を食べる人が急激に増え、飼
料を自給だけでは賄えなくなっていて米国からのト
ウモロコシ輸入にもっと頼らざるを得ない状況のよ
うです。アラスカで行なわれた外交トップ会談では
あれだけの対立をみせた両国ですが、トウモロコシ
交渉では米国からの輸入量を増やすことが決まった
といいます。

トウモロコシは、食の安全という観点で日本人が米
国に不信感を抱く要素になり、また、米国が中国に
縛られる要素にもなり得るかもしれない・・・。

トウモロコシをめぐる日米、米中関係は、日本の安
全保障にとって無視できない問題なのではないかと
「トウモロコシはどこにいった?」の質問から連想
したのでした。


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(さくらばやし・みさ)



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【著者紹介】
桜林美佐(さくらばやし・みさ)
昭和45年、東京生まれ。日本大学芸術学部卒。フ
リーアナウンサー、ディレクターとしてテレビ番組を
制作。その後、国防問題などを中心に取材・執筆。
著書に『奇跡の船「宗谷」─昭和を走り続けた海の
守り神』『海をひらく─知られざる掃海部隊』『誰
も語らなかった防衛産業[改訂版]』『武器輸出だ
けでは防衛産業は守れない』『防衛産業と自衛隊』
(いずれも並木書房)、『終わらないラブレター─
祖父母たちが語る「もうひとつの戦争体験」』(P
HP研究所)、『日本に自衛隊がいてよかった』(産
経新聞出版)、『ありがとう、金剛丸─星になった
小さな自衛隊員』(ワニブックス)。月刊「テーミ
ス」に『自衛隊密着ルポ』を連載中。


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